SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて
Report on the Proposal Review Committee (PRC) of SPring-8
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所属機関 Affiliation
SPring-8利用研究課題審査委員会 委員長/東京大学/理化学研究所 University of Tokyo / RIKEN
本文
1.はじめに 2023 年 4 月 か ら 2025 年 3 月 に か け て の 2 年 間、 SPring-8 利用研究課題審査委員会( Proposal Review Committee 、以下 PRC )の委員長を務め、 2023B 期 ~ 2025A 期の課題審査を担当させていただきまし た。以下に、この 2 年間の審査を振り返り、概要と 感想を簡単に述べます。 2.PRC での審査に関して PRC は、 SPring-8 選定委員会のもとに設置された 委員会で、一般利用研究課題の審査を担っています。 なお、大学院生提案型課題(長期型)の審査は別の 委員会(大学院生利用審査委員会)で行われるため、 PRC が審査対象としている大学院生提案型課題に は含まれません。現在、 SPring-8 では、年 2 回募集 (各年度 A 期と B 期)を行うビームラインと年 6 回 募集( A 期と B 期のそれぞれについて第 I 期から第 III 期まで) を行うビームラインがあります。 PRC は、 年 2 回募集のビームラインの応募課題と年 6 回募集 のビームラインの第 I 期の応募課題についてはハイ ブリッド会議で審査を行っています。年 6 回募集の ビームラインにおける各期第 II 期と第 III 期の応募 課題については、メール審議を行っています。 応募課題について専門的な審査を行うために、 PRC のもとには、散乱回折、分光・分光イメージング、 イメージング、非弾性散乱、構造生物学、産業利用、 人文・社会科学、その他(持込装置利用)という 8 つの分科会が設置されています。このうち、散乱回 折分科会と分光・分光イメージング分科会は、対応 する研究分野が広く審査すべき課題の数も多いため、 以下のように複数のチームに分かれた審査体制を引 いています。 散乱回折分科会 小角 ・ 広角散乱、 X 線回折(単結晶) 、 X 線回折(粉 末) 、 X 線回折(汎用 ・ 構造評価) 、 X 線回折(高圧) 分光・分光イメージング分科会 汎用 XAFS ・ 汎用 MCD 、 先端 X 線分光、 光電子分光、 赤外分光 応募のあった一般課題と大学院生提案型課題につ いては、まず、原則 4 名の学識者によるレフェリー 審査が行われます。これと並行して、施設側で安全 審査と技術審査が行われます。分科会は、これらの 審査結果を踏まえて各専門分野としての総合的な審 査を行い、シフト配分素案を作成します。各分科会 (散乱回折分科会と分光・分光イメージング分科会 については各チーム)の主査、および、施設側委員 から構成される PRC は、各分科会で議論された内 容に関する情報を共有すると共に、全体のシフト配 分案を決定し、 SPring-8 選定委員会に上程します。 2023B 期から 2025A 期の間、年 2 回のハイブリッ ド会議で扱った一般課題と大学院生提案型課題の採 択数 / 応募数は、 469 ( 32 ) / 706 ( 69 ) 、 418 ( 31 ) / 638 ( 58 ) 、 500 ( 37 ) / 715 ( 68 ) 、 422 ( 42 ) / 645 ( 70 ) と推移してい ます。ここで、 ( )内は大学院生提案型課題の数を 内数で示しています。また、年 6 回募集のビームラ インにおける 2023B 期から 2024B 期の間の第 II 期と 第 III 期の推移は、 76 ( 7 ) / 131 ( 17 ) 、 80 ( 11 ) / 136 ( 16 ) 、 87 ( 9 ) / 128 ( 24 ) 、 67 ( 8 ) / 109 ( 22 ) 、 84 ( 13 ) / 146 ( 22 ) 、 66 ( 7 ) / 128 ( 15 ) と な っ て い ま す。 第 I 期、 第 II 期、 第 III 期を合わせると、半年ごとにおよそ 900 の課 題応募があり、そのうち 600 程度が採択されている という状況です。 PRC では、より良い課題を選定するために、研 究動向や審査のあるべき姿についても議論します。 例えば、この 2 年間では、装置持込課題への配分シ SPring-8 利用研究課題審査委員会 委員長 東京大学/理化学研究所 有 馬 孝 尚 SPring-8 利用研究課題審査委員会を終えて 36 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS フト上限に関する議論が行われています。施設がな るべく大きな成果を上げるためには装置持込課題に どの程度の上限を設定すべきかは、容易には答えの 出ない問題です。また、いくつかのビームラインに ついては、採択率が低い状態が常態化しています。 SPring-8-II の整備に向けたビームラインのアップグ レードにも関係していることから、引き続き、状況 を注視する必要があります。 最後になりましたが、 PRC 委員の皆様には活発 なご議論をいただき、心より感謝申し上げます。ま た、委員会の議事が円滑に進むように万全の準備を していただいた事務局に感謝いたします。 有馬 孝尚 ARIMA Taka-hisa 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 〒 277 - 8561 千葉県柏市柏の葉 5 - 1 - 5 TEL : 04 - 7136 - 3805 e-mail : arima@k.u-tokyo.ac.jp 理化学研究所 創発物性科学研究センター 〒 351 - 0198 埼玉県和光市広沢 2 - 1 e-mail : takahisa.arima@riken.jp SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 37 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信