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SpRUCシンポジウム2025報告
SpRUC Symposium 2025 Report

執筆者情報

執筆者 Author

永村 直佳 NAGAMURA Naoka[1]、水牧 仁一朗 MIZUMAKI Masaichiro[2]、田中 義人 TANAKA Yoshihito[3]、登野 健介 TONO Kensuke[4]、安居院 あかね AGUI Akane[5]、久保田 佳基 KUBOTA Yoshiki[6]、杉本 邦久 SUGIMOTO Kunihisa[7]

所属機関 Affiliation

特定放射光施設ユーザー協同体(SpRUC)/ [1](国研)物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター Center for Basic Research on Materials, National Institute for Materials Science、[2]熊本大学 理学部 理学科 物理学コース Department of Physics, Kumamoto University、[3]兵庫県立大学 大学院理学研究科 Department of Material Science, School of Science, University of Hyogo、[4](公財)高輝度光科学研究センター 分光・イメージング推進室 Spectroscopy and Imaging Division, Japan Synchrotron Radiation Research Institute、[5](国研)量子科学技術研究開発機構 NanoTerasuセンター NanoTerasu Center, National Institutes for Quantum Science and Technology、[6]大阪公立大学 理学研究科 物理学専攻 Department of Physics, Graduate School of Science, Osaka Metropolitan University、[7]近畿大学 理工学部 理学科化学コース Faculty of Science and Engineering, Kindai University

本文

特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) 国立研究開発法人物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター 永 村 直 佳 熊本大学 理学部 理学科 物理学コース 水 牧 仁一朗 兵庫県立大学大学院 理学研究科 田 中 義 人 公益財団法人高輝度光科学研究センター 分光・イメージング推進室 登 野 健 介 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 NanoTerasu センター 安居院 あかね 大阪公立大学 理学研究科 物理学専攻 久 保 田 佳 基 近畿大学 理工学部 理学科 化学コース 杉 本 邦 久 SpRUC シンポジウム 2025 報告 1.はじめに 去る 9 月 4 日 (木) 、 5 日 (金)に、特定放射光施 設( SpRUC )シンポジウム 2025 が、特定放射光施 設ユーザー協同体(以下、 SpRUC ) 、理化学研究所 (以下、理研)放射光科学研究センター、量子科学 技術研究開発機構(以下、 QST ) 、高輝度光科学研 究センター(以下、 JASRI ) 、東北大学、の主催に より開催されました。 2025 年度より SPring-8 ユー ザー協同体 ( SPRUC )と NanoTerasu ユーザー共同 体( NTUC )が統合し、新体制 SpRUC が発足して 初めてのシンポジウムでした。 近年の放射光施設は、産業界が抱える課題解決に 繋がる成果も増加し、社会貢献においても重要な役 割を担っています。 SPring-8 は供用開始から四半世 紀以上、 SACLA は 13 年、 NanoTerasu は 1 年が経過 しました。社会課題解決における放射光の果たすべ き役割は益々大きくなっていくと考えられます。そ こで、 SPring-8 シンポジウムを引き継いで第 14 回 目となる今回のシンポジウムでは、 「特定放射光施 設の協奏的発展」をテーマとしました。最先端の測 定から通常の測定まで、放射光測定の全てを社会課 題解決にどのように活かしていくのか、また将来に 渡って出てくる課題に対して新しい測定技術をどの ように生み出していくのか、について議論を行うこ とで、次世代の放射光科学の将来ビジョンや新しい サイエンスのあり方を描くことを目的としました。 基本的には対面形式により東北大学青葉山コモン ズで 2 日間開催し、雨が残暑を和らげる中、会場で は至る所で白熱した議論が交わされていました。現 地に参加されない会員には、講演をオンラインで配 信しました。本シンポジウムには、 428 名(うち現 地参加 232 名)が参加しました。開催方式の検討と 当日の運営については、東北大学の西堀麻衣子氏と SpRUC 利用幹事である熊本大学の水牧仁一朗氏に ご尽力いただきました。 また、今回はシンポジウムに先立ち、初日の午前 中に NanoTerasu 見学会( 写真 1 )が開催されました。 最初に実験ホールを見渡せる見学ホールで施設概要 について説明があった後、実際に実験ホールに移動 して、エンドステーションの装置を目の前にしなが ら、共用ビームラインを中心に各ビームライン担当 者からビームラインの特徴や設置されている装置に ついての解説がありました。実験ホールが放射光管 理区域外である NanoTerasu ならではの臨場感溢れ 写真 1 NanoTerasu 見学会 240 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.3 DECEMBER 2025 WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT る体験が提供され、参加者も興味津々で実験装置に 見入っていました。 NanoTerasu 見学会の企画につ いては、 QST 広報グループリーダーの加道雅孝氏 にご尽力いただきました。 2.セッション I オープニング オ ー プ ニ ン グ セ ッ シ ョ ン で は、 藤 原 明 比 古 SpRUC 会長( 写真 2 )より開会の挨拶がありました。 続いて、ホスト機関として東北大学の湯上浩雄理 事 ・ 副学長( 写真 3 )からの挨拶がありました。次に QST の武田憲昌理事( 写真 4 ) 、 JASRI の中川敦史 理事長( 写真 5 )より挨拶があり、最後に文部科学 省科学技術・学術政策局の馬場大輔参事官( 写真 6) から来賓挨拶をいただきました。 それぞれの方々の挨拶の中で、特に今回は新生 SpRUC になってから初めての記念すべきシンポジ ウムであること、そして、それが NanoTerasu のあ る東北大学で行われることが強調されており、今回 のシンポジウムの重要性を実感しました。特定放射 光施設では、昨年 4 月に NanoTerasu が運用開始と なり、 SPring-8 も昨年度に SPring-8-II へのアップグ レードが決定し、今後、 SACLA を含めた 3 施設で の協奏的利用への期待の高さが示され、 SpRUC の 果たすべき役割について強く認識させられました。 3.セッション II-1 施設報告(SPring-8・SACLA) オープニングに続き、 SPring-8 と SACLA の施設 報告として、理研 放射光科学研究センター 物理・ 化学系ビームライン基盤グループ 矢橋牧名グルー プディレクター( 写真 7 )と JASRI XFEL 利用研究 推進室 先端光源利用研究グループ 籔内俊毅グルー プリーダー( 写真 8 )による講演が行われました。 矢橋氏からは「 SPring-8-II 整備の進捗と展望」と 題して報告が行われました。 SPring-8-II の整備は順 調に進んでおり、 2027 年 7 月末を目処に運転を停 止し、加速器の入替えとコミッショニングを経て 2029 年度上半期中に利用運転が開始される予定で す。運転停止による利用者への影響を軽減するた め、他の放射光施設との連携や SACLA の利用機会 の拡大が検討されています。既存の実験装置の再 編に関しては、軟 X 線 BL の統合、赤外 BL の停止、 BL02B1 (単結晶構造解析, SPring-8 ) と BL04B1 (高 温高圧, SPring-8 )の装置移設などが計画されてい ます。また、ニーズの多い XAFS や XRD について は、自動測定の強化や理研 BL の共用枠の活用など、 利用機会の拡大が進められる予定です。新設 BL の 計画としては、 SPring-8-II で設置されるダンピング ウィグラーを広帯域の高エネルギー X 線源として利 写真 2 SpRUC 藤原明比古会長 (関西学院大) 写真 4 QST 武田憲昌理事 写真 6 文部科学省 科学技術・学術政策局 馬場大輔参事官 写真 8 JASRI 籔内俊毅 グループリーダー 写真 7 理研 矢橋牧名 グループディレクター 写真 5 JASRI 中川敦史理事長 写真 3 東北大学 湯上浩雄理事・副学長 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.3 (2025 年12 月号) 241 用する BL が検討されています。 BL の大規模改修 に関しては、 BL41XU ( SPring-8 )の生体高分子時 分割構造解析の整備計画や、 BL37XU ( SPring-8 ) での Quick XAFS と AKB 結像型 XAFS イメージン グの導入計画が進められています。さらに将来のコ ヒーレントイメージングの本格化に向けた取組みと して、 SACLA でのインラインホログラフィーの開 発などが行われています。また、 BL08W ( SPring-8 ) の高エネルギーアンジュレータービームラインへの 改修、 BL19B2 ( SPring-8 ) の階層的 X 線 CT ステーショ ンの整備についても検討が進んでいるとの報告があ り、講演の終盤では、シャットダウン後の BL 立上 げに関する方針も示されました。 次の講演では、 籔内氏より 「 SACLA の現状と展望」 と題して報告が行われました。初めに、 SPring-8-II への改修工事の間も SACLA は運転を継続すること が示され、 SPring-8 停止期間中の SACLA の利用に ついての呼びかけがありました。続いて、 SPring- 8-II と SACLA の相補的な利用を考えるうえで必要 な情報として、それぞれの光源の特徴と主な利用形 態が紹介されました。 SPring-8-II では安定性と高い 平均輝度を活かした精密測定や高エネルギー X 線の 利用が想定されるのに対し、 SACLA ではピーク輝 度の高いフェムト秒 X 線パルスによる超高速計測、 破壊型のシングルショット計測、高強度 X 線光学実 験などが行われているとの報告がありました。次に、 SACLA の現状として BL とエンドステーションの 構成、研究課題の実施状況、最近の利用事例が示さ れました。 SPring-8 とも連携したシリアルフェムト 秒結晶構造解析の高度化、強磁場や超高圧などの極 限環境下での構造解析といった研究開発に加えて、 産業界や産学連携による利用も進められています。 4.セッション II-2 施設報告(NanoTerasu) 本セッションでは NanoTerasu の施設報告として、 QST NanoTerasu センター 高輝度放射光研究開発 部 西森信行 加速器グループリーダー( 写真 9 )か ら「 NanoTerasu 光源の運転状況と展望」 、続いて同 堀場弘司 ビームライングループリーダー( 写真 10 ) から「 NanoTerasu 共用ビームラインの現状と展望」 のタイトルでご講演いただきました。 「 NanoTerasu 光源の運転状況と展望」では、国内 初の MBA ( Multi Bend Achromat )ラティスを備え た周長 349 m のコンパクト高安定光源として設計・ 整備された NanoTerasu が、予定通り 2024 年 4 月 9 日から運用を開始され、運用開始当初の蓄積電流は 予定を上回る 160 mA であったことが紹介されまし た。その後、 2024 年 7 月 26 日からは蓄積電流を 200 mA に引き上げ、高輝度光源とし運転継続しかつ、 高安定化に努めたことが紹介されました。定格電 流 400 mA に対し、電子ビームが蓄積リング加速空 胴内に誘起した加速モードと異なる周波数を持つ有 害な電磁波などの問題から、 2025A 期は蓄積電流値 が 200 mA で運転していましたが、 7 月には縦 BBF ( Bunch-by-bunch-feedback )空洞の試験を行い、そ の結果から 2026 年度に予定している蓄積電流 400 mA 運転に目途がたったことが報告されました。 また、 2024 年度の予定ユーザー運転を 3568.5 時 間に対し、光源稼働率 99.6% 、平均故障間隔 323 時 間で実施し、平均故障間隔は 13.4 日で、ユーザー は約 2 週間、光源による中断なく実験継続でき、高 効率な実験を行うことができたことが報告されまし た。 2025 年度も 2025 年 8 月 1 日時点でユーザー運 転 1896 時間を光源稼働率 99.5% 、平均故障間隔 270 時間であり、 2024 年度と同様の安定性を示してい ることが報告されました。 さらに、リモート実験環境や情報セキュリティ強 化、高速通信回線整備も進めていることも紹介され ました。 「 NanoTerasu 共用ビームラインの現状と展望」で は、量子科学技術研究開発機構が、 NanoTerasu の 高輝度光源性能を十全に活かし世界最先端の軟 X 線 写真 10 QST 堀場弘司 グループリーダー 写真 9 QST 西森信行 グループリーダー 242 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.3 DECEMBER 2025 WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT 分光計測環境をユーザーに提供し、学術利用の研究 基盤を担うことを使命として、整備を進めてきた、 第一期の共用ビームライン 3 本について紹介されま した。 BL02U ( NanoTerasu )は軟 X 線超高分解能共鳴 非弾性散乱( RIXS )ビームラインで、特に RIXS 実 験における極限エネルギー分解能の追求を目指して おり、 2D-RIXS という方式を超高分解能化のため に採用した世界初のビームラインで、 Cu L -edge で 16.1 meV ( E/ Δ E ≈ 58,000 )の世界最高分解能を達 成し、現時点においても世界最高レベルの超高分解 能 RIXS 実験がユーザーに利用可能な状態になって いることが紹介されました。 BL06U ( NanoTerasu ) は軟 X 線ナノ光電子分光ビー ムラインで、角度分解光電子分光( ARPES )実験 を高精度で行うための高エネルギー分解能と高フ ラックスを維持した上で、ナノ集光を目指した A ブ ランチと、より汎用的なマイクロ集光の ARPES 実 験を行う B ブランチを排他的に利用する設計である ことが紹介されました。ビームラインのエネルギー 分解能は He イオン化スペクトル(~ 65 eV )で 1.1 meV と、低エネルギー領域におけるエネルギー分 解能は E/ Δ E ~ 60,000 を達成していることが報告 されました。すでに B ブランチでは 10 μ m 以下の スポットサイズでの ARPES 実験が可能であること が紹介されました。 BL13U ( NanoTerasu )は軟 X 線ナノ吸収分光ビー ムラインは、分割型 APPLE-II アンジュレーターに よる偏光制御と広エネルギー帯域の円偏光利用を 特長としたビームラインであり、現在 180 eV から 3,000 eV までの全エネルギー範囲で軟 X 線吸収分光 実験が可能であることが紹介されました。また直線 偏光の 3 次光成分を利用した干渉制御により 3,000 eV 付近における円偏光生成に成功したことが報告 されました。 さらに、第二期以降のビームライン増設を計画 しており、 2 ~ 20 keV のテンダー X 線から硬 X 線 を活用する新たな回折ビームラインの建設を開始。 2027 年度の共用開始を目指しています。 NanoTerasu の運用が開始されたのちの、初めて SpRUC においての施設報告となりました。 5.セッション II-3 利用制度について 本セッションでは、 JASRI 利用推進部長の久保田 康成氏( 写真11 )から「 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用制度について」と題して講演がありました。始 めに SPring-8 の利用制度について説明がありまし た。成果公開型の大学院生提案型課題では、博士後 期課程の大学院生が実験責任者として申請し、最 長 2 年半に渡る長期利用が可能となり、その特徴と して、 JASRI スタッフが共同実験者として支援する こと、そして、事後評価において優れた成果や取り 組みに対しては SPring-8 大学院生課題優秀研究賞が 授与されることが説明されました。また、 2025A 期 から成果公開型課題の中に優先利用課題(成果準公 開)が加わり、企業のユーザーを対象として、論文 の代わりにプレスリリース記事や学協会での発表、 「 SPring-8 での産業利用成果」への掲載、特許、総 説などをもって成果公開とする制度が開始されたと 報告がありました。そして、 XAFS 、 SAXS の測定 代行課題のデータを対象として JASRI スタッフが有 償で解析を行うオフライン解析サービス、 XAFS ペ レット作製や粉末 XRD 用キャピラリ充填を行う試 料調製サービスの運用についても説明がありました。 続いて、 SACLA の利用制度について説明がありま した。 3 本の BL について年 2 回の成果公開課題や成 果占有課題が実施されていること、試験利用制度と して、 BL2 ( SACLA ) において SFX 、 BL3 ( SACLA ) においてハイパワーナノ秒レーザー実験が 1 課題 0.5 シフトで実施可能となっていることが説明されまし た。最後に NanoTerasu の利用制度について説明が ありました。 NanoTerasu は本年 3 月に供用を開始し、 3 本の共用 BL において成果公開一般課題のみ募集 していますが、 2026A 期からはコアリション BL 一 写真 11 JASRI 久保田康成 利用推進部長 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.3 (2025 年12 月号) 243 部のビームタイムの共用供出が準備中であり、こち らは一般課題に加えて、高度化研究開発課題という ユーザーが装置を設置・持ち込んで進める形の利用 が可能となる予定であると説明がありました。 6.セッション III 特定放射光施設の協奏的発展 本セッションは「特定放射光施設協奏的発展」を テーマとして理研 放射光科学研究センター長 石川 哲也氏 ( 写真12 ) と QST NanoTerasu センター長 高橋 正光氏( 写真 13 )の 2 講演と、東京大学 教授 有馬 孝尚氏( 写真 14 ) 、理研 グループディレクター 清水 伸隆氏( 写真 15 )を加えた 4 名の先生をパネリスト としたパネルディスカッションを行いました。 まず、石川センター長から「協奏・競争・協創・ 強壮・狂想」と題して講演がありました。これま での 20 年間主に放射光科学を支えてきた SPring-8 と、共用を開始した NanoTerasu とが置かれている 現状を踏まえて、今後どのように協奏、競争的発展 をしていくべきかについて、タイトルにある様々な 「キョウソウ」に対する例を挙げながら将来の方向 性を示されました。また、新しい利用形態について SPring-8 が試行的に行なっている例を示しながら、 放射光科学が社会から求められている役割を果たす 方法を明瞭に示され、 進むべき方向を示唆されました。 次 に 高 橋 セ ン タ ー 長 か ら、 「 特 定 放 射 光 施 設 NanoTerasu の役割と展望」と題して講演がありま した。まず NanoTerasu の現状を紹介され、共用に 供与されているビームラインが 3 本であること、さ らに現在 1 本が建設中であることが報告されました。 さらなる今後の BL 増設の進め方についても詳細に 紹介されました。また、 NanoTerasu の役割につい ても言及され、軟 X 線からテンダー X 線領域での分 光・偏光の制御技術の開発やその利用に関する展望 を述べられ、このエネルギー領域での未開拓領域を 発展させ、硬 X 線に強みのある SPring-8 と相補的・ 協創的な放射光利用基盤を提供するとの抱負を述べ られました。 その後、これら 2 つの講演を受けて、放射光科学 の「協奏的発展」についてパネルディスカッション を行いました。まずは利用形態についての詳細を石 川センター長に発言いただき、従来になかった新し い業界のユーザーや潜在ユーザーの開拓について説 明いただきました。また高橋センター長にはテン ダー X 線領域での分光・偏光の制御技術の具体的な 問題点や展望をお話しいただきました。それを受け て有馬氏には、ユーザー側からの観点で、偏光利 用や共鳴非弾性散乱( RIXS )の高分解能を生かし た提案をいただきました。また、清水氏にはこれ まで構造生物分野が取り組んでこられた SPring-8 と Photon Factory の相補的利用やクライオ電子顕微鏡 との協奏的利用について紹介いただき、 SPring-8 と 写真 12 理研 石川哲也センター長 写真 13 QST 高橋正光センター長 写真 14 東京大学 有馬孝尚教授 写真 15 理研 清水伸隆 グループディレクター 写真 16 懇親会 244 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.3 DECEMBER 2025 WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT NanoTerasu 「協奏的」利用についての指針をお示 しいただきました。さらには 2027 年に予定されて いる SPring-8-II への改修期間におこるブラックアウ ト期間についての対応要請について石川センター長、 高橋センター長に提案いただきました。 セッション III で初日のプログラムが終了し、こ の後、みどり食堂にて懇親会が開催されました( 写 真 16 ) 。懇親会にも多くの皆様にご参加いただき、 なごやかな雰囲気の中、活発な情報交換が行われて いました。 7.セッション IV 特定放射光施設の協奏的・横断 的利用による成果 2 日目最初の本セッションでは、複数の放射光施 設ビームラインを活用したり、放射光分析を軸とし て分野融合・学際的な研究展開を進めている、東北 大学 教授 原田昌彦氏( 写真 17 ) 、東北大学 准教授 山田悠介氏( 写真 18 ) 、東北大学 副理事・教授 岡部 朋永氏( 写真 19 ) 、東北大学 助教 二宮翔氏( 写真 20 ) 、 QST 放射光科学研究センター 先進分光研究 グループ グループリーダー 石井賢司氏( 写真 21 ) に講演を依頼しました。 原田氏からは、 「食・農および生命科学における NanoTerasu 活用に向けた A-Sync の取り組み」と題 して、 2021 年に設置された農学研究科附属放射光 生命農学センター A-Sync ( Center for Agricultural and Life Sciences using Synchrotron Light )で実施さ れている、放射光を活用した学術研究・教育、国 際連携、産学連携の事例についてご紹介がありま した。放射光分析の専門家が多い東北大学 国際 放 射 光 イ ノ ベ ー シ ョ ン・ ス マ ー ト 研 究 セ ン タ ー SRIS ( International Center for Synchrotron Radiation Innovation Smart ) と 緊 密 に 連 携 し、 SPring-8 で feasibility study を行いながら、温度管理が重要な生 物試料を扱う温調試料ステージの導入や、他の分析 手法でフォローできていない空間スケール( 10 nm ~ 100 nm )を埋めるための X 線 CT イメージング計 測を進めてきたことが報告されました。東北は日 本における食糧供給拠点であるため、 NanoTerasu のロケーションは食農生命科学におけるアドバン テージであり、仙台市や宮城県との共同事業を通し て、牡蠣や日本酒といった地域産物・食品のブラン ド化、全国の食農課題の解決、ひいては食料安全保 障へ貢献していることが述べられました。また、ア ウトリーチの事例として高校生の実験受け入れや科 学番組へのメディア対応、産学連携の事例として フードロス対策やバイオ技術を扱う商社とのコラボ レーション、国際連携の事例として Canadian Light Source や MAX IV との交流、国際ワークショップ の開催、放射光農学利用の世界的プラットフォーム PALSA ( Partnership of Advanced Light Sources for Agriculture )への参画などが紹介されました。 山田氏からは、 「 NanoTerasu タンパク質結晶構造 解析実験ステーションの立ち上げ」と題して、コア リションビームラインである BL09U ( NanoTerasu ) の HAXPES ハッチ上流側に新たに建設中のタンパ ク質結晶構造解析実験ステーション MX-ES につい てご紹介がありました。 SPring-8 の実験装置や制 御機構( ZOO システム)を転用していて BL45XU ( SPring-8 )クラスの全自動測定システムを備えて 写真 21 QST 石井賢司 グループリーダー 写真 17 東北大学 原田昌彦教授 写真 18 東北大学 山田悠介准教授 写真 19 東北大学 岡部朋永教授 写真 20 東北大学 二宮翔助教 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.3 (2025 年12 月号) 245 いること、安定性に優れた汎用測定用の仮想光源集 光モードと微小高輝度ビームを使える先端計測用の 挿入光源モードを切り替えて利用できること、東北 大学サイバーサイエンスセンターをデータ処理に活 用すること、などの説明がありました。 2023 年に 建設プロジェクトが始まり、 2025 年内の運用開始 を目指して、各モードでの光源性能評価やメールイ ン自動測定に向けた要素技術開発が順調に進んで おり、さらにビームの安定化や液体窒素の自動供 給、ソフト面の強化などを実施していく旨が示され ました。また、 MX-ES の利用方法についても詳し く説明がありました。 MX-ES の利用開始に先立って、 測定支援とユーザー参入促進をミッションとする 東北大学先端生体高分子構造研究センター ARCBS ( Advanced Research Center for Biomacromolecular Structures )を立ち上げ、 MX-ES の利用者全員がセ ンター会員になることが必須であり、学術機関の 利用者の場合は AMED の生命科学・創薬研究支援 基盤事業 BINDS ( Basis for Supporting Innovative Drug Discovery and Life Science Research )の支援 を申請し、認められた場合は利用料金の支援が受け られることが言及されました。コアリションメン バーはもちろん、非コアリションメンバーであっ ても、東北大学との共同研究の枠組みで積極的に MX-ES の利用を斡旋していくとの方針が示されま した。フローチャートを示しながら、類型ごとの利 用料金についても説明がありました。 岡部氏からは、 「熱硬化性樹脂に関する計算 / 計測 融合研究」と題して、計算の専門家の視点から、放 射光計測と計算の融合研究の重要性について解説 がありました。岡部氏は東北大学グリーンクロス テック研究センターのセンター長を務めており、コ アリションマッチングサービスを通して、放射光 の観測結果をどう解析して製品開発に活かすかに ついて知りたいユーザーに対して、 DX シミュレー ションツール CoSMIC ( Comprehensive System for materials Integration of CFRP )や東北大スーパーコ ンピューター AOBA の利用支援、解析サーバールー ムの提供、ケーススタディー紹介といった計測・計 算融合支援を推進していることが紹介されました。 反応分子動力学( MD )シミュレーションを元に、 航空樹脂材料の物性を計算から予測するにあたり、 放射光計測による広角 X 線散乱( WAXS )の実測ス ペクトルとスペクトル計算結果が合うように構造パ ラメータを決定することで、クラック強度やそりと いった、スケールの階層が異なる物性をも精度よく 予測できる、これは MD 計算で偏微分方程式を解く ためには初期条件と境界条件が必要であり、放射光 計測は初期条件と時間変化の勾配を決定することに 他ならないからである、という計測と計算の相補性 について説明がありました。また、最近の計測・計 算融合研究の事例として、非芳香族エポキシ樹脂の 開発に関する産学連携の研究成果が紹介されました。 二宮氏からは、 「分光 BL の横断利用による構造 歪が誘起する特異な電子状態の発見」と題して、放 射光材料科学における多角的評価解析のケースス タディー紹介がありました。触媒機能を持つ CeO 2 ナノ粒子は、超臨界水熱合成によって数 nm のサイ ズまで作り分けることが可能であり、触媒性能の 鍵となる CeO 2 ナノ粒子における電子状態のサイズ 効果を解明するために、 SPring-8 の様々なビーム ラインを横断利用し、元素選択的・軌道選択的な 情報が得られる X 線吸収分光( XAS ) 、 X 線光電子 分光( XPS ) 、 X 線発光分光( XES )を、各手法の 違いを把握しながら駆使した解析事例について詳 しく説明がありました。 Ce L 3 -edge, と Ce M 4,5 -edge の XAS 、高エネルギー分解能蛍光検出 X 線吸収微 細 構 造( HERFD-XAFS ) 法 に よ る Ce の 価 数 評 価、 XPS による深さ分解分析、 Ce 3 d 4 f 共鳴非弾性 X 線 散 乱( RIXS ) 、 O K -edge の XAS や RIXS の 結 果 を 比較検討し、触媒反応において、酸素欠損がなくて も価数が変化するという、定説を覆す結果が示唆さ れ、論文として成果公開されたことが解説されまし た。軟 X 線領域では、 NanoTerasu において SPring-8 よりも高いエネルギー分解能で計測できるため、現 在は NanoTerasu を活用してナノ粒子における蛍光 や強磁性などの新しい機能発現の原理解明に取り組 んでいることが紹介されました。 石井氏からは、 「共鳴非弾性X線散乱を利用した 銅酸化物の電子励起観測」と題して、軟 X 線 RIXS と硬 X 線 RIXS を協奏的に利用した強相関銅酸化物 の計測事例についてご紹介がありました。 RIXS で 246 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.3 DECEMBER 2025 WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT は電子の三自由度(電荷・スピン・軌道)と格子振 動励起を観測することができ、励起を測ることは相 互作用を知ることである、今後はより低いエネル ギーの励起過程において、高いエネルギー分解での 超伝導のエネルギーギャップや擬ギャップ、異常金 属などの観測が進んでいく、という説明がなされま した。計測事例では、前半は、超伝導転移温度が 異なる系の RIXS スペクトルの違い、後半は 1 次元 スピン系と 2 次元スピン系の RIXS スペクトルの違 いについてご紹介がありました。硬 X 線 RIXS で観 測できる Cu K -edge はスピン反転が禁制である一方、 軟 X 線 RIXS で観測できる Cu L 3 -edge はスピン反転 するマグノンが検出でき、硬 X 線 RIXS は BL11XU ( SPring-8 ) 、 軟 X 線 RIXS は BL07LSU ( SPring-8 ) の発光分光装置(現在は NanoTerasu BL07U へ移設 済み)や、世界最高エネルギー分解能を誇る RIXS 専用の共用ビームライン BL02U ( NanoTerasu )で 計測できる旨の解説があり、軟 X 線と硬 X 線の相互 利用のために理解しておくべき相違について言及さ れました。 8.セッション V 人工知能・深層学習を利用した 放射光データ解析 本セッションでは「人工知能・深層学習を利用し た放射光データ解析」をテーマに 3 人の先生方にご 講演をいただきました。 最初に理研 専任技師 平田邦生氏( 写真 22 )から 「タンパク質結晶を多数利用した高分解能構造解析」 と題して講演がありました。タンパク質の立体構造 を高精度に決定する主要な測定手法である X 線結晶 構造解析の最近の発展をハードウェアとソフトウェ アの両面から紹介いただきました。ハードウェア面 ではロボットを用いた自動測定について、またソフ トウェアの面からは、自動測定の制御から解析手法 の発展まで BL32XU ( SPring-8 )を例にご紹介いた だきました。特に解析手法の発展はめざましく、教 師なし学習に分類される階層的クラスタリングを用 い、結晶間の強度相関に基づいてグループ分けを行 い、同型性の高いデータの抽出と統合対象の選別が 効率化され、構造解析の精度向上に機械学習の手法 が重要な役割を果たすことを示していただきました。 次に、東京農工大 准教授 山田宏樹氏( 写真 23 ) から「回折イメージングのための深層学習を援用し た反復的位相回復」と題して講演をしていただきま した。材料科学や生命科学において重要な役割を持 つ X 線タイコグラフィーのデータを対象に回折像 からの実像再構成を行う手法に深層学習を適用する 新しい解析法についてご紹介いただきました。この 測定においては対象試料の X 線照射ダメージが問 題となることがあり、統計精度が悪いデータで実像 を再構成する必要があります。この状況を克服する ためにモデルベース型アルゴリズムの物理的整合性 と、深層学習の表現能力を融合させる新たな枠組み である PINE ( Ptychographic Iterative algorithm with Neural denoising Engine )に関してご説明いただき ました。低照射および低重複条件において、従来法 では破綻するような条件でも、 PINE は良好な再構 成性能を維持し、 X 線タイコグラフィーのさらなる 可能性を示していただきました。 最後に、 JASRI 研究員 横山優一氏( 写真 24 )に 写真 24 JASRI 横山優一研究員 写真 22 理研 平田邦生専任技師 写真 23 東京農工大学 山田宏樹准教授 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.3 (2025 年12 月号) 247 「 Deep prior によるノイズ・アーティファクト除去 ~ SPring-8 BL25SU の SX-ARPES へ の 適 用 ~」 と 題 し て 講 演 い た だ き ま し た。 SX-ARPES ( Soft X-ray Angle Resolved Photo Emission Spectroscopy ) のデータは物質の電子状態・バンド構造を決定する 主要な手法であるが、現在測定系に由来するアー ティファクトとノイズが重畳したものとなっていま す。これまで様々な方法でシグナルの抽出が試みら れているが、横山氏はこれらの方法を超えた性能を もつ除去方法 Deep prior を開発され、その方法につ いてご紹介いただきました。 Deep prior は畳み込み ニューラルネットワークに組み込まれた各種バイア スを事前知識として計測データを学習するという独 創的なアプローチによって、計測データ単体からノ イズとシグナルを分離するというものであり、これ を BL25SU ( SPring-8 ) の実測データに適用し、アー ティファクトとノイズの抽出のみならず、計測の効 率化を可能にすることを紹介されました。 9.セッション VI ポスターセッション ポスターセッションは、青葉山コモンズ内の講義 室および翠生ホール前において行われました( 写 真 25 ) 。今年度の発表件数は、 SpRUC 研究会 37 件、 SPring-8/SACLA (理研) 18 件、 SPring-8/SACLA ( JASRI ) 21 件、 SPring-8/SACLA ( 専 用 ビ ー ム ラ イ ン ) 7 件、 NanoTerasu ( QST ) 6 件、 NanoTerasu ( Phosic ) 10 件、でした。セッションの最初から最 後まで会場は盛況であり、非常に活発な議論が行わ れていました。 10.セッション VII SpRUC 総会・第 14 回 Young Scientist Award 授賞式・受賞講演 SpRUC 総会では、冒頭に藤原会長による挨拶が あり、続いて、組織体制、行事、予算、研究会にお ける活動状況についての報告がなされました。最後 に、今後の SpRUC の活動予定が示されました。 引き続き、第 14 回 SpRUC2025 Young Scientist Award 授賞式が執り行われました( 写真 26 ) 。冒 頭、西堀英治選考委員長より、今年度は 8 名の応募 があり、その中から 2 名を受賞者とした旨と、それ ぞれの受賞理由が紹介されました。授賞式に続き受 賞講演が行われ、大阪大学 助教 山田純平氏( 写真 27 )は現地にて、京都大学 助教 平出翔太郎氏( 写 真 28 )は自身が主催するシンポジウムと時間が重 なったため、ビデオ上映にて講演が実施されました。 山田純平氏は「硬 X 線結像ミラーによる XFEL の 極限的集光」と題し、楕円凹面ミラーと双曲凸面 ミラーを組み合わせた Wolter III 型光学系に基づく Advanced KB ( Kirkpatrick-Baez ) 配置を独自に提案 ・ 開発し、 SACLA において 7 nm の極小集光径および 1.45 × 10 22 W/cm 2 という極限的ピーク強度を実現し た成果について講演しました。 平出翔太郎氏は「時分割 in situ X 線回折測定を用 いたゲート型吸着剤の構造転移速度解析」と題し、 構造柔軟性を有する金属有機構造体( MOF )のゲー 写真 26 Young Scientist Award 授賞式 写真 25 ポスターセッション 写真 28 京都大学 平出翔太郎助教 写真 27 大阪大学 山田純平助教 248 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.3 DECEMBER 2025 WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT ト型吸着剤における骨格構造転移速度の関数形から 動的描像を導出した研究について発表しました。さ らに、高輝度放射光 X 線を活かした時間分解 X 線回 折法と化学工学的手法を組み合わせた新しい解析手 法の開発についても講演しました。 11.セッション VIII クロージング クロージングセッションでは、最初に JASRI の 中川敦史理事長( 写真 5 )より総括がありました。 SpRUC が発足して幅広いエネルギー領域にわたる ユーザーコミュニティーが形成されたことへの期待、 科学技術先進国にとって放射光は社会インフラであ る一方で汎用化への対応に向けた課題、 SPring-8-II に向けたブラックアウト期間の対策について述べら れました。また、日本の放射光施設が世界的な競争 に勝ち、存在感を高めていくためには、計測と計算 などの分野融合や施設の協奏的・横断的施設を進め、 ユーザーが力を持ち、施設とともに発信していくこ とが重要である、との見解を示されました。 次に、主催機関を代表して SpRUC 藤原会長( 写 真 1 )より閉会の挨拶がありました。会長自身の全 体の感想が述べられ、実行委員を始めとした関係者、 参加者へのお礼の言葉がありました。 会議のプログラムの詳細とアブストラクトは下記 Web ページにて公開されています。 http://www.spring8.or.jp/ext/ja/spruc/ sprucsymposium2025.html 永村 直佳 NAGAMURA Naoka (国)物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター 〒 305 - 0003 茨城県つくば市桜 3 - 13 TEL : 029 - 859 - 2627 e-mail : NAGAMURA.Naoka@nims.go.jp 水牧 仁一朗 MIZUMAKI Masaichiro 熊本大学 理学部理学科物理学コース 〒 860 - 8555 熊本県中央区黒髪 2 - 39 - 1 TEL : 096 - 342 - 3066 ( 709 ) e-mail : mizumaki@kumamoto-u.ac.jp 田中 義人 TANAKA Yoshihito 兵庫県立大学大学院 理学研究科 〒 678 - 1297 兵庫県赤穂郡上郡町 3 - 2 - 1 TEL : 0791 - 58 - 0139 e-mail : tanaka@sci.u-hyogo.ac.jp 登野 健介 TONO Kensuke (公財)高輝度光科学研究センター 分光・イメージング推進室 〒 679 - 5198 兵庫県佐用郡佐用町光都 1 - 1 - 1 TEL : 0791 - 58 - 0950 e-mail : tono@spring 8 .or.jp 安居院 あかね AGUI Akane (国)量子科学技術研究開発機構 NanoTerasu センター 〒 980 - 8572 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 468 - 1 TEL : 022 - 785 - 9457 e-mail : agui.akane@qst.go.jp 久保田 佳基 KUBOTA Yoshiki 大阪公立大学 理学研究科物理学専攻 〒 558 - 8585 大阪市住吉区杉本 3 - 3 - 138 TEL : 06 - 6605 - 7040 e-mail : kubotayoshiki@omu.ac.jp 杉本 邦久 SUGIMOTO Kunihisa 近畿大学 理工学部理学科化学コース 〒 577 - 8502 大阪府東大阪市小若江 3 - 4 - 1 TEL : 06 - 4307 - 5099 e-mail : sugimoto@chem.kindai.ac.jp SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.3 (2025 年12 月号) 249