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SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chairs

執筆者情報

執筆者 Author

田代 孝二 TASHIRO Kohji[1]、下村 晋 SHIMOMURA Susumu[2]、青柳 忍 AOYAGI Shinobu[3]、脇原 徹 WAKIHARA Toru[4]、SHIMIZU Katsuya 清水 克哉[5]、鈴木 基寛 SUZUKI Motohiro[6]、雨澤 浩史 AMEZAWA Koji[7]、組頭 広志 KUMIGASHIRA Hirosh[8]、佐々木 孝彦 SASAKI Takahiko[9]、世良 俊博SERA Toshihiro[10]、細川 伸也 HOSOKAWA Shinya[11]、今田 勝巳 IMADA Katsumi[12]、矢野 陽子 Yohko F.YANO[13]、妹尾 与志木 SENO Yoshiki[14]、奥山 誠義 OKUYAMA Masayoshi[15]

所属機関 Affiliation

[1]SPring-8 利用研究課題審査委員会 小角・広角散乱分科会主査/豊田工業大学/あいちシンクロトロン光センター Toyota Technological Institute/Aichi Synchrotron Radiation Center、[2]X線回折(単結晶)分科会主査/京都産業大学 Kyoto Sangyo University、[3]X線回折(粉末)分科会主査/名古屋市立大学 Nagoya City University、[4]X線回折(汎用・構造評価)分科会主査/東京大学 The University of Tokyo、[5]X線回折(高圧)分科会主査/大阪大学 The University of Osaka、[6]汎用XAFS・汎用MCD分科会主査/関西学院大学 Kwansei Gakuin University、[7]先端X線分光分科会主査/東北大学、[8]光電子分光分科会主査/東北大学 Tohoku University、[9]赤外分光分科会主査/東北大学 Tohoku University、[10]イメージング分科会主査/東京理科大学 Tokyo University of Science、[11]非弾性散乱分科会主査/島根大学 Shimane University、[12]構造生物学分科会主査/大阪大学 The university of Osaka、[13]その他(持込装置利用)分科会主査/近畿大学 Kindai University、[14]産業利用分科会主査/九州シンクロトロン光研究センター SAGA Light Source, Saga Industrial Promotion Organization、[15]人文・社会科学分科会主査/奈良県立橿原考古学研究所 Archaeological Institute of Kashihara,Nara pref.

本文

1.小角・広角散乱分科会 1 - 1 .審査全般 ここに記したコメント (というよりも印象) は、 DS1 分科の審査過程における委員二人(大阪大学 寺尾 憲教授、 JASRI 関口博史博士)との議論の中で出 てきたものである。 随分と昔、申請課題の審査会などに出席していた が、全体的には審査過程そのものには今も大きな変 化はなさそうに思われる。勿論、研究テーマそのも のは時代とともに徐々に変わってきている。カーボ ンニュートラル社会、バイオマス資源などのキー ワードと関わるテーマが増えているのは無理からぬ ことである。数多くの申請書を見る限り、自身の テーマをそうした流行りの言葉と強く関連付けよう とする傾向が多いことに気づかされる。発足当初に 比べると各ビームラインの設備なども著しく高度化 されており、ユーザーにとっては思い切った実験に 挑戦できる機会がさらに増えたことは有難い。しか し不思議なことに、せっかくの高度化システムであ るにもかかわらず、ラボで出来そうな研究テーマに 甘んじている申請が多いのは甚だ残念ではある。た とえば小生らが担当している分科会では、広角・小 角散乱同時測定が当然のように行われてしかるべき であろうが、意外とその類の申請は多くない。嘗て の課題審査全体会議では、ラボで出来る実験テーマ は出来る限り採択しないようにとのお触れが声高に 出されていたが、最近の申請書を見ると、その傾向 は緩くなっているような印象をもってしまう。 時期によって課題申請件数に多い少ないがあるの は仕方ないが、多い時には 500 ページから 800 ペー ジの書類を見ることになる。読み始めと読み終わり とで審査側の勢いも違ってくる。もう少し、申請を 分散させる手はないものであろうか。 SPring-8 利用研究課題審査委員会 小角・広角散乱分科会主査/豊田工業大学/あいちシンクロトロン光センター 田 代 孝 二 X 線回折(単結晶)分科会主査/京都産業大学 理学部 下 村 晋 X 線回折(粉末)分科会主査/名古屋市立大学 大学院理学研究科 青 柳 忍 X 線回折(汎用・構造評価)分科会主査/東京大学 大学院工学系研究科 脇 原 徹 X 線回折(高圧)分科会主査/大阪大学 基礎工学研究科 清 水 克 哉 汎用 XAFS ・汎用 MCD 分科会主査/関西学院大学 工学部 鈴 木 基 寛 先端X線分光分科会主査/東北大学 多元物質科学研究所 雨 澤 浩 史 光電子分光分科会主査/東北大学 多元物質科学研究所 組 頭 広 志 赤外分光分科会主査/東北大学 金属材料研究所 佐 々 木 孝 彦 イメージング分科会主査/東京理科大学 先進工学部 世 良 俊 博 非弾性散乱分科会主査/島根大学 材料エネルギー学部 細 川 伸 也 構造生物学分科会主査/大阪大学 大学院理学研究科 今 田 勝 巳 その他(持込装置利用)分科会主査/近畿大学 理工学部 矢 野 陽 子 産業利用分科会主査/九州シンクロトロン光研究センター 妹 尾 与 志 木 人文・社会科学分科会主査/奈良県立橿原考古学研究所 保存科学センター 奥 山 誠 義 SPring-8 利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告 38 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 1 - 2 .科学審査ならびに審議過程で感じるところ これら数多くの申請書を読んで、そして分科会で の審議において時々感じることをリストアップして おく。特段に目新しいことではないが、今後の申請 ならびに審査において参考になれば、と思う。 ( 1 )申請書作成では、その研究のオリジナリティー を強調せよ、と指導されている。ユーザーによっ ては「初めてである」 「全くなされたことがない」 「画期的な成果になる」 「極めて独創的である」な どの語句を連発するだけのものも少なくない。 「こ の研究はこういう点で重大である、これまでの文 献ではここまでは分かっているが、この点は未知 である、ここが未解決である」とかを理路整然と 描かれている申請書は数少ない。その研究テーマ の位置づけを審査委員がよく理解できるように書 くべきである(科研費と同じはずであるが、残念 ながら依然として多くのユーザーには認識されて いない) 。昨年度に不採択になった申請書をその まま今年度の申請に使っている場合も決して少な くないが、何故落とされたのか意識が全然ないの には驚かされる。 ( 2 )特に昨今の申請書で目立つのは、海外の研究発 表とのかかわりを、全く触れていない申請書が多 い点である。申請書と似た内容の論文が海外で出 ていても知らぬ顔である。 「国内」あるいは「申 請者」という井戸の中に平然と住んでいる蛙が増 えているのは非常に気になる。ユーザーの皆さん は、果たして他者の論文を一日に何報、読んでお られるのであろうか。 ( 3 )ユーザー自身の研究分野では使い慣れた専門 用語であろうが、審査委員にとっては聞いたこと もない言葉が山盛りされている申請書が結構多い。 難しい表現が如何にも高度な研究を計画している かの如く誤解してしまっているのであろうか。審 査委員の方もあたかも十分理解して審査しました とばかりに採点をするが、なかなかである。科研 費の申請で十分に書き方は熟知しているはずであ ろうにもかかわらず、難解な申請書には手を焼か ざるを得ない。どんなに難しい研究課題であろう が、審査委員にその面白さを分かってもらう努力 はすべきである。 ( 4 )似たようなことであるが、全体の文章がやたら に長く、起承転結が明確ではない申請書も増えて いる印象が強い。頭の中でどれほどに練り上げて いるのか、簡潔かつ明瞭な表現を心がけてもらえ ると、ある意味で審査も楽にはなる。 ( 5 )研究テーマが何年にもわたって継続されるのは 仕方のない、時によっては必要なことである。た だ、 「前回の実験では、この試料でデータを集めた。 今回も同じ内容の実験であるが、試料を別のもの にした」 、では学生実験にすぎない。これまでに 実施した実験結果をきっちりとまとめて説明する とともに、そこで出てきた未解決点をクリアーす るべく、別の試料で実施する必然性が出てきた、 などの説明は不可欠である。 ( 6 )かくして審査点を割り振り、審査結果全体を 分科会で検討するわけであるが、結構、きわどい 点差の審査にならざるを得ない。面白そうなテー マであっても不採択と結論せざるを得ない場合も ある。分科会での審議でも結構悩むところである。 逆にビームタイムにゆとりがあるからと、テーマ として十分練られていないものも滑り込みセーフ にする場合もある。そのような場合、思い切って 不採択として、余ったビームタイムは追加募集す るなど、フレキシビリティーがあってもよいよう には思うが。おまけとするようでは、施設のレベ ルアップにつながらない。 ( 7 )昨今、世界中で放射光施設が目覚ましい速度で 増えている。有難いことに各ビームラインの機器 使用も簡易化されつつあり、光軸調整をはじめと して測定可能なところまで、スタッフが完璧に用 意してくれる。それに比例して、ユーザーの幅も 広がり、結晶学や散乱理論を全然知らないものが 課題申請に合格し、実験データを(曲がりなりに も)集めることが出来るようになってきた。とこ ろが、データ解析が全然できない。現状では、解 析を指導するシステムは必ずしも充実していると は言えず、施設側にとってはアフターケアの充実 が今後の大事な課題になる。 SPring-8-II への脱皮も含め、最近の施設側にはす ごい熱気が感じられる。設備の質が飛躍的に向上し、 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 39 SPring-8/SACLA/NanoTerasu ௨৴ 今後ますます新しい科学の進展に役立つことは間違 いない。しかしながら、ユーザーの意識がそれと並 行してどこまで強まっているのか、これまでにない 全く新しい科学の展開を目指すうえで彼らの切迫感、 危機感が余り見られないと思われるのは、小生だけ ではないはずである。 (小角・広角散乱分科会主査 田代 孝二) 2.X 線回折(単結晶)分科会 2 - 1 .研究の動向 X 線回折(単結晶)分科会において対象となる研 究分野は、構造物性、有機化学、無機化学など幅広 く、また、研究対象も、 MOF 、有機系結晶、無機 系結晶、金属錯体、強相関電子系物質など多様です。 SPring-8 の高輝度・高分解能特性や高エネルギー X 線を利用することにより、実験室の X 線回折実験で は困難な複雑な結晶構造を持つ物質の構造解析、大 きな結晶が得られていない新規材料の構造解析が可 能となっています。また、電子密度分布を高精度で 決定する研究、マイクロビームを用いた超微小結晶 の構造解析も実施されています。これらの構造解析 を主とした実験のほかに、 X 線散漫散乱測定、時間 分解測定、その場観察やオペランド測定など、単結 晶試料を用いた多彩な回折・散乱実験が行われてい ます。 2 - 2 .課題審査について BL02B1 は本分科会が審査対象とする主なビーム ラインのひとつです。このビームラインでは、二次 元検出器の導入や測定プログラムの改良など測定環 境の高度化により 1 課題あたりの希望シフト数が少 なくなっています。 BL02B1 では年 6 回募集になっ て い ま す が、 2023A 第 II 期 か ら 2025A 第 I 期 ま で の約 2 年間において 1 課題あたりの平均のシフト数 (=希望シフト総数÷申請課題数)を期ごとに計算 すると、おおよそ 3 ~ 6 シフトの間で推移していま した。実際、単結晶構造解析を目的とする課題で は、測定試料の数にもよりますが、 3 シフトを希望 する場合が多いようです。 BL02B1 における課題の 採択率を期ごとに調べてみると比較的大きく変動し ていることがわかりました。その理由のひとつとし て、年 6 回募集のため年 2 回募集の場合に比べて 1 期あたり申請課題数が少なくなり、そのばらつきが 採択率に大きな影響を与えてしまうことがあげられ ます。課題審査が効果的に機能するためには、採択 率が適切な値に保たれることが望ましいと考えられ ますが、現状では、希望シフト数が極端に多い課題 については適切かどうかを検討したり、ビームタイ ムの調整枠を活用したり、といったことが行われて います。採択率の変動が小さくなるような効果的な 施策を今後も検討する必要があるように思われます。 なお、 BL40XU については、設置されていた微 小単結晶構造解析装置が BL05XU に移設予定となっ ているため、 2025A 期の課題審査は行われませんで した。 実験装置の更新などといったビームラインにおけ る実験環境の大きな変化があった場合でもその変化 を把握していない申請課題がわずかながらあること に、課題審査を行っていて気がつきました。このこ とから、特に新規の申請者がビームラインの実験環 境に関する最新情報を迷うことなく得られるような 広報活動も重要であると感じました。 課題審査は、私を含めた 3 名の分科会委員が、レ フェリーコメント等を参考にしながらレフェリーの 評点に基づいて行いました。最後になりましたが、 レフェリーの皆様に感謝を申し上げます。 ( X 線回折 (単結晶) 分科会主査 下村 晋) 3.X 線回折(粉末)分科会 本分科会( DS3 )の 2023-2024 年度の委員は、青 柳 忍(名古屋市立大学) 、藤原 明比古(関西学院大 学) 、河口 彰吾(高輝度光科学研究センター)の 3 名で担当いたしました。主たるビームライン( BL ) と し て BL02B2 と BL13XU に 加 え て、 そ の 他 に BL04B2 、 BL08W 、 BL19B2 、 BL40XU 、 BL44B2 で実施を希望する粉末 X 線回折実験課題について、 レフェリーの審査結果に基づきシフト配分を行いま し た。 上 記 の う ち、 BL02B2 、 BL13XU 、 BL19B2 は年 6 回募集、その他は年 2 回募集の BL です。ま た BL44B2 は理研 BL 、その他は共用 BL です。 本分科会では、申請課題のうち BL02B2 または BL13XU を第一希望の BL とする課題が 8 割以上を 40 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 占めます。また BL13XU を第一希望とする課題の うち、審査の結果、第二希望の BL02B2 で採択され る課題が多いです。 BL02B2 と BL13XU を合算した 本分科会の平均的な課題採択率は、 2023-2024 年度 において 7 割程度でした。 BL02B2 は 2000 年度から共用されている汎用的 な粉末 X 線回折 BL であり、多連装型一次元半導体 検出器と低温・高温ガス吹付装置、サンプルチェン ジャにより、多数の試料の粉末 X 線回折パターン を、広い温度範囲で迅速に測定できます。 BL02B2 は、常連のユーザーが多いことに加えて、 BL13XU を第一希望とするユーザーに第二希望の BL として 利用されることが多いです。そのため新規参入の障 壁はやや高く、新規ユーザーが応募してもなかなか 利用できないという場合があったかも知れません。 BL19B2 、 BL44B2 でも BL02B2 と同様の実験がで きる場合がありますので、その場合はこれらの BL を第二、第三希望の BL としてご指定いただけると、 課題採択の可能性は高くなると思われます。 BL13XU は近年大規模な再編整備が行われた X 線 回折・散乱 BL であり、第 3 実験ハッチに新設され た高分解能粉末回折装置が 2022 年度より共用され ています。この装置を用いることで、 BL02B2 では 実施できない高エネルギー X 線回折や、角度分解能 と時間分解能の高い粉末 X 線回折、各種の operando 測定などが可能になります。ただし、 BL13XU には 4 つの実験ハッチがあり、粉末 X 線回折以外に表面 X 線回折やナノビーム X 線回折などの実験も行われ ています。そのため課題採択率は低く、 BL13XU で ないと達成が困難で、かつ意義のある成果創出が期 待できる実験課題でないと、採択され難いという状 況にあります。現状では、利用するためには課題申 請書の内容を工夫する他ありませんが、成果創出を 最大化するためには、より多くのユーザーが利用で きる方がよいでしょう。そのために今後、例えば少 試料、短時間の測定について、有料で代行測定を行 うサービスなどが準備されたりすると、よりよいの かも知れません。 最後に、本分科会の課題審査に多大なるご協力を いただきましたレフェリーの皆様と分科会委員の皆 様、 JASRI 利用推進部の皆様に深くお礼を申し上げ ますとともに、ご応募いただいたユーザーの皆様の ご研究の今後の更なる発展を心より祈念いたします。 ( X 線回折 (粉末) 分科会主査 青柳 忍) 4.X 線回折(汎用・構造評価)分科会 2023A ~ 2024B まで X 線回折(汎用・構造評価) 分科会( DS4 分科会)の主査を拝命しました。主な ビームラインとしては BL04B2 、 BL08W 、 BL13XU 、 BL19B2 などです。 2 年間で多くの申請課題を審査 しました。分科会の動向などは既に報告しています のでここではコメントしません。一点だけ、皆さん と情報共有させてください。課題審査をしていると、 間違いなく海外からの申請の採択率が低い傾向があ ります。この点に関して PRC では何度も指摘して きました。私が SPring-8 のユーザーとなった 25 年 前とは状況が異なります。世界中に放射光施設が運 用されるようになった現状では、如何に海外から競 争的に優秀な提案を採択し、 SPring-8 から世界に向 けてインパクトのある成果を出すかが重要です。良 い提案を競って獲得しなければなりません。申し上 げにくいことを敢えてコメントさせていただきます。 現状、そのような仕組みになっているとは到底いえ ません。改善はできるはずです。国際化を今よりも 格段に進めないと海外の優秀な研究者は世界の他の 場所で測定するようになります。どうか、よろしく お願いいたします。最後に、申請課題審査において 丁寧なコメントをいただいたレフェリーの皆様、円 滑な分科会進行にご協力いただいた久保田委員およ び小金澤委員に感謝申し上げます。 ( X 線回折 (汎用・構造評価) 分科会主査 脇原 徹) 5.X 線回折(高圧)分科会 5 - 1 .はじめに X 線回折 (高圧) : DS5 の分科会主査を 2 年間 ( 2023 年 4 月~ 2025 年 3 月)にわたって務めさせていただ きました。この期間は 2023B 期から 2025A 期に相 当します。この間を振り返って、いわゆる「コロナ 禍後」とも称される時期における申請および採択状 況を思い出してみたいと思います。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 41 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 5 - 2 .課題審査 まず、 DS5 は競争率の高い(採択率が低い)分科 のひとつであると思います。本分科は高圧力下の地 球科学、物質科学であって、対応するビームライン は主に BL04B1 と BL10XU になります。競争率の 高さは、これらのビームラインのスペックが高く評 価されていることを反映していると感じました。つ まり、他の施設では実施が困難または不可能なス ペックがこれらのビームラインには整備されていて、 ユーザーはその研究に必要なスペックを求めて申請 しています。従いまして、応募課題は必然的に当該 分野において先端的な研究課題が多く、レフェリー の先生方は、課題の評価に相当の時間とエフォート を使っていただいたものと拝察します。 分科会にて審査する際には、レフェリーの先生方 の評点とコメントが乖離している(評点は低いのに コメントでは高評価なもの、またはその逆になって いる)ことが散見されました。これはレフェリー の先生の “まよい ” が原因なのか、評価(コメント) を評点に反映させることの難しさなのか、いまだわ かっていません。わずかな評点の差で、採否が決ま るので、評価方法は引き続き検討していっていただ きたいと感じました。 ビームライン別に具体的に統計データを振り返 ります。採択率は BL04B1 は 80 %強、 BL10XU は 50 %強を推移しました。特に、 BL10XU は海外申 請数が全申請数の 60 %を超えていることが特筆で きます。海外申請は、両 BL ともに中国からが多 数を占めています。海外申請の採択率はそれぞれ 50 %程度、 30 %程度と低いですが、今後はさらに 競争が激しくなることが予想されます。 国内申請、海外申請ともに、同じグループから複 数の課題、似通った課題が申請されています。これ は、申請グループの固定化が起こっていることを表 しているように思います。一方で、新規のグループ からの申請もありますが、結果的に採択率は低く なっているようです。ハイスペックなビームライン においても、研究領域が固定化されることのないよ う、新しいグループの受け入れによる新しい展開を 視野に入れるのは、審査分科会の役目になるのかも しれません。特に新規グループで不採択であった課 題に対しては、審査分科会としての評価コメントを 作成して送付するなどから始めることが出来るよう に思います。 5 - 3 .まとめ 分科会の主査として、申請課題のすべてに目を通 す機会は、審査の大変さを天秤にかけても有用なも のだったと振り返っています。研究課題の内容もさ ることながら、審査委員の方の着目点、評価の重心 など、研究活動において参考になる気づきの機会を 多くもつことができました。 技術審査をしていただいた、ビームラインスタッ フの皆様をはじめ、 JASRI 事務局の皆様に深くお礼 申し上げます。 ( X 線回折 (高圧) 分科会主査 清水 克哉) 6.汎用 XAFS・汎用 MCD 分科会 本分科会は、 XAFS や XMCD に関連する 8 本の ビームラインの課題選定を担当しています。このう ち BL01B1 と BL14B2 では年 6 回の課題募集を行っ ており、この 2 本だけで半年間に約 120 件の応募が あります。近年、実環境・反応条件下での XAFS 解 析が非常に強力な手法として認知され、上記のビー ムラインでの in-situ/operando XAFS や Quick XAFS による時間分解 XAFS 実験の需要が高まっていま す。筆者が分科会主査を務めたこの 2 年間でも、実 環境 XAFS 測定の急速かつ継続的な広がりを実感し ました。この傾向を受けて BL01B1 と BL14B2 の申 請数は増加しており、採択率は 30 %前後と非常に 競争が激しくなっています。レフェリー評点の基 準も他のビームラインよりも高いため、高評点の 課題でも不採択にせざるを得ない場合が多々あり ました。採択率が低下している理由の一つとして、 in-situ XAFS などでは従来の静的測定よりも長い、 多くのシフト数を要求する課題が増加していること があげられます。このように、 2 本の XAFS ビーム ラインでは需要を賄いきれない状況となっており、 汎用 XAFS ビームラインの増設を真剣に検討する段 階かと存じます。その際には、 BL スタッフの人材 も併せて増員されることをぜひご検討いただきたい です。 42 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu C0..UNICATI0NS XMCD に関しては、 BL25SU 、 BL39XU とも課題 数は増加傾向です。 BL25SU の顕微 XMCD 装置は NanoTerasu に移設されましたが、汎用的な XMCD スペクトル測定に堅実な需要があります。また、機 械 学 習 と XAFS/XMCD 計 測 と の 組 み 合 わ せ な ど、 計算科学手法を取り入れた意欲的な課題も提案され ています。今後、 NanoTerasu の XMCD ビームライ ンの整備がさらに進むと期待されますので、双方の 施設の役割分担や課題選定の方法などについて検討 する必要があると考えます。 レフェリー評点が僅差の課題の採否選定について は、毎回大変苦労しました。その際にはレフェリー 評価コメントを参照しながら、分科会委員で申請書 を読み合わせました。レフェリー評価コメントの多 くは大変参考になりましたが、なかには評点とコメ ント内容が整合していないように見受けられるもの もありました。低い評点をつけているのにもかかわ らずコメントは好意的であるもの、あるいはその逆 です。レフェリーにお願いしたいのは、各課題につ いて、長所 (加点要素) と短所 (減点要素) の両方 をコメントに含めていただけると分科会としては大 変助かりますので、今後レフェリー審査を行われる 方にはぜひご留意いただきたいです。 最後に、 2 年間にわたり分科会委員を務めてい ただいた奥村和先生 (工学院大学) 、片山真祥氏 ( JASRI ) には大変お世話になり、深く感謝いたし ます。また、技術審査を担当いただいたビームラ イン担当者各位、 JASRI 利用推進部スタッフの皆様、 そしてご多忙の中課題を審査してくださったレフェ リーの方々には心からお礼申し上げます。 (汎用 XAFS ・汎用 MCD 分科会主査 鈴木 基寛) 7.先端X線分光分科会 7 - 1 .はじめに 令和 5 年~令和 6 年度( 2023B ~ 2025A 期)の先 端 X 線分光( SP2 )分科会の主査を仰せつかり、三村 功次郎先生 (大阪公立大学) 、 河村 直己先生 ( JASRI ) と共に、その重責を務めさせて頂きました。この 分 科 会 で は、 主 に BL17SU 、 BL27SU 、 BL37XU 、 BL39XU に対して提案された、 XAFS や XRF に代 表される X 線分光を用いた先端計測について、課題 選定とビームタイム配分を行いました。 「先端計測」 の性質上、比較的長時間のビームタイム配分を希望 する課題も多く、選定・配分に苦慮することもあり ましたが、お二人の委員のご協力のお蔭もあり、何 とか滞りなく課題選定を行うことができたと思って おります。 7 - 2 .分科会の特長・傾向 この二年間の本分科における傾向を振り返ります と、対象材料としては、以前からに引き続き、セラ ミックや金属の無機材料(触媒、電池、地学・地質 関連)が主流ではありましたが、それらに加えて、 環境・生体材料、高分子材料などへの広がりも見ら れました。一方、計測手法としては、この分科会が 「先端計測」を謳っていることもあり、特殊環境や デバイス動作下での in situ ・オペランド計測、顕微 分光計測など、高度な計測技術を用いた課題申請が 多く見られました。中でも、イメージング分光計測 や高分解能計測、高速計測など、より高度な計測手 法が材料やデバイス評価に適用されつつあり、この 分科のトレンドになりつつあるのを感じました。 7 - 3 .審査について 課題審査は、基本的にレフェリー評点に基づいて 行い、評点が僅差の場合にはレフェリーの評価コ メントを参考にして、配分を決定しました。これ も「先端計測」という分科の性質によるのか、全般 に評点の高い課題申請が多かったように感じました。 レフェリー間の評点にバラツキが見られるケースも 散見されましたが、以前に比べると改善された印象 で、分科再編と相まって、より適切な判断が行える ようになってきているように思います。一方で、海 外からの申請数は少なく、今後の施設国際化を考え ると、この点は少々残念でした。総じて評点も低い 傾向にあるようでしたが、これは内容のレベルが低 いと言うよりも、海外類似施設での課題申請・審査 とやり方や内容が異なることによるのかもしれず、 不採択課題申請者へのレフェリーコメントのフィー ドバックも含め、何らかの対策が必要なのかもしれ ません。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 43 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 7 - 4 .おわりに 最後になりますが、ここ数年間、審査を統括する 立場を経験させて頂くことで、 SPring-8 における研 究運営・支援が多くの関係者のご尽力により支えら れていることを、改めて実感しました。これは、以 前の申請者の立場では知り得なかったことであり、 分科会委員のお二人はもちろん、レフェリーの皆様、 JASRI 職員の皆様にも、この場を借りて改めて御礼 を申し上げます。今後も SPring-8 の研究運営・支援 体制がより一層充実し、日本の科学技術を支える役 割を担い続けてくれることを願っております。 (先端X線分光分科会 雨澤 浩史) 8.光電子分光分科会 私は 2023 および 2024 年度( 2023B-2025A 期課題 審査)の SPring-8 利用研究課題審査委員会( PRC ) におきまして、光電子分光( SP3 )分科会の主査を 務めさせていただきました。本稿ではその簡単な報 告をさせていただきます。 この主査を引き受ける前には、分科会委員として 齋藤智彦主査のもとで審査( 2021B-2023A 期課題 審査)に関わっていました。この期間には、分科会 の再編と BL09XU の年 6 回募集制という二つの大き な改革がありました。齋藤主査はさぞかし大変だっ たかと察しますが、私の任期の期間は大改革後に確 立した体制で、比較的淡々と審査を進めることにな りました。 SP3 分科会は、今田先生(立命館大学) 、 高木先生( JASRI ) 、私の 3 名構成で運営し、審査 課題数も適切で、綿密な審査が行えていると感じて います。会議はすべてオンライン形式で行われ、分 科会委員の負担も軽減されていると思います。年 6 回の審査ですから、もし対面のみだったらさぞかし 大変だったと思う一方、審査が機械的になってしま うというオンライン会議の弊害も少々気になりました。 さ て、 2025 年 3 月 か ら NanoTerasu の 共 用 が 開 始されました。それに先んじての課題募集である 2025A 期の審査では、この NanoTerasu 稼働による 影響がどの程度あるのか興味津々でしたが、現時点 ではその影響はほとんど見られておりません。しか し、 NanoTerasu の本格稼働に伴って、 SP3 分科会で 取り扱っている軟 X 線の角度分解光電子分光などは 今後大きく影響を受けると思われますので、注意深 く推移を見守っていく必要があると思われます。 2021-2022 年に行われた大改革と 2025 年度以降 の NanoTerasu 稼働という変革の間に挟まれた比較 的穏やかな時期の担当となりましたが、この間にも PRC は細かな事柄も含めて、常に改善・改良を行っ てきております。その一つが、不採択だった申請者 へのレフェリーコメントのフィードバックです。こ れはありがたい制度だと思いました。足かけ 4 年間 も審査に触れる機会がありますと、レフェリーが低 い点をつけた理由を申請者が理解していない(でき ない)ばかりに、サイエンスとしては素晴らしいの に採択されない課題を見ることがあります。申請者 にその理由を説明したい衝動に駆られることも度々 ありました(逆に、過去には私自身が申請者とし て、課題が何故採択されないか分からなくて憤慨し ていたこともありました) 。この審査員コメントの フィードバックによって、良い課題を取りこぼすこ と無く実施できるようになると期待しております。 特に、将来のパワーユーザになる可能性の高い大学 院生課題に関しては、教育効果も含めてこのフィー ドバックは重要になると思われます。審査員の方々 におかれましては、審査コメントに加えて、新しく フィードバックコメントを記載するのは、大変労力 がかかることだと思いますが、可能な限りご協力願 えればと思います。 SP3 分科会の一つの特徴として、測定装置の開発 に関する課題が比較的多いことが挙げられます。そ の中で、 JASRI の方々からの装置開発に関する申請 に関しては、施設整備の一環として行った方がいい 内容が多々あり、 分科会でも議論になりました。 「装 置開発という研究」と「研究のための装置開発」は 異なります。後者を一般課題で審査するのは時間の 無駄ですし、施設の調整枠内で処理するのが適切で はないかと感じました。 審査委員・主査の仕事は、施設運営の不断の努力 を体感することができ、さらには施設・審査側の立 場をより深く知ることで、施設利用の全体像を理解 する貴重な機会となるものでした。短い期間でした が、 これまでの単なる一利用者から 「共同体の一員」 となった感じを受けました。今後の委員となる皆様 44 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu C0..UNICATI0NS にも、どうぞご尽力いただければと思います。 最後に、分科会を運営してくださった利用推進部 スタッフの皆様、そしてご多忙の中課題を審査して くださったレフェリーの先生方に深く感謝申し上げ ます。 (光電子分光 分科会主査 組頭 広志) 9.赤外分光分科会 2023-2024 年度の SPring-8 利用研究課題審査委員 会( PRC ) の 赤 外 分 光 分 科 会( SP4 ) 主 査 を務め、 赤外物性ビームライン( BL43IR )利用研究の申請 課題審査に携わらせていただきました。 SP4 分科会 の委員は、私のほかに岡村英一先生(徳島大学)と 池本夕佳氏 ( JASRI ) ( 2023 年度) 、 片山真祥氏 ( JASRI ) ( 2024 年度)に担当いただきました。 2022A 期より 分科の再編が行われ赤外分光に関しては、独立の SP4 赤外分光分科会となり、課題審査に関連する ビームラインは、 BL43IR のみとなっています。こ のため、レフェリーが申請課題を評価して相対的評 点をつける際に、単一のビームラインの課題のみで 相対評価を行うことになるため公平で効率的な審査 になっていると感じます。これは、各課題に対する レフェリーによる評価のばらつきが分科再編以前に 比べて少なくなっていることに現れています。こ の 2 年間の BL43IR 利用に対して申請、実施された 課題では、長期利用課題や重点課題等の優先的なシ フト配分を必要とする課題はありませんでしたので、 ほぼすべてをレフェリーによる評価点とコメントに 基づき一般課題シフト枠での採択とビームタイム配 分を行いました。原則的には各課題の採否はレフェ リーによる相対評価点数が高い順に順位をつけた資 料をもとに審査が進められました。並行してビーム ライン担当者による安全審査と技術審査が行われて いますが、 BL43IR の利用申請においてはビームラ イン担当者の努力によりほぼすべての課題申請に対 して申請者と事前打合せが行われているので、安全 審査、技術審査が採否の判断において問題になるこ とはありませんでした。 赤外分光分科での申請課題の特徴は、電子状態の 分光測定を行う物性物理系と分子振動観測による状 態評価を行う化学系の 2 つの研究課題群に大きく分 けられることです。レフェリーもこの 2 つのいずれ かの研究領域に属されているため、申請課題によっ てはレフェリーの評価が分かれていることもありま した。特に実験室光源に比べて放射光赤外光の特徴 である輝度の高さ、遠赤外光領域での微小領域測定 に関して、この 2 つの研究領域での認識の違いが放 射光利用の必要性の説明においてレフェリーとの間 に相違があるケースはあったかと思います。この点 はレフェリーコメントならびに申請内容を委員間で 検討、議論し判断を行いました。ただし BL43IR の 利用申請における採択率は他のビームラインと比較 して高いため、採否のボーダーラインにおいてビー ムタイム配分の調整となるケースがほとんどでした。 このため不採択となる申請課題はあまり多くありま せんが、不採択課題に対しては申請書における問題 点などをビームライン担当者と共有し、課題申請者 と次期申請での検討をしていただけるようなフィー ドバックを分科会としてお願いしています。 このたび、 SPring-8 の課題審査という重要な役目 を担わせていただきました。担当者と併走して課題 審査を無事終えることができたのは、ご協力をいた だいた分科会委員、丁寧に審査をしていただいたレ フェリー、そして献身的にご尽力いただいた JASRI ビームライン担当者をはじめとする関係職員の皆さ んのおかげです。この場をお借りして厚く感謝申し 上げます。次期 SPring-8-II においては、赤外分光 ビームラインのクローズが予定されており、赤外光 利用が可能な他の放射光施設へのユーザーや実験環 境の円滑な移行が課題となっています。放射光赤外 光の有用性と設備整備負担のバランスの上で、高度 なユーザー利用研究が進むことを期待しています。 (赤外分光分科会主査 佐々木 孝彦) 10.イメージング分科会 2023 年 度 ~ 2024 年 度 の 2 年 間、 イ メ ー ジ ン グ ( IMG )分科会の主査を務めさせていただき、柳樂 知也氏( NIMS )と上杉健太朗氏( JASRI )ととも に申請課題の審査に携わりました。スムーズな審査 を行うことができ、両氏には改めて厚く感謝を申し 上げます。 本分科会が担当する主なビームラインは、 BL20B2 、 BL20XU 、 BL28B2 と BL47XU となり、大きく分け SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 45 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 て材料系・生物系・地学に関する研究課題が申請さ れています。 BL20B2 では以前は生物・医学系に関 する課題が多くを占めていましたが、多層膜分光 器の導入以降は材料系の課題も多くなり、現在約 半分が材料系の課題で占められています。その結 果、 BL20B2 の採択率が低下した時期もありました が、 BL28B2 にも多層膜分光器が導入されたことも あり BL20B2 の採択率が向上しています。一方で一 時期追加募集を行っていた BL28B2 では、多層膜分 光器の導入だけでなく自動 CT 装置の稼働も 2023A から始まり、測定代行や成果専有課題による利用も 増加しました。 BL28B2 の高度化に関してご尽力い ただきました SPring-8 スタッフにはこの場を借りて お礼を申し上げます。また BL20XU では、本分科 会の範疇ではありませんが、成果専有課題が上限近 くまで使用されていることにより一般課題の採択率 を下げていると思われます。 研究課題としては、各ビームラインの特性を生か した動的観察に関する研究が盛んに行われており、 特に材料系課題では分~マイクロ秒まで様々な時間 スケールでのその場観察に関する研究が多くを占め ていました。生物系課題は BL20B2 に集中しており、 そのうち半分程度は医学系研究、それ以外は生物系 の基礎研究でした。この両者はレフェリーによって 好き嫌いがあるようで、分科会として採点に戸惑う こともありました。また、近年は植物に関する課題 が増加傾向にありました。 2022 年度の分科会再編の結果測定手法ベースの 編成となり、材料系と生物系などを合わせたイメー ジング( IMG )分科会となりました。私自身は生 物系の課題を申請していますが、一方でバックグラ ンドは機械工学ということもあり、生物系課題だけ でなく材料系課題も興味深く読ませていただきまし た。ビームラインスタッフおよび関係者の皆様のご 尽力により様々なビームラインの高度化が行われて おり、なかでも BL20B2 と BL28B2 における多層膜 分光器の導入は我々分科会にとっては大きなブレー クスルーとなりました。今後も優れた成果が次々に 産み出されていくことを願っています。 (イメージング分科会主査 世良 俊博) 11.非弾性散乱分科会 2023 年度から 2024 年度の 2 年間、非弾性散乱分 科会の主査を務めさせていただいた。当分科会は、 コンプトン散乱( BL08W ) 、非弾性 X 線散乱( IXS ) ( BL35XU 、 BL43LXU ) 、および核共鳴散乱( NRS ) ( BL35XU 、 BL19LXU )に関連する課題の審査を受 け持った。分科会の運営では、各分野の実情をよく 分かっておられる鈴木宏輔委員、北尾真司委員およ び Alfred Q. R. Baron 委員には大変お世話になった。 前任の壬生攻先生のご報告にもあるように、当分 科会での最も大きな問題は、 BL35XU において IXS と NRS の採択課題数および採択シフト数のバラン スを取ることができるかどうかであった。 2023B ~ 2024B の 3 期については幸いバランスが取れてお り、特別な配慮なしで採択課題を決定できた。し かしながら採択率は徐々に 60 から 50 %程度に低く なった。また壬生攻先生からもご指摘があったよう に、採択圏内に常連の申請者が目立つ結果となって おり、新規のユーザーが参入しづらい状況に変わり はない。これらの問題は、可能な課題を BL43LXU や BL19LXU に引き受けていただいても、残念なが ら解決できなかった。 最後の 2025A 期では、採択率は両分野合わせて 38 %と著しく低くなり、評価点が高くても採択でき ない課題が目立った。また、分野別の採択課題のバ ランスが崩れたため、初めて委員による再評価を行 い、 4 課題について 0.02 程度の小さな補正を行った。 しかしながらこのような状態が続けば、非弾性散乱 分野、特に NRS 分野が停滞することが危惧される ので、 1 ) ビームラインの高度化によって採択課題 あたりのシフト数を減らす、あるいは 2 ) BL35XU 以外での非弾性散乱の実験を可能にするなど、施設 側の今後の対策に期待する。また、今後 SPring-8 で は高度化が進展するが、それを進める際には、あま りにも採択率の低いビームラインが起きないように、 積極的な対策をお願いしたい。なお、新規ユーザー の採択は数課題あったので、今後もそのような状況 が続くことを期待している。 コンプトン散乱については、要求課題にビームタ イムを充足できる状態が続いており、特別な配慮、 対策は不要と考えている。ただ、 BL08W でのコン 46 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS プトン装置は、磁気あるいは電子構造を探求するユ ニークな装置であり、新しいユーザー・グループを 勧誘する努力が必要である。 この分科では、海外からの申請が多いのが特徴的 である。しかしながら採択率は非常に低く、評価点 も最下位の周辺に多くが集まっている。ただ申請書 を見てみると、テーマは他グループの成果を引用し たのち、実験方法その他は全ての申請書でコピー・ ペーストを繰り返しており、とても高い評価点をつ ける要素が見られないものがほとんどで、レフェ リーの皆さんの正しい評価であると思われる。他分 科からは海外からの採択を増やしたいというご意見 をお聞きするが、非弾性散乱分科に限ってはその必 要をあまり感じない。むしろ、 1 グループあたり 2 課題くらいに申請数を制限するような方向で対策を 施すことが、レフェリーをお引き受けいただいてい る先生方のご負担を軽くできると考えている。 (非弾性散乱分科会主査 細川 伸也) 12.構造生物学分科会 構造生物学分科会を代表し、 23 年 4 月から 25 年 3 月までの分科会における議論、課題審査、申請の動 向について報告します。 構 造 生 物 学 分 科 会 は、 生 体 分 子 の 結 晶 構 造 解 析( BL41XU 、 BL45XU 、 BL26B1 、 BL32XU ) 、 BioSAXS ( BL38B1 ) 、および BL 付帯設備のクライ オ電子顕微鏡を利用する課題を対象としています。 他の分科会とは異なり、構造生物分科会では課題審 査を年 2 回、実験責任者への希望調査と審査結果に 基づく優先順位を考慮したビームタイム配分会議を 年 5 回実施し、利用希望者にビームタイムを割り当 てています。ビームタイム配分においては、最近の 検出器の更新や測定の自動化の進展により 1 試料の 測定にかかる時間の短縮が進んだことから、最小配 分シフトを 0.5 シフトで運用しており、より多くの ユーザーの希望に柔軟に応えられる体制を組んでい ます。 さて、この 2 年間の申請動向ですが、クライオ電 子顕微鏡法の急速な発展と普及を反映し、増え続け ていたクライオ電子顕微鏡を併せて利用する課題申 請の増加が落ち着きを見せ始め、ここ数年続いてい た結晶解析課題申請の減少も収まってきました。結 晶解析課題では、コロナが蔓延した時期に一気に伸 びた自動測定の利用数はコロナが終息してからも堅 調に推移しており、各期約 200 件の実験が行われて います。また、申請内容も天然蛋白質の解析だけで はなく、最近の進展の著しい合成生物学や AI によ る構造予測法に基づいた、人工的に設計した蛋白質 や非天然構造を持つ蛋白質の構造解析を対象とする 課題が増えています。 次に課題審査における問題点ですが、中・上位の 点数がついた課題で審査員の評価点のばらつきが多 く見られるようになってきました。各レフェリーが 科学技術的価値と成果創出可能性のいずれを重視す るかによって評価が大きく割れるように見受けられ ます。また、一部のレフェリーにおいて、放射光利 用前の予備実験を強く求めるなど、実際の利用の実 態に合わないコメントも見られました。これらにつ いては、課題審査における議論を踏まえた上で審査 で考慮すべき内容をレフェリーにフィードバックす るしくみが必要ではないかと思われます。一方、下 位の課題では、申請書の記載内容が不十分で誤解を 招きかねないものや包括的内容で科学技術的価値や 成果創出への期待度にばらつきのある複数のター ゲットを含む申請であることが多く見られました。 申請書の記載の仕方について、申請者に周知する試 みを特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC )研 究会等と連携して進める必要があるとの認識で一致 しました。申請者、レフェリー双方に情報発信する ことで適切な審査が行われ、より多くの価値ある成 果が出る体制を今後も目指したいと思います。 (構造生物学分科会主査 今田 勝巳) 13.その他(持込装置利用)分科会 SPring-8 利用研究課題審査委員会( PRC )の「そ の他(持込装置利用) ( OTH ) 」分科会主査を仰せ つかり、河野委員 (関西学院大) 、田尻委員 ( JASRI ) とともに 2023B 期~ 2025A 期の課題審査を担当いた しましたので以下に報告します。 13 - 1 . OTH における研究の動向 OTH 分科会は『持込装置利用』のため、ビーム SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 47 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 ライン BL47XU または BL37XU での実施に限られ る課題がほとんどでした。基盤開発要素の比率が高 い課題の応募が多く、蛍光 X 線ホログラフィーが 80 %以上を占めていました。どちらのビームライ ンも複数の分科会にわたる複数の実験技術が競合す る激戦区であったため、表 1 に示すように、 2023B から 2024B までは採択率がもっとも低い分科会の 1 つであったと思います(全課題の平均採択率は 65- 70 %) 。一方、 2024B から理研ビームライン BL32B2 に OTH 分科専用の共用枠が設けられビームタイム の枠が増したことにより、 2025A 期は 1 件を除いた すべての課題が採択されました。 表 1 OTH における申請数と採択率 申請期 申請件数 採択率 2023B 17 35.3 % 2024A 12 58.3 % 2024B 14 57.1 % 2025A 7 85.7 % 13 - 2 . OTH 分科会で問題になっていたこと 2024A 期の課題の採択に際し、総ビームタイム の 1/3 以上を常設装置使用課題が確保するという従 来のルール( 1/3 ルール)のために不採択となった 課題が出て大きな問題となりました。輪をかけて、 2024 年 7 月には施設側から「常設装置利用課題に配 分すべきビームタイムの割合をビームラインあたり 60 %とし、持込装置利用課題に配分するビームタイ ムの上限を 20 %とする」というルールが提案され ました。これは OTH 分科課題にとって、 1/3 ルール よりもさらに厳しい提案であり、 PRC 委員会にて 異議を唱えました。おかげさまで 2025A 期からは これらに抵触するような課題に対しては、 PRC にて 審議され採否を決定する是正案が認められています。 13 - 3 .今後に向けて 現在 SPring-8 では常設装置のハイスループット化 に主眼が置かれていますが、世界の放射光施設との 差別化を図るためには、 SPring-8 から新しい技術を 世界に向けて発信する必要があると思います。その ためには、次世代の基盤技術となり得る『持込装置 利用』課題の採択率を上げる方向に舵を取るべきだ と思っています。ところが、現状では『持込装置利 用』できるビームラインは限られています。特に BL47XU においては、恒常的に「持込装置利用課題 に配分するビームタイムの上限を 20 %」に抵触す る課題が出続けることが予想されるため、 PRC で の審議は続くことになるでしょう。 一方、 BL37XU については、他の分科会からの意 見もあったように、多数の分科会が利用する激戦区 となっているため、ビームラインの利用方法や課題 の審査方法に改革が必要だと思います。具体例を挙 げれば、特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) ソフト界面科学研究会で立ち上げた「溶液界面 X 線 反射率計」は BL37XU の『持込装置』に分類され るのですが、物質開発に携わる利用者が多いため、 先端技術よりも汎用性が望まれています。しかし現 状では先端技術開発に属さない『持込装置』の立場 は最悪で、 2023B から 2025A 期における当該装置利 用課題の採択率はわずか 18 %と苦しみました。そ の結果、継続して申請していた利用者もついには諦 めてしまったようですので、今後は不採択の多い申 請者への救済措置についてもご検討いただきたいと 思います。 なお、 OTH 以外の申請課題にも『持込装置』は 存在します。それらは自己申告制になっており、申 請時に「希望ビームライン・装置」の中の選択肢 「その他」を選択すると『持込装置』と認定されま す。申請書の中には同じ装置を使っているのに異な る選択をしているケースがありました。施設として 『持込装置』に制限をかけるならば、 『持込装置』の 定義を明確にする必要があるということを今後の課 題として付け加えさせていただきます。 以上のように OTH 分科会にとってはたくさんの 問題があり、 PRC 委員会にはいつも臨戦態勢で臨 んでおりました。 PRC 委員会では、提議した問題 を真摯に受け止め、改善してくださったことに深く 感謝します。今後も公平性の高い審査が継続的に行 われることを期待します。最後になりますが、素人 同然の主査を支えてくださった委員の皆様と JASRI のスタッフの皆様に感謝します。 (その他 (持込装置利用) 分科会主査 矢野 陽子) 48 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 14.産業利用分科会 14 - 1 .分科会の概要と本報告 本記事の対象となる分科会の概要は以下の通りです。 期間: 2023A 第 II 期より 2025A 第 II 期までの 2 年間 メンバー (敬称略) :妹尾与志木、木村正雄、宮﨑司、 岡島敏浩、堂前和彦の 5 名 募集:全期間を通じ年 6 回募集 この分科会メンバーはひとつ前の期の 2021A 第 II 期よりの 2 年間と同一でした。またこの前期および 今期を通して見えてくる傾向もありましたので、本 報告にはそれらを併せて記述させていただきます。 14 - 2 .分科会の基本姿勢 本分科会では産業応用の形が十分見通せる課題を 取り扱っています。課題提案に対して以下のような 独自の要件を設けています。 1 ) 提案者に産業界の人物を含めること 2 ) 産業界と学術界との共同提案の場合、それぞれ の役割分担を明記すること 産業界の視点からその課題の発展性なども記述し てもらうようにしており、学術的価値では説明の困 難な課題も審査対象としています。また、 2022A 期 ま で、 BL14B2 、 BL19B2 、 BL46XU の 3 本 の ビ ー ムラインを本分科会専用のビームラインとしており、 本分科会とこの 3 本のビームラインだけが年 6 回募 集だったものが、 B 期より年 6 回募集の分科会が 7 分科会に拡大するとともに対応するビームラインも 9 本に増加しました。これを機に 3 本のビームライ ンを本分科会専用とする制限も廃止しました。 14 - 3 .課題申請の傾向 前期( 2021A 第 II 期~)の本報告に書かせていた だいたとおり、年 6 回募集の枠の拡大とともに、 a ) 希望ビームラインの種類が大きく広がった b ) 申請課題数が減った c ) 民間企業所属の課題責任者の比率が増加した の傾向が顕著に出てきました。この傾向は今期も同 じでした。企業の方々が主導する申請課題が多く集 まり、その技術範囲が多岐に渡っていることが示さ れたと考えられます。 「慣れ」が災いしてか、非常 に記述が不足している申請書が散見されることも同 じでした。 この中で、 a )および c )は前期の報告でも記した ように本分科会としては望ましい傾向でしたが、 b ) の点は問題です。企業利用の場合、機密に抵触して くるような本格的な利用は成果専有利用で行われる と考えられます。共用 BL の成果専有利用に関わる 収入(含測定代行)のデータによれば、 2022 年度 頃から顕著な増加傾向が見られ、 2021 年度を基準 にした場合、 2022 年度、 2023 年度は 20 ~ 30 %の増 加です。この増加のすべてが本分科会に関わるもの ではないでしょうが、成果非専有利用での予備検討 から成果専有利用の本格検討への移行の状況の一端 が現れていると考えています。見方を変えれば b ) の傾向は予備検討の課題が年々枯渇していっている ことを示していることになります。実際に審査をし ていても、産業利用分科会に申請して来られるメン バーが非常に固定化しているのを感じます。 SPring-8 の産業利用を推し進める立場からは、新 たに SPring-8 利用に加わる産業分野や企業の発掘を お願いしたいと考えます。難易度の高い業務になる とは思いますが、ご関係の方々の奮起を期待します。 (産業利用分科会主査 妹尾 与志木) 15.人文・社会科学分科会 15 - 1 .概 要 人文・社会科学分科会は、他の分科会への応募課 題とは若干性質が異なると考えられる。文化財、あ るいは考古学に関連するものは成果として完了する までに、長い時間が必要とするものが多い。また、 課題自体が非常にマイナーな問題に見えてしまうこ ともある。このことから、当分科会の方針は、提出 された課題をしっかり検討し継続的な放射光利用を 支援していくこととしたい。 課題申請は、 2023A から 2024B では 2 ~ 4 件であっ たが、 2025A 期は科研費研究の最終年度であったり、 2024B 期の実験が未実施であったことからタイミン グ悪く申請が出来なかったユーザーがいたようであ る。なお、 2025A 期は 1 件のみであった。 15-2.研究動向 手法としては、イメージングと蛍光 X 線分析が SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 49 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 メインである。これまでは布、炭化米などの軽元素 系の課題が多かったが、最近は金属製品(青銅、鉄 など)と陶器の分析が多い。 1 つの課題では、高エ ネルギーX線を利用したラミノグラフィーを利用す るものであり、最新の技術を積極的に利用しており 期待が持てる。また、放射光 X 線 CT であれば、鉄 と鉄錆の区別もつくので、そのような事例を提示し、 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) 研究会な どに示すことで、今までの知見で「測れない」と思 い込んでいる試料への利用を想起させられるのでは ないかと期待している。 2023B 期の課題の中に、初めて X 線回折を利用す るものが出てきた。 X 線回折は蛍光 X 線分析と同様 に、文化財試料の物質同定や産地同定を行うために 利用することができる。特に結晶鉱物相の特定が得 意であるため、蛍光 X 線分析との相補的な利用も 可能となる。今後の同様な技術を利用した展開が期 待できる。また、 2025A 期は青銅器に関する課題が 提案され、 SPring-8 の計測技術の進歩によりこれま で見えなかった構造が見えるようになり、そこから 当時の製造技術を推測するような研究となっている。 これは青銅器以外の物にも応用可能で、最新の技術 が昔の技術や文化を明らかにして行くことに期待が 持てる。 15-3.今後に向けて ユーザー数、課題数を増やすという事では、いわ ゆる歴史的遺物の分析、という名目だけでは限界 があるかもしれない。異分野への拡大という意味 で、 Education / Culture という方向に目を向けるの はどうだろうか。たとえば、目に見えないサイズ の小さな生物を放射光 X 線 CT でスキャンし、それ を 3D プリンタで大きく印刷、目で見て「触れる教 材」を作成する。文化財でも同じようなことをすれ ば「触れる文化財博物館」に繋がる可能性がある。 近年、誰でも楽しめる博物館を目指す活動が活発に なり、視覚障害者にも楽しんでもらえる展示「触れ られる展示」の必要性が認識されつつあり、これら の活動に寄与することができる。また、サポートの 面も重要となる。上記のようなユーザーは、必ずし も理系教育を受けている訳ではなく、データ処理に つまずくかもしれない。個々のユーザーでは限界が あり、スタートにおいては、ある程度の規模の共同 研究体制を作ることが有効と思われる。そのために、 コーディネーターあるいは協力的な研究者の確保を 期待する。 「触れる教材」 「触れる文化財博物館」を挙げてき たが、具体的な取り組みとして、分科会メンバー が中心となり「触れる教材」 「触れる文化財博物 館」の検証と試験を行った。たとえば、 50 μ m 程度 の珪藻を 100 mm 以上のサイズに 3D プリントすると、 顕微鏡下や画面では気づかなかったことが発見でき た。つまり「手に取る」という事の重要性を認識す ることができた。これは視覚障害者向けだけの技術 ではなく、一般的な研究や初等・中等教育にも有効 であると思われる。 引き続き検討と試験を進めていきたいと考える。 (人文・社会科学分科会主査 奥山 誠義) 田代 孝二 TASHIRO Kohji 豊田工業大学 あいちシンクロトロン光センター 〒 489 - 0965 愛知県瀬戸市南山口町 250 番 3 TEL : 0561 - 76 - 8331 e-mail : ktashiro@aichisr.jp 下村 晋 SHIMOMURA Susumu 京都産業大学 理学部 〒 603 - 8555 京都市北区上賀茂本山 TEL : 075 - 705 - 1868 e-mail : susumu@cc.kyoto-su.ac.jp 青柳 忍 AOYAGI Shinobu 名古屋市立大学 大学院理学研究科 〒 467 - 8501 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町山の畑 1 TEL : 052 - 872 - 5061 e-mail : aoyagi@nsc.nagoya-cu.ac.jp 脇原 徹 WAKIHARA Toru 東京大学 大学院工学系研究科 〒 113 - 8656 東京都文京区本郷 7 - 3 - 1 TEL : 03 - 5841 - 3821 e-mail : wakihara@chemsys.t.u-tokyo.ac.jp 50 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 清水 克哉 SHIMIZU Katsuya 大阪大学 基礎工学研究科 〒 560 - 8531 豊中市待兼山町 1 - 3 TEL : 06 - 6850 - 6675 e-mail : shimizu.katsuya.es@osaka-u.ac.jp 鈴木 基寛 SUZUKI Motohiro 関西学院大学 工学部 〒 669 - 1330 兵庫県三田市学園上ケ原 1 番 TEL : 079 - 565 - 7638 e-mail : m-suzuki@kwansei.ac.jp 雨澤 浩史 AMEZAWA Koji 東北大学 多元物質科学研究所 〒 980 - 8577 宮城県仙台市青葉区片平 2 - 1 - 1 TEL : 022 - 217 - 5340 e-mail : koji.amezawa.b 3 @tohoku.ac.jp 組頭 広志 KUMIGASHIRA Hiroshi 東北大学 多元物質科学研究所 〒 980 - 8577 宮城県仙台市青葉区片平 2 - 1 - 1 TEL : 022 - 217 - 5802 e-mail : kumigashira@tohoku.ac.jp 佐々木 孝彦 SASAKI Takahiko 東北大学 金属材料研究所 〒 980 - 8577 宮城県仙台市青葉区片平 2 - 1 - 1 TEL : 022 - 215 - 2025 e-mail : takahiko.sasaki.d 3 @tohoku.ac.jp 世良 俊博 SERA Toshihiro 東京理科大学 先進工学部 〒 125 - 8585 東京都葛飾区新宿 6 - 3 - 1 TEL : 03 - 5876 - 1769 e-mail : toshihiro.sera@rs.tus.ac.jp 細川 伸也 HOSOKAWA Shinya 島根大学 材料エネルギー学部 〒 690 - 8504 島根県松江市西川津町 1060 TEL : 0852 - 32 - 6666 e-mail : s_hosokawa@mat.shimane-u.ac.jp 今田 勝巳 IMADA Katsumi 大阪大学 大学院理学研究科 〒 560 - 0043 大阪府豊中市待兼山町 1 - 1 TEL : 06 - 6850 - 5455 e-mail : kimada@chem.sci.osaka-u.ac.jp 矢野 陽子 YANO Yohko F. 近畿大学 理工学部 〒 577 - 8502 東大阪市小若江 3 - 4 - 1 TEL : 06 - 4307 - 3414 e-mail : yano@phys.kindai.ac.jp 妹尾 与志木 SENO Yoshiki (公財)佐賀県産業振興機構 九州シンクロトロン光研究センター 〒 841 - 0005 佐賀県鳥栖市弥生が丘 8 丁目 7 番地 TEL : 0942 - 83 - 5017 e-mail : seno@saga-ls.jp 奥山 誠義 OKUYAMA Masayoshi 奈良県立橿原考古学研究所 保存科学センター 〒 634 - 00658 奈良県橿原市畝傍町 1 番地 TEL : 0744 - 24 - 1101 e-mail : m-okuyama 05 @kashikoken.jp SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 51 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信