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Online ISSN 2 760 - 3245 SPring-8 Document D2025-008 Vol.1 No.1 (JUNE 2025) SPring-8/SACLA/NanoTerasu INFORMATION 利用者情報 Vol. 1 No. 1 JUNE 2025 目 次 CONTENTS 1 .最近の研究から/ FROM LATEST RESEARCH リュウグウの砂に見つかった塩の結晶 Sodium salt minerals found in Ryugu samples 京都大学 白眉センター 松本 徹 The Hakubi Center for Advanced Research, Kyoto University MATSUMOTO Toru ・・・・・・・・・ 1 電解水素化反応の反応機構解明に向けた in situ XAFS 測定の活用 Application of In Situ XAFS Measurements for Mechanistic Elucidation of Electrocatalytic Hydrogenation Reactions 横浜国立大学 大学院工学研究院 信田 尚毅 Department of Chemistry and Life Science, Yokohama National University SHIDA Naoki 跡部 真人 ATOBE Mahito 京都大学 大学院工学研究科 井口 翔之 Graduate School of Engineering, Kyoto University IGUCHI Shoji ・・・・・・・・・ 4 2 .ビームライン・加速器/ BEAMLINES ・ ACCELERATORS NanoTerasu 共用ビームライン BL 02 U について Introduction of public beamline at NanoTerasu : BL 02 U (公財)高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 菅 大暉 NanoTerasu Promotion Division, JASRI SUGA Hiroki 小出 明広 KOIDE Akihiro ・・・・・・・・ 10 利用系グループ活動報告 JASRI 研究 DX 推進室 / XFEL 利用研究推進室 先端計測・解析技術グループ 理研・放射光科学研究センター・制御情報・データ創出基盤グループ Activity Reports-Advanced Measurement and Analysis Group, Research DX Division/XFEL Utilization Division, JASRI Control System and Data Infrastructure Group, RIKEN SPring- 8 Center (公財)高輝度光科学研究センター 研究 DX 推進室/ XFEL 利用研究推進室 (国研)理化学研究所 放射光科学研究センター Research DX Division / XFEL Utilization Division, JASRI 城地 保昌 RIKEN SPring-8 Center JOTI Yasumasa (国研)理化学研究所 放射光科学研究センター (公財)高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 RIKEN SPring-8 Center 初井 宇記 XFEL Utilization Division, JASRI HATSUI Takaki ・・・・・・・・ 18 3 .研究会等報告/ WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT SACLA Users ʼ Meeting 2025 (公財)高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 大和田 成起 XFEL Utilization Division, JASRI OWADA Shigeki ・・・・・・・・ 22 第 7 回特定放射光施設 BLs アップグレード検討ワークショップ報告 Brief Report of SpRUC 7 th Workshop on BLs Upgrade 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) (国研)物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター 永村 直佳 Center for Basic Research on Materials National Institute for Materials Science NAGAMURA Naoka 熊本大学 理学部 理学科 物理学コース 水牧 仁一朗 Department of Physics, School of Science Kumamoto University MIZUMAKI Jinichiro 兵庫県立大学 理学部 物質科学分野 田中 義人 Department of Material Science, School of Science University of Hyogo TANAKA Yoshito ・・・・・・・・ 25 SACLA 研修会「シリアルフェムト秒結晶構造解析研修会」 SACLA Workshop for Serial Femtosecond Crystallography (国研)理化学研究所 放射光科学研究センター SACLA ビームライン基盤グループ 姜 正敏 SACLA Beamline Research and Development Group, RIKEN SPring-8 Center KANG Jungmin (公財)高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 大和田 成起 XFEL Utilization Division, JASRI OWADA Shigeki ・・・・・・・・ 32 4 . SPring- 8 /SACLA/NanoTerasu 通信/ SPring- 8 /SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS SPring- 8 利用研究課題審査委員会を終えて Report on the Proposal Review Committee (PRC) of SPring- 8 SPring-8 利用研究課題審査委員会 委員長 東京大学/理化学研究所 有馬 孝尚 University of Tokyo / RIKEN ARIMA Taka-hisa ・・・・・・・・ 36 SPring- 8 利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告 Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chairs SPring-8 利用研究課題審査委員会 小角・広角散乱分科会主査/豊田工業大学/あいちシンクロトロン光センター 田代 孝二 Toyota Technological Institute/Aichi Synchrotron Radiation Center TASHIRO Kohji X 線回折(単結晶)分科会主査/京都産業大学 理学部 下村 晋 Kyoto Sangyo University SHIMOMURA Susumu X 線回折(粉末)分科会主査/名古屋市立大学 大学院理学研究科 青柳 忍 Nagoya City University AOYAGI Shinobu X 線回折(汎用・構造評価)分科会主査/東京大学 大学院工学系研究科 脇原 徹 The University of Tokyo WAKIHARA Toru X 線回折(高圧)分科会主査/大阪大学 基礎工学研究科 清水 克哉 The University of Osaka SHIMIZU Katsuya 汎用 XAFS ・汎用 MCD 分科会主査/関西学院大学 工学部 鈴木 基寛 Kwansei Gakuin University SUZUKI Motohiro 先端X線分光分科会主査/東北大学 多元物質科学研究所 雨澤 浩史 Tohoku University AMEZAWA Koji 光電子分光分科会主査/東北大学 多元物質科学研究所 組頭 広志 Tohoku University KUMIGASHIRA Hiroshi 赤外分光分科会主査/東北大学 金属材料研究所 佐々木 孝彦 Tohoku University SASAKI Takahiko イメージング分科会主査/東京理科大学 先進工学部 世良 俊博 Tokyo University of Science SERA Toshihiro 非弾性散乱分科会主査/島根大学 材料エネルギー学部 細川 伸也 Shimane University HOSOKAWA Shinya 構造生物学分科会主査/大阪大学 大学院理学研究科 今田 勝巳 The university of Osaka IMADA Katsumi その他(持込装置利用)分科会主査/近畿大学 理工学部 矢野 陽子 Kindai University YANO Yohko F. 産業利用分科会主査/九州シンクロトロン光研究センター 妹尾 与志木 SAGA Light Source, Saga Industrial Promotion Organization SENO Yoshiki 人文・社会科学分科会主査/奈良県立橿原考古学研究所 保存科学センター 奥山 誠義 Archaeological Institute of Kashihara,Nara pref. OKUYAMA Masayoshi ・・・・・・・・ 38 SACLA 利用研究課題審査委員会を終えて Report on the Proposal Review Committee (PRC) of SACLA SACLA 利用研究課題審査委員会 委員長 電気通信大学 レーザー新世代研究センター 米田 仁紀 Institute for Laser Science, The University of Electro-Communications YONEDA Hitoki ・・・・・・・・ 52 第 54 回( 2025 A ) SPring- 8 利用研究課題の採択について The Proposals Approved for Beamtime in the 54 th Research Term 2025 A 登録施設利用促進機関 (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 Registered Institution for Facilities Use Promotion, User Administration Division, JASRI ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 第 53 回共同利用期間( 2024 B )において実施された SPring- 8 利用研究課題 2024 B Proposal and User Statistics 登録施設利用促進機関 (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 Registered Institution for Facilities Use Promotion, User Administration Division, JASRI ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 2024 B 期において実施された SACLA 利用研究課題(共用課題)について The SACLA Public Proposals and User Statistics in 2024 B Research Term 登録施設利用促進機関 (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 Registered Institution for Facilities Use Promotion, User Administration Division, JASRI ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 SPring- 8 /SACLA 利用者選定に係る 2023 - 2024 年度委員会の委員名簿の公表 List of SPring- 8 /SACLA User Selection-Related Committee/Subcommittee Members for FY 2023 - 2024 Term 登録施設利用促進機関 (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 Registered Institution for Facilities Use Promotion, User Administration Division, JASRI ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 第 1 回( 2025 A ) NanoTerasu 利用研究課題の採択について The Proposals Approved for Beamtime in the 1 st Research Term 2025 A 登録施設利用促進機関 (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 Registered Institution for Facilities Use Promotion, User Administration Division, JASRI ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 論文発表の現状 Statistics on Publications Resulting from Work at SPring- 8 /SACLA (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 最近 SPring- 8 、 SACLA 、 NanoTerasu から発表された成果リスト List of Recent Publications (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 2024 B 期における SPring- 8 /SACLA ユーザー要望等について SPring- 8 /SACLA User Requests in 2024 B 登録施設利用促進機関 (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 Registered Institution for Facilities Use Promotion, User Administration Division, JASRI ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 ナノテラス事業推進室、共用開始にあたって NanoTerasu Promotion Division: Launching Public Use (公財)高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 室長 大石 泰生 NanoTerasu Promotion Division, JASRI OHISHI Yasuo ・・・・・・・・ 98 5 .談話室・ユーザー便り/ USER LOUNGE ・ LETTERS FROM USERS 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC )四季報 SpRUC Communications 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC )会長 藤原 明比古 Chair of SpRUC FUJIWARA Akihiko ・・・・・・・ 103 6 .告知版/ ANNOUNCEMENTS 第 9 回 SPring- 8 秋の学校 開催のご案内 SPring- 8 Autumn School 2025 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 104 特定放射光施設シンポジウム 2025 SPring- 8 /SACLA/NanoTerasu Symposium 2025 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105 第 22 回 SPring- 8 産業利用報告会 The 22 nd Joint Conference on Industrial Applications of SPring- 8 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 1 最近の研究から 京都大学 白眉センター 松 本 徹 リュウグウの砂に見つかった塩の結晶 Abstract 日本の探査機はやぶさ 2 によって持ち帰られた小惑星リュウグウの砂の分析が世界中で行われてきた。今回、 SPring-8 の BL20XU で開発された放射光 X 線トモグラフィー、 X 線回折とともに、電子顕微鏡による微小分析 技術を組み合わせることで、これまでに地球外物質で全く見つかっていなかった塩類の結晶をリュウグウの砂 から発見した。具体的には、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムを含む結晶脈が見出され、こ れらは豊富な塩水がリュウグウの母天体の環境に存在したことを示唆する。塩結晶はリュウグウの母天体を流 れた塩水が蒸発したか凍結した際に成長したと考えられる。現在のリュウグウは液体で満たされておらず、ど のように母天体から液体が失われたのかこれまで謎であった。塩の結晶は、液体の水が消えていった道筋を示 した初めての証拠である。また、ナトリウム炭酸塩や岩塩は、土星の衛星エンセラダスなど内部に海をもつ天 体の表層にも、海の成分の析出物として見つかっている。塩の結晶はリュウグウとこれらの海洋天体の水の成 分や進化を比較できる新しい手がかりになると期待される。 1.はじめに 宇宙航空研究開発機構( JAXA )の探査機「は やぶさ 2 」は、小惑星リュウグウ( 図 1 )を探査し、 2020 年に表面の砂を地球に持ち帰った。リュウグ ウの砂の初期分析から、その化学的・岩石学的な特 徴が、隕石の中でも極めて希少な CI 炭素質コンド ライトと呼ばれる隕石種に対応していた [ 1,2 ] 。リュ ウグウや CI 隕石の大きな特徴は、水の中で生まれ た鉱物が岩石の大部分を構成していることである。 リュウグウの砂の主成分は層間に水を含む粘土鉱物 であり、次に存在の高い硫化鉄、磁鉄鉱、カルシウ ム - マグネシウム炭酸塩はいずれも水環境で生成し た鉱物である。 現在のリュウグウは 900 メートル弱程度の大きさ であるが、かつては数十キロメートルの大きさをも つ母体となった天体 母天体 (ぼてんたい) が太陽 系の始まった頃の約四十五億年前に存在したと推定 されている。その内部は放射性元素の崩壊熱によっ て温められ、百度以下のお湯で満たされていたと考 えられている。こうしたことから、リュウグウの砂 は太陽系の形成初期の時代で水の環境がどのように 発展したかを知るための重要な試料である。 小惑星から直接持ち帰った砂には、地球に落下す る隕石では見られないような未発見の物質があるこ とも期待されていた。そのひとつは、水に溶けやす い、もしくは吸湿しやすい物質である。湿気を含む 地球大気の下で変化してしまう物質は、宇宙空間か ら持ち帰ったままの新鮮な状態でなければ気付くこ とも難しいからである。その点で、リュウグウの砂 は小惑星から直接的に地球に持ち帰った物質であり、 地上で想定される変質を免れている。また、砂が 地球へ帰還して以降、 JAXA の試料保管施設(キュ レーション)において純度の高い窒素ガスの環境下 において注意深く保管されてきた。そこで、本研究 では、小天体の水環境に関連する新しい手がかりを 探るために、リュウグウの砂を大気から極力隔離し た上で、鉱物組織に対する微小領域分析を行なった。 図 1 はやぶさ 2 が撮影した小惑星リュウグウ( ©JAXA 、 東京大学など) 2 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 '30. LATEST 3ESEA3C) 2.リュウグウの砂の分析 分析に用いたリュウグウの砂は国際公募分析によ り配布された試料である。筆者らは、まず JAXA/ 宇宙科学研究所のキュレーションを利用して、空気 に触れることなく小惑星の砂を観察できる設備(グ ローブボックス、密閉型試料容器、エアロック付き 電子顕微鏡)を活用した。大気から隔離した状態で、 リュウグウの砂を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で 観察したところ、砂つぶの表面に白い脈が発達して いることを見出した( 図 2 ) 。特性 X 線による元素 種の分析から、それらがナトリウムに富む見慣れな い元素比の特徴を示すことから、リュウグウや地球 外試料でこれまでに見つかっていない種の物質であ る可能性に気づいた。 構成されており、鉱物と水との相互作用が進んでい ることがわかった。 Na の鉱物を示す X 線回折ピー クは見られず、白い脈も砂つぶのごく表層にのみ分 布することがわかった。次に結晶脈に対する透過型 電子顕微鏡観察を行うことで最終的な相同定を行う ことにした。透過型電子顕微鏡による観察を行うた めには、電子線が透過可能な、厚さ 100 nm 程度の 切片を粒子の表面から切り出す必要がある。この目 的のために収束イオンビーム装置を用いた。狙った 位置から正確に切片を切り出すためには、粒子の三 次元的な形状の情報が必要であった。そこで X 線ト モグラフィーによって撮影した粒子の外形を用いる ことで、切片の切り出し位置や向きの詳細を検討す ることができた。 透過型電子顕微鏡で観察した結果、結晶脈の主 成分はナトリウム炭酸塩( Na 2 CO 3 )であり、塩化 ナトリウム( NaCl )の結晶や、ナトリウム硫酸塩 ( Na 2 SO 4 )も含むことがわかった。ナトリウム炭酸 塩と塩化ナトリウムは電子線回折と特性 X 線による 構成元素の解析から同定された。一方で、ナトリウ ム硫酸塩は、 UVSOR の放射光走査型透過 X 線顕微 鏡を利用することで、軟 X 線の吸収量の特徴から同 定した。 図 2 リュウグウの砂表面に発達した塩結晶の脈。二次 電子像の擬似カラー画像。 そこで、この砂の内部の岩石学的な特徴を捉える ために、 SPring-8 の BL20XU に設置された X 線トモ グラフィーと X 線回折を利用することで、砂つぶに 対する三次元的かつ非破壊での観察を行うことにし た。 X 線トモグラフィーの分解能は約 0.5 μm であり、 構成鉱物の種や形状を高分解能で撮影することがで きる。また同時に X 線回折モードに切り替えること ができ、主な構成鉱物の相同定が可能である。本研 究では、撮影中にリュウグウの砂が大気に暴露され ることを防ぐために、 X 線を透過するカプトンの筒 に粒子を封入できる小型容器を開発した。窒素ガス 環境のグローブボックス内で粒子を容器に密閉して ビームラインに持ち込んだ。撮影の結果、構成鉱物 はリュウグウの大半の岩相と同様に粘土や硫化鉄で 発見された鉱物はいずれも水に非常に溶けやすい 性質をもつ塩の結晶である。水に溶けやすいという ことは、液体が極めて少なく塩分濃度が高くなけれ ば結晶が析出できなかったと推定される。そのため 図 3 インジウムに固定したリュウグウ粒子の光学顕微 鏡画像 (左) とトモグラフィーのデータから再構成 した三次元像。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 3 最近の研究から 筆者らは、リュウグウの砂を作る多くの鉱物が母天 体で沈殿したあとに、液体の水が失われる現象が存 在し、その際に塩の結晶が沈殿したと考えた( 図 4 ) 。 液体がなくなる現象として考えられる可能性のひと つは、塩水の蒸発である。母天体の内部から表層の 宇宙空間へまでつながる割れ目が生まれれば、天体 内部の液体は減圧されて蒸発すると考えられる。地 球上では大陸内部に取り残された湖が干上がった時 に高い濃度の塩水が生じ、ナトリウム炭酸塩や岩塩 などが析出することが知られている。これらは「蒸 発岩」と呼ばれており、リュウグウ母天体でも蒸発 岩が生まれたのかもしれない。もうひとつの可能性 は、液体の凍結である。母天体を温めていた放射性 元素が乏しくなると天体は冷えてゆき、塩水は徐々 に凍結するはずである。塩水に溶けた陽イオンや陰 イオンは氷には取り込まれにくいので、凍結が進む と残された塩水の濃度は高くなる。すると濃い塩水 からは塩結晶が析出する。凍結した氷はやがて現在 に至るまでに宇宙空間へと昇華してしまったと考え られられる。現在のリュウグウに大量の液体は見ら れず、そしてリュウグウの砂つぶも湿っていること はなく、母天体を流れたはずの液体の水がどのよう に失われたのか分かっていなかった。今回の研究に より、リュウグウの母天体では蒸発、もしくは凍結 によって液体の失われる現象が起こったことが初め てわかった。また、この考察が示唆する重要な点は、 急激な水の消失が起こるほど、もともと母天体は水 に富んでいたという点である。つまり、母天体の材 料となった氷の、無機物質に対する量比が高かった ことを示唆している。 3.波及効果 リュウグウの砂で見つかったナトリウム炭酸塩は 地球に飛来する隕石では見つかっておらず、小惑星 の砂から発見されたことは全くの予想外であった。 一方で、準惑星のセレスや木星の衛星エウロパ、土 星の衛星エンセラダスなど地下に海が広がっている と予想される天体で塩類が検出されている。たとえ ばセレスには内部海の物質が凍って吹き出す氷火山 があり、ナトリウム炭酸塩は噴出物の主要な成分で ある。エンセラダス表層の氷の裂け目から噴き出す 間欠泉にはナトリウム炭酸塩や塩化ナトリウムが含 まれる。種々の塩類は天体の水の成分や進化を反映 している。そのため、塩の結晶はリュウグウと太陽 系の海洋天体との水環境の共通性や違いを比較でき る新しい手がかりになると期待される。とりわけ太 陽系の水環境に注目することは、生命の材料である 有機物の水中での化学反応を理解することにもつな がる。 参考文献 [ 1 ] T. Yokoyama et al .: Science 379 (2022) eabn7850 [ 2 ] T. Nakamura et al .: Science 379 (2022) eabn8671 松本 徹 MATSUMOTO Toru 京都大学 白眉センター 〒 606 - 8502 京都府京都市左京区北白川追分町理学部一号館 TEL : 075 - 753 - 4159 e-mail : matsumoto.toru. 2 z@kyoto-u.ac.jp 図4 リュウグウの母天体での塩結晶の形成過程 4 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 '30. LATEST 3ESEA3C) 横浜国立大学 大学院工学研究院 信 田 尚 毅、 跡 部 真 人 京都大学 大学院工学研究科 井 口 翔 之 電解水素化反応の反応機構解明に向けた in situ XAFS 測定の活用 Abstract 本稿では、ピリジン類を代表とする窒素含有芳香族化合物の電解水素化反応に関する最新の研究成果を紹 介し、その反応機構解明においてビームライン BL14B2 で実施した in situ X 線吸収微細構造( XAFS )測定が 果たした役割を詳述する。アニオン交換膜型電解セルと Rh 触媒を用いることで、常温・常圧かつ酸添加剤を 用いずに、ピペリジンを高効率かつ定量的に合成することに成功した。 XAFS 測定では、反応中における Rh 種の還元過程を可視化し、電解運転条件において活性種として Rh(0) が発生していることを示した。本成果 は、触媒設計・反応場制御・解析技術が融合することで、電解合成の高度化が可能であることを示しており、 SPring-8 の放射光測定がその基盤として大きく貢献している。 1.はじめに 21 世紀に入り、世界の産業構造はかつてない規 模での転換を迫られている。その中心にあるのが脱 炭素社会の実現という目標である。気候変動に対す る国際的な合意、すなわちパリ協定に端を発した温 室効果ガス排出削減の枠組みは、エネルギー ・ 輸送 ・ 製造といった従来の重厚長大な産業分野だけでなく、 化学産業にも大きな影響を与えている。 特に、化学産業はエネルギー集約型であることに 加え、製品ライフサイクルの中でもっとも上流に位 置する基礎化学品の製造過程において、大量の化石 資源を原料および熱源として用いている。そのため、 CO 2 排出量の全体に占める割合も無視できず、持続 可能な未来に向けたプロセス革新が不可欠とされて いる。 このような背景から、近年注目されているのが、 再生可能エネルギー由来の電力を直接駆動力とする 電解合成プロセスである。電解合成は、反応を電位 で制御し、電子そのものが試薬となるため、温度や 圧力に依存しない温和な条件での選択的な分子変換 を可能とする。とくに、熱的条件では制御が難しい 高選択的還元・酸化反応や、フロー系を通じたス ケーラブルな合成手法との親和性が高く、学術界・ 産業界を問わず関心が高まりつつある。 その中でも、芳香族化合物の電解水素化反応は、 電気化学の新たな応用先として特筆すべき領域であ る。芳香環を部分的または完全に飽和させることで、 分子構造を 2 次元から 3 次元へと変換することが可 能であり、医薬品・農薬・香料・高機能材料などの 合成において多面的な有用性を発揮する。 例えば、ピリジン類の水素化によって合成される ピペリジン類は、医薬品の極めて重要な構造単位で あり、その選択的な水素化手法の開発は、学術的に も産業的にも大きな意義を有する。従来の方法では、 高圧水素ガスや高温、酸添加剤を要し、環境負荷や 装置の安全性、操作性の面で多くの制約があった。 我々の研究グループは、こうした制約を打破すべ く、電気を用いた温和かつ選択的な芳香族水素化 反応の開発に取り組んできた [1] 。本稿では、近年報 告したピリジン類の電解水素化に関する研究成果 を起点として、 SPring-8 における X 線吸収微細構造 ( XAFS )測定が果たした役割と、今後の電解合成 研究における展望について述べる。 2.ピリジン類の選択的水素化とその課題 ピリジンは、窒素原子を 1 つ含む 6 員環状の含窒 素芳香族化合物である。その還元体であるピペリジ ンは、米国食品医薬品局( FDA )により承認され ている低分子医薬品の約 9 %( 2021 年時点)に含ま れている重要な化学構造である( 図 1a ) [2, 3] 。ピリ SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 5 最近の研究から 図 1 .本研究の背景。 (a) ピペリジン骨格を有する医薬品の例、 (b) 不均一触媒を用いるピリジン類の水素化、 (c) 従来 的な電解反応を利用するピリジン類の電解水素化とその課題、 (d) 本研究の概要。文献1より転載。 a b c d N N HN Desired reactivity (not feasible) +e HN H NH H N H Non-selective side reactions Radical anion interemediate N H N H H N N H N N N N H N HN HOH H +e N Cathodic chamber Anodic chamber 1/4O 2 + 1/2H 2 O + e OH conduction through AEM Rh NPs OH Dimerization Partial reduction Applicable to various N -containing aromatic compounds AEM N N H HN Heterogeneous catalysis Ambient conditions Direct heterogeneous catalysis 30 to 160 o C, 20-60 atm of H 2 Pyridine ( 1a ) Piperidine ( 2a ) Pyridinium cation N O CN Me N N N N H Tofacitinib N H Piperidines HN O F O O Paroxetine Contained in 9% of approved drugs by 2021 H + 3H 2 (g) 3H 2 (g) ジン環の核水素化、すなわち 6e – /6H + の導入による 芳香環の還元は、ピペリジン骨格を構築する最も直 線的な合成法であり、化学的な変換法が様々開発さ れてきた。特に工業的に有用性の高い不均一触媒と 水素ガスを用いる核水素化反応は、古くから研究さ れてきた( 図 1b ) 。ピリジンをルイス酸やプロトン 酸によって活性化することで比較的温和な条件で水 素化を行うことができるが、これは資材コストの増 加や後工程の煩雑化につながるため、添加剤無し の水素化反応が望ましい。しかし、添加剤を用い ない水素化の多くが高圧( 20 – 60 atm )および高温 ( 30 – 160 ℃)条件によって反応を駆動している [4 6] 。 このような文脈において、電解水素化は極めて有 望な選択肢と考えられる。電気エネルギーを直接反 応駆動力とするため、熱源としての化石燃料への依 存を回避できるほか、反応場を細やかに制御できる という利点がある。特に、再生可能電力と連動させ ることで、 CO 2 排出ゼロの分子変換を実現するポテ ンシャルを持つ。 実際、電気化学的なピリジン類の水素化反応は 100 年以上前にも研究が行われているが [7] 、意外な ことに現在に至るまで効率的かつ選択的に、ピリジ ン類をピペリジン類へと変換する電気化学な手法は 存在しなかった。この原因として、一般的な電解反 応では電極からピリジン環に電子が注入されるス テップから反応が開始するが、ここで形成されるラ ジカルアニオン種が極めて不安定であるため、プロ トン化を受ける前に 2 量化などの副反応が起こって しまう( 図 1c ) 。このように電子注入とプロトン付 加が段階的に進行する反応機構において、 6e – /6H + の受け渡しが必要となるピリジン→ピペリジンの変 換は極めて難易度が高いと言える。 本研究では、アニオン交換膜( AEM )型リアク ターを活用し、炭素担持 Rh 触媒( Rh/KB )を用い ることで、ピリジンからピペリジンへの 6 電子還 元反応を、常温・常圧・酸添加剤なしで実現した ( 図 1d ) 。本研究で用いた AEM 型リアクターにおい ては、金属触媒表面に発生する水素化性種( H ads ) がピリジンに付加することで、電子とプロトンが同 時に受け渡しされ、不安定なラジカルアニオン中間 体の形成を回避することができ、これによって効率 的な反応が実現されている。加えて、本研究の大き な特長は、 in situ XAFS 測定によって、触媒表面に おける Rh 種の還元過程を追跡した点にある。この ように、反応場の設計とその場構造解析を組み合わ せた戦略こそが、持続可能な分子変換の実現に向け た鍵であると考えている。 3.本研究の概要と主な成果 本研究では、窒素含有芳香族化合物の代表である ピリジン誘導体に対して、常温・常圧かつ酸添加剤 を一切用いない条件下で、定量的かつ高選択的に水 6 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 '30. LATEST 3ESEA3C) 素化反応を進行させることを目的とした。そのため の中核的な技術基盤として、 AEM 型リアクターを 設計・構築した( 図 2a ) 。 本電解セルの特長は、従来のバッチセルとは異な り、陽極と陰極が固体高分子膜(ここではトクヤマ 製 A201 膜)によって密着している点にある。この 構造により、膜内部でのイオン輸送により回路が成 立するため、電解質溶液中に支持電解質を添加する 必要がない。さらに、反応液がポンプによって電解 セル中に送液されるフロー型電解であるため、ス ケーラビリティに優れ、実用性が高い。 触媒には、ロジウム( Rh )をケッチェンブラッ ク( KB )に担持した Rh/KB 触媒を最適とした。電 極 は カ ー ボ ン ペ ー パ ー を 担 体 と し、 触 媒 イ ン ク をスプレー塗布することで電極( Catalyst-Coated substrate, CCS )を作製した。実験では、基質とし てピリジン( 1.0 mmol )を含む水溶液を陰極側電解 液として用いた。陽極では、陰極で生成した OH – が酸化され酸素を発生する反応が進行するため、特 に電解液を流通させる必要はなく、大気に解放して いる。電解は定電流条件下で行い、 通電量 ( F mol – 1 ) と生成物収率の相関を評価し、電流効率として算 出した。結果として、 Rh/KB 触媒を用いた系では、 99% 以上の収率でほぼ定量的にピペリジンが得られ、 副生成物が一切検出されないことを確認した。一方、 本反応の成否は電極触媒の金属種に強く依存するこ とを見出しており、例えば同じ白金族であるプラチ ナ( Pt )を用いた場合にはほとんど目的の反応は進 行しなかった。 特筆すべきは、反応後期に至るまで、電流効率が ほぼ 100% に近いという点である ( 図 2b ) 。すなわち、 投入した電気エネルギーのほとんどが目的生成物の 形成に寄与しており、副反応としての水素発生反応 ( HER )は極めて抑制されている。この結果は、電 極表面での選択的吸着と脱離のバランスが良好であ ることによって、選択性を発揮していることを示唆 する。 さらに本反応系は、ピリジンのみならず、他の含 窒素芳香族化合物にも適用可能であることを実証し た。たとえば、キノリン、ピラジン、さらには電子 豊富な含窒素芳香族化合物であるピロールにも拡張 でき、それぞれにおいて高い変換率と収率、選択性 が確認された( 図 1d ) 。 これらの成果は、従来の熱的還元反応に比べ、は るかに温和な条件下で、高付加価値の化合物群を効 率よく合成可能であることを実証したものである。 さらに、このような反応系を理解し制御するために は、触媒表面で進行する電子状態や中間体の挙動を その場観測により可視化する必要がある。次節では、 その鍵となった in situ XAFS 測定について詳述する。 4.機構解明における in situ XAFS 測定の意義 電解反応の最適化において、反応中における触媒 の電子状態や構造変化を把握することは極めて重要 である。とりわけ、遷移金属を担体に分散させたナ ノ粒子触媒の場合、表面の酸化還元状態、配位環境、 粒子サイズ、集合状態などが反応性に大きな影響を 図 2 .ピリジンの電解水素化 (a) AEM 型リアクターを 用いた反応系の概略、 (b) 定電流電解におけるピ ペリジン生成量と電流効率の通電量依存性。文献 1 より一部改変し掲載。 1a 2a b 5.0 7.5 9.0 Charge passed / F mol - 1 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (bar) Yield of 1a and 2a / % (plot) Current efficiency for 2a / % 1a 2a Circular flow operation at 120 mL h - 1 a AEM MEA SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 7 最近の研究から 与えることが知られている。しかしながら、これら の情報は従来の ex situ 分析手法では把握が困難で あり、反応中の真の活性状態を捉えるためには、 in situ (または operando )測定によるリアルタイム観 測が不可欠である。 本研究においては、 SPring-8 の BL14B2 ビームラ インにおいて、 in situ XAFS 測定を実施した。特に、 XANES 領域のスペクトル変化から、反応条件にお ける Rh 種の電子状態を観測することを目的とした。 測定セルの設計 in situ 測定には、 X 線窓を有しながら電解反応の 効率を損なわない特殊なセル設計が求められる。本 研究では、我々が以前に開発した in situ 赤外分光 ( IR )測定用レーザー透過型電解セルの設計思想を 継承し、 X 線に対しても高い透過性を有する材料構 成へと最適化を行った。 IR 測定用セルは、我々の研 究グループにおいて、固体高分子電解質電解環境下 における H ads の直接観測 [8] 、ならびに中間体の吸着 様式を可視化する目的で開発されたものである [9] 。 そ の 基 本 構 造 は、 中 央 に 高 分 子 電 解 質 膜 を 挟 み、両側に触媒層を担持した電極を密着させ、レー ザーや X 線が通過する小型窓を配置したものであ る( 図 3a ) 。これにより、通電しながら任意の波長 の放射光を電極界面に照射し、反応中の構造変化 をリアルタイムで検出できる。 IR 測定においては CaF 2 窓を用いたが、 XAFS 測定にあたりポリイミド フィルムを窓材として使用し、電解と in situ 測定の 両立を実現した。また,測定対象であるカソード の Rh K 端の測定を妨げないよう、アノードとして 酸素発生の触媒能を有する DSE © 電極を用いた。本 セットアップにより、透過法による in situ XAFS 測 定が可能となった( 図 3b ) 。 今回の XAFS 測定では、このセルに Rh/KB 触媒 を担持したカーボンペーパーを取り付け、反応条件 下(定電流電解)における Rh K 端 XANES スペク トルの変化を追跡した。 XAFS による酸化状態変化の可視化と構造解析 XANES スペクトルの測定により、反応開始前の Rh 種には Rh(0) と Rh(III) が混在していることが示 された。これは、触媒調製および電極作製後の空気 酸化によって特にナノ粒子表面に酸化物層が形成さ れていたためと考えられる。通電を開始すると、時 間とともに XANES スペクトルに変化が現れ、 Rh K 端の吸収端位置が低エネルギー側へシフトするとと もに、ホワイトライン強度が低下した。よって、電 気化学的に Rh 種が逐次的に Rh(0) へと還元されて いくことが明らかとなった( 図 3c ) 。 計算科学への展開と機構解析 Rh(0) が反応における触媒活性を有するという in situ XAFS 測定の知見に基づき、密度汎関数( DFT ) 計算を実施した。吸着→電解水素化→脱着の過程を それぞれシミュレーションした。 Rh(0) 上での水素 化反応のエネルギーダイアグラムを解析したとこ ろ、生成物であるピペリジンの脱離過程に最も多く のエネルギーが必要となっており、この段階が律速 段階であることが示唆された。また、触媒活性をほ とんど示さなかった Pt においても脱着過程のエネ 図 3 . in situ XAFS 測定。 (a) in situ XAFS 測定に用いた電解セルの概観、 (b) BL 14 B 2 において構築した実験のセット アップの写真、 (c) 得られた Rh K 端 XANES スペクトル。文献 1 より一部改変し掲載。 a c 23180 23205 23230 23255 23280 Normalized intensity / a.u. Photon energy / eV 336 s Before electrolysis Rh foil After electrolysis X-ray b 8 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 '30. LATEST 3ESEA3C) ルギー計算を行うと、 Pt はピペリジンの脱着によ り大きなエネルギーを要することも示唆された。こ のように、 in situ XAFS 測定によって反応系中で Rh(0) が生成することを実証したことで、 DFT 計算 における正確なモデルを選択することが可能となり、 触媒の金属種が反応のどのステップに影響を与え、 反応速度や収率に違いを与えたのかを明らかとする に至った。 合金電極触媒の解析 さらに我々は、 Ni ・ Co ・ Fe 系の非貴金属触媒を用 いた AEM 型リアクターにおけるアルコール酸化反 応の検討を行い、その過程で XAFS 測定を活用した 触媒の電子状態評価を行っている [10] 。本研究では in situ 測定ではないものの、 NiFe や NiCo 合金触媒 の XANES および EXAFS 解析を通じて、構成元素 の混合状態や酸化還元挙動の違いを明らかにした。 このような XAFS による電子状態・局所構造の解 析は、触媒活性点の設計指針となり、非貴金属を用 いた高選択的反応系の構築に貢献している。 6.おわりに 本稿では、我々の研究グループが近年発表したピ リジン類の電解水素化反応に関する研究成果を軸 に、 SPring-8 での in situ XAFS 測定が果たした役割と、 そこから得られた知見について紹介した。電解反応 という、動的な反応場における触媒の構造や電子状 態を、リアルタイムかつ高精度で捉える手段として、 放射光 XAFS は極めて有効であり、反応機構の定量 的解明にとって不可欠な分析技術となっている。ま た、 in situ 測定のみならず、静的条件下での XAFS 解析も材料開発や構造 – 性能相関の確立に大きく貢 献しうることを示した。 SPring-8 という世界有数の放射光施設は、物質 の深部構造と反応の本質を “ 見る ” ための窓であり、 その可能性は無限と言える。今後も、電気化学と放 射光科学が緊密に連携し、エネルギー・物質変換・ 環境のあらゆる分野において新たな価値を創出して いくことを、我々は確信している。 本稿に掲載した XAFS 測定は、すべて SPring-8 の BL14B2 において実施したものです。測定にあたり、 公益財団法人高輝度光科学研究センター 主幹研究 員 渡辺剛 博士には、反応系の設計から組み立てま で、大変なご尽力を賜りました。この場をお借りし て厚く御礼申し上げます。 本研究を実施するにあたり、 AEM およびアイオ ノマーは株式会社トクヤマのご厚意により提供され たものです。また、本稿に示した研究成果は、多く の共同研究者のご尽力により発表に至ったものです。 関係各位に厚くお礼申し上げます。 参考文献 [ 1 ] N. Shida, Y. Shimizu, A. Yonezawa, J. Harada, Y. Furutani, Y. Muto, R. Kurihara, J. N. Kondo, E. Sato, K. Mitsudo, S. Suga, S. Iguchi, K. Kamiya, M. Atobe: J. Am. Chem. Soc . 146 (2024) 30212- 30221. [ 2 ] E. Vitaku, D. T. Smith, J. T. Njardarson: J. Med. Chem. 57 (2014) 10257-10274. [ 3 ] P. Bhutani, G. Joshi, N. Raja, N. Bachhav, P. K. Rajanna, H. Bhutani, A. T. Paul, R. Kumar: J. Med. Chem . 64 (2021) 2339-2381. [ 4 ] F. Chen, W. Li, B. Sahoo, C. Kreyenschulte, G. Agostini, H. Lund, K. Junge, M. Beller: Angew. Chem. Weinheim Bergstr. Ger . 130 (2018) 14696- 14700. [ 5 ] W. Qian, L. Lin, Y. Qiao, X. Zhao, Z. Xu, H. Gong, D. Li, M. Chen, R. Huang, Z. Hou: Appl. Catal. A Gen . 585 (2019) 117183. [ 6 ] F. Martinez-Espinar, P. Blondeau, P. Nolis, B. Chaudret, C. Claver, S. Castillón, C. Godard: J. Catal. 354 (2017) 113-127. [ 7 ] J. G. Keay: Comprehensive Organic Synthesis, Elsevier. (1991) 579-602. [ 8 ] J. N. Kondo, S. Ge, T. Suzuki, R. Osuga, T. Matsumoto, T. Yokoi, Y. Shimizu, A. Fukazawa, N. Shida, M. Atobe: J. Phys. Chem. C Nanomater. Interfaces. 126 (2022) 19376-19385. [ 9 ] Y. Shimizu, J. Harada, A. Fukazawa, T. Suzuki, J. N. Kondo, N. Shida, M. Atobe: ACS Energy Lett . (2023) 1010-1017. SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 9 最近の研究から [10] Y. Furutani, Y. Shimizu, J. Harada, Y. Muto, A. Yonezawa, S. Iguchi, N. Shida, M. Atobe: ACS Catal . 14 (2024) 8922-8929. 信田 尚毅 SHIDA Naoki 横浜国立大学 大学院工学研究院 〒 240 - 8501 神奈川県横浜市保土ヶ谷区常磐台 79 - 5 TEL : 045 - 339 - 3945 e-mail : shida-naoki-gz@ynu.ac.jp 跡部 真人 ATOBE Mahito 横浜国立大学 大学院工学研究院 〒 240 - 8501 神奈川県横浜市保土ヶ谷区常磐台 79 - 5 TEL : 045 - 339 - 4214 e-mail : atobe-mahito-wk@ynu.ac.jp 井口 翔之 IGUCHI Shoji 京都大学 大学院工学研究科 〒 615 - 8510 京都府京都市西京区京都大学桂 A 4 棟 128 号室 TEL : 075 - 383 - 2560 e-mail : iguchi.shoji. 4 k@kyoto-u.ac.jp 10 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 #EA.LINES・ACCELE3AT03S 公益財団法人高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 菅 大 暉、 小 出 明 広 NanoTerasu 共用ビームライン BL02U について Abstract NanoTerasu では 3 本の軟 X 線ビームライン( BL02U 、 BL06U 、 BL13U )が共用ビームラインとして建設され、 2025 年 3 月から共用利用が開始された。本稿では共鳴非弾性 X 線散乱のビームラインである BL02U について、 登録施設利用推進機関である JASRI の視点から紹介する。 が一部の先進的な施設で達成されているが、それ を上回る超高分解能の達成は非常に挑戦的である。 BL02U では、世界最高の超高分解能条件での RIXS 測定を実現したが、この達成にはビームラインが発 揮するエネルギー分解能の向上、安定化による高分 解能の維持、そして測定の効率化の課題を同時に解 決することが必要であった [5] 。 2 - 1 .エネルギー分解能の向上 エネルギー分解能には、回折格子・ミラー・検出 器など、すべての光学素子の性能が総合的に影響す る。そのため、超高分解能を達成するには、それぞ れの光学素子を高精度で製作・調達することが不可 欠である。しかし、個々の光学素子の性能や製作精 度には限界があるため、その制約の中で光学系全体 の性能を最大限に引き出すために、専門的かつ高度 な光学系の設計が必要となる。さらに、光学素子を 組み合わせて系を構築する際には、それらの幾何学 的な配置が分解能に直接影響を及ぼすため、装置の 建設や光学調整にも極めて高い技術と精度が求めら れる。こうした技術的課題を乗り越える設計と実装 によって、超高分解能化が実現されている。ここで は、光学素子の高分解能化の一例として、分光の中 核を担う回折格子について取り上げる [5] 。 回折格子には、基板としての形状誤差やスロープ エラーに加え、刻線の高い精度が求められる。理想 的な回折格子において、その理論的な最大の分解能 は、総刻線数(刻線密度と刻線領域の積)と使用す る回折次数との積によって与えられるが、刻線は人 1.はじめに NanoTerasu で は BL02U 、 BL06U 、 BL13U の 3 本 が共用ビームラインとして建設され、これらの共用 利用が 2025 年 3 月 3 日から開始された [1] 。登録施設 利用推進機関である JASRI はこの日に向けて利用 者選定や利用支援業務を行ってきた。特に後者に関 しては装置設置者である量子科学技術研究開発機構 ( QST )と連携・協力してビームラインの共用利用 に備えてきた。 NanoTerasu は 2 つの利用制度によって成り立って いる。コアリション利用と共用利用である。 2024 年 4 月 9 日から一般財団法人光科学イノベーション センター( PhoSIC )により実施されているコアリ ション利用は組織ニーズプル型:イノベーションを 加速すること(シーズの発展)を主たる目的として いるのに対し、 JASRI が関わっている共用利用では 個人探究型:イノベーションシーズを育むことを目 的としている。 以下では、共鳴非弾性 X 線散乱のビームラインで ある共用ビームライン BL02U について「共用利用 をする」という視点からビームラインの現状やこれ からの期待などについて紹介する。 2.BL02U BL02U は 軟 X 線 領 域 の 共 鳴 非 弾 性 X 線 散 乱 ( Resonant Inelastic X-ray Scattering: RIXS )を世界 一のエネルギー分解能条件で利用者に供することを 目指したビームラインである [2-4] 。近年の RIXS 測定 において、 E/ Δ E = 20,000 程度のエネルギー分解能 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 11 ビームライン・加速器 工的に作製されるため、刻線密度・領域・形状のい ずれにも限界があり、超高分解能に対応する回折格 子の決定的な製作法は、現在のところ確立されてい ない。そこで BL02U では、刻線密度を下げて製作 精度を高めるために、ブレーズ型回折格子による高 次回折光の利用を採用している。ブレーズ型回折格 子では、ブレーズ角を高次の回折に最適化すること により、特定のエネルギー領域では 1 次の回折で分 光するよりも、より高い回折効率(より明るい回折 光)が得られる。一般に、刻線密度が低い方が製作 上の難易度が下がり、刻線の精度も高くなること が期待される。実際に、 3000 本 /mm の 1 次の回折 と 1000 本 /mm の 3 次の回折では原理的な分解能が 同等なので、より刻線密度の低い 1000 本 /mm の 3 次の回折を RIXS 分光器では利用している。ただし、 利用可能なエネルギー範囲は狭くなり、この点はト レードオフとなる。 BL02U で主要なエネルギー領 域である 500 1000 eV については、 1 次の回折より も高次の回折の方が高い回折効率を持つ計算結果が 得られたため、ブレーズ 型回折格子と高次の回折 の組み合わせが採用されている [5] 。 2 - 2 .安定化による高分解能の維持 次に、一時的にでも達成した高分解能条件を長時 間安定して維持するためには各種の位置ずれを抑え る必要がある。例えば、振動などに由来する短周期 の位置ずれや、温度変化に起因する長周期の位置ず れなどであり、性質の異なる要因が重なるため、そ れぞれに適した対策が求められる。特に極めて高い エネルギー分解能を目指す場合には、検出器の安定 性に加え、回折格子に桁違いに高い位置・角度安定 性が要求される [5] 。 2 - 3 .測定を高効率化 軟 X 線領域における RIXS は、その測定原理上、 もともと効率が低いが、超高分解能化によってさ らに低効率になる傾向がある [5] 。軟 X 線では、オー ジェ過程が支配的であるため、放出される散乱 X 線 の強度は 1% 未満と極めて低い。さらに、全方位に 放出された散乱 X 線のうち、検出可能なのは分光器 の取り込み角(水平・垂直ともに約 10 mrad )に収 まるごく一部である。加えて、超高分解能用の回折 格子は回折効率が約 5% 程度と低いため、全体とし て測定効率は大きく制限される。したがって、超高 分解能を実現したとしても、現実的な測定時間内で 解析に必要な信号強度を有するスペクトルを得るに は、測定効率の向上が不可欠となる。 BL02U では、 2D-RIXS と呼ばれる手法を採用し ており、波長分散型 X 線吸収微細構造( Dispersive XAFS )のように、複数の入射エネルギーのスペク トルを同時に取得することで高効率を達成している。 これはビームラインの分光器からのエネルギー分散 光(鉛直方向に分光)をそのまま試料に照射し、さ らに散乱光を水平方向に分光することで、入射光と 散乱光のエネルギー分散を 2 次元的に検出する。単 色化した入射光を用いる従来の RIXS 測定に対して、 2D-RIXS では分散光を活用することで入射エネル ギーの僅かに異なる複数のスペクトルを一度の測定 で得ることができるため、これらを積算することで 単色光による測定よりも高効率な測定を実現してい る。またビームラインのレイアウトは放射線安全要 件なども考慮しつつ、 2D-RIXS に最適化された設 計となっている [5] 。 Figure 1 に BL02U のエンドス テーションの写真を示す。 Figure 1 . BL 02 U のエンドステーションにある RIXS 装 置。右手のビームライン上流から左手のメイ ンチャンバー内の試料に入射 X 線が導入され、 試料からの散乱 X 線は手前の回折格子で分光 された後、更に右手前の検出器で検出される。 [https://nanoterasu.jp/com.res/ よ り QST の 許可を得て使用。 ] 12 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 #EA.LINES・ACCELE3AT03S BL02U では上記のような先端的な技術が実際に 導入され実現されたことにより、多層膜試料の測定 にて、 930 eV の入射エネルギーに対して 16.1 meV ( E/ Δ E ~ 58,000 )という世界最高のエネルギー分解 能を達成している [3,4,6] 。 3.RIXS とは ここでは BL02U にて展開される共鳴非弾性 X 線 散乱( RIXS )について概説する。 RIXS という用語 の詳細や用法については完全に統一された見解があ るわけではない。また分野内での歴史的経緯も含む 種々の事情もあるため、本稿では厳密な定義を与え ることを目的としない点をご理解いただきたい。 RIXS の手法名にある「共鳴」とは、入射光のエ ネルギーを内殻電子の吸収端など特定の内殻励起エ ネルギーに合わせた条件で用いることを意味してい る。物質にこの共鳴条件の X 線を入射すると内殻 電子は外殻軌道へ励起し、同時に内殻空孔が生成さ れる。この際、励起した内殻電子および発生した内 殻空孔は、物質中の電子との相互作用を介して様々 な低エネルギー励起を引き起こす。これらの低エネ ルギー励起によって内殻励起エネルギーの一部が奪 われるため、入射 X 線エネルギーよりも低いエネ ルギーを持つ散乱 X 線が観測される。このような エネルギーロスを伴う散乱現象を非弾性散乱と呼ぶ。 RIXS は入射光と散乱光のエネルギー差を測定する 手法のうち、特に数 eV 以下の低エネルギーロスの 成分を精密に観測する手法のことを指し [7] 、原子・ 分子・格子振動、スピン、電荷移動などに起因する 低エネルギー励起を観測できる。 共鳴条件を用いることで、 RIXS は次の二つの特 徴を持つ。一つは、微分断面積が著しく増大するた め、強度が微弱な低エネルギーロス成分の検出が可 能である。もう一つは、元素および軌道に対する選 択性を持つ内殻励起を通じて、複雑な試料中から特 定の励起成分を選択的に観測することができる。 本稿では、非弾性 X 線散乱の観測手法のうち、共 鳴条件下における低エネルギーロス成分は RIXS 、 それ以外の高エネルギーロス成分は、 X 線発光分光 ( XES )として区別する。この高エネルギーロス成 分は主に蛍光 X 線として検出されるエネルギー領域 に属する。 XES では、蛍光 X 線スペクトルを解析 することで、元素分析や価数評価が行われる。非共 鳴条件における非弾性散乱も測定手法が確立されて いるが、本稿では共鳴条件に焦点を絞るため、その 紹介は割愛する。 BL02U にて展開される高分解能 RIXS 測定では、 特に物質中における格子振動やスピンの集団励起で あるフォノンやマグノンをはじめとした素励起によ る非弾性散乱のピーク構造が、その詳細まで明瞭に 観測できる。遷移金属酸化物などで見られる典型的 な素励起のエネルギースケールを概観的に Figure 2 に示す。 フォノンおよびマグノンは、波数(結晶運動量) に依存してエネルギーが変化する分散関係を持つ。 非弾性散乱においては、散乱角の制御により光子が 素励起に与える運動量を調節できるため、散乱ピー クの角度依存性を測定することで分散関係を高精度 に解析できる。それら分散関係の応用先のほんの一 例として、種々の伝導現象の支配的因子である電子 格子相互作用の評価や、マグノニクス材料探索にお ける基礎物性値としての活用が挙げられる。 また、中性子や非共鳴条件での X 線を利用した 測定方法と異なる点として、 RIXS では吸収原子の 外殻軌道と強く結合した励起状態の情報が得られる ため、フォノンやマグノンに対して支配的寄与を持 つ元素および電子軌道の特定や不純物効果の評価 を行うことができる。この特性を活用することで、 RIXS による新奇材料探索は大きく進展している。 4.共用利用に向けた各種の現状および準備状況 BL02U の共用において JASRI がまず目指すべき Figure 2 .固体物質で観測されるさまざまな素励起とそ の 代 表 的なエネルギースケール [Reprinted figure with permission from [ 8 ] . Copyright ( 2011 ) by the American Physical Society.] SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 13 ビームライン・加速器 は「 QST により世界最高のエネルギー分解能を示 すよう整備された RIXS 装置を安定してユーザーに 提供すること、およびその利用環境の整備」である。 担当者もユーザーもビームタイム中においては「測 定そのもの」と「得られた結果の解釈」に集中でき ることが望ましい。ゆえに作業マニュアルの整備、 作業場所や寒剤容器の搬入経路などの明確化を実施 し、実験時の時間ロスが極力生じないように準備を 進めてきた。始動直後であり、足りない部分も少な くはないが、引き続き JASRI と QST で連携し、実 際に利用したユーザーからの声も反映しつつ、限ら れた時間で最大限の成果が創出できる共用実験の提 供を目指した整備を継続する。 4 - 1 .試料プレート 研究内容および試料特性によっては、 3 本の共用 ビームラインの相互利用が最適と判断される場合 も想定される。これに対応するため、試料プレー トは 3 ビームラインで共通とすることが QST によ り決定され、実現されている。これにより、例えば BL06U での ARPES 測定によるバンド構造の観測を 通して興味深い結果が得られた試料を、そのままの 試料状態で BL02U に搬送・導入して RIXS 測定をす ることが可能である。 BL02U の試料プレートは冷 却時の熱伝導率も考慮して無酸素銅製が推奨され準 備された。 JASRI では共通化された試料プレートの仕様に基 づき、ユーザー利用に係わる範囲においての新規製 作・デザイン相談・改造・数量管理、および運用を 行っている。 Figure 3 にその一例を示す。 4 - 2 .寒剤の利用と申請 現在、試料冷却のための寒剤として液体ヘリウム が使用できる。 1 つの実験課題につき、現状の最大 量として 200 L の使用申請が可能であり、実際の使 用量に応じた金額が実験終了後に JASRI からユー ザーへと請求される。使用されたヘリウムは施設の 回収配管に回収され、その回収率に依存して請求さ れる金額が変動するため、利用時期によって金額 の変動があり得るが、 2025 年 5 月現在は 1 L あたり 1675 円である。通常の手順による最冷却時で 32 K 程度まで冷却可能で、その際の液体ヘリウム消費量 はおおよそ 1.2 L/h である。消費量は試料交換の頻 度や設定する測定温度により変動するが、液体ヘリ ウム使用量を申請される際の 1 つの目安とされたい。 なお消費量は増加するがさらなる低温度での測定 も不可能ではない。加えて BL02U には温度コント ローラーも準備されており、目的とする温度に設定 した状態で RIXS を測定することもできる。 目標とする冷却温度や、冷却の目的(例えば、冷 却による試料の X 線照射ダメージの低減)によっ ては液体窒素による冷却で十分な場合もあるだろう。 だが現状の BL02U では液体窒素を使用した冷却装 置が常設されていないため、申請課題において液体 窒素の使用を希望する場合にはビームライン担当者 への事前相談をしていただきたい。なお液体窒素の 使用料金は実験時にご負担いただく「消耗品実費負 担額」にあらかじめ含まれている。使用量に関して は実験に先立ってユーザースオフィスから確認の連 絡があり、その際に希望した量のみを実験で使用す ることができる。 4 - 3 .大気非暴露条件での試料準備環境の整備 試料によっては一度でも大気へ暴露してしまうと Figure 3 .ユーザー実験に向けて JASRI が作成した試料 プレートの一例。 14 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 #EA.LINES・ACCELE3AT03S 急激な酸化の進行等により、望んだ測定条件を保て ないものも少なからず存在する。このように大気非 暴露環境が必要な試料に関しては、 JASRI としてグ ローブボックスを用意している。現在、搬送ロッド を用意することで単なるバルブによる封じきりでの 大気非暴露搬送は可能である。より高い真空状態を 保ったまま試料を搬送することができるイオンポン プ搭載型の試料搬送ロッド(真空スーツケース)の 整備を QST と共同で進めている。これらの設置場 所は BL13U であるが、 3 本の共用 BL のいずれにも 接続できる真空ポートの規格を有している。グロー ブボックスの使用を希望する場合は事前連絡が必要 である。また事前相談が必要にはなるが、ユーザー が自作した試料搬送用ロッドの持ち込みにも基本的 に対応可能であるため、使い慣れたロッドを用いて 試料準備と搬送を行い、 RIXS 装置へと試料を導入 することもできる。 4 - 4 .試料搬送の手順 Figure 4(a) にメインチャンバー周辺の様子を示 す。試料は (i) ロードロックチャンバー (L.L.) に搭 載されたクイックアクセスドアを通じて真空導入 される(導入後に真空引き) 。その後 (i) → (ii) プレ パレーションチャンバー (Prep.) → (iii) メインチャン バーの順に搬送される。 L.L. と Prep. には 5 つのホ ルダーが搭載できる搬送用ロッド(サンプルバン ク : Figure 4(b) )が備わっている。両チャンバー間 の試料移動は、 L.L. 上部に搭載されたウォーブルス Figure 4 . (a) BL 02 U エンドステーションのメインチャンバー周辺。試料搬送のための各チャンバーが示されている。 (b) サンプルバンク、5つの試料プレートが搭載できる。ここでは赤矢印部の 2 箇所に試料プレートが搭載 されている。 (c) メインチャンバー内部。 (a) の “ View Port ” 部分からチャンバー内部を観察している。中 心部に測定ステージが位置している。 (d) 試料ステージに調整用試料を取り付けた様子。 [(c) については https://nanoterasu.jp/com.res/ より QST の許可を得て使用。 ] SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 15 ビームライン・加速器 ティックによって行われる。 Figure 4(c) に BL02U の RIXS 装置内部の写真を示す。これは Figure 4(a) の「 View Port 」部分からメインチャンバー内部を 覗いた様子である。測定試料は左手方向に位置する Prep. チャンバーからサンプルバンクに搭載されて 導入される。その後、右手方向にあるウォーブルス ティックを用いて、測定位置である写真中央の試料 ステージに搭載される。 Figure 4(d) は試料ステー ジに調整用の試料を取り付けた時の様子を表してい る。またメインチャンバーには 3 試料を搭載できる サンプルバンク( Figure 4(c) にて中央より少し右 下に位置する)も用意されている。 4 - 5 .共鳴エネルギーの決定 RIXS は XAS データの取得を通じた共鳴エネル ギーの決定が必須である。 BL02U では導電性試料 のドレインカウントを計測する全電子収量法( Total Electron Yield: TEY ) に加えて、全蛍光収量法 ( Total Fluorescence Yield: TFY ) に よ る 吸 収 測 定 環 境 が QST によって整備されている。 TFY は絶縁体となっ た試料の測定位置確認や共鳴エネルギーの決定に活 用される。 TFY では試料の厚みに起因する自己吸 収の影響に加えて、目的元素以外からの蛍光 X 線 をバックグラウンドとして検出することから、共鳴 エネルギーの決定に必要なピーク構造が潰れて不 明瞭になる場合がある。目的元素以外からの蛍光 X 線による XAS スペクトル形状の歪みを低減し、よ り正確に共鳴エネルギーを決定するため、目的元素 のみに着目した XAS を取得できる部分蛍光収量法 ( Partial Fluorescence Yield: PFY ) が 可 能 な シ ス テ ムの導入が今後の展開として検討されている。 PFY が導入されれば微量元素および、多元素構成材料な どへの対応力も高まる。 4 - 6 .測定の実行や結果の初期解析 全ての機器の制御・監視システムの構築は QST によって行われており、各種ソースコードの管理と 保守についても同様である。データ取得のための各 機器の制御(測定の実行)は Python コードにて行 われており、インターフェースとしてブラウザベー スの Jupyter Lab が用いられる。各種実行コードは 来所初日のインストラクションを通じて JASRI か らユーザーに説明・共有されるため、各自で望む測 定シーケンスを組んで実行することも可能である。 また得られた 2D-RIXS 画像の初期解析(重心演算 や画像から RIXS スペクトルへの変換)については QST が用意した LabVIEW プログラムを使用できる。 データ取り出しについては、データ取り出し専用の ネットワーク環境下の PC から専用 USB を用いた取 り出しと、一部の Web クラウドを通じた取り出し が可能である。 5.今後の共用利用に向けた取り組み BL02U で採用している 2D-RIXS 測定では、入射 光および散乱光のエネルギーが 2 次元検出器のピク セル位置として検出される。共用実験における入射 エネルギーの正しい観測ピクセル位置と 1 ピクセル あたりのエネルギー分解能は調整時に多層膜試料を 用いて決定されているが、実際の測定試料の表面の 平滑性によっては、表面の凹凸によって X 線の散乱 点(発光点)が変化し、到達したピクセル位置が本 来計測されるべき位置からずれる。この位置のずれ は見かけ上のエネルギー位置のずれを与えてしまう ため、補正が必要である。そこでまず、ビームライ ンからのエネルギー分散を持つ弾性散乱が 2 次元ピ クセル上で理想的には線形となることを利用し、弾 性散乱の位置を特定する。そして、弾性散乱の位置 を正しく特定できれば、そこから正しいエネルギー ロス(非弾性散乱)を与えるピクセル位置へと変換 することができる。しかし、ずれがあまりにも大き い場合や弾性散乱が弱い場合には弾性散乱の位置を 特定することが難しくなるため、現状では補正・変 換が容易な平滑表面を持つ試料に測定が限られてい る。そこで、測定可能な試料範囲を拡大するために、 機械学習や画像解析を用いて弾性散乱位置を特定す る技術の開発を JASRI では検討している。 また、現状では公開されている汎用的な第一原理 計算プログラムには、フォノンおよびマグノンを考 慮した RIXS の理論計算は実装されていない。 RIXS 測定に慣れたユーザーの多くは、独自に RIXS 計算 手法を開発している研究者との共同研究基盤を既に 持っているため、測定結果を成果に結び付けるこ 16 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 #EA.LINES・ACCELE3AT03S とが比較的容易である。一方、ビギナーには独自 に解析手法を開発する、もしくは共同研究者を探 すことが必要であり、これによって RIXS 測定への 参入障壁が高くなっていることが想定される。そ こで、ユーザー層の拡大を目的として、 RIXS 理論 研究者との共同研究も視野に入れながら、 JASRI で RIXS 解析をサポートする理論計算手法の開発 を検討している。 RIXS に限らず理論計算や画像解 析等でユーザーを支援するための CPU マシンおよ び GPU マシンを JASRI で用意している。それぞれ のマシンの特徴として、 CPU マシンが 128 コアお よびメモリ 768 GB を有し、 GPU マシンが NVIDIA RTX6000Ada を 4 枚搭載した仕様となっている。こ れらの計算性能は、スーパーコンピューターの 1 ノード分、あるいはそれ以上に相当する。この計算 資源をユーザー実験で得られたデータ解析などに活 用し、成果創出へとつなげるための環境整備を進め ている。 6.今後の展望 近年、世界中の RIXS 装置ではいかに高いエネル ギー分解能を達成できるかの競争が繰り広げられて きた。特に RIXS 研究が盛んに行われている固体物 理分野の研究では、 100 meV 以下に現れる低エネ ルギー励起を議論できるエネルギー分解能が必須で ある。日本は RIXS を含むあらゆる測定手法を駆使 してこの低エネルギー励起の舞台で世界と戦って きたが、 RIXS 装置の測定分解能においては 10 年近 くの遅れをとっていた。しかし、 NanoTerasu にて BL02U の運用を開始したことで、日本は世界一の物 性解明のツールとさらなる研究競争力を手に入れた。 高分解能測定によってフォノンやマグノン等が詳 細に観測可能になった一方で、注意すべき点もある。 d-d 遷移や電荷移動励起のみを狙って観測する場合、 高分解能測定ではエネルギー分解能が必要以上に高 過ぎるため、従来の分解能でも信号強度が稼げる測 定手法や装置を利用した方が高効率となる場合があ る。また測定可能なエネルギー範囲(ワンショット で観測することのできるエネルギーロスの範囲)も 観測対象とする励起状態に合っている必要があるた め、単純に高分解能から低分解能に落とせば全ての 励起現象に対して高分解 RIXS 装置が活用できる訳 ではない。そのため、従来装置に置き替わるものと して高分解能 RIXS 装置を捉えるのではなく、観測 したい励起現象に応じて各 RIXS 装置を選択 / 相補 的に活用することが望ましい。 RIXS の盛んな海外 では、実際に異なる放射光施設の RIXS 装置間で目 的ごとに棲み分けがされており、相補的な利用がス タンダードになっているようである [9] 。 また本稿では主だって取り上げなかったが、 RIXS は XES と同様に Photon-in/Photon-out の手法である ため、バルク敏感かつ外場中でも測定可能な特徴を 有する。これを活かすことで、電池材料や電子デバ イスなどにおける RIXS の in-situ/operando 測定が展 開されている。 BL02U の高分解能 RIXS が、従来装 置との相補利用を通じて RIXS 研究全体を活性化す ることで、学術・産業問わず幅広い材料・デバイス 研究開発促進の一役を担うことを期待している。 謝辞 本 稿 の 執 筆 に あ た っ て、 QST NanoTerasu セ ン ターの宮脇淳 博士、山本航平 博士、堀場弘司 博士、 高橋正光 博士から専門的・技術的コメントをいた だいた。ここに深く御礼申し上げたい。また、共 用に向けた試料プレートの準備では、 JASRI ナノテ ラス事業推進室の横町和俊 氏、神田龍彦 博士に大 変ご尽力いただいた。グローブボックス導入・整 備・大気非暴露搬送対応のための改造作業について は QST NanoTerasu センターの北村未歩 博士、大坪 嘉之 博士、 JASRI ナノテラス事業推進室の脇田高 徳 博士、 JASRI 分光推進室(現分光イメージング 推進室)の伊奈稔哲 博士のご協力の上で達成され た。原稿の全体構成についてはナノテラス事業推進 室の本間徹生 博士と大石泰生 博士から多くのアド バイスをいただいた。共用利用が無事に開始できた のは QST と JASRI 間の連携の賜物であるが、コア リション利用の先立った成功による後押しと、そ れを担った PhoSIC のご活躍も大変大きい。最後に NanoTerasu の運転・維持・管理に関わられている 全ての方々に感謝の意を表する。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 17 ビームライン・加速器 参考文献 [ 1 ] https://nanoterasu.jp/2025/03/nanoterasu 共用ビー ムラインのユーザー利用を開始 / [ 2 ] J. Miyawaki et al .: J. Phys.: Conf. Ser. 2380 (2022) 012030 ( DOI: 10.1088/1742-6596/2380/1/012030 ) [ 3 ] K. Yamamoto et al .: J. Phys.: Conf. Ser. 3010 (2025) in press. [ 4 ] J. Miyawaki et al .: Synchrotron. Radiat. News. (2025) in press. ( DOI: 10.1080/08940886.2025. 2501887 ) [ 5 ] 宮脇淳、堀場弘司、大坪嘉之:放射光 37 (2024) 95. [ 6 ] https://www.qst.go.jp/site/press/20240918.html [ 7 ] https://www.qst.go.jp/site/qubs/nanoterasu- rensai-78.html [ 8 ] L. J. P. Ament et al .: Rev. Mod. Phys. 83 (2011) 705. (DOI: https://doi.org/10.1103/RevModPhys. 83.705) [ 9 ] 次世代放射光施設利用研究検討委員会:資料 5-2 超高エネルギー分解能共鳴非弾性軟 X 線散乱 ビームラインワーキンググループ報告書 https://www.qst.go.jp/site/3gev/41909.html 菅 大暉 SUGA Hiroki (公財)高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 〒 980 - 8572 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 468 - 1 SRIS 棟 209 号室 TEL : 050 - 3496 - 9053 e-mail : hiroki-suga@jasri.jp 小出 明広 KOIDE Akihiro (公財)高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 〒 980 - 8572 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 468 - 1 SRIS 棟 209 号室 TEL : 050 - 3502 - 6482 e-mail : akihiro.koide@jasri.jp 18 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 #EA.LINES・ACCELE3AT03S 公益財団法人高輝度光科学研究センター 研究 DX 推進室 / XFEL 利用研究推進室 先端計測・解析技術グループ 国立研究開発法人理化学研究所 放射光科学研究センター 制御情報・データ創出基盤グループ 城 地 保 昌 国立研究開発法人理化学研究所 放射光科学研究センター 制御情報・データ創出基盤グループ 公益財団法人高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 先端計測・解析技術グループ 初 井 宇 記 利用系グループ活動報告 JASRI 研究 DX 推進室 /XFEL 利用研究推進室 先端計測・解析技術グループ 理研・放射光科学研究センター・制御情報・データ創出基盤グループ 1.はじめに 高輝度光科学研究センター研究 DX 推進室 /XFEL 利用研究推進室 先端計測・解析技術グループと理 化学研究所放射光科学研究センター(理研 RSC ) 制御情報・データ創出基盤グループは、共同で先端 計測・解析技術に関する開発、高度化および運用を おこなっている。これらは、 X 線検出器、ビームラ イン制御システム、データ解析基盤に大別できる。 本稿では、これらの活動のうち SPring-8 のデータ基 盤の現状について紹介する。 2.SPring-8 データセンター SPring- 8 データセンター構想 SPring-8 では、日々国内外の研究者がさまざま な実験を行っており、貴重な実験データが大量に 生み出されている。しかしながら、特に 1 試料あた りのデータが 1 TB を超える大容量データについて は、データの転送や解析に時間がかかり、成果創 出までの時間がかかっていた(解析律速) 。加えて SPring-8 では、理研 RSC が開発した高感度で高速 撮像が可能な X 線画像検出器 CITIUS の導入が進め られている。それにより、今後生み出される実験 データの量は以前の 1,000 倍以上になると想定され る。この「解析律速」を解決することを主眼として 2021 年に 「 SPring-8 データセンター構想」 を提唱した。 欧州・米国の大型放射光施設ではデータ基盤に大規 模な投資を行っている。 SPring-8 は CITIUS 検出器 の開発に成功したこともあり、欧米施設よりも 10 倍から 100 倍の大量のデータが得られることが確実 である。したがって、単純な大規模化では対応でき ず、新しいアプローチが必須である。この理解に基 づき「 SPring-8 データセンター構想」では、ビーム ライン近傍( Edge )でデータを圧縮すること、お よび SPring-8 外の「富岳」や国立情報学研究所など のデータ関連基盤とネットワークを介して接続した 仮想的なデータ基盤を開発・整備することを特徴と している。ハードウェアの概略を 図 1 に示す。 図 1 : SPring- 8 データセンター構想の概略図 これまでに構内基幹ネットワークの通信速度を 100 Gbps (ギガ bps )へアップグレードした。デー タは確実に保存されるだけでは不十分で、その品 質を実験中に確認する必要がある(データ品質評 価, Data Quality Assessment ) 。データに問題があ れば、直ちに実験条件を変更しなければならないか SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 19 ビームライン・加速器 らである。多くの大容量データ実験では並列計算 を多用した解析がデータ品質評価のために必要に なってきている。そこでクラスタ計算機システムを SPring-8 内のデータセンターに整備した。さらに大 規模な計算が必要な実験のために、 「富岳」などの SPring-8 外のスーパーコンピュータも利用できるよ う HPC ( High Performance Computing )向けデータ 管理・転送・解析環境 Globus の導入検討を米国ア ルゴンヌ研究所および理研・計算科学研究センター ( R-CCS )とともに実施している。 日本では、文部科学省がデータ関連の研究開発の 役割を整理しており、その中で国立情報学研究所は データ管理サービス GakuNin RDM [1] を提供してい る。 SPring-8 データセンターはこのサービスと連携 して利用できるように設計されており、 2025 年 4 月 から試験運用を行っている [2] 。このサービスが本格 運用すれば将来的に、研究室のデータ、 J-PARC お よび NanoTerasu のデータなどが一体的に管理でき るほか、データが改ざんされていないことを証明す ることが可能となる。 CITIUS 検出器のうち最大のシステムは、 2,020 万 画素、データ帯域 10 Tbps (テラ bps = 1,000 Gbps ) 、 データ量が 1 年で 6 エキサバイト(= 6,000,000 テラ バイト)と見込まれる。ネットワーク転送も保存も 極めて困難な量である。 10 Tbps のデータ処理を実 現するために、理研計算科学研究センター ( R-CCS ) との共同研究により、データ圧縮技術の開発に取り 組んでいる。 クラスタ計算機システム 理研 RSC は、 「 SPring-8 データセンター構想」に 基づき、電算機室( 図 2 )を新たに整備し、クラ スタ計算機システムを 2023 年 10 月から共用してい る。クラスタ計算機システムは、 CPU ノード 64 台、 GPU ノード 16 台、データ転送ノード 6 台、 S3 ゲー トウェイ(後述) 4 台、共有ストレージシステムな どで構成される [2] 。クラスタ計算機の各ノードは高 速ストレージシステムに広帯域で接続しており、高 い I/O 性能が要求される SPring-8 の多くの解析に最 適化された構成となっている。 SPring- 8 データセンター上のサービス 2025 年 4 月現在、下記に紹介する 6 つのサービス がユーザーに提供されている。 ( 1 ) SPring-8 Data Flow Service ( DFS ) 利用実験で生成される少量データの流通を目的と し て、 SPring-8 Data Flow Service ( DFS ) [3] を 開 発 し、 2023 年 10 月にサービスを開始した。 1 課題あ たり1 TB 以下、 1 ファイルあたり 2GB のデータが 対象である。ビームライン担当者が申請することに より利用が可能となる。 DFS が利用可能なビーム ラインの場合、ユーザーは、ビームライン担当者に 申請すると DFS 利用の権限が付与される。ユーザー は、実験代表者もしくは共同研究者である課題の実 験データを、 Web ブラウザを介してアップロード / ダウンロードすることができるようになる。 ( 2 )クラスタ計算機サービス CITIUS 検出器などにより取得される大容量実験 データを迅速に解析するためのクラスタ計算機サー ビスを 2023 年 11 月に開始した。データセンターへの 高速転送が可能なビームラインネットワーク [4] が導 入されたビームラインのユーザーが利用可能である。 ( 3 ) Open OnDemand サービス クラスタ計算機システムで計算を実行するには ジョブ管理システムなどの知見が必要である。こ れらに不慣れなユーザーが簡便に利用できるよう に SPring-8 データセンターでは Open OnDemand [5] を 導 入 し て い る。 ユ ー ザ ー は Web ブ ラ ウ ザ か ら 図 2 : SPring- 8 データセンターの電算機室 20 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 #EA.LINES・ACCELE3AT03S ファイルアクセス、 Jupyter [6] 、 ImageJ [7] など様々な ツールを、施設側で最適化した環境で利用できる。 Open OnDemand では特定解析プログラムを実行す るために最適化された環境を開発することも可能で、 開発環境を提供している。 ( 4 )ビームラインからデータセンターへのデータ転 送サービス CITIUS 検出器などにより取得される大容量実 験データをビームラインからデータセンターへ転 送するツールを開発し提供している。ユーザーは、 WebGUI から転送元ディレクトリと実験課題番号を 設定することで取得データを、自動でデータセン ターに転送することができる。このサービスでは、 データが確実に転送されたことをチェックサムによ り確認している。 ( 5 )自動解析サービス データ転送サービスによりデータセンターに転送 されたデータを自動で解析する基盤技術を整備した。 このサービスでは、ユーザーアカウントではなく専 用アカウントにより解析が実行され、ユーザーは、 実験代表者もしくは共同研究者である課題の解析結 果を、 Web ブラウザを介してダウンロードすること ができる。 ( 6 )所外への広帯域データ転送サービス データセンターの計算機システムは、 Amazon S3 API [8] と互換性のあるオブジェクトストレージ機能 を有している。クラスタ計算機サービスの利用ユー ザーは、 s3cmd [9] などを利用して、データセンタ― 上の大容量データを SPring-8 所外から高速( 2025 年 4 月現在 100 Gbps が上限)にダウンロードするこ とが可能である。 3.SPring-8 データセンターの活用事例 高分解能粉末回折装置( BL 13 XU 第 3 ハッチ) BL13XU の第 3 ハッチにおける高分解能粉末回折 実験では、装置の自動化が進み多数の少容量データ が測定できることから、自動で DFS にアップロー ドできる仕組みを導入した。この自動アップロード サービスを他のビームラインにも展開していく予定 である。 高エネルギー X 線 CT 装置( BL 28 B 2 ) BL28B2 における自動 CT 計測装置 [10] における測 定代行では、測定データをデータ転送サービスによ りデータセンターに転送し、自動解析サービスを 利用して 3 次元再構成してユーザーに提供している。 ユーザーは、解析された結果を、 Web ブラウザを介 してダウンロードすることができる。 準弾性散乱実験( BL 35 XU ) BL35XU において CITIUS 検出器を用いた準弾性 散乱実験が行われている [11] 。この実験方法は東北 大学齋藤真器名准教授が提案した新しい手法で、試 料のナノ秒スケール揺らぎを解析できるという特 徴を持つ。この実験のための検出器、データ基盤 は、 SACLA/SPring-8 基盤開発プログラム [12] におい て開発・整備された。 CITIUS 検出器は 84 万画素を もち、 17.4 kframes/s でデータを出力している。デー タ帯域は 5.1 PB/day に達し、 1 ビームタイムあたり 35 PB といったデータ量になる。このデータはビー ムライン脇に設置されたデータ圧縮用のサーバー群 によって直ちに 1000 分の 1 以下にデータが圧縮さ れたのち、データ転送サービスを利用してデータセ ンターに転送されている。さらに Open OnDemand 上に準弾性散乱実験データ解析アプリが開発されて おり、 2025 年度に共用される予定となっている。 4.おわりに 本稿では、 「 SPring-8 データセンター構想」の概 要とその進捗、提供中のデータ関連サービスについ て紹介した。本稿がユーザーの皆様のご参考になれ ば幸いである。 5.謝辞 本稿で紹介した活動は多くの皆様に支えられてお り、深く感謝申し上げます。特に理研 RSC の本村 幸治氏、中町将貴氏、平木俊幸氏(現在 NII ) 、矢橋 牧名氏、 JASRI の河口彰吾氏、小林慎太郎氏、渡邊 佳氏、 上杉健太郎氏、 星野真人氏、 竹田裕介氏、 西野 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 21 ビームライン・加速器 玄記氏、杉本崇氏、中嶋享氏、国立情報学研究所 の山地一禎氏、 込山悠介氏、 下山武司氏、 平原孝明 氏、 亀 田 武 氏、 理 研 情 報 統 合 本 部 の 實 本 英 之 氏、 J-PARC の大友季哉氏、稲村泰弘氏、岡崎伸生氏、 理研 R-CCS の松岡聡氏、庄司文由氏、佐藤賢斗氏、 佐野健太郎氏、東北大の齋藤真器名氏らには主要な 貢献、重要な助言を頂きました。また実装・運用に おいてグローリーテクニカルソリューションズ株式 会社、両備システムズ、日本技術センターの支援を 頂いています。この場をお借りして感謝申し上げます。 参考文献 [ 1 ] https://rdm.nii.ac.jp/ [ 2 ] https://dc-portal.spring8.or.jp/ [ 3 ] https://dc-dfs.spring8.or.jp/ [ 4 ] https://dncom.spring8.or.jp/networkcnfg/ beamlinenetwork/ [ 5 ] https://openondemand.org/ [ 6 ] https://jupyter.org/ [ 7 ] https://imagej.net/ij/ [ 8 ] https://docs.aws.amazon.com/s3/ [ 9 ] https://s3tools.org/s3cmd [10] 上杉健太郎、星野真人 : SPring-8/SACLA 利用 者情報 28 (2023) 331. [11] M. Saito et al. : Phys. Rev. Lett. 132 (2024) 256901. [12] http://xfel.riken.jp/topics/sacla_basic_ development_2025.html 城地 保昌 JOTI Yasumasa (公財)高輝度光科学研究センター 研究 DX 推進室 / XFEL 利用研究推進室 先端計測・解析技術グループ (国研)理化学研究所 放射光科学研究センター 制御情報・データ創出基盤グループ 〒 679 - 5198 兵庫県佐用郡佐用町光都 1 - 1 - 1 TEL : 050 - 3502 - 7383 e-mail : joti@spring 8 .or.jp 初井 宇記 HATSUI Takaki (国研)理化学研究所 放射光科学研究センター 制御情報・データ創出基盤グループ (公財)高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 先端計測・解析技術グループ 〒 679 - 5148 兵庫県佐用郡佐用町光都 1 - 1 - 1 TEL : 050 - 3502 - 3235 e-mail : hatsui@spring 8 .or.jp 22 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 803,S)0P AN% C0..ITTEE 3EP03T 公益財団法人 高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 大 和 田 成 起 SACLA Users’ Meeting 2025 1.はじめに 2025 年 3 月 3 日および 4 日の 2 日間にわたり、 SACLA Users' Meeting 2025 が開催された。本年も昨年に引 き続き対面形式 (一部 Zoom によるオンライン講演) による開催となった。国内外の大学や研究機関、企 業から約 80 名が参加し、 2 日間の会議を通して、最 新の SACLA の性能に関する情報共有や、 XFEL 利 用研究の現状や将来のあり方に関する活発な議論が 行われた。 図1.集合写真 2.会議の内容 まず、理化学研究所放射光科学研究センターの 石川哲也センター長および SPRUC XFEL 利用研究 会代表の米田仁紀教授(電気通信大学)による開 会挨拶をもって、本年の会議がスタートした。ま ず初めに行われた “ Facility Session ” では、 SPring-8/ SACLA を取り巻く国内外の情勢や、 SACLA の利 用 研 究、 硬 X 線 FEL ビ ー ム ラ イ ン( BL2 ・ BL3 ) 、 軟 X 線 FEL ビームライン( BL1 ) 、光学レーザーシ ステムの高度化、新型検出器開発の現状などについ て報告された。 続いて、 2024 年度の SACLA/SPring-8 基盤開発プ ログラムセッションが行われた。本セッションで は、 2024 年度に採択された提案課題のうち、 「採択 I 」 として研究開発予算が割り当てられた 5 課題の進捗 報告が行われた。池田暁彦准教授(電気通信大学) からは、超強磁場発生装置 PINK02 の開発状況と SACLA での実験結果が報告され、安定的に 110 テ スラの磁場強度を生成し、合計 13 ショットの X 線 回折データの取得に成功したことが報告された。続 いて川上恵典博士(理化学研究所) の講演では、 X 線結晶構造解析と X 線発光分光を組み合わせた、金 属含有タンパク質結晶の構造解析・反応追跡システ ムの開発状況に関する報告が行われた。本課題で ターゲットにしている光化学システム II における反 応追跡は、国内外を問わず活発に研究が行われてお り、多くの研究グループが競い合っている分野の一 つである。本課題で開発されているシステムを利用 した成果が今後期待される。南後恵理子教授(東北 大学)からは、温度制御機能を持った試料インジェ クタの開発に関する報告があった。これまで、シ リアルフェムト秒結晶構造解析( serial femtosecond X-ray crystallography; SFX )では、光励起によって 進行する様々な生体高分子の反応機構を解明してき たが、そのような生体高分子は限定されており、光 に代わる反応トリガーの開発が課題となっていた。 本課題によって、温度変化をトリガーとした酵素反 応などの分子動画観測が進むことが期待される。本 セッション 4 人目となる Bo Brummerstedt Iversen 教授( Aarhus University, Denmark )からは、 SFX を 単位格子の小さい材料科学系試料に適用し、精密構 造解析を行った結果が紹介された。現在 SACLA で 整備が進められている大型検出器 CITIUS 20.2M の 試験的な利用実験ということもあり、参加者の関心 が高かったように思う。本セッション最後となる 5 人 目 の 講 演 は、 Bruno Albertazzi 博 士( Laboratoire pour l'utilisation des lasers intenses, France ) か ら の、 大出力ナノ秒レーザーと強磁場発生装置を組み合 わせた実験プラットフォーム開発に関するもので SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 23 研究会等報告 あった。このプラットフォームは特に核融合や天 体物理学の分野での利用が期待され、真空チャン バー内で 10 テスラ以上の磁場強度を達成した実験 結果について報告があった。いずれの課題において も、 SACLA 独自の実験基盤装置の開発が進められ ており、今後も施設側と利用者側が密に連携して SACLA の性能を最大限に活用することが重要であ る。本プログラムでは毎年度課題募集が行われてい るので、ぜひ応募の検討をお願いしたい。 第一日目最後のセッションでは、 SACLA 加速器 高度化に携わっている岩井瑛人博士( JASRI )から、 加速器のアップグレードに関する報告が行われた。 BL2 と BL3 の電子ビームの独立制御や、様々な電 子ビーム /XFEL 診断機器を用いた機械学習的手法 により高品質 XFEL パルスの提供が可能になったこ となどが発表された。また、電子バンチ圧縮技術の 開発や、 X バンドディフレクターを用いたバンチ長 モニターの開発など、将来の加速器の高度化につな がるプロジェクトについても触れていた。そして続 く質疑応答では、参加者から「 SACLA の強みは利 用者とビームラインスタッフだけでなく、利用者と 加速器スタッフとの強い結びつきにある」との発言 もあり、利用者、ビームラインスタッフ、加速器ス タッフの 3 者を交えた活発な議論が行われた。 第二日目にはブレイクアウトセッションとして、 午前に 2 つ( 1A/1B )と午後に 2 つ( 2A/2B )の、合 計 4 つのテーマのセッションが開催された。午前中 のセッション 1A は、主に生物・化学分野を中心に 利用されている液体試料輸送システムに関するセッ ションで、 SACLA で基盤開発プログラムなどを通 じて開発されたテープドライブ装置や二液混合イン ジェクタ、マイクロ液体封入セルや液体ジェット装 置などの紹介と、その応用展開をテーマとした議論 が行われた。セッション 1B は、実験中のデータ収 集・処理や実験機器の制御環境に関するものであっ た。 SACLA における Python ベースの API 等、デー タ取得・ハンドリング環境整備状況や、それらを活 用して科学的成果を最大化するための方策について、 海外の XFEL 施設の例も交えた議論が行われた。 午後にはセッション 2A として、 SACLA で利用 されている様々なフェムト秒レーザー光源のなかで も、とくに高強度 THz 光源とその利用に関するセッ ションが設けられた。 SACLA では、これまでの大 気プラズマ法に代えて、 有機結晶を利用した高強度 ・ 広帯域 THz 光源と、その利用実験環境の開発が進 められている。本セッションでの議論をもとに、今 後の THz 利用実験が促進されることが大いに期待 される。セッション 2B では、高分解能の間接型 X 線画像検出器の開発やその利用をテーマとした議論 が行われた。 SPring-8/SACLA で開発された間接型 X 線画像検出器 DIFRAS の紹介や XFEL インライン ホログラフィへの応用、 LiF 結晶検出器を用いた実 験の報告などがあった。さらに、ユーザーのニーズ として真空内試料の高空間分解能イメージングが提 案されるなど、今後の検出器開発の方向性について 活発な議論が交わされた。 第二日目の最後には、昨年同様に SACLA 利用研 究課題審査委員会( PRC )の委員長でもある米田仁 紀教授から、 PRC から利用者へ向けたメッセージ が述べられた。 最後にポスターセッションについて報告しておく。 昨年に引き続き今回もポスターセッションが設けら れ、施設報告や利用者から合計 13 件のポスターが 掲示された。そしてポスターセッションの時間にな ると多くの参加者で賑わいを見せ、やはりここでも 利用者、ビームライン担当者、加速器担当者が密接 に結びつく SACLA ならではの光景を見ることがで きた。 図 2 .ポスターセッションの様子 24 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 803,S)0P AN% C0..ITTEE 3EP03T 3.まとめ SACLA Users' Meeting は、利用者と施設および 利用者間の情報共有と意見交換を主な目的として開 催され、今回で通算 10 回目の開催となる。本ミー ティングでの利用者からの要望に対する施設側の対 応や、施設側からの情報を活かした SACLA 利用研 究の展開などの情報は、ホームページ等で随時公開 される予定である。今後も SACLA Users' Meeting は開催される予定となっている。次回の開催ついて は詳細が決まり次第、 SACLA のホームページ ( http:// xfel.riken.jp )などで情報が公開される予定である。 今回の SACLA Users' Meeting も盛況のうちに終 えることができたのも、国内外の多くの利用者が参 加し、活発な議論をしたことに尽きると思われる。 ここに SACLA Users' Meeting 2025 に関わった皆様 に厚く御礼を申し上げる。 大和田 成起 OWADA Shigeki (公財)高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 〒 679 - 5198 兵庫県佐用郡佐用町光都 1 - 1 - 1 TEL : 0791 - 58 - 0992 e-mail : osigeki@spring 8 .or.jp SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 25 研究会等報告 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) 国立研究開発法人物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター 永 村 直 佳 熊本大学 理学部 理学科 物理学コース 水 牧 仁 一 朗 兵庫県立大学 理学部 光物性学分野 田 中 義 人 第 7 回特定放射光施設 BLs アップグレード検討ワークショップ報告 バラエティに富んだ内容となっています。 本 WS には、 204 名(現地: 61 名、オンライン: 143 名)が参加しました。東京マラソンも開催され た週末で NanoTerasu の共用 BL 利用開始 2 日前とい う多忙な時期にも関わらず、多くのユーザー・施設 関係者が参加し、対面では深く白熱した議論が繰り 広げられました。 2.セッション 1 オープニング オ ー プ ニ ン グ セ ッ シ ョ ン で は、 藤 原 明 比 古 SpRUC 会長( 写真 1 )より挨拶がありました。主 催者として、 SpRUC 立ち上げの経緯、活動の方向性、 新しくなった本 WS の役割および概要、目標を説明 されました。 続いて、 JASRI 雨宮慶幸理事長( 写真 2 )より挨 拶が行われました。本 WS の立ち位置は時代に合わ せて変遷しつつも、引き続き施設とユーザーの良好 な連携を促進する役割への期待を述べられました。 また、 3 月 3 日からの NanoTerasu 共用 BL 利用開始 と 4 本目の共用 BL 整備予定についても言及があり ました。 1.概要 第 7 回特定放射光施設 BLs アップグレード検討 ワークショップが、 2025 年 3 月 1 日(土) ・ 2 日(日) に 秋 葉 原 UDX ギ ャ ラ リ ー NEXT に お け る 講 演 と Zoom を利用したオンライン配信にて開催されまし た。本ワークショップ( WS )は、昨年度に SPRUC 第 6 回 BLs アップグレード検討ワークショップとし て開催していたものが、 SPring-8 ユーザー協同体 ( SPRUC )と NanoTerasu ユーザー共同体( NTUC ) が 統 合 し た 新 体 制「 特 定 放 射 光 施 設( SPring-8/ SACLA/NanoTerasu ) ユ ー ザ ー 協 同 体( SpRUC ) 」 下で継承・発展したもので、両ユーザーコミュニ ティ融合後初のイベントとなりました。本 WS の目 的は、 ( 1 )旧 SPRUC 体制で行われてきた、これま での WS や SPring-8 シンポジウムの議論を踏まえた、 それ以降の技術開発動向やビームライン( BL )アッ プグレードの具体的なプラン及び検討事項の共有、 ( 2 ) SPring-8-II に向けた今後の継続的な BL アップ グレードについての議論、 ( 3 ) NanoTerasu の整備 状 況 の 共 有、 ( 4 ) SPring-8-II と NanoTerasu の 相 互 利用や戦略的活用に関する方策についての議論、と 写真 1 SpRUC 藤原明比古会長 (関西学院大学) 写真 2 JASRI 雨宮慶幸理事長 写真 3 文部科学省科学技術・ 学術政策局研究環境課 野田浩絵課長 写真 4 JASRI 坂田修身常務理事 写真 5 JASRI 薮内俊毅氏 26 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 803,S)0P AN% C0..ITTEE 3EP03T 次に、文部科学省科学技術・学術政策局研究環境 課の野田浩絵課長( 写真 3 )から来賓挨拶をいただ きました。 SpRUC 設立への祝辞とともに、産学と もに新たな利用分野の呼び込みが重要であり、施設 のポテンシャルを引き出すためには、ユーザーによ る活発な議論が重要であるとのご意見をいただきま し た。 SPring-8 、 SACLA 、 NanoTerasu の 3 施 設 の 高度化とユーザーの成果の好循環への期待について も述べられました。 続いて、 JASRI 坂田修身常務理事( 写真 4 )より SPring-8 の近況サマリーについて報告がありました。 2024 年度~ 2028 年度の SPring-8-II 整備に対する予 算措置が進んでおり、 SPring-8-II に向けた加速器技 術開発をはじめ、超高安定分光光学系や超高エネル ギー光学系の導入などによる BL 機関部の高性能化 といった取り組みが紹介されました。また、ネット ワークや制御システムの高度化、データセンター運 用などの情報技術推進、利用制度の改正といったソ フトインフラ整備について報告されました。ポート フォリオを意識した BL 再編を進め、各ビームライ ンの大規模改修・高効率化により、産学連携の推進 とユーザー目線での利用しやすさの追求を目指すこ とを説明されました。 本セッションの最後には、 JASRI 薮内俊毅氏( 写 真 5 )より SACLA の近況サマリーについて報告が ありました。まずは X 線自由電子レーザーの光源 特性とその活用事例から解説があり、今後の方向性 として、テーラーメイド光源の実現や有力な利用 展開案について説明がありました。研修会や Users ʼ Meeting の開催を通して、利用者コミュニティーと 施設の連携強化やコミュニティー拡大に取り組んで いることが報告されました。 3.セッション 2 アップグレードを完了した BL に 関する現場と利用者からのフィードバック セッション 2 として、昨年度アップグレードを 完了した BL に関する現場と利用者からのフィード バックが行われました。現在、 BL04B2 と BL39XU の 2 つの BL のアップグレードが完了しており、ユー ザー利用に供されています。一方 BL40XU はアッ プグレードを行なっている段階で、 2025 年 10 月よ り共用開始が予定されています。 はじめに、 JASRI 山田大貴氏 ( 写真 6 ) から BL04B2 のアップグレードについて、特に、新規導入された ハイスループット PDF (二体分布関数)測定装置 が紹介されました。本装置を用いることで、従来と 比べて最大 100 倍の高速化に成功しており、この高 速化は新型二次元 CdTe 検出器による高速・高統計 測定システムの実現やサンプルの自動交換によるも のとの説明がありました。次に東京大学・脇原徹氏 ( 写真 7 )より、このシステムを用いた研究成果を 紹介いただきました。ゼオライトの高機能化を行う ためにはゼオライトの生成機構を原子レベルで理解 することが必要不可欠ですが、その原子レベルでの 構造解析を BL04B2 で多くの試料について迅速に行 うことで生成機構を明らかすることができ、高機能 化へ寄与する研究を報告いただきました。本研究を 通して BL04B2 の新システムの威力についてアピー ルされました。 次に JASRI 河村直己氏( 写真 8 )から BL39XU の 写真 6 JASRI 山田大貴氏 写真 7 東京大学 脇原徹氏 写真 8 JASRI 河村直己氏 写真 9 大阪公立大学 三村功次郎氏 写真 10 JASRI 関口博史氏 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 27 研究会等報告 アップグレード完了後の状況、特に実験ハッチ 2 の X 線発光分光装置について紹介がありました。測定 時の微小試料に集光した X 線を照射する位置決め の困難さを蛍光マッピングすることで克服し、ス ムーズな測定を実現したことが紹介されました。ま た、ユーザー利用においては、 X 線発光分光装置の 利用が大半を占めるユーザー利用状況が示されまし た。その後、大阪公立大学・三村功次郎氏( 写真 9 ) より、上記の位置決めのスムーズさによる実験の効 率化や共鳴光電子測定との同一場所での測定が可能 になったことについてご紹介いただきました。また 入射偏光を制御することにより、 4f 希土類元素の固 体内での電子基底状態が詳細に観測できることを説 明いただきました。 最後に、 JASRI 関口博史氏 ( 写真10 ) より BL40XU のアップグレードの現状が説明されました。アップ グレード後は小角散乱専用ビームラインへと変更さ れます。光学系の主な変更点は、 ID を SPring-8-II 対応の標準型に入れ替えたことと、準単色と単色の 切り替えが可能となったことです。測定系におい ては、実験ハッチ 1 にウォルターミラーを導入して、 マイクロビーム集光を可能としたことと、検出器 ブースを新設して、カメラ長 10 m を確保したこと が報告されました。これらの変更により、より小角 のデータを取得可能となり詳細な議論が可能とのな ることの期待が示されました。 4.セッション3 SPring-8-IIにおけるBLポートフォ リオの検討 セッション 3 では、 SPring-8-II を念頭に置いた各 BL のポートフォリオの提示と、それに基づく総合 討論が行われ、参加者の間で活発な議論が交わされ ました。最後に本 WS の SPring-8 ・ SACLA セッショ ンを俯瞰した初日サマリーがありました。 はじめに、理研 /JASRI 矢橋牧名グループディレ クター( 写真 11 )より、 全体概要として中長期展 望の視点で、 SPring-8-II へのアップグレードスケ ジュール、世界最高性能と省エネサステナブル化の 両立を目指すというコアコンセプト、日本全体とし ての最適化を意識したビームラインポートフォリオ と BL 再編の道筋が提示されました。利用者からの 積極的なフィードバック、ポスト SPring-8-II も見据 えた大胆な提案を歓迎するとのことです。また、前 倒しで行っている BL 設備更新に伴う一部機能の利 用制限の可能性についても言及がありました。 次に JASRI 登野健介氏( 写真 12 )より、分光・軟 X 線 BL 群のポートフォリオについての解説がなさ れました。 「 X 線吸収・発光分光」 「分光イメージ ング・蛍光分析」 「光電子分光・光電子イメージン グ」を X 線分光手法の三本柱として、これらにつ いて、 NanoTerasu も含めた装置群の最適化を意識 しつつ硬 X 線と軟 X 線を相互利用できる分析基盤 整備や、先端計測と汎用計測の両立、不足領域(ク イック XAFS ・テンダー X 線利用・複合環境計測) の強化といった項目が基本思想として提示されま した。具体的に、現行の軟 X 線 BL ( 07SU, 17SU, 25SU, 27SU を 2 本に統合へ) 、 汎用 XAFS BL ( 01B1, 14B2 ) 、分光 ID BL ( 37XU, 39XU ) 、赤外 BL ( 43IR を共用終了へ) 、の再編・高度化・統廃合について、 仕様とスケジュールの詳細な言及がありました。 写真 11 理研 /JASRI 矢橋牧名 グループディレクター 写真 12 JASRI 登野健介氏 写真 13 理研 玉作賢治氏 写真 14 理研 石川哲也センター長 28 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 803,S)0P AN% C0..ITTEE 3EP03T 写真 15 SpRUC 有馬孝尚副会長 (東京大学) 写真 16 QST 堀場弘司氏 写真 17 JASRI 大石泰生氏 続いて、理研・玉作賢治氏( 写真 13 )より、高 エネルギー・回折 BL 群のポートフォリオについ ての解説がなされました。現行の回折・散乱 BL 群( 02B1, 02B2, 04B1, 04B2, 13XU, 40XU, 46XU, 05XU, 15XU )の具体的な再編・高度化の状況につ いて説明がありました。また、 SPring-8-II の新光源 活用において、高エネルギーピンクビームやダンピ ングウィグラーの導入による高エネルギー領域の高 フラックス化の検討について言及がありました。 総合討論と質疑応答では、狙うべきサイエンスと 評価軸、利用開始「 Day1 」に対してさらに次を見 据えた本格運用開始「 Day2 」の見通し、長直線部 に導入予定のダンピングウィグラーの用途、共用終 了する 43IR の代替として UVSOR への機能移転や レーザー光源を利用したナノスケール赤外分光シス テムの提供、構造生物系における産業利用枠、など の検討事項が確認されました。 また、軟 X 線 BL の在り方について、テンダー 領域も含めた新たなサイエンスの開拓や、需要と 供給のバランス、 NanoTerasu との連携について議 論が交わされました。特に XAFS は先端計測も汎 用計測もどちらも現状の需要が高いだけではなく ポテンシャルユーザーも多く、 SPring-8 だけでも NanoTerasu だけでも需要には答えられないが、さ らなる利用拡大のチャンスでもあるという認識が共 有されました。 藤原明比古 SpRUC 会長より、同一施設内で同じ 試料を分析できる価値の重要性が指摘され、 JASRI 山田大貴氏から、回折・散乱 BL 群については試料 周りの共通化が進んでいるとの回答がありました。 JASRI 池本夕佳氏と量子科学技術研究開発機構 ( QST )高橋正光 NanoTerasu センター長より、 2027 年後半から 1 年間にわたる SPring-8 の完全停止期間 において、他施設エンドステーションの代替利用 希望や、そもそも代替可能な必要スペックかどう か、どのような情報提供が必要か、等の、施設サイ ドへの詳細な要望を利用者サイドでまとめてもらえ るとよい、との意見が提示されました。これに対し JASRI 雨宮慶幸理事長から、放射光学会が、そのよ うな利用者サイドや産業利用の要望を先導してまと めて欲しい、との指摘がありました。 5.初日サマリー 初 日 サ マ リ ー で は、 理 研 放 射 光 科 学 研 究 セ ン ター・石川哲也センター長 ( 写真 14 ) より、 BL アッ プグレードは順調で、ネクストステージとして、ロ ボティクスによる超効率化、データ駆動サイエン ス、エンドステーション間切り替えの簡易化、海外 に倣った課題選定の常時化を考えていく段階である とのご意見をいただきました。また、放射光の利用 者コミュニティーが一体となって議論を進めるの は望ましいが、常に新規利用者に開かれた組織で あるべき、第 3 世代から第 4 世代への変化が大きく ないように感じられるので、若い世代へ跳躍を期待 する、とのコメントもいただきました。質疑応答で は、第 4 世代の使い方が具現化されないと、第 4 世 代の新たなサイエンスも生まれてこないのではない か、という指摘があり、石川センター長からは、第 4 世代の特徴として、コヒーレンスのみならずそれ を超えるサイエンスが出てきて欲しいとのコメント SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 29 研究会等報告 写真 18 QST 石井賢司氏 写真 19 東京大学 小林正起氏 写真 20 広島大学 木村昭夫氏 写真 21 QST 高橋正光センター長 がありました。また、テンダー領域のサイエンスは NanoTerasu が担うべきなのか、との質問に対して、 石川センター長は、 新しい施設である NanoTerasu は、 SPring-8 の未踏領域を狙うべきであり、それがテン ダー領域である、との見方を示されました。 6.セッション 4 NanoTerasu 共用ビームラインに ついて 2 日 目 は NanoTerasu セ ッ シ ョ ン で あ り、 セ ッ ション 4 の冒頭で有馬孝尚 SpRUC 副会長( 写真 15 ) よ り、 挨 拶 お よ び 翌 日 よ り 本 格 共 用 が 開 始 す る NanoTerasu の状況説明と、本セッションの趣旨説 明がなされました。 まず、 QST 堀場弘司氏( 写真 16 )より NanoTerasu 共用ビームラインの概要について説明がなされま した。第一期共用ビームラインである BL02U (軟 X線超高分解能共鳴非弾性散乱) 、 BL06U (軟X線 ナノ光電子分光) 、および BL13U (軟X線ナノ吸収 分光)の特徴が示され、それぞれ順調に立ち上がり、 翌日からの本格共用開始に臨んでいることが報告さ れました。また、第二期として、X線回折ビームラ イン増設が決定しているとの説明がありました。 続 い て、 J A S R I 大 石 泰 生 氏( 写 真 17 ) よ り NanoTerasu の共用利用支援体制について説明がな されました。共用研究課題申請システムおよび課 題申請体制を SPring-8/SACLA と共通のプラット フォームにて整備することで高い運用性を確保した こと、ならびに、新たに仙台に事業推進室が設置さ れ、共同利用者支援および調査研究・手法開発を行 う体制が整備されたことが報告されました。 7.セッション 5 NanoTerasu 共用に向けて セッション 5 では、 NanoTerasu の共用に向けて、 他の様々な放射光施設を活用してきた NanoTerasu ポ テ ン シ ャ ル ユ ー ザ ー か ら の 研 究 事 例 紹 介 と NanoTerasu 利用研究展望の提案、施設サイドから の現状報告と整備計画の説明、本日の NanoTerasu セッションに関する総合討論が行われました。 最初に、 QST 石井賢司氏( 写真 18 )より、共鳴 非弾性散乱分光( RIXS )手法についての解説がな されました。国内設備の歴史、銅酸化物系を中心と した電子状態解析事例、海外における磁性材料での 磁気励起や電極活物質での酸化還元反応などの分析 研究事例を紹介いただきました。 SPring-8-II では硬 X 線 RIXS 、 NanoTerasu では軟 X 線 RIXS という棲 み分けがされているという利用者としての認識が示 されました。今後の NanoTerasu への具体的な要望 として、オペランド計測への対応、試料の方位角度 や温度といった調整パラメータの範囲拡大、解析補 助、 2D RIXS の豊富なデータからの情報抽出、競 争率の緩和、共用 BL での迅速汎用 RIXS 導入など を挙げられました。 次 に、 東 京 大 学・ 小 林 正 起 氏( 写 真 19 ) よ り、 角 度 分 解 光 電 子 分 光( ARPES ) 手 法 に つ い て の 解 説 が な さ れ ま し た。 軟 X 線 を プ ロ ー ブ と し た ARPES における重要キーワードとして「ナノ集光」 「高分解能」 「 2D → 3D 」 「デバイス」を挙げ、検出 深さが大きい、バルクバンドが観測できる、共鳴に より d ・ f 軌道の情報が得やすい、などの軟 X 線の 利点を活かした、スピントロニクス素子を構成する 量子マテリアル薄膜の電子状態分析事例を紹介いた 30 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 803,S)0P AN% C0..ITTEE 3EP03T だきました。 NanoTerasu 利用への展望として、ナ ノ集光・オペランド計測・時間分解計測の重要性、 高効率検出技術による分解能改善への期待について 言及がありました。 次に、広島大学・木村昭夫氏( 写真 20 )より、 X 線吸収・磁気円二色性( XMCD )手法についての 解説がなされました。 SPring-8 における磁性トポロ ジカル絶縁体の解析事例や、 Diamond Light Source (英)など海外の放射光施設における磁性多層膜構 造や交代磁性体などの軟 X 線 XMCD を活用した最 先端研究事例を紹介いただきました。 NanoTerasu ではナノ集光による高い空間分解能を活かしたイ メージング計測が可能であるという観点から、磁気 ダイナミクスのみならずスピントロニクス材料にお けるスピン流の交流成分検出など、時間構造も意識 した研究発展に期待を寄せられました。また、テン ダー領域の強化によるカバーできる元素の範囲が拡 がることへの期待も述べられました。 最後に、 QST/NanoTerasu 高橋正光センター長 ( 写 真 21 )より、 NanoTerasu の現状と今後について説 明がありました。まず現状の加速器性能・光源特 性・第 1 期整備 BL 概要が紹介されました。共用促 進法適用施設としての役割およびユーザーニーズ を踏まえて、現行の第 1 期整備 BL に加え、高ユー ザーニーズ共用 BL 、応用拡大共用 BL 、先端利用共 用 BL 、 R&D BL (テンダー X 線の光学系・光学素 子開発を含む)にグループ分けし、それぞれの想定 BL ラインナップと中長期整備計画が提案されまし た。高ユーザーニーズ共用 BL のうち、 X 線回折 BL については 2024 年度内に予算措置が進み、ビーム ラインの増設作業が始まっているとの報告がありま した。 引き続き総合討論が行われ、各施設関係者と利用 者で活発な議論が展開されました。理研・初井宇記 氏から NanoTerasu のネットワークがクローズドで 不便であり、データを外部に高速転送できるように してほしいとの要望があり、 QST/NanoTerasu 高橋 センター長からは、セキュリティーを重要視してい るが、東北大学のスパコンとの連携や、外部からの アクセステストも慎重に実施しており、利便性を改 善する方向に技術開発を進めているとの回答があり ました。 JASRI 雨宮理事長からは、テンダー X 線領域に関 するコミュニティー内のコンセンサスが必要である との指摘がありました。これに関しては多くの意見 が挙げられ、便宜上意図的に幅広いエネルギーをテ ンダー領域と呼んでいることはあるが、軟 X 線の上 の方のエネルギーか、硬 X 線の下の方のエネルギー か、人によって認識が異なるとの声が多かったよう です。利用者としては、軟 X 線~テンダー領域~硬 X 線がシームレスに使えることが理想だが、光源性 能的に難しいので、 NanoTerasu による軟 X 線から エネルギーをあげていく技術開発と SPring-8 による 硬 X 線からエネルギーを下げていく技術開発の、両 輪によるオーバーラップが重要ではないか、との意 見が寄せられました。 熊本大学・水牧仁一朗氏から、需要が高そうな 汎用 RIXS の導入計画はないのか、との質問があり、 QST/NanoTerasu 高橋センター長からは、汎用 RIXS が設置してあるコアリションビームラインが 2 年後 から一部共用開始する予定があるとの言及がありま した。 他にも、軟 X 線の画像検出器開発、 R&D BL にお ける開発体制、 1 年にわたる試験共用の結果を公開 する研究会・報告書の公開予定、共用 BL における コヒーレンス、運動量イメージングへの需要、強磁 性共鳴の活用における時間構造の必要性、既存ユー ザーを対象にしたニーズ調査に加えてポテンシャル ユーザーを対象にした新たなニーズ発掘の重要性、 といった幅広い議題が挙がりました。 8.クロージング 最後のクロージングセッションでは、 JASRI 雨宮 理事長から、閉会の挨拶をいただきました。 SpRUC 新体制で本 WS や秋のシンポジウムの準備体制も変 化し、新しく変化していくことへの期待について述 べられました。また、放射光コミュニティー内では 世代の定義は光源性能でコンセンサスが取れている が、第 4 世代(マルチベンドアクロマットラティス 採用)の放射光施設が実現したことで、第 4 世代に よって何ができるのか社会的に問われる機会が増え ることは確実で、各人がそれを意識して明確化して SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 31 研究会等報告 おくことが重要、とのご指摘がありました。 以上、新体制として、新たな場所で、例年より 長い丸二日にわたる WS 、と初めてづくしでしたが、 施設サイドと利用者サイドが闊達に意見を交わせる 有意義な場であったと思います。 会議のプログラムの詳細は下記 Web ページにて 公開されています。 http://www.spring8.or.jp/ja/science/meetings/2025/ 250301/ 永村 直佳 NAGAMURA Naoka (国研)物資・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター 光電子分光グループ 〒 305 - 0003 茨城県つくば市桜 3 - 13 TEL : 0298 - 59 - 2627 e-mail : NAGAMURA.Naoka@nims.go.jp 水牧 仁一朗 MIZUMAKI Jinichiro 熊本大学 理学部理学科物理学コース 〒 860 - 8555 熊本県中央区黒髪 2 - 39 - 1 TEL : 096 - 342 - 3066 ( 709 ) e-mail : mizumaki@kumamoto-u.ac.jp 田中 義人 TANAKA Yoshihito 兵庫県立大学 理学部光物性分野 〒 678 - 1297 兵庫県赤穂郡上郡町 3 - 2 - 1 TEL : 0791 - 58 - 0139 e-mail : tanaka@sci.u-hyogo.ac.jp 32 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 803,S)0P AN% C0..ITTEE 3EP03T 国立研究開発法人理化学研究所 放射光科学研究センター SACLA ビームライン基盤グループ Jungmin KANG (姜 正敏) 公益財団法人高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 大 和 田 成 起 SACLA 研修会「シリアルフェムト秒結晶構造解析研修会」 1.開催の経緯 X 線自由電子レーザー( XFEL )施設 SACLA では、 高強度(~ 10 11 フォトン / パルス)かつ 10 fs 以下の 短い XFEL パルスを用いて、シリアルフェムト秒 結晶構造解析( Serial Femtosecond Crystallography 、 SFX )実験を行っている。 SFX は、連続的に輸送さ れる微小結晶(試料)に XFEL パルスを入射し、結 晶が破壊される前に得られる回折パターンを収集す ることで、放射線損傷を受ける前の分子構造を原子 分解能で捉える結晶構造解析法である [1,2] 。タンパ ク質などの生体高分子を室温で測定できること、光 学レーザーと XFEL を組み合わせたポンププローブ 型 SFX 実験で分子の動的構造を時分割観察できる ことが大きな特長である [3] 。このことから、 XFEL 施設が共用されて以来 SFX 実験の実施に対する要 望は非常に高く、 2024 年度の SACLA では、生物系 および材料系試料の SFX 実験が硬 X 線ビームライ ンのビームタイム全体のおおよそ 1/4 を占めている。 一方、実験の原理上、膨大な試料の消費を避けられ ないことに加え、ビームタイムにも限りがあるため、 実験を「効率よく」進め、限られた試料量と時間の 中でいかに多くの有効な回折パターンを獲得できる かが、 SFX 実験の成敗を分ける。 実験行程の効率を高めるために、 SACLA では、 京都大学の岩田想教授らの研究グループと協力し、 DAPHNIS 実験プラットフォームを開発した [4,5,6,7] 。 この実験プラットフォームでは、大気圧のヘリウム 置換チャンバーに [4] 、試料充填やノズル交換が容易 な高粘度媒体インジェクターが導入され [5] 、 4M ピ クセルの大面積受光面を有する Octal 型 MPCCD 検 出器を利用できる [6] 。 1 時間あたり十万枚以上収集 される回折パターンを SACLA の High Performance Computing ( HPC )システムと連携したデータ処理 プロセス( Cheetah パイプライン)を通して処理し、 ほぼその場で解析結果を順次確認できるようにした [7] 。 DAPHNIS プラットフォームは、その開発と 10 年強に及ぶ運用実績を経て SFX 実験行程の効率と 安定性を高め、 2024 年現在、米国 SLAC 研究所の LCLS に続く Protein Data Bank の登録実績を上げて いる [8] 。 一方で、 XFEL を用いた SFX 実験は、従来の放 射光を用いた結晶構造解析とは異なる部分も多く、 SFX の基礎について学ぶ機会に対する要望が寄せ られていた。そこで、 SFX 実験に興味があるものの、 まだ XFEL で結晶構造解析実験を行ったことがない 放射光ユーザーの方々を主な対象として、 「シリア ルフェムト秒結晶構造解析研修会( SFX 研修会) 」 が企画された。計測試料としては、生体高分子試料 を主なターゲットとして想定した。研修会は、今後 の研究提案・実験実施に向けて、現在 SACLA で行 われている典型的な SFX 実験の各行程を体験いた だくことを目的とした。そのため、講習と実習を組 み合わせた形式とし、参加者が試料調製からデータ 処理まで、直接手を動かして体験できるように計画 図 1 .研修会における講義の様子 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 33 研究会等報告 された。 2.研修会の内容 SACLA で行われる初めての研修会となる本 SFX 研修会は、 2025 年 2 月 12 日 (水) と 13 日 (木) の二 日間、 SACLA 実験研究棟で行われた。参加者全員 に実際に各作業を体験いただくため、参加者は 5 名 に制限させていただいた。内訳は、大学所属の方 4 名(うち教員 1 名、大学院生 3 名)と企業所属の研 究者の方 1 名であった。 研修プログラムは、講義、実験実習、データ解析 実習の全 3 部で構成された。講義の部は、 1 日目の 2 月 12 日午前 9 時 30 分から 12 時まで、 SACLA 実験 研究棟 2 階の小会議室で行った。初めに本研修会の 趣旨を説明するともに、 SACLA における利用研究 課題の申請について簡単に紹介した。その後、東北 大学の南後恵理子教授に、 SFX 実験の概要につい ての講義を約 1 時間行っていただいた。この講義で は、 SFX 実験の黎明期から現在の装置開発、研究状 況について説明され、従来の放射光を用いた結晶構 造解析との違い(特長) 、 SFX 実験の課題、 SACLA における実験実施状況、ポンププローブ法や二液混 合法による時分割 SFX 実験などについて紹介され た。その後、東北大学の藤原孝彰助教には、ター ゲ ッ ト 試 料 の 微 結 晶 化( micro-crystallization ) の 方法について、約 30 分間講義いただいた。その中 では、均一な粒径のマイクロメートルスケール結 晶を十分な量(~ 10 8 個 /mL )作るための技術的な 要点について重点的に説明された。 3 つ目の講義と して、 JASRI の Fangjia Luo 研究員からデータ処理 に関する説明が約 30 分間行われた。この講義では、 SACLA の SFX 実験における一般的な回折パターン の解析に関して、データ解析フローの構造と解析に 使用される主なアプリケーションが紹介された。 実験実習の部は、試料結晶化の実習と XFEL 実験 の実習の 2 つからなる。試料結晶化の実習は 1 日目 の午後 1 時から約 3 時間、 SACLA 実験研究棟 1 階の 測定準備室で行った。実習では、 SFX 実験で標準 試料としてよく用いられる鶏卵白リゾチームの微結 晶化を藤原助教の指導の下で行った。ここでは詳細 は割愛するが、本研修会では、文献 [9] で報告されて いる方法に倣って微結晶化を行った。参加者がそ れぞれ直接手を動かし、粒径 4 μm 程度のリゾチー ム微結晶懸濁液を 1 人 1 mL ずつ調製された。測定 の実習は、 SACLA 実験ハッチ 3 で行った。 1 日目の 午後 4 時から約 1 時間、参加者がそれぞれリゾチー ム結晶を試料輸送媒体( Synthetic grease )と混合 し、インジェクターに充填した [10] 。午後 5 時頃から 約 1 時間半は、 XFEL 測定のデモンストレーション を講師が行った。その際、試料の吐出には、研修会 中に参加者が組み立てたインジェクターを利用した。 1.5 μm に集光された XFEL パルス(光子エネルギー 8.5 keV 、パルスエネルギー 600 μJ )を 75 μm 径の 試料ストリームに照射し、約 50,000 枚分の回折パ ターンを取得した。 続く 2 日目の午前 9 時からは、約 3 時間にわたっ て参加者自身でデータ測定を行っていただいた。 1 日目のデモンストレーションと同様の実験条件で、 約 65,000 枚分の回折パターンを新たに取得してい ただいた。なお、ここに記した回折パターンの枚数 は、以下の 2 つの要因を考慮した上で、構造解析を 行うに十分な量と判断したものである。その要因と は、まず、検出器が記録した全フレーム数の内、有 効な回折パターンが記録できたフレーム数の割合 (ヒット率)である。もう一つは、有効なフレーム の内で、結晶学的データの決定(指数付け)に用い られたフレーム数の割合である。 実際の実習では、ある参加者の調製した試料の ヒット率が予想外に低く、試料のストリームも安定 図 2 .参加者による XFEL 実験実習の様子 34 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 803,S)0P AN% C0..ITTEE 3EP03T しなかったために、途中から別の参加者の試料に取 り替えるというハプニングもあった。このような事 態は通常の実験でも発生することであり、結果とし て、試料調製の難しさと重要性を参加者の皆さんに 実感いただける機会となった。 2 日目の午後には、 SACLA 実験研究棟 2 階の解析 ルームにおいて、 Luo 研究員の指導によるデータ解 析実習が約 3 時間行われた。午前中の実験実習で参 加者らが収集し、 Cheetah パイプラインを通して処 理されたデータを用いて、構造解析の基礎的なプロ セスを参加者には体験いただいた。 SACLA のデー タ解析には、解析用高性能コンピュータ( HPC )が 利用される。そこで、実習に際しては、参加者全員 には一時的な HPC アカウントを発行し、 Luo 研究 員の試演に倣って直接コマンドを打ちながら練習し ていただけるようにした。配布した研修会資料に入 力すべきコマンドをすべて載せ、 Unix 系列システ ムの取り扱いに慣れていない参加者でも、ひとまず 一連のプロセスをフォローできるようにした。なお、 参加者らは研修会後に各自の所属機関に戻った後も、 期間限定で、 HPC を用いたデータ解析を遠隔で行 なっていただけるようにした。 3.今後の研修会開催に向けて 今回の研修会の参加者に回答いただいたアンケー トでは、概ね満足のいく有意義な研修会であったと の声をいただけた。今後の研修会開催に向けて、貴 重なコメントを頂けたので、以下にいくつか紹介し たい。 今回は、 XFEL そのものに対する体験的な要素も 含めて、 SFX 実験の行程全般を網羅した内容のプ ログラム構成としたため、時間が限られる中でそれ ぞれの内容に割ける時間が短くなってしまった。こ のような全体像を理解し、習得する研修会とは別に、 試料結晶化や測定、データ解析といったそれぞれの 行程を対象とした研修会を開催することも検討して 欲しいという声をいただいた。 また、今回の研修会は 1 日目の朝から 2 日目の夕 方までのプログラムで実施された。そのため、移動 を含めると参加のために 3 日程度の時間の確保が必 要となり、特に教員や一般企業の研究者にとっては 参加の障壁になり得るとのコメントもいただいた。 例えば講義などの一部の研修をオンラインで実施す るなどして、現地の滞在時間を減らす取り組みも検 討する価値があると思われる。 さらに、より複雑な実験に対応する形で、光学 レーザーや二液混合システムを用いた時分割の SFX 実験に関する研修を希望する意見もあった。 SFX 実験に興味を持つ利用者のほとんどが、最終的に時 分割実験の実施を希望していることを考えれば、こ れに重点をおいた研修会の需要が大きいことは理解 できる。一方、取り扱う内容として研究そのものに 踏み込む側面があるため、どこまでを研修内容と するかについては、きちんと検討される必要があ る。現在 SACLA で実施されている Feasibility check beamtime ( FCBT )や試験利用の枠組みも考慮し、 利用者のニーズに的確に対応できる形の支援を模索 していきたい。 本研修会は JASRI の XFEL 利用研究推進室が主催 し、開催にあたっては、東北大学の南後恵理子教 授および藤原孝彰助教、理化学研究所放射光科学 研究センターの SACLA ビームライン基盤グループ、 JASRI の回折・散乱推進室 回折構造生物チーム (旧・構造生物学推進室) 、研究プロジェクト推進室 の皆様にご協力いただいた。また、本研究会の開催 に当たりご支援いただいた JASRI 利用推進部の皆 さまに、心から感謝申し上げる。 参考文献 [ 1 ] Nuetze et al .: Nature. 406 (2000) 752. [ 2 ] Chapman et al .: Nature. 470 (2011) 73. [ 3 ] Nango et al .: Science. 354 (2016) 1552. [ 4 ] Tono et al .: J. Synchrotron Rad . 22 (2015) 532-537. [ 5 ] Shimazu et al .: J. Appl. Cryst. 52 (2019) 1280-1288. [ 6 ] Kameshima et al .: Rev. Sci. Instrum. 85 (2014) 033110. [ 7 ] Nakane et al .: J. Appl. Cryst. 49 (2016) 1035-1041. [ 8 ] Orville et al .: Time-Resolved Studies of Protein Structural Dynamics. In: Ueda (eds) Ultrafast Electronic and Structural Dynamics. Springer, Singapore. (2024). SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 35 研究会等報告 [ 9 ] 南後恵理子他 : 蛋白質科学会アーカ イ ブ 8 (2015) e081. [10] Sugahara et al .: Nat. methods. 12 (2015) 61. 姜 正敏 KANG Jungmin 国立研究開発法人理化学研究所 放射光科学研究センター SACLA ビームライン基盤グループ 〒 679 - 5148 兵庫県佐用郡佐用町光都 1 - 1 - 1 TEL : 0791 - 58 - 0802 e-mail : j.kang@spring 8 .or.jp 大和田 成起 OWADA Shigeki 公益財団法人高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室 〒 679 - 5198 兵庫県佐用郡佐用町光都 1 - 1 - 1 TEL : 0791 - 58 - 0992 e-mail : osigeki@spring 8 .or.jp 1.はじめに 2023 年 4 月 か ら 2025 年 3 月 に か け て の 2 年 間、 SPring-8 利用研究課題審査委員会( Proposal Review Committee 、以下 PRC )の委員長を務め、 2023B 期 ~ 2025A 期の課題審査を担当させていただきまし た。以下に、この 2 年間の審査を振り返り、概要と 感想を簡単に述べます。 2.PRC での審査に関して PRC は、 SPring-8 選定委員会のもとに設置された 委員会で、一般利用研究課題の審査を担っています。 なお、大学院生提案型課題(長期型)の審査は別の 委員会(大学院生利用審査委員会)で行われるため、 PRC が審査対象としている大学院生提案型課題に は含まれません。現在、 SPring-8 では、年 2 回募集 (各年度 A 期と B 期)を行うビームラインと年 6 回 募集( A 期と B 期のそれぞれについて第 I 期から第 III 期まで) を行うビームラインがあります。 PRC は、 年 2 回募集のビームラインの応募課題と年 6 回募集 のビームラインの第 I 期の応募課題についてはハイ ブリッド会議で審査を行っています。年 6 回募集の ビームラインにおける各期第 II 期と第 III 期の応募 課題については、メール審議を行っています。 応募課題について専門的な審査を行うために、 PRC のもとには、散乱回折、分光・分光イメージング、 イメージング、非弾性散乱、構造生物学、産業利用、 人文・社会科学、その他(持込装置利用)という 8 つの分科会が設置されています。このうち、散乱回 折分科会と分光・分光イメージング分科会は、対応 する研究分野が広く審査すべき課題の数も多いため、 以下のように複数のチームに分かれた審査体制を引 いています。 散乱回折分科会 小角 ・ 広角散乱、 X 線回折(単結晶) 、 X 線回折(粉 末) 、 X 線回折(汎用 ・ 構造評価) 、 X 線回折(高圧) 分光・分光イメージング分科会 汎用 XAFS ・ 汎用 MCD 、 先端 X 線分光、 光電子分光、 赤外分光 応募のあった一般課題と大学院生提案型課題につ いては、まず、原則 4 名の学識者によるレフェリー 審査が行われます。これと並行して、施設側で安全 審査と技術審査が行われます。分科会は、これらの 審査結果を踏まえて各専門分野としての総合的な審 査を行い、シフト配分素案を作成します。各分科会 (散乱回折分科会と分光・分光イメージング分科会 については各チーム)の主査、および、施設側委員 から構成される PRC は、各分科会で議論された内 容に関する情報を共有すると共に、全体のシフト配 分案を決定し、 SPring-8 選定委員会に上程します。 2023B 期から 2025A 期の間、年 2 回のハイブリッ ド会議で扱った一般課題と大学院生提案型課題の採 択数 / 応募数は、 469 ( 32 ) / 706 ( 69 ) 、 418 ( 31 ) / 638 ( 58 ) 、 500 ( 37 ) / 715 ( 68 ) 、 422 ( 42 ) / 645 ( 70 ) と推移してい ます。ここで、 ( )内は大学院生提案型課題の数を 内数で示しています。また、年 6 回募集のビームラ インにおける 2023B 期から 2024B 期の間の第 II 期と 第 III 期の推移は、 76 ( 7 ) / 131 ( 17 ) 、 80 ( 11 ) / 136 ( 16 ) 、 87 ( 9 ) / 128 ( 24 ) 、 67 ( 8 ) / 109 ( 22 ) 、 84 ( 13 ) / 146 ( 22 ) 、 66 ( 7 ) / 128 ( 15 ) と な っ て い ま す。 第 I 期、 第 II 期、 第 III 期を合わせると、半年ごとにおよそ 900 の課 題応募があり、そのうち 600 程度が採択されている という状況です。 PRC では、より良い課題を選定するために、研 究動向や審査のあるべき姿についても議論します。 例えば、この 2 年間では、装置持込課題への配分シ SPring-8 利用研究課題審査委員会 委員長 東京大学/理化学研究所 有 馬 孝 尚 SPring-8 利用研究課題審査委員会を終えて 36 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS フト上限に関する議論が行われています。施設がな るべく大きな成果を上げるためには装置持込課題に どの程度の上限を設定すべきかは、容易には答えの 出ない問題です。また、いくつかのビームラインに ついては、採択率が低い状態が常態化しています。 SPring-8-II の整備に向けたビームラインのアップグ レードにも関係していることから、引き続き、状況 を注視する必要があります。 最後になりましたが、 PRC 委員の皆様には活発 なご議論をいただき、心より感謝申し上げます。ま た、委員会の議事が円滑に進むように万全の準備を していただいた事務局に感謝いたします。 有馬 孝尚 ARIMA Taka-hisa 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 〒 277 - 8561 千葉県柏市柏の葉 5 - 1 - 5 TEL : 04 - 7136 - 3805 e-mail : arima@k.u-tokyo.ac.jp 理化学研究所 創発物性科学研究センター 〒 351 - 0198 埼玉県和光市広沢 2 - 1 e-mail : takahisa.arima@riken.jp SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 37 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 1.小角・広角散乱分科会 1 - 1 .審査全般 ここに記したコメント (というよりも印象) は、 DS1 分科の審査過程における委員二人(大阪大学 寺尾 憲教授、 JASRI 関口博史博士)との議論の中で出 てきたものである。 随分と昔、申請課題の審査会などに出席していた が、全体的には審査過程そのものには今も大きな変 化はなさそうに思われる。勿論、研究テーマそのも のは時代とともに徐々に変わってきている。カーボ ンニュートラル社会、バイオマス資源などのキー ワードと関わるテーマが増えているのは無理からぬ ことである。数多くの申請書を見る限り、自身の テーマをそうした流行りの言葉と強く関連付けよう とする傾向が多いことに気づかされる。発足当初に 比べると各ビームラインの設備なども著しく高度化 されており、ユーザーにとっては思い切った実験に 挑戦できる機会がさらに増えたことは有難い。しか し不思議なことに、せっかくの高度化システムであ るにもかかわらず、ラボで出来そうな研究テーマに 甘んじている申請が多いのは甚だ残念ではある。た とえば小生らが担当している分科会では、広角・小 角散乱同時測定が当然のように行われてしかるべき であろうが、意外とその類の申請は多くない。嘗て の課題審査全体会議では、ラボで出来る実験テーマ は出来る限り採択しないようにとのお触れが声高に 出されていたが、最近の申請書を見ると、その傾向 は緩くなっているような印象をもってしまう。 時期によって課題申請件数に多い少ないがあるの は仕方ないが、多い時には 500 ページから 800 ペー ジの書類を見ることになる。読み始めと読み終わり とで審査側の勢いも違ってくる。もう少し、申請を 分散させる手はないものであろうか。 SPring-8 利用研究課題審査委員会 小角・広角散乱分科会主査/豊田工業大学/あいちシンクロトロン光センター 田 代 孝 二 X 線回折(単結晶)分科会主査/京都産業大学 理学部 下 村 晋 X 線回折(粉末)分科会主査/名古屋市立大学 大学院理学研究科 青 柳 忍 X 線回折(汎用・構造評価)分科会主査/東京大学 大学院工学系研究科 脇 原 徹 X 線回折(高圧)分科会主査/大阪大学 基礎工学研究科 清 水 克 哉 汎用 XAFS ・汎用 MCD 分科会主査/関西学院大学 工学部 鈴 木 基 寛 先端X線分光分科会主査/東北大学 多元物質科学研究所 雨 澤 浩 史 光電子分光分科会主査/東北大学 多元物質科学研究所 組 頭 広 志 赤外分光分科会主査/東北大学 金属材料研究所 佐 々 木 孝 彦 イメージング分科会主査/東京理科大学 先進工学部 世 良 俊 博 非弾性散乱分科会主査/島根大学 材料エネルギー学部 細 川 伸 也 構造生物学分科会主査/大阪大学 大学院理学研究科 今 田 勝 巳 その他(持込装置利用)分科会主査/近畿大学 理工学部 矢 野 陽 子 産業利用分科会主査/九州シンクロトロン光研究センター 妹 尾 与 志 木 人文・社会科学分科会主査/奈良県立橿原考古学研究所 保存科学センター 奥 山 誠 義 SPring-8 利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告 38 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 1 - 2 .科学審査ならびに審議過程で感じるところ これら数多くの申請書を読んで、そして分科会で の審議において時々感じることをリストアップして おく。特段に目新しいことではないが、今後の申請 ならびに審査において参考になれば、と思う。 ( 1 )申請書作成では、その研究のオリジナリティー を強調せよ、と指導されている。ユーザーによっ ては「初めてである」 「全くなされたことがない」 「画期的な成果になる」 「極めて独創的である」な どの語句を連発するだけのものも少なくない。 「こ の研究はこういう点で重大である、これまでの文 献ではここまでは分かっているが、この点は未知 である、ここが未解決である」とかを理路整然と 描かれている申請書は数少ない。その研究テーマ の位置づけを審査委員がよく理解できるように書 くべきである(科研費と同じはずであるが、残念 ながら依然として多くのユーザーには認識されて いない) 。昨年度に不採択になった申請書をその まま今年度の申請に使っている場合も決して少な くないが、何故落とされたのか意識が全然ないの には驚かされる。 ( 2 )特に昨今の申請書で目立つのは、海外の研究発 表とのかかわりを、全く触れていない申請書が多 い点である。申請書と似た内容の論文が海外で出 ていても知らぬ顔である。 「国内」あるいは「申 請者」という井戸の中に平然と住んでいる蛙が増 えているのは非常に気になる。ユーザーの皆さん は、果たして他者の論文を一日に何報、読んでお られるのであろうか。 ( 3 )ユーザー自身の研究分野では使い慣れた専門 用語であろうが、審査委員にとっては聞いたこと もない言葉が山盛りされている申請書が結構多い。 難しい表現が如何にも高度な研究を計画している かの如く誤解してしまっているのであろうか。審 査委員の方もあたかも十分理解して審査しました とばかりに採点をするが、なかなかである。科研 費の申請で十分に書き方は熟知しているはずであ ろうにもかかわらず、難解な申請書には手を焼か ざるを得ない。どんなに難しい研究課題であろう が、審査委員にその面白さを分かってもらう努力 はすべきである。 ( 4 )似たようなことであるが、全体の文章がやたら に長く、起承転結が明確ではない申請書も増えて いる印象が強い。頭の中でどれほどに練り上げて いるのか、簡潔かつ明瞭な表現を心がけてもらえ ると、ある意味で審査も楽にはなる。 ( 5 )研究テーマが何年にもわたって継続されるのは 仕方のない、時によっては必要なことである。た だ、 「前回の実験では、この試料でデータを集めた。 今回も同じ内容の実験であるが、試料を別のもの にした」 、では学生実験にすぎない。これまでに 実施した実験結果をきっちりとまとめて説明する とともに、そこで出てきた未解決点をクリアーす るべく、別の試料で実施する必然性が出てきた、 などの説明は不可欠である。 ( 6 )かくして審査点を割り振り、審査結果全体を 分科会で検討するわけであるが、結構、きわどい 点差の審査にならざるを得ない。面白そうなテー マであっても不採択と結論せざるを得ない場合も ある。分科会での審議でも結構悩むところである。 逆にビームタイムにゆとりがあるからと、テーマ として十分練られていないものも滑り込みセーフ にする場合もある。そのような場合、思い切って 不採択として、余ったビームタイムは追加募集す るなど、フレキシビリティーがあってもよいよう には思うが。おまけとするようでは、施設のレベ ルアップにつながらない。 ( 7 )昨今、世界中で放射光施設が目覚ましい速度で 増えている。有難いことに各ビームラインの機器 使用も簡易化されつつあり、光軸調整をはじめと して測定可能なところまで、スタッフが完璧に用 意してくれる。それに比例して、ユーザーの幅も 広がり、結晶学や散乱理論を全然知らないものが 課題申請に合格し、実験データを(曲がりなりに も)集めることが出来るようになってきた。とこ ろが、データ解析が全然できない。現状では、解 析を指導するシステムは必ずしも充実していると は言えず、施設側にとってはアフターケアの充実 が今後の大事な課題になる。 SPring-8-II への脱皮も含め、最近の施設側にはす ごい熱気が感じられる。設備の質が飛躍的に向上し、 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 39 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 今後ますます新しい科学の進展に役立つことは間違 いない。しかしながら、ユーザーの意識がそれと並 行してどこまで強まっているのか、これまでにない 全く新しい科学の展開を目指すうえで彼らの切迫感、 危機感が余り見られないと思われるのは、小生だけ ではないはずである。 (小角・広角散乱分科会主査 田代 孝二) 2.X 線回折(単結晶)分科会 2 - 1 .研究の動向 X 線回折(単結晶)分科会において対象となる研 究分野は、構造物性、有機化学、無機化学など幅広 く、また、研究対象も、 MOF 、有機系結晶、無機 系結晶、金属錯体、強相関電子系物質など多様です。 SPring-8 の高輝度・高分解能特性や高エネルギー X 線を利用することにより、実験室の X 線回折実験で は困難な複雑な結晶構造を持つ物質の構造解析、大 きな結晶が得られていない新規材料の構造解析が可 能となっています。また、電子密度分布を高精度で 決定する研究、マイクロビームを用いた超微小結晶 の構造解析も実施されています。これらの構造解析 を主とした実験のほかに、 X 線散漫散乱測定、時間 分解測定、その場観察やオペランド測定など、単結 晶試料を用いた多彩な回折・散乱実験が行われてい ます。 2 - 2 .課題審査について BL02B1 は本分科会が審査対象とする主なビーム ラインのひとつです。このビームラインでは、二次 元検出器の導入や測定プログラムの改良など測定環 境の高度化により 1 課題あたりの希望シフト数が少 なくなっています。 BL02B1 では年 6 回募集になっ て い ま す が、 2023A 第 II 期 か ら 2025A 第 I 期 ま で の約 2 年間において 1 課題あたりの平均のシフト数 (=希望シフト総数÷申請課題数)を期ごとに計算 すると、おおよそ 3 ~ 6 シフトの間で推移していま した。実際、単結晶構造解析を目的とする課題で は、測定試料の数にもよりますが、 3 シフトを希望 する場合が多いようです。 BL02B1 における課題の 採択率を期ごとに調べてみると比較的大きく変動し ていることがわかりました。その理由のひとつとし て、年 6 回募集のため年 2 回募集の場合に比べて 1 期あたり申請課題数が少なくなり、そのばらつきが 採択率に大きな影響を与えてしまうことがあげられ ます。課題審査が効果的に機能するためには、採択 率が適切な値に保たれることが望ましいと考えられ ますが、現状では、希望シフト数が極端に多い課題 については適切かどうかを検討したり、ビームタイ ムの調整枠を活用したり、といったことが行われて います。採択率の変動が小さくなるような効果的な 施策を今後も検討する必要があるように思われます。 なお、 BL40XU については、設置されていた微 小単結晶構造解析装置が BL05XU に移設予定となっ ているため、 2025A 期の課題審査は行われませんで した。 実験装置の更新などといったビームラインにおけ る実験環境の大きな変化があった場合でもその変化 を把握していない申請課題がわずかながらあること に、課題審査を行っていて気がつきました。このこ とから、特に新規の申請者がビームラインの実験環 境に関する最新情報を迷うことなく得られるような 広報活動も重要であると感じました。 課題審査は、私を含めた 3 名の分科会委員が、レ フェリーコメント等を参考にしながらレフェリーの 評点に基づいて行いました。最後になりましたが、 レフェリーの皆様に感謝を申し上げます。 ( X 線回折 (単結晶) 分科会主査 下村 晋) 3.X 線回折(粉末)分科会 本分科会( DS3 )の 2023-2024 年度の委員は、青 柳 忍(名古屋市立大学) 、藤原 明比古(関西学院大 学) 、河口 彰吾(高輝度光科学研究センター)の 3 名で担当いたしました。主たるビームライン( BL ) と し て BL02B2 と BL13XU に 加 え て、 そ の 他 に BL04B2 、 BL08W 、 BL19B2 、 BL40XU 、 BL44B2 で実施を希望する粉末 X 線回折実験課題について、 レフェリーの審査結果に基づきシフト配分を行いま し た。 上 記 の う ち、 BL02B2 、 BL13XU 、 BL19B2 は年 6 回募集、その他は年 2 回募集の BL です。ま た BL44B2 は理研 BL 、その他は共用 BL です。 本分科会では、申請課題のうち BL02B2 または BL13XU を第一希望の BL とする課題が 8 割以上を 40 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 占めます。また BL13XU を第一希望とする課題の うち、審査の結果、第二希望の BL02B2 で採択され る課題が多いです。 BL02B2 と BL13XU を合算した 本分科会の平均的な課題採択率は、 2023-2024 年度 において 7 割程度でした。 BL02B2 は 2000 年度から共用されている汎用的 な粉末 X 線回折 BL であり、多連装型一次元半導体 検出器と低温・高温ガス吹付装置、サンプルチェン ジャにより、多数の試料の粉末 X 線回折パターン を、広い温度範囲で迅速に測定できます。 BL02B2 は、常連のユーザーが多いことに加えて、 BL13XU を第一希望とするユーザーに第二希望の BL として 利用されることが多いです。そのため新規参入の障 壁はやや高く、新規ユーザーが応募してもなかなか 利用できないという場合があったかも知れません。 BL19B2 、 BL44B2 でも BL02B2 と同様の実験がで きる場合がありますので、その場合はこれらの BL を第二、第三希望の BL としてご指定いただけると、 課題採択の可能性は高くなると思われます。 BL13XU は近年大規模な再編整備が行われた X 線 回折・散乱 BL であり、第 3 実験ハッチに新設され た高分解能粉末回折装置が 2022 年度より共用され ています。この装置を用いることで、 BL02B2 では 実施できない高エネルギー X 線回折や、角度分解能 と時間分解能の高い粉末 X 線回折、各種の operando 測定などが可能になります。ただし、 BL13XU には 4 つの実験ハッチがあり、粉末 X 線回折以外に表面 X 線回折やナノビーム X 線回折などの実験も行われ ています。そのため課題採択率は低く、 BL13XU で ないと達成が困難で、かつ意義のある成果創出が期 待できる実験課題でないと、採択され難いという状 況にあります。現状では、利用するためには課題申 請書の内容を工夫する他ありませんが、成果創出を 最大化するためには、より多くのユーザーが利用で きる方がよいでしょう。そのために今後、例えば少 試料、短時間の測定について、有料で代行測定を行 うサービスなどが準備されたりすると、よりよいの かも知れません。 最後に、本分科会の課題審査に多大なるご協力を いただきましたレフェリーの皆様と分科会委員の皆 様、 JASRI 利用推進部の皆様に深くお礼を申し上げ ますとともに、ご応募いただいたユーザーの皆様の ご研究の今後の更なる発展を心より祈念いたします。 ( X 線回折 (粉末) 分科会主査 青柳 忍) 4.X 線回折(汎用・構造評価)分科会 2023A ~ 2024B まで X 線回折(汎用・構造評価) 分科会( DS4 分科会)の主査を拝命しました。主な ビームラインとしては BL04B2 、 BL08W 、 BL13XU 、 BL19B2 などです。 2 年間で多くの申請課題を審査 しました。分科会の動向などは既に報告しています のでここではコメントしません。一点だけ、皆さん と情報共有させてください。課題審査をしていると、 間違いなく海外からの申請の採択率が低い傾向があ ります。この点に関して PRC では何度も指摘して きました。私が SPring-8 のユーザーとなった 25 年 前とは状況が異なります。世界中に放射光施設が運 用されるようになった現状では、如何に海外から競 争的に優秀な提案を採択し、 SPring-8 から世界に向 けてインパクトのある成果を出すかが重要です。良 い提案を競って獲得しなければなりません。申し上 げにくいことを敢えてコメントさせていただきます。 現状、そのような仕組みになっているとは到底いえ ません。改善はできるはずです。国際化を今よりも 格段に進めないと海外の優秀な研究者は世界の他の 場所で測定するようになります。どうか、よろしく お願いいたします。最後に、申請課題審査において 丁寧なコメントをいただいたレフェリーの皆様、円 滑な分科会進行にご協力いただいた久保田委員およ び小金澤委員に感謝申し上げます。 ( X 線回折 (汎用・構造評価) 分科会主査 脇原 徹) 5.X 線回折(高圧)分科会 5 - 1 .はじめに X 線回折 (高圧) : DS5 の分科会主査を 2 年間 ( 2023 年 4 月~ 2025 年 3 月)にわたって務めさせていただ きました。この期間は 2023B 期から 2025A 期に相 当します。この間を振り返って、いわゆる「コロナ 禍後」とも称される時期における申請および採択状 況を思い出してみたいと思います。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 41 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 5 - 2 .課題審査 まず、 DS5 は競争率の高い(採択率が低い)分科 のひとつであると思います。本分科は高圧力下の地 球科学、物質科学であって、対応するビームライン は主に BL04B1 と BL10XU になります。競争率の 高さは、これらのビームラインのスペックが高く評 価されていることを反映していると感じました。つ まり、他の施設では実施が困難または不可能なス ペックがこれらのビームラインには整備されていて、 ユーザーはその研究に必要なスペックを求めて申請 しています。従いまして、応募課題は必然的に当該 分野において先端的な研究課題が多く、レフェリー の先生方は、課題の評価に相当の時間とエフォート を使っていただいたものと拝察します。 分科会にて審査する際には、レフェリーの先生方 の評点とコメントが乖離している(評点は低いのに コメントでは高評価なもの、またはその逆になって いる)ことが散見されました。これはレフェリー の先生の “まよい ” が原因なのか、評価(コメント) を評点に反映させることの難しさなのか、いまだわ かっていません。わずかな評点の差で、採否が決ま るので、評価方法は引き続き検討していっていただ きたいと感じました。 ビームライン別に具体的に統計データを振り返 ります。採択率は BL04B1 は 80 %強、 BL10XU は 50 %強を推移しました。特に、 BL10XU は海外申 請数が全申請数の 60 %を超えていることが特筆で きます。海外申請は、両 BL ともに中国からが多 数を占めています。海外申請の採択率はそれぞれ 50 %程度、 30 %程度と低いですが、今後はさらに 競争が激しくなることが予想されます。 国内申請、海外申請ともに、同じグループから複 数の課題、似通った課題が申請されています。これ は、申請グループの固定化が起こっていることを表 しているように思います。一方で、新規のグループ からの申請もありますが、結果的に採択率は低く なっているようです。ハイスペックなビームライン においても、研究領域が固定化されることのないよ う、新しいグループの受け入れによる新しい展開を 視野に入れるのは、審査分科会の役目になるのかも しれません。特に新規グループで不採択であった課 題に対しては、審査分科会としての評価コメントを 作成して送付するなどから始めることが出来るよう に思います。 5 - 3 .まとめ 分科会の主査として、申請課題のすべてに目を通 す機会は、審査の大変さを天秤にかけても有用なも のだったと振り返っています。研究課題の内容もさ ることながら、審査委員の方の着目点、評価の重心 など、研究活動において参考になる気づきの機会を 多くもつことができました。 技術審査をしていただいた、ビームラインスタッ フの皆様をはじめ、 JASRI 事務局の皆様に深くお礼 申し上げます。 ( X 線回折 (高圧) 分科会主査 清水 克哉) 6.汎用 XAFS・汎用 MCD 分科会 本分科会は、 XAFS や XMCD に関連する 8 本の ビームラインの課題選定を担当しています。このう ち BL01B1 と BL14B2 では年 6 回の課題募集を行っ ており、この 2 本だけで半年間に約 120 件の応募が あります。近年、実環境・反応条件下での XAFS 解 析が非常に強力な手法として認知され、上記のビー ムラインでの in-situ/operando XAFS や Quick XAFS による時間分解 XAFS 実験の需要が高まっていま す。筆者が分科会主査を務めたこの 2 年間でも、実 環境 XAFS 測定の急速かつ継続的な広がりを実感し ました。この傾向を受けて BL01B1 と BL14B2 の申 請数は増加しており、採択率は 30 %前後と非常に 競争が激しくなっています。レフェリー評点の基 準も他のビームラインよりも高いため、高評点の 課題でも不採択にせざるを得ない場合が多々あり ました。採択率が低下している理由の一つとして、 in-situ XAFS などでは従来の静的測定よりも長い、 多くのシフト数を要求する課題が増加していること があげられます。このように、 2 本の XAFS ビーム ラインでは需要を賄いきれない状況となっており、 汎用 XAFS ビームラインの増設を真剣に検討する段 階かと存じます。その際には、 BL スタッフの人材 も併せて増員されることをぜひご検討いただきたい です。 42 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu C0..UNICATI0NS XMCD に関しては、 BL25SU 、 BL39XU とも課題 数は増加傾向です。 BL25SU の顕微 XMCD 装置は NanoTerasu に移設されましたが、汎用的な XMCD スペクトル測定に堅実な需要があります。また、機 械 学 習 と XAFS/XMCD 計 測 と の 組 み 合 わ せ な ど、 計算科学手法を取り入れた意欲的な課題も提案され ています。今後、 NanoTerasu の XMCD ビームライ ンの整備がさらに進むと期待されますので、双方の 施設の役割分担や課題選定の方法などについて検討 する必要があると考えます。 レフェリー評点が僅差の課題の採否選定について は、毎回大変苦労しました。その際にはレフェリー 評価コメントを参照しながら、分科会委員で申請書 を読み合わせました。レフェリー評価コメントの多 くは大変参考になりましたが、なかには評点とコメ ント内容が整合していないように見受けられるもの もありました。低い評点をつけているのにもかかわ らずコメントは好意的であるもの、あるいはその逆 です。レフェリーにお願いしたいのは、各課題につ いて、長所 (加点要素) と短所 (減点要素) の両方 をコメントに含めていただけると分科会としては大 変助かりますので、今後レフェリー審査を行われる 方にはぜひご留意いただきたいです。 最後に、 2 年間にわたり分科会委員を務めてい ただいた奥村和先生 (工学院大学) 、片山真祥氏 ( JASRI ) には大変お世話になり、深く感謝いたし ます。また、技術審査を担当いただいたビームラ イン担当者各位、 JASRI 利用推進部スタッフの皆様、 そしてご多忙の中課題を審査してくださったレフェ リーの方々には心からお礼申し上げます。 (汎用 XAFS ・汎用 MCD 分科会主査 鈴木 基寛) 7.先端X線分光分科会 7 - 1 .はじめに 令和 5 年~令和 6 年度( 2023B ~ 2025A 期)の先 端 X 線分光( SP2 )分科会の主査を仰せつかり、三村 功次郎先生 (大阪公立大学) 、 河村 直己先生 ( JASRI ) と共に、その重責を務めさせて頂きました。この 分 科 会 で は、 主 に BL17SU 、 BL27SU 、 BL37XU 、 BL39XU に対して提案された、 XAFS や XRF に代 表される X 線分光を用いた先端計測について、課題 選定とビームタイム配分を行いました。 「先端計測」 の性質上、比較的長時間のビームタイム配分を希望 する課題も多く、選定・配分に苦慮することもあり ましたが、お二人の委員のご協力のお蔭もあり、何 とか滞りなく課題選定を行うことができたと思って おります。 7 - 2 .分科会の特長・傾向 この二年間の本分科における傾向を振り返ります と、対象材料としては、以前からに引き続き、セラ ミックや金属の無機材料(触媒、電池、地学・地質 関連)が主流ではありましたが、それらに加えて、 環境・生体材料、高分子材料などへの広がりも見ら れました。一方、計測手法としては、この分科会が 「先端計測」を謳っていることもあり、特殊環境や デバイス動作下での in situ ・オペランド計測、顕微 分光計測など、高度な計測技術を用いた課題申請が 多く見られました。中でも、イメージング分光計測 や高分解能計測、高速計測など、より高度な計測手 法が材料やデバイス評価に適用されつつあり、この 分科のトレンドになりつつあるのを感じました。 7 - 3 .審査について 課題審査は、基本的にレフェリー評点に基づいて 行い、評点が僅差の場合にはレフェリーの評価コ メントを参考にして、配分を決定しました。これ も「先端計測」という分科の性質によるのか、全般 に評点の高い課題申請が多かったように感じました。 レフェリー間の評点にバラツキが見られるケースも 散見されましたが、以前に比べると改善された印象 で、分科再編と相まって、より適切な判断が行える ようになってきているように思います。一方で、海 外からの申請数は少なく、今後の施設国際化を考え ると、この点は少々残念でした。総じて評点も低い 傾向にあるようでしたが、これは内容のレベルが低 いと言うよりも、海外類似施設での課題申請・審査 とやり方や内容が異なることによるのかもしれず、 不採択課題申請者へのレフェリーコメントのフィー ドバックも含め、何らかの対策が必要なのかもしれ ません。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 43 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 7 - 4 .おわりに 最後になりますが、ここ数年間、審査を統括する 立場を経験させて頂くことで、 SPring-8 における研 究運営・支援が多くの関係者のご尽力により支えら れていることを、改めて実感しました。これは、以 前の申請者の立場では知り得なかったことであり、 分科会委員のお二人はもちろん、レフェリーの皆様、 JASRI 職員の皆様にも、この場を借りて改めて御礼 を申し上げます。今後も SPring-8 の研究運営・支援 体制がより一層充実し、日本の科学技術を支える役 割を担い続けてくれることを願っております。 (先端X線分光分科会 雨澤 浩史) 8.光電子分光分科会 私は 2023 および 2024 年度( 2023B-2025A 期課題 審査)の SPring-8 利用研究課題審査委員会( PRC ) におきまして、光電子分光( SP3 )分科会の主査を 務めさせていただきました。本稿ではその簡単な報 告をさせていただきます。 この主査を引き受ける前には、分科会委員として 齋藤智彦主査のもとで審査( 2021B-2023A 期課題 審査)に関わっていました。この期間には、分科会 の再編と BL09XU の年 6 回募集制という二つの大き な改革がありました。齋藤主査はさぞかし大変だっ たかと察しますが、私の任期の期間は大改革後に確 立した体制で、比較的淡々と審査を進めることにな りました。 SP3 分科会は、今田先生(立命館大学) 、 高木先生( JASRI ) 、私の 3 名構成で運営し、審査 課題数も適切で、綿密な審査が行えていると感じて います。会議はすべてオンライン形式で行われ、分 科会委員の負担も軽減されていると思います。年 6 回の審査ですから、もし対面のみだったらさぞかし 大変だったと思う一方、審査が機械的になってしま うというオンライン会議の弊害も少々気になりました。 さ て、 2025 年 3 月 か ら NanoTerasu の 共 用 が 開 始されました。それに先んじての課題募集である 2025A 期の審査では、この NanoTerasu 稼働による 影響がどの程度あるのか興味津々でしたが、現時点 ではその影響はほとんど見られておりません。しか し、 NanoTerasu の本格稼働に伴って、 SP3 分科会で 取り扱っている軟 X 線の角度分解光電子分光などは 今後大きく影響を受けると思われますので、注意深 く推移を見守っていく必要があると思われます。 2021-2022 年に行われた大改革と 2025 年度以降 の NanoTerasu 稼働という変革の間に挟まれた比較 的穏やかな時期の担当となりましたが、この間にも PRC は細かな事柄も含めて、常に改善・改良を行っ てきております。その一つが、不採択だった申請者 へのレフェリーコメントのフィードバックです。こ れはありがたい制度だと思いました。足かけ 4 年間 も審査に触れる機会がありますと、レフェリーが低 い点をつけた理由を申請者が理解していない(でき ない)ばかりに、サイエンスとしては素晴らしいの に採択されない課題を見ることがあります。申請者 にその理由を説明したい衝動に駆られることも度々 ありました(逆に、過去には私自身が申請者とし て、課題が何故採択されないか分からなくて憤慨し ていたこともありました) 。この審査員コメントの フィードバックによって、良い課題を取りこぼすこ と無く実施できるようになると期待しております。 特に、将来のパワーユーザになる可能性の高い大学 院生課題に関しては、教育効果も含めてこのフィー ドバックは重要になると思われます。審査員の方々 におかれましては、審査コメントに加えて、新しく フィードバックコメントを記載するのは、大変労力 がかかることだと思いますが、可能な限りご協力願 えればと思います。 SP3 分科会の一つの特徴として、測定装置の開発 に関する課題が比較的多いことが挙げられます。そ の中で、 JASRI の方々からの装置開発に関する申請 に関しては、施設整備の一環として行った方がいい 内容が多々あり、 分科会でも議論になりました。 「装 置開発という研究」と「研究のための装置開発」は 異なります。後者を一般課題で審査するのは時間の 無駄ですし、施設の調整枠内で処理するのが適切で はないかと感じました。 審査委員・主査の仕事は、施設運営の不断の努力 を体感することができ、さらには施設・審査側の立 場をより深く知ることで、施設利用の全体像を理解 する貴重な機会となるものでした。短い期間でした が、 これまでの単なる一利用者から 「共同体の一員」 となった感じを受けました。今後の委員となる皆様 44 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu C0..UNICATI0NS にも、どうぞご尽力いただければと思います。 最後に、分科会を運営してくださった利用推進部 スタッフの皆様、そしてご多忙の中課題を審査して くださったレフェリーの先生方に深く感謝申し上げ ます。 (光電子分光 分科会主査 組頭 広志) 9.赤外分光分科会 2023-2024 年度の SPring-8 利用研究課題審査委員 会( PRC ) の 赤 外 分 光 分 科 会( SP4 ) 主 査 を務め、 赤外物性ビームライン( BL43IR )利用研究の申請 課題審査に携わらせていただきました。 SP4 分科会 の委員は、私のほかに岡村英一先生(徳島大学)と 池本夕佳氏 ( JASRI ) ( 2023 年度) 、 片山真祥氏 ( JASRI ) ( 2024 年度)に担当いただきました。 2022A 期より 分科の再編が行われ赤外分光に関しては、独立の SP4 赤外分光分科会となり、課題審査に関連する ビームラインは、 BL43IR のみとなっています。こ のため、レフェリーが申請課題を評価して相対的評 点をつける際に、単一のビームラインの課題のみで 相対評価を行うことになるため公平で効率的な審査 になっていると感じます。これは、各課題に対する レフェリーによる評価のばらつきが分科再編以前に 比べて少なくなっていることに現れています。こ の 2 年間の BL43IR 利用に対して申請、実施された 課題では、長期利用課題や重点課題等の優先的なシ フト配分を必要とする課題はありませんでしたので、 ほぼすべてをレフェリーによる評価点とコメントに 基づき一般課題シフト枠での採択とビームタイム配 分を行いました。原則的には各課題の採否はレフェ リーによる相対評価点数が高い順に順位をつけた資 料をもとに審査が進められました。並行してビーム ライン担当者による安全審査と技術審査が行われて いますが、 BL43IR の利用申請においてはビームラ イン担当者の努力によりほぼすべての課題申請に対 して申請者と事前打合せが行われているので、安全 審査、技術審査が採否の判断において問題になるこ とはありませんでした。 赤外分光分科での申請課題の特徴は、電子状態の 分光測定を行う物性物理系と分子振動観測による状 態評価を行う化学系の 2 つの研究課題群に大きく分 けられることです。レフェリーもこの 2 つのいずれ かの研究領域に属されているため、申請課題によっ てはレフェリーの評価が分かれていることもありま した。特に実験室光源に比べて放射光赤外光の特徴 である輝度の高さ、遠赤外光領域での微小領域測定 に関して、この 2 つの研究領域での認識の違いが放 射光利用の必要性の説明においてレフェリーとの間 に相違があるケースはあったかと思います。この点 はレフェリーコメントならびに申請内容を委員間で 検討、議論し判断を行いました。ただし BL43IR の 利用申請における採択率は他のビームラインと比較 して高いため、採否のボーダーラインにおいてビー ムタイム配分の調整となるケースがほとんどでした。 このため不採択となる申請課題はあまり多くありま せんが、不採択課題に対しては申請書における問題 点などをビームライン担当者と共有し、課題申請者 と次期申請での検討をしていただけるようなフィー ドバックを分科会としてお願いしています。 このたび、 SPring-8 の課題審査という重要な役目 を担わせていただきました。担当者と併走して課題 審査を無事終えることができたのは、ご協力をいた だいた分科会委員、丁寧に審査をしていただいたレ フェリー、そして献身的にご尽力いただいた JASRI ビームライン担当者をはじめとする関係職員の皆さ んのおかげです。この場をお借りして厚く感謝申し 上げます。次期 SPring-8-II においては、赤外分光 ビームラインのクローズが予定されており、赤外光 利用が可能な他の放射光施設へのユーザーや実験環 境の円滑な移行が課題となっています。放射光赤外 光の有用性と設備整備負担のバランスの上で、高度 なユーザー利用研究が進むことを期待しています。 (赤外分光分科会主査 佐々木 孝彦) 10.イメージング分科会 2023 年 度 ~ 2024 年 度 の 2 年 間、 イ メ ー ジ ン グ ( IMG )分科会の主査を務めさせていただき、柳樂 知也氏( NIMS )と上杉健太朗氏( JASRI )ととも に申請課題の審査に携わりました。スムーズな審査 を行うことができ、両氏には改めて厚く感謝を申し 上げます。 本分科会が担当する主なビームラインは、 BL20B2 、 BL20XU 、 BL28B2 と BL47XU となり、大きく分け SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 45 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 て材料系・生物系・地学に関する研究課題が申請さ れています。 BL20B2 では以前は生物・医学系に関 する課題が多くを占めていましたが、多層膜分光 器の導入以降は材料系の課題も多くなり、現在約 半分が材料系の課題で占められています。その結 果、 BL20B2 の採択率が低下した時期もありました が、 BL28B2 にも多層膜分光器が導入されたことも あり BL20B2 の採択率が向上しています。一方で一 時期追加募集を行っていた BL28B2 では、多層膜分 光器の導入だけでなく自動 CT 装置の稼働も 2023A から始まり、測定代行や成果専有課題による利用も 増加しました。 BL28B2 の高度化に関してご尽力い ただきました SPring-8 スタッフにはこの場を借りて お礼を申し上げます。また BL20XU では、本分科 会の範疇ではありませんが、成果専有課題が上限近 くまで使用されていることにより一般課題の採択率 を下げていると思われます。 研究課題としては、各ビームラインの特性を生か した動的観察に関する研究が盛んに行われており、 特に材料系課題では分~マイクロ秒まで様々な時間 スケールでのその場観察に関する研究が多くを占め ていました。生物系課題は BL20B2 に集中しており、 そのうち半分程度は医学系研究、それ以外は生物系 の基礎研究でした。この両者はレフェリーによって 好き嫌いがあるようで、分科会として採点に戸惑う こともありました。また、近年は植物に関する課題 が増加傾向にありました。 2022 年度の分科会再編の結果測定手法ベースの 編成となり、材料系と生物系などを合わせたイメー ジング( IMG )分科会となりました。私自身は生 物系の課題を申請していますが、一方でバックグラ ンドは機械工学ということもあり、生物系課題だけ でなく材料系課題も興味深く読ませていただきまし た。ビームラインスタッフおよび関係者の皆様のご 尽力により様々なビームラインの高度化が行われて おり、なかでも BL20B2 と BL28B2 における多層膜 分光器の導入は我々分科会にとっては大きなブレー クスルーとなりました。今後も優れた成果が次々に 産み出されていくことを願っています。 (イメージング分科会主査 世良 俊博) 11.非弾性散乱分科会 2023 年度から 2024 年度の 2 年間、非弾性散乱分 科会の主査を務めさせていただいた。当分科会は、 コンプトン散乱( BL08W ) 、非弾性 X 線散乱( IXS ) ( BL35XU 、 BL43LXU ) 、および核共鳴散乱( NRS ) ( BL35XU 、 BL19LXU )に関連する課題の審査を受 け持った。分科会の運営では、各分野の実情をよく 分かっておられる鈴木宏輔委員、北尾真司委員およ び Alfred Q. R. Baron 委員には大変お世話になった。 前任の壬生攻先生のご報告にもあるように、当分 科会での最も大きな問題は、 BL35XU において IXS と NRS の採択課題数および採択シフト数のバラン スを取ることができるかどうかであった。 2023B ~ 2024B の 3 期については幸いバランスが取れてお り、特別な配慮なしで採択課題を決定できた。し かしながら採択率は徐々に 60 から 50 %程度に低く なった。また壬生攻先生からもご指摘があったよう に、採択圏内に常連の申請者が目立つ結果となって おり、新規のユーザーが参入しづらい状況に変わり はない。これらの問題は、可能な課題を BL43LXU や BL19LXU に引き受けていただいても、残念なが ら解決できなかった。 最後の 2025A 期では、採択率は両分野合わせて 38 %と著しく低くなり、評価点が高くても採択でき ない課題が目立った。また、分野別の採択課題のバ ランスが崩れたため、初めて委員による再評価を行 い、 4 課題について 0.02 程度の小さな補正を行った。 しかしながらこのような状態が続けば、非弾性散乱 分野、特に NRS 分野が停滞することが危惧される ので、 1 ) ビームラインの高度化によって採択課題 あたりのシフト数を減らす、あるいは 2 ) BL35XU 以外での非弾性散乱の実験を可能にするなど、施設 側の今後の対策に期待する。また、今後 SPring-8 で は高度化が進展するが、それを進める際には、あま りにも採択率の低いビームラインが起きないように、 積極的な対策をお願いしたい。なお、新規ユーザー の採択は数課題あったので、今後もそのような状況 が続くことを期待している。 コンプトン散乱については、要求課題にビームタ イムを充足できる状態が続いており、特別な配慮、 対策は不要と考えている。ただ、 BL08W でのコン 46 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS プトン装置は、磁気あるいは電子構造を探求するユ ニークな装置であり、新しいユーザー・グループを 勧誘する努力が必要である。 この分科では、海外からの申請が多いのが特徴的 である。しかしながら採択率は非常に低く、評価点 も最下位の周辺に多くが集まっている。ただ申請書 を見てみると、テーマは他グループの成果を引用し たのち、実験方法その他は全ての申請書でコピー・ ペーストを繰り返しており、とても高い評価点をつ ける要素が見られないものがほとんどで、レフェ リーの皆さんの正しい評価であると思われる。他分 科からは海外からの採択を増やしたいというご意見 をお聞きするが、非弾性散乱分科に限ってはその必 要をあまり感じない。むしろ、 1 グループあたり 2 課題くらいに申請数を制限するような方向で対策を 施すことが、レフェリーをお引き受けいただいてい る先生方のご負担を軽くできると考えている。 (非弾性散乱分科会主査 細川 伸也) 12.構造生物学分科会 構造生物学分科会を代表し、 23 年 4 月から 25 年 3 月までの分科会における議論、課題審査、申請の動 向について報告します。 構 造 生 物 学 分 科 会 は、 生 体 分 子 の 結 晶 構 造 解 析( BL41XU 、 BL45XU 、 BL26B1 、 BL32XU ) 、 BioSAXS ( BL38B1 ) 、および BL 付帯設備のクライ オ電子顕微鏡を利用する課題を対象としています。 他の分科会とは異なり、構造生物分科会では課題審 査を年 2 回、実験責任者への希望調査と審査結果に 基づく優先順位を考慮したビームタイム配分会議を 年 5 回実施し、利用希望者にビームタイムを割り当 てています。ビームタイム配分においては、最近の 検出器の更新や測定の自動化の進展により 1 試料の 測定にかかる時間の短縮が進んだことから、最小配 分シフトを 0.5 シフトで運用しており、より多くの ユーザーの希望に柔軟に応えられる体制を組んでい ます。 さて、この 2 年間の申請動向ですが、クライオ電 子顕微鏡法の急速な発展と普及を反映し、増え続け ていたクライオ電子顕微鏡を併せて利用する課題申 請の増加が落ち着きを見せ始め、ここ数年続いてい た結晶解析課題申請の減少も収まってきました。結 晶解析課題では、コロナが蔓延した時期に一気に伸 びた自動測定の利用数はコロナが終息してからも堅 調に推移しており、各期約 200 件の実験が行われて います。また、申請内容も天然蛋白質の解析だけで はなく、最近の進展の著しい合成生物学や AI によ る構造予測法に基づいた、人工的に設計した蛋白質 や非天然構造を持つ蛋白質の構造解析を対象とする 課題が増えています。 次に課題審査における問題点ですが、中・上位の 点数がついた課題で審査員の評価点のばらつきが多 く見られるようになってきました。各レフェリーが 科学技術的価値と成果創出可能性のいずれを重視す るかによって評価が大きく割れるように見受けられ ます。また、一部のレフェリーにおいて、放射光利 用前の予備実験を強く求めるなど、実際の利用の実 態に合わないコメントも見られました。これらにつ いては、課題審査における議論を踏まえた上で審査 で考慮すべき内容をレフェリーにフィードバックす るしくみが必要ではないかと思われます。一方、下 位の課題では、申請書の記載内容が不十分で誤解を 招きかねないものや包括的内容で科学技術的価値や 成果創出への期待度にばらつきのある複数のター ゲットを含む申請であることが多く見られました。 申請書の記載の仕方について、申請者に周知する試 みを特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC )研 究会等と連携して進める必要があるとの認識で一致 しました。申請者、レフェリー双方に情報発信する ことで適切な審査が行われ、より多くの価値ある成 果が出る体制を今後も目指したいと思います。 (構造生物学分科会主査 今田 勝巳) 13.その他(持込装置利用)分科会 SPring-8 利用研究課題審査委員会( PRC )の「そ の他(持込装置利用) ( OTH ) 」分科会主査を仰せ つかり、河野委員 (関西学院大) 、田尻委員 ( JASRI ) とともに 2023B 期~ 2025A 期の課題審査を担当いた しましたので以下に報告します。 13 - 1 . OTH における研究の動向 OTH 分科会は『持込装置利用』のため、ビーム SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 47 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 ライン BL47XU または BL37XU での実施に限られ る課題がほとんどでした。基盤開発要素の比率が高 い課題の応募が多く、蛍光 X 線ホログラフィーが 80 %以上を占めていました。どちらのビームライ ンも複数の分科会にわたる複数の実験技術が競合す る激戦区であったため、表 1 に示すように、 2023B から 2024B までは採択率がもっとも低い分科会の 1 つであったと思います(全課題の平均採択率は 65- 70 %) 。一方、 2024B から理研ビームライン BL32B2 に OTH 分科専用の共用枠が設けられビームタイム の枠が増したことにより、 2025A 期は 1 件を除いた すべての課題が採択されました。 表 1 OTH における申請数と採択率 申請期 申請件数 採択率 2023B 17 35.3 % 2024A 12 58.3 % 2024B 14 57.1 % 2025A 7 85.7 % 13 - 2 . OTH 分科会で問題になっていたこと 2024A 期の課題の採択に際し、総ビームタイム の 1/3 以上を常設装置使用課題が確保するという従 来のルール( 1/3 ルール)のために不採択となった 課題が出て大きな問題となりました。輪をかけて、 2024 年 7 月には施設側から「常設装置利用課題に配 分すべきビームタイムの割合をビームラインあたり 60 %とし、持込装置利用課題に配分するビームタイ ムの上限を 20 %とする」というルールが提案され ました。これは OTH 分科課題にとって、 1/3 ルール よりもさらに厳しい提案であり、 PRC 委員会にて 異議を唱えました。おかげさまで 2025A 期からは これらに抵触するような課題に対しては、 PRC にて 審議され採否を決定する是正案が認められています。 13 - 3 .今後に向けて 現在 SPring-8 では常設装置のハイスループット化 に主眼が置かれていますが、世界の放射光施設との 差別化を図るためには、 SPring-8 から新しい技術を 世界に向けて発信する必要があると思います。その ためには、次世代の基盤技術となり得る『持込装置 利用』課題の採択率を上げる方向に舵を取るべきだ と思っています。ところが、現状では『持込装置利 用』できるビームラインは限られています。特に BL47XU においては、恒常的に「持込装置利用課題 に配分するビームタイムの上限を 20 %」に抵触す る課題が出続けることが予想されるため、 PRC で の審議は続くことになるでしょう。 一方、 BL37XU については、他の分科会からの意 見もあったように、多数の分科会が利用する激戦区 となっているため、ビームラインの利用方法や課題 の審査方法に改革が必要だと思います。具体例を挙 げれば、特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) ソフト界面科学研究会で立ち上げた「溶液界面 X 線 反射率計」は BL37XU の『持込装置』に分類され るのですが、物質開発に携わる利用者が多いため、 先端技術よりも汎用性が望まれています。しかし現 状では先端技術開発に属さない『持込装置』の立場 は最悪で、 2023B から 2025A 期における当該装置利 用課題の採択率はわずか 18 %と苦しみました。そ の結果、継続して申請していた利用者もついには諦 めてしまったようですので、今後は不採択の多い申 請者への救済措置についてもご検討いただきたいと 思います。 なお、 OTH 以外の申請課題にも『持込装置』は 存在します。それらは自己申告制になっており、申 請時に「希望ビームライン・装置」の中の選択肢 「その他」を選択すると『持込装置』と認定されま す。申請書の中には同じ装置を使っているのに異な る選択をしているケースがありました。施設として 『持込装置』に制限をかけるならば、 『持込装置』の 定義を明確にする必要があるということを今後の課 題として付け加えさせていただきます。 以上のように OTH 分科会にとってはたくさんの 問題があり、 PRC 委員会にはいつも臨戦態勢で臨 んでおりました。 PRC 委員会では、提議した問題 を真摯に受け止め、改善してくださったことに深く 感謝します。今後も公平性の高い審査が継続的に行 われることを期待します。最後になりますが、素人 同然の主査を支えてくださった委員の皆様と JASRI のスタッフの皆様に感謝します。 (その他 (持込装置利用) 分科会主査 矢野 陽子) 48 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 14.産業利用分科会 14 - 1 .分科会の概要と本報告 本記事の対象となる分科会の概要は以下の通りです。 期間: 2023A 第 II 期より 2025A 第 II 期までの 2 年間 メンバー (敬称略) :妹尾与志木、木村正雄、宮﨑司、 岡島敏浩、堂前和彦の 5 名 募集:全期間を通じ年 6 回募集 この分科会メンバーはひとつ前の期の 2021A 第 II 期よりの 2 年間と同一でした。またこの前期および 今期を通して見えてくる傾向もありましたので、本 報告にはそれらを併せて記述させていただきます。 14 - 2 .分科会の基本姿勢 本分科会では産業応用の形が十分見通せる課題を 取り扱っています。課題提案に対して以下のような 独自の要件を設けています。 1 ) 提案者に産業界の人物を含めること 2 ) 産業界と学術界との共同提案の場合、それぞれ の役割分担を明記すること 産業界の視点からその課題の発展性なども記述し てもらうようにしており、学術的価値では説明の困 難な課題も審査対象としています。また、 2022A 期 ま で、 BL14B2 、 BL19B2 、 BL46XU の 3 本 の ビ ー ムラインを本分科会専用のビームラインとしており、 本分科会とこの 3 本のビームラインだけが年 6 回募 集だったものが、 B 期より年 6 回募集の分科会が 7 分科会に拡大するとともに対応するビームラインも 9 本に増加しました。これを機に 3 本のビームライ ンを本分科会専用とする制限も廃止しました。 14 - 3 .課題申請の傾向 前期( 2021A 第 II 期~)の本報告に書かせていた だいたとおり、年 6 回募集の枠の拡大とともに、 a ) 希望ビームラインの種類が大きく広がった b ) 申請課題数が減った c ) 民間企業所属の課題責任者の比率が増加した の傾向が顕著に出てきました。この傾向は今期も同 じでした。企業の方々が主導する申請課題が多く集 まり、その技術範囲が多岐に渡っていることが示さ れたと考えられます。 「慣れ」が災いしてか、非常 に記述が不足している申請書が散見されることも同 じでした。 この中で、 a )および c )は前期の報告でも記した ように本分科会としては望ましい傾向でしたが、 b ) の点は問題です。企業利用の場合、機密に抵触して くるような本格的な利用は成果専有利用で行われる と考えられます。共用 BL の成果専有利用に関わる 収入(含測定代行)のデータによれば、 2022 年度 頃から顕著な増加傾向が見られ、 2021 年度を基準 にした場合、 2022 年度、 2023 年度は 20 ~ 30 %の増 加です。この増加のすべてが本分科会に関わるもの ではないでしょうが、成果非専有利用での予備検討 から成果専有利用の本格検討への移行の状況の一端 が現れていると考えています。見方を変えれば b ) の傾向は予備検討の課題が年々枯渇していっている ことを示していることになります。実際に審査をし ていても、産業利用分科会に申請して来られるメン バーが非常に固定化しているのを感じます。 SPring-8 の産業利用を推し進める立場からは、新 たに SPring-8 利用に加わる産業分野や企業の発掘を お願いしたいと考えます。難易度の高い業務になる とは思いますが、ご関係の方々の奮起を期待します。 (産業利用分科会主査 妹尾 与志木) 15.人文・社会科学分科会 15 - 1 .概 要 人文・社会科学分科会は、他の分科会への応募課 題とは若干性質が異なると考えられる。文化財、あ るいは考古学に関連するものは成果として完了する までに、長い時間が必要とするものが多い。また、 課題自体が非常にマイナーな問題に見えてしまうこ ともある。このことから、当分科会の方針は、提出 された課題をしっかり検討し継続的な放射光利用を 支援していくこととしたい。 課題申請は、 2023A から 2024B では 2 ~ 4 件であっ たが、 2025A 期は科研費研究の最終年度であったり、 2024B 期の実験が未実施であったことからタイミン グ悪く申請が出来なかったユーザーがいたようであ る。なお、 2025A 期は 1 件のみであった。 15-2.研究動向 手法としては、イメージングと蛍光 X 線分析が SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 49 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 メインである。これまでは布、炭化米などの軽元素 系の課題が多かったが、最近は金属製品(青銅、鉄 など)と陶器の分析が多い。 1 つの課題では、高エ ネルギーX線を利用したラミノグラフィーを利用す るものであり、最新の技術を積極的に利用しており 期待が持てる。また、放射光 X 線 CT であれば、鉄 と鉄錆の区別もつくので、そのような事例を提示し、 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) 研究会な どに示すことで、今までの知見で「測れない」と思 い込んでいる試料への利用を想起させられるのでは ないかと期待している。 2023B 期の課題の中に、初めて X 線回折を利用す るものが出てきた。 X 線回折は蛍光 X 線分析と同様 に、文化財試料の物質同定や産地同定を行うために 利用することができる。特に結晶鉱物相の特定が得 意であるため、蛍光 X 線分析との相補的な利用も 可能となる。今後の同様な技術を利用した展開が期 待できる。また、 2025A 期は青銅器に関する課題が 提案され、 SPring-8 の計測技術の進歩によりこれま で見えなかった構造が見えるようになり、そこから 当時の製造技術を推測するような研究となっている。 これは青銅器以外の物にも応用可能で、最新の技術 が昔の技術や文化を明らかにして行くことに期待が 持てる。 15-3.今後に向けて ユーザー数、課題数を増やすという事では、いわ ゆる歴史的遺物の分析、という名目だけでは限界 があるかもしれない。異分野への拡大という意味 で、 Education / Culture という方向に目を向けるの はどうだろうか。たとえば、目に見えないサイズ の小さな生物を放射光 X 線 CT でスキャンし、それ を 3D プリンタで大きく印刷、目で見て「触れる教 材」を作成する。文化財でも同じようなことをすれ ば「触れる文化財博物館」に繋がる可能性がある。 近年、誰でも楽しめる博物館を目指す活動が活発に なり、視覚障害者にも楽しんでもらえる展示「触れ られる展示」の必要性が認識されつつあり、これら の活動に寄与することができる。また、サポートの 面も重要となる。上記のようなユーザーは、必ずし も理系教育を受けている訳ではなく、データ処理に つまずくかもしれない。個々のユーザーでは限界が あり、スタートにおいては、ある程度の規模の共同 研究体制を作ることが有効と思われる。そのために、 コーディネーターあるいは協力的な研究者の確保を 期待する。 「触れる教材」 「触れる文化財博物館」を挙げてき たが、具体的な取り組みとして、分科会メンバー が中心となり「触れる教材」 「触れる文化財博物 館」の検証と試験を行った。たとえば、 50 μ m 程度 の珪藻を 100 mm 以上のサイズに 3D プリントすると、 顕微鏡下や画面では気づかなかったことが発見でき た。つまり「手に取る」という事の重要性を認識す ることができた。これは視覚障害者向けだけの技術 ではなく、一般的な研究や初等・中等教育にも有効 であると思われる。 引き続き検討と試験を進めていきたいと考える。 (人文・社会科学分科会主査 奥山 誠義) 田代 孝二 TASHIRO Kohji 豊田工業大学 あいちシンクロトロン光センター 〒 489 - 0965 愛知県瀬戸市南山口町 250 番 3 TEL : 0561 - 76 - 8331 e-mail : ktashiro@aichisr.jp 下村 晋 SHIMOMURA Susumu 京都産業大学 理学部 〒 603 - 8555 京都市北区上賀茂本山 TEL : 075 - 705 - 1868 e-mail : susumu@cc.kyoto-su.ac.jp 青柳 忍 AOYAGI Shinobu 名古屋市立大学 大学院理学研究科 〒 467 - 8501 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町山の畑 1 TEL : 052 - 872 - 5061 e-mail : aoyagi@nsc.nagoya-cu.ac.jp 脇原 徹 WAKIHARA Toru 東京大学 大学院工学系研究科 〒 113 - 8656 東京都文京区本郷 7 - 3 - 1 TEL : 03 - 5841 - 3821 e-mail : wakihara@chemsys.t.u-tokyo.ac.jp 50 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 清水 克哉 SHIMIZU Katsuya 大阪大学 基礎工学研究科 〒 560 - 8531 豊中市待兼山町 1 - 3 TEL : 06 - 6850 - 6675 e-mail : shimizu.katsuya.es@osaka-u.ac.jp 鈴木 基寛 SUZUKI Motohiro 関西学院大学 工学部 〒 669 - 1330 兵庫県三田市学園上ケ原 1 番 TEL : 079 - 565 - 7638 e-mail : m-suzuki@kwansei.ac.jp 雨澤 浩史 AMEZAWA Koji 東北大学 多元物質科学研究所 〒 980 - 8577 宮城県仙台市青葉区片平 2 - 1 - 1 TEL : 022 - 217 - 5340 e-mail : koji.amezawa.b 3 @tohoku.ac.jp 組頭 広志 KUMIGASHIRA Hiroshi 東北大学 多元物質科学研究所 〒 980 - 8577 宮城県仙台市青葉区片平 2 - 1 - 1 TEL : 022 - 217 - 5802 e-mail : kumigashira@tohoku.ac.jp 佐々木 孝彦 SASAKI Takahiko 東北大学 金属材料研究所 〒 980 - 8577 宮城県仙台市青葉区片平 2 - 1 - 1 TEL : 022 - 215 - 2025 e-mail : takahiko.sasaki.d 3 @tohoku.ac.jp 世良 俊博 SERA Toshihiro 東京理科大学 先進工学部 〒 125 - 8585 東京都葛飾区新宿 6 - 3 - 1 TEL : 03 - 5876 - 1769 e-mail : toshihiro.sera@rs.tus.ac.jp 細川 伸也 HOSOKAWA Shinya 島根大学 材料エネルギー学部 〒 690 - 8504 島根県松江市西川津町 1060 TEL : 0852 - 32 - 6666 e-mail : s_hosokawa@mat.shimane-u.ac.jp 今田 勝巳 IMADA Katsumi 大阪大学 大学院理学研究科 〒 560 - 0043 大阪府豊中市待兼山町 1 - 1 TEL : 06 - 6850 - 5455 e-mail : kimada@chem.sci.osaka-u.ac.jp 矢野 陽子 YANO Yohko F. 近畿大学 理工学部 〒 577 - 8502 東大阪市小若江 3 - 4 - 1 TEL : 06 - 4307 - 3414 e-mail : yano@phys.kindai.ac.jp 妹尾 与志木 SENO Yoshiki (公財)佐賀県産業振興機構 九州シンクロトロン光研究センター 〒 841 - 0005 佐賀県鳥栖市弥生が丘 8 丁目 7 番地 TEL : 0942 - 83 - 5017 e-mail : seno@saga-ls.jp 奥山 誠義 OKUYAMA Masayoshi 奈良県立橿原考古学研究所 保存科学センター 〒 634 - 00658 奈良県橿原市畝傍町 1 番地 TEL : 0744 - 24 - 1101 e-mail : m-okuyama 05 @kashikoken.jp SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 51 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 SACLA 利用研究課題審査委員会 委員長 電気通信大学 レーザー新世代研究センター 米 田 仁 紀 SACLA 利用研究課題審査委員会を終えて 1.はじめに X 線自由電子レーザー SACLA の利用研究は、 2011 年の発振成功以来、すでに 10 年を超え、世界でも 米国、欧州、スイス、韓国などの XFEL が順調に稼 働してきたこともあって、多くの提案募集を受け付 けることになっている。また、 SPring-8 などのシン クロトロン放射光施設と違い、 基本的には 1 ~ 3 ユー ザーが同時使用する限られたマシンタイムを、広範 囲の科学研究を行う場として提供していることにな り、ここでお話しする課題選定を決める利用研究課 題審査委員会( PRC )は、その重要性がますます増 加している状況にある。ここでは、日頃はあまり紹 介できない審査委員会の状況を紹介したい。 2.SACLA 利用研究課題審査委員会の状況 前述したように、 SACLA は直線加速器ベースの FEL がゆえに制限されたユーザー数を選考していか なければならない。また、従来から行っているよう に PRC では、すべての分野を総括しながら議論し、 実験選考を行う必要がある。 例えば、 図1 を見ていただきたい。 これは、 SACLA に提案のあった課題数の分野別数の 2018 年からの 推移を示している。これを見ただけでも分野におけ る変化が出ていることがわかる。この推移は、その 時の世界の研究動向、マシンの最新化動向、計測器 などの開発動向などが影響した結果となっているが、 その状況も選ぶ側の PRC は把握しておく必要がある。 そのため、現在の PRC 委員会では、まず全体会と して現在の SACLA の状況、計測器などの開発・準 備状況、世界の XFEL の動向の情報を共有できるよ うに、理研・ JASRI 側に協力を行いつつ、各委員の 情報の更新を行うようにしている。 図 1 SACLA における各分野の提案数の分布。マテ リアルサイエンス( MAT ) 、バイオサイエンス ( BIO ) 、高エネルギー密度科学( HEDS ) 、手法・ 装置開発分野( MI ) 、化学( CHM ) 、原子分子物 理学 ( AMO ) 、 X 線光学 ( XOP ) 、 産業利用分野 ( IND ) を表している。 図 2 SACLA の提案者の所属機関の国内、海外別など の分布。黄色が海外、赤が産業界、緑が国内国立 研究所、青が国内大学となっている。 図 2 には、提案者の所属機関別分布を示している。 利用が始まった当時、国内関係者が多かった状況か ら現在ではほぼ半数を海外からの研究提案となって いる。これに対応するように PRC では海外レビュー アーを行い、海外センスでの審査もお願いしている。 ただ、対面を基本として行っている PRC 委員会で は、国内にいる委員のみで日本語を言語に行ってい る状況にある。これは、より国内状況を把握しなが ら選考をお願いしたいという点と、より深い分野間 調整などを行うために選択した形となっている。ま た、この海外からの提案の多さは、同時に海外のマ シン状況に影響されることになり、より一層委員の 52 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 世界の XFEL 利用研究の動向理解が必要なことがわ かるであろう。 3.SACLA 利用研究課題審査委員会の仕組み さて、 SACLA-PRC は、研究状況の変化や委員の リクエスト、利用者からの意見、上部委員会からの 指摘などを入れ、フレキシブルに対応できるように している。そのため、今回の委員会期間であっても いくつかのシステム変更が取り入れられている状況 にしている。これらは、 私が PRC 委員長として行っ た前回の委員会 [1] からも発展してきている。 実際に現在の選定委員会のプロセスをフロー チャートにしたものを 図 3 に示している。 まず、応募された申請書は、技術審査を受けなが らレビュアーを決め、書面審査が行われる。審査 は A ~ D の 4 段階が等分布数になるように行われる。 それら書面審査結果を受け、技術などの状況を鑑み 全体 PRC 会の前に詳細議論が必要な課題があった 場合は、プレ議論会が JASRI 、 PRC 委員長、該当す る PRC 委員で会議を行い、全体会への提案を別途 用意する。次に 図 3 の中段図に示された全体会へ移 行する。ここでは、前述した現在の XFEL 施設の状 況の共有、応募状況の確認、プレ議論会の報告など を行った後に、各カテゴリでの詳細議論を行う。こ こでは、各カテゴリ内での研究動向、応募状況、点 数分布などを考慮した上での分野内の意思を反映し た課題順位を決定、その理由を後半の全体会で明ら かにする準備をしていただく。さらに、その後図 3 の下段図にあるような、 PRC 委員会からの申請者 へのコメント作成、それらをチェックし最終バー ジョンの決定、さらには、海外レビューアーへの審 査結果の報告文などの作成、報告を行っていく。 正直、これらの審査過程がスムーズに動いている のは PRC 委員の努力や理解、 JASRI 、理研のサポー トから成り立っている。逆に、これらいい PRC 委 員が抱えられるような委員へのメリットを常に考 えながら SACLA の発展を行っていくことが重要な ミッションにもなっている。 4.まとめ 現在、 PRC 委員会であるから議論できる、考え られるシステムへの提案、課題状況への不安や提案 などを抱えている状況にある。それらは、しかし、 覆面審査として行っていただいている委員ならでは の制限もあり、要に表に出せない状況にもあった りする。最近は、この状況を打開するように、 PRC 委員会として挙げられているリクエストも JASRI や 唯一表に出ている PRC 委員長が中心となって XFEL 研究会、 SACLA-USER Meeting などで議論するよ うにしている。読者の中でもリクエストがあれば、 ぜひお知らせいただけるといいと思います。 図 3 PRC での審査フロー。上図:書面審査段階のもの。 中段:その後に行われる対面 PRC 委員会のもの。 下図: PRC 委員会後のプロセスを示している。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 53 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 参考文献 [ 1 ] 米田仁紀: SPring-8/SACLA 利用者情報 春号 (2023) 183. 米田 仁紀 YONEDA Hitoki 電気通信大学 レーザー新世代研究センター 〒 182 - 8585 東京都調布市調布ヶ丘 1 - 5 - 1 TEL : 042 - 443 - 5711 e-mail : yoneda@ils.uec.ac.jp 54 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu C0..UNICATI0NS 公益財団法人高輝度光科学研究センター( JASRI )では、 SPring-8 利用研究課題審査委員会( PRC )におい て SPring-8 の利用研究課題を審査した結果を受け、 SPring-8 選定委員会の意見を聴き、以下のように第 54 回 共同利用期間( 2025 年 4 月 8 日~ 2025 年 7 月 28 日(放射光利用 261 シフト、 1 シフト= 8 時間) )における利 用研究課題を採択しました。ただし、年 6 回募集のビームライン( BL01B1 、 BL02B1 、 BL02B2 、 BL09XU 、 BL13XU 、 BL14B2 、 BL16XU 、 BL19B2 および BL46XU ) は 2025A を 3 期に分けて募集しており、これらのビー ムラインについては第 I 期の 2025 年 4 月 8 日~ 4 月 30 日( 66 シフト)における課題を採択しました。 表 1 に利 用研究課題公募履歴を示します。 1.募集、審査および採択の日程 [募集案内公開と応募締切] 2024 年 10 月 16 日 SPring-8 ホームページで主要課 題の募集案内公開 (利用者情報 2024 年秋号に募集 案内記事を掲載) 11 月 13 日 成果公開優先利用課題、成果専 有課題応募締切 12 月 5 日 一般課題、大学院生提案型課題 応募締切 [課題審査、選定、採択および通知] 2025 年 1 月 14 日~ 20 日 各分科会による課題審査 1 月 24 日 SPring-8 利用研究課題審査委員 会( PRC )による課題審査 2 月 7 日 SPring-8 選定委員会の意見を聴取 2 月 10 日 JASRI として採択決定し、応募 者に審査結果を通知 2.応募および採択状況 2025A の新規応募課題数は 723 、採択課題数は 498 でした。 表 2 に 2025A 期の利用研究課題の課題 種別の応募課題数および採択課題数と採択率(%) 登録施設利用促進機関 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 第 54 回 (2025A) SPring-8 利用研究課題の採択について を示します。また、 表 3 に成果非専有課題として の科学審査の対象となる課題(成果非専有一般課 題、大学院生提案型課題)への応募 645 件について、 ビームラインごとの応募課題数、採択課題数、採択 率および配分シフト数、並びに採択された課題の 1 課題あたりの平均配分シフト数を示します。 表 4 に は全応募 723 課題について、申請者の所属機関分類 と課題の研究分野分類の統計を示します。このうち、 所属機関および研究分野について全体に対する割合 をそれぞれ 図 1 および 図 2 に示します。 SPring-8 に おける “ SACLA 、 J-PARC MLF または「京」/「富 岳」 を含む HPCI と連携した利用を行う課題 ” として、 SPring-8 には 12 件の応募があり、うち 11 件が採択 されました。なお本記事の統計には、年 6 回募集の ビームラインの第 II 期および第 III 期分、並びに期 中に随時募集する成果専有時期指定課題(測定代行 課題含む)等は含まれていません。 3.採択課題 2025A 期 の 採 択 課 題 の 一 覧 は、 SPring-8 User Information に掲載しています。以下をご覧ください。 ホーム > SPring- 8 利用申請 > 課題募集 > 採択 ・ 実施課題一覧 https://user.spring 8 .or.jp/?p= 37038 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 55 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 表 1 利用研究課題 公募履歴 利用期 利 用 期 間 ユ-ザ- 利用シフト * 応募締切日 ** 応募課題数 採択課題数 第 1 回: 1997 B 1997 年 10 月- 1998 年 03 月 168 1997 年 01 月 10 日 198 134 第 2 回: 1998 A 1998 年 04 月- 1998 年 10 月 204 1998 年 01 月 06 日 305 229 第 3 回: 1999 A 1998 年 11 月- 1999 年 06 月 250 1998 年 07 月 12 日 392 258 第 4 回: 1999 B 1999 年 09 月- 1999 年 12 月 140 1999 年 06 月 19 日 431 246 第 5 回: 2000 A 2000 年 02 月- 2000 年 06 月 204 1999 年 10 月 16 日 424 326 第 6 回: 2000 B 2000 年 10 月- 2001 年 01 月 156 2000 年 06 月 17 日 582 380 第 7 回: 2001 A 2001 年 02 月- 2001 年 06 月 238 2000 年 10 月 21 日 502 409 第 8 回: 2001 B 2001 年 09 月- 2002 年 02 月 190 2001 年 05 月 26 日 619 457 第 9 回: 2002 A 2002 年 02 月- 2002 年 07 月 226 2001 年 10 月 27 日 643 520 第 10 回: 2002 B 2002 年 09 月- 2003 年 02 月 190 2002 年 06 月 03 日 751 472 第 11 回: 2003 A 2003 年 02 月- 2003 年 07 月 228 2002 年 10 月 28 日 733 563 第 12 回: 2003 B 2003 年 09 月- 2004 年 02 月 202 2003 年 06 月 16 日 938 621 第 13 回: 2004 A 2004 年 02 月- 2004 年 07 月 211 2003 年 11 月 04 日 772 595 第 14 回: 2004 B 2004 年 09 月- 2004 年 12 月 203 2004 年 06 月 09 日 886 562 第 15 回: 2005 A 2005 年 04 月- 2005 年 08 月 188 2005 年 01 月 05 日 878 547 第 16 回: 2005 B 2005 年 09 月- 2005 年 12 月 182 2005 年 06 月 07 日 973 624 第 17 回: 2006 A 2006 年 03 月- 2006 年 07 月 220 2005 年 11 月 15 日 916 699 第 18 回: 2006 B 2006 年 09 月- 2006 年 12 月 159 2006 年 05 月 25 日 867 555 第 19 回: 2007 A 2007 年 03 月- 2007 年 07 月 246 2006 年 11 月 16 日 1099 761 第 20 回: 2007 B 2007 年 09 月- 2008 年 02 月 216 2007 年 06 月 07 日 1007 721 第 21 回: 2008 A 2008 年 04 月- 2008 年 07 月 225 2007 年 12 月 13 日 1009 749 第 22 回: 2008 B 2008 年 10 月- 2009 年 03 月 189 2008 年 06 月 26 日 1163 659 第 23 回: 2009 A 2009 年 04 月- 2009 年 07 月 195 2008 年 12 月 11 日 979 654 第 24 回: 2009 B 2009 年 10 月- 2010 年 02 月 210 2009 年 06 月 25 日 1076 709 第 25 回: 2010 A 2010 年 04 月- 2010 年 07 月 201 2009 年 12 月 17 日 919 665 第 26 回: 2010 B 2010 年 10 月- 2011 年 02 月 210 2010 年 07 月 01 日 1022 728 第 27 回: 2011 A 2011 年 04 月- 2011 年 07 月 215 2010 年 12 月 09 日 1024 731 第 28 回: 2011 B 2011 年 10 月- 2012 年 02 月 195 2011 年 06 月 30 日 1077 724 第 29 回: 2012 A 2012 年 04 月- 2012 年 07 月 201 2011 年 12 月 08 日 816 621 第 30 回: 2012 B 2012 年 10 月- 2013 年 02 月 222 2012 年 06 月 28 日 965 757 第 31 回: 2013 A 2013 年 04 月- 2013 年 07 月 186 2012 年 12 月 13 日 880 609 第 32 回: 2013 B 2013 年 10 月- 2013 年 12 月 159 2013 年 06 月 20 日 905 594 第 33 回: 2014 A 2014 年 04 月- 2014 年 07 月 177 2013 年 12 月 12 日 874 606 第 34 回: 2014 B 2014 年 10 月- 2015 年 02 月 230 2014 年 06 月 19 日 1030 848 第 35 回: 2015 A 2015 年 04 月- 2015 年 07 月 207 2014 年 12 月 11 日 1030 685 第 36 回: 2015 B 2015 年 09 月- 2015 年 12 月 198 2015 年 06 月 11 日 974 632 第 37 回: 2016 A 2016 年 04 月- 2016 年 07 月 216 2015 年 12 月 10 日 907 699 第 38 回: 2016 B 2016 年 09 月- 2016 年 12 月 198 2016 年 06 月 02 日 977 637 第 39 回: 2017 A 2017 年 04 月- 2017 年 07 月 210 2016 年 12 月 08 日 947 678 第 40 回: 2017 B 2017 年 10 月- 2018 年 02 月 240 2017 年 06 月 08 日 1000 761 第 41 回: 2018 A 2018 年 04 月- 2018 年 08 月 228 2017 年 12 月 07 日 931 719 第 42 回: 2018 B 2018 年 10 月- 2019 年 02 月 234 2018 年 06 月 07 日 982 744 第 43 回: 2019 A 2019 年 04 月- 2019 年 07 月 222 2018 年 12 月 06 日 957 681 第 44 回: 2019 B 2019 年 09 月- 2020 年 02 月 234 2019 年 06 月 21 日 1011 729 第 45 回: 2020 A 2020 年 04 月- 2021 年 02 月 336 2019 年 12 月 05 日 1460 1044 第 46 回: 2021 A 2021 年 04 月- 2021 年 07 月 216 2020 年 12 月 08 日 838 687 第 47 回: 2021 B 2021 年 09 月- 2022 年 02 月 228 2021 年 06 月 10 日 1105 797 第 48 回: 2022 A 2022 年 04 月- 2022 年 08 月 216 2021 年 12 月 01 日 957 708 第 49 回: 2022 B 2022 年 10 月- 2023 年 02 月 228 2022 年 06 月 14 日 1272 878 第 50 回: 2023 A 2023 年 04 月- 2023 年 08 月 213 2022 年 12 月 08 日 1063 775 第 51 回: 2023 B 2023 年 10 月- 2024 年 02 月 216 2023 年 06 月 15 日 1286 947 第 52 回: 2024 A 2024 年 04 月- 2024 年 07 月 210 2023 年 12 月 07 日 1135 829 第 53 回: 2024 B 2024 年 09 月- 2025 年 02 月 234 2024 年 06 月 13 日 1306 962 第 54 回: 2025 A 2025 年 04 月- 2025 年 07 月 210 2024 年 12 月 05 日 ( 723 ) ( 498 ) *ユ-ザ-利用へ供出するシフト( 1 シフト= 8 時間)で全ビ-ムタイムの 80 % **一般課題の応募締め切り日 応募・採択課題数について: 2006 B 以前は応募締め切り日 ** の値である。 2007 A 以降は、期終了時の値(産業 2 期募集、生命科学等分科会留保課題、時期指定課題、緊急課題を含む)を示す。 年 6 回募集ビ-ムラインの第 2 ・ 3 期分、期中随時募集の成果専有時期指定課題等があるため現在の値は括弧内に示す。 56 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 表 2 2025A SPring-8 利用研究課題の課題種別応募および採択課題数と採択率 決定課題種 応募課題数 採択課題数 採択率 (%) 採択課題のシフト 充足率 (%) **** 一般課題 * 575 380 66 . 1 96 . 1 成果専有課題 40 39 97 . 5 95 . 8 大学院生提案型課題 70 42 60 . 0 88 . 1 成果公開優先利用課題 24 23 95 . 8 100 . 0 成果公開優先利用課題(一年利用) ** 14 14 100 . 0 100 . 0 総 計 723 498 68 . 9 95 . 9 科学審査対象課題 *** のみの合計 645 422 65 . 4 95 . 3 *一般課題等のうち SPring- 8 における“ SACLA 、 J-PARC MLF または 「京」 / 「富岳」 を含む HPCI と連携した利用を行う課題”は、 応募 12 課題のうち 11 課題を採択。 **複数課題を利用する課題を含む(申請者数は 7 名、採択者数は 7 名) 。 ***成果専有課題と優先利用課題を除いた課題。 **** PX-BL 課題(期中に配分シフトを決定する生命科学/タンパク質結晶構造解析分野関係課題)を除く。 表 3 2025A ビームラインごとの審査対象課題 * の採択状況 ビームライン 応募課題数計 採択課題数計 採択率(%) 配分シフト数計 * * 1 課題あたり 平均配分シフト * * BL 01 B 1 : XAFS I 29 7 24 . 1 47 6 . 71 BL 02 B 1 :単結晶構造解析 11 8 72 . 7 54 6 . 75 BL 02 B 2 :粉末結晶構造解析 21 11 52 . 4 54 4 . 91 BL 04 B 1 :高温高圧 25 21 84 . 0 201 9 . 57 BL 04 B 2 :高エネルギー X 線回折 23 23 100 . 0 189 8 . 22 BL 05 XU :理研 施設開発 ID I 5 5 100 . 0 45 9 . 00 BL 07 LSU :理研 施設開発 ID II 2 2 100 . 0 29 14 . 50 BL 08 W :高エネルギー非弾性散乱 12 11 91 . 7 126 11 . 45 BL 09 XU : HAXPES I 6 6 100 . 0 39 6 . 50 BL 10 XU :高圧構造物性 63 29 46 . 0 198 6 . 83 BL 13 XU : X 線回折・散乱 I 13 5 38 . 5 33 6 . 60 BL 14 B 2 : XAFS II 23 6 26 . 1 48 8 . 00 BL 16 XU :理研 / 分析科学 I 1 1 100 . 0 9 9 . 00 BL 17 SU :理研 物理科学 III 12 4 33 . 3 47 11 . 75 BL 19 B 2 : X 線回折・散乱 II 12 10 83 . 3 51 5 . 10 BL 19 LXU :理研 物理科学 II 3 2 66 . 7 36 18 . 00 BL 20 B 2 :医学・イメージング I 42 23 54 . 8 186 8 . 09 BL 20 XU :医学・イメージング II 26 13 50 . 0 105 8 . 08 BL 25 SU :軟 X 線固体分光 41 17 41 . 5 210 12 . 35 BL 26 B 1 :理研 構造ゲノム I *** 3 3 100 . 0 24 8 . 00 BL 27 SU :軟 X 線光化学 16 16 100 . 0 166 10 . 38 BL 28 B 2 :白色 X 線回折 21 12 57 . 1 142 11 . 83 BL 29 XU :理研 / 物理科学 I 1 0 0 . 0 - - BL 32 B 2 :理研 施設開発 BMI 3 2 66 . 7 27 13 . 50 BL 35 XU :非弾性・核共鳴散乱 33 12 36 . 4 209 17 . 42 BL 36 XU :理研 物質科学 II 2 2 100 . 0 24 12 . 00 BL 37 XU :分光分析 21 16 76 . 2 173 10 . 81 BL 39 XU : X 線吸収・発光分光 14 12 85 . 7 150 12 . 50 BL 40 B 2 : SAXS BM 48 40 83 . 3 212 5 . 30 BL 41 XU :生体高分子結晶解析 I *** 4 4 100 . 0 17 4 . 25 BL 43 IR :赤外物性 16 16 100 . 0 171 10 . 69 BL 43 LXU :理研 量子ナノダイナミクス 2 2 100 . 0 15 7 . 50 BL 44 B 2 :理研 物質科学 I 4 4 100 . 0 24 6 . 00 BL 45 XU :生体高分子結晶解析 II *** 1 1 100 . 0 6 6 . 00 BL 46 XU : HAXPES II 8 6 75 . 0 47 7 . 83 BL 47 XU :マイクロ CT 26 18 69 . 2 186 10 . 33 PX-BL ( BL 41 XU 、 45 XU 、 26 B 1 、 32 XU 、 38 B 1 、 EM 01 CT 、 EM 02 CT 、 EM 03 CT 、 EM 04 CT ) 52 52 100 . 0 - - 総 計 645 422 65 . 4 3300 7 . 82 *成果非専有一般課題、大学院生提案型課題 ** 1 シフト= 8 時間 *** PX-BL 対象 BL ( PX-BL 運用以外の対象課題の課題数およびシフト数) 年 6 回募集ビームラインの第 II 期・第 III 期募集分等は含まず。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 57 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 表 4 SPring-8 2025A 応募・採択結果の機関および研究分野分類 機関分類 課題分類 生命科学 医学応用 物質科学・ 材料科学 化学 地球・ 惑星科学 環境科学 産業利用 その他 * 総 計 採択率 (%) 決定課題種 課題数/ シフト数 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 大学等教育機関 一般課題 課題数 62 53 5 3 152 104 59 52 34 32 1 1 15 7 9 8 337 260 77 . 2 シフト数 186 108 45 21 1393 959 417 377 360 332 9 9 153 68 105 96 2668 1970 73 . 8 成果専有課題 課題数 2 2 2 2 100 . 0 シフト数 3 3 3 3 100 . 0 大学院生提案型 課題 課題数 7 6 25 17 13 8 5 3 4 1 54 35 64 . 8 シフト数 21 12 225 147 81 51 48 29 33 9 408 248 60 . 8 成果公開優先 利用課題 課題数 5 5 13 12 18 17 94 . 4 シフト数 45 45 132 126 177 171 96 . 6 成果公開優先利用 課題(一年利用) 課題数 1 1 2 2 3 3 100 . 0 シフト数 3 3 18 18 21 21 100 . 0 合 計 課題数 70 60 5 3 186 130 85 72 39 35 1 1 19 8 9 8 414 317 76 . 6 シフト数 210 123 45 21 1684 1172 630 554 408 361 9 9 186 77 105 96 3277 2413 73 . 6 国公立研究機関等 一般課題 課題数 8 6 7 4 38 26 5 4 7 5 2 1 2 1 7 7 76 54 71 . 1 シフト数 33 15 57 39 366 242 45 39 72 48 9 6 18 6 111 111 711 506 71 . 2 成果専有課題 課題数 2 2 2 2 100 . 0 シフト数 0 0 - 成果公開優先 利用課題 課題数 2 2 2 2 4 4 100 . 0 シフト数 15 15 18 18 33 33 100 . 0 成果公開優先利用 課題(一年利用) 課題数 4 4 1 1 3 3 8 8 100 . 0 シフト数 180 180 5 5 57 57 242 242 100 . 0 合 計 課題数 14 12 9 6 41 29 8 7 7 5 2 1 2 1 7 7 90 68 75 . 6 シフト数 213 195 72 54 389 265 102 96 72 48 9 6 18 6 111 111 986 781 79 . 2 産業界 一般課題 課題数 3 3 11 9 14 12 85 . 7 シフト数 18 18 132 96 150 114 76 . 0 成果専有課題 課題数 4 4 3 3 27 26 34 33 97 . 1 シフト数 19 19 123 114 142 133 93 . 7 成果公開優先 利用課題 課題数 2 2 2 2 100 . 0 シフト数 6 6 6 6 100 . 0 成果公開優先利用 課題(一年利用) 課題数 3 3 3 3 100 . 0 シフト数 18 18 18 18 100 . 0 合 計 課題数 7 7 0 0 3 3 0 0 0 0 0 0 43 40 0 0 53 50 94 . 3 シフト数 18 18 0 0 19 19 0 0 0 0 0 0 279 234 0 0 316 271 85 . 8 海外機関 一般課題 課題数 10 5 1 1 93 33 30 9 10 5 2 1 1 0 1 0 148 54 36 . 5 シフト数 85 12 12 12 831 249 315 90 102 42 27 9 9 0 12 0 1393 414 29 . 7 成果専有課題 課題数 2 2 2 2 100 . 0 シフト数 - 大学院生提案型 課題 課題数 15 7 1 0 16 7 43 . 8 シフト数 179 48 15 0 194 48 24 . 7 合 計 課題数 12 7 1 1 108 40 30 9 11 5 2 1 1 0 1 0 166 63 38 . 0 シフト数 85 12 12 12 1010 297 315 90 117 42 27 9 9 0 12 0 1587 462 29 . 1 合 計 課題数 103 86 15 10 338 202 123 88 57 45 5 3 65 49 17 15 723 498 68 . 9 シフト数 526 348 129 87 3102 1753 1047 740 597 451 45 24 492 317 228 207 6166 3927 63 . 7 採択率(%) 課題数 83 . 5 66 . 7 59 . 8 71 . 5 78 . 9 60 . 0 75 . 4 88 , 2 68 . 9 シフト数 66 . 2 67 . 4 56 . 5 70 . 7 75 . 5 53 . 3 64 . 4 90 . 8 63 . 7 *ビームライン技術、素粒子・原子核科学、考古学、鑑識科学、安全管理 58 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 図 1 2025A 所属機関別 応募/採択課題数割合 図 2 2025A 研究分野別 応募/採択課題数割合 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 59 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 第 53 回共同利用期間( 2024B )における SPring-8 の共同利用は、 2024 年 9 月から 2025 年 2 月にかけ て実施されました。この期間の放射光利用は、ビー ムライン 1 本あたり 291 シフト[ 1 シフト= 8 時間] でした。 2024B では 26 本の共用ビームライン (共用施設) と、 13 本の理研ビームラインにおけるビームタイムの一 部が共用に供されました。 8 本の共用ビームライン BL01B1 、 BL02B1 、 BL02B2 、 BL09XU 、 BL13XU 、 BL14B2 、 BL19B2 および BL46XU と理研ビームライ ン BL16XU と専用ビームライン BL24XU は、 2024B 第 I 期( 2024 年 9 月下旬~ 11 月上旬) 、第 II 期(同 年 11 月上旬~ 12 月中旬)および第 III 期( 2025 年 1 月下旬~ 2 月中旬)と、利用期を 3 期に分けて課題 募集・選定が行われました (注 1) 。専用ビームライン (専用施設)については、 2024B 期の稼働数は 13 本 でした。 表 1 に、 SPring-8 共用施設の 2024B 課題種別の課 題数と実施シフト数を示します。 表 2 に、 SPring-8 専用施設の 2024B 実施課題数とシフト数を示します。 表 3 に、 SPring-8 年 6 回募集対象ビームラインにお ける科学審査対象課題の 2024B 採択状況を示します。 登録施設利用促進機関 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 第 53 回共同利用期間 (2024B) において実施された SPring-8 利用研究課題 表 4 に、 2024B に SPring-8 共用施設で実施された利 用研究課題の課題数とシフト数について実験責任者 の所属機関分類および研究分野分類を示します。 表5 に、 1997B - 2024B 課題種別実施課題数の推移を示 します。 表 2 SPring-8 専用施設の 2024B 実施課題数とシフト数 課 題 種 実施課題数合計 実施シフト数合計 専用ビームライン (成果非専有) 190 2614 . 25 専用ビームライン (成果専有) 13 57 . 75 合 計 203 2672 表 3 SPring-8 年 6回募集対象ビームラインにおける審査 対象課題 (注2) の2024B採択状況 (II期III期分を含む) ビームライン 応募 課題数 採択 課題数 課題 採択率 (%) BL 01 B 1 : XAFS I 90 26 28 . 9 BL 02 B 1 :単結晶構造解析 46 43 93 . 5 BL 02 B 2 :粉末結晶構造解析 58 46 79 . 3 BL 09 XU : HAXPES I 36 23 63 . 9 BL 13 XU : X 線回折・散乱 I 42 23 54 . 8 BL 14 B 2 : XAFS II 78 30 38 . 5 BL 16 XU :理研 分析科学 I 5 5 100 . 0 BL 19 B 2 : X 線回折・散乱 II 45 43 95 . 6 BL 46 XU : HAXPES II 36 21 58 . 3 (注 1 ) BL 24 XU は成果専有課題のみ受付 (注 2 )一般課題、大学院生提案型課題 表 1 SPring-8 共用施設 (注 1) の 2024B 課題種別の課題数と実施シフト数 課 題 種 応募課題数 採択課題数 課題採択率 (%) 採択課題の 実施数 非応募課題 (注 2 ) の実施数 実施課題数 合 計 実施シフト数 合 計 一般課題 901 609 67 . 6 600 29 629 4861 成果専有課題 94 93 98 . 9 90 8 98 496 . 5 大学院生提案型課題 108 61 56 . 5 58 1 59 416 . 75 大学院生提案型課題(長期型) 8 4 50 . 0 3 8 11 104 . 625 時期指定課題 42 42 100 . 0 39 - 39 51 . 5 測定代行課題 (注 3 ) 81 81 100 . 0 81 - 81 36 成果公開優先利用課題 72 72 100 . 0 71 - 71 438 . 875 成果公開優先利用課題 (一年利用) 2024 B 期の募集なし 15 15 242 . 75 合 計 1306 962 73 . 7 942 61 1003 6648 (注 1 )理研ビームラインからの一部共用供出ビームタイムの利用を含む。 (注 2 )既に採択等された課題で、当該期の応募・採択等プロセスを要しないもの及び複数 BL 実施課題分。 (注 3 ) BL 14 B 2 、 BL 19 B 2 、 BL 28 B 2 、 BL 46 XU で実施。 60 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 表 4 2024B に SPring-8 共用施設 (注 1) で実施された利用研究課題の所属機関分類および研究分野分類 機関 分類 課題分類 課題数/ シフト数 研究分野 計 生命科学 医学応用 物質科学・ 材料科学 化学 地球・惑星 科学 環境科学 産業利用 その他 (注 2 ) 大 学 等 教 育 機 関 一般課題 課題数 57 7 224 101 35 5 19 5 453 シフト数 402 . 25 60 1693 . 75 669 . 875 306 . 875 48 140 . 25 38 . 875 3359 . 875 成果専有課題 課題数 1 1 シフト数 2 2 大学院生提案型課題 課題数 5 26 17 2 3 53 シフト数 39 . 75 190 . 75 99 . 875 6 27 363 . 375 大学院生提案型課題 (長期型) 課題数 3 1 7 11 シフト数 36 12 56 . 625 104 . 625 時期指定課題 課題数 2 6 1 9 シフト数 3 . 25 5 . 375 3 11 . 625 測定代行課題 課題数 1 2 1 6 3 13 シフト数 0 . 125 0 . 25 0 . 125 3 3 . 625 7 . 125 成果公開優先利用課題 課題数 2 23 18 1 3 47 シフト数 6 . 5 111 . 875 150 . 875 6 8 283 . 25 成果公開優先利用課題 (一年利用) 課題数 1 1 1 3 シフト数 3 6 6 15 計 課題数 68 10 280 140 45 6 32 9 590 シフト数 487 . 5 63 . 375 2013 . 75 928 . 875 369 . 625 54 181 . 25 48 . 5 4146 . 875 国 公 立 研 究 機 関 等 一般課題 課題数 9 3 48 10 4 3 10 87 シフト数 145 . 625 33 372 . 375 77 . 5 39 25 . 875 119 . 625 813 成果専有課題 課題数 2 1 1 4 シフト数 76 . 75 6 9 91 . 75 時期指定課題 課題数 1 2 3 シフト数 0 . 5 3 . 25 3 . 75 測定代行課題 課題数 4 4 シフト数 1 . 625 1 . 625 成果公開優先利用課題 課題数 2 5 2 2 11 シフト数 18 26 11 . 875 9 64 . 875 成果公開優先利用課題 (一年利用) 課題数 4 1 3 8 シフト数 143 5 56 . 75 204 . 75 計 課題数 15 5 55 14 6 12 10 117 シフト数 365 . 375 51 409 . 375 134 . 75 50 . 875 48 . 75 119 . 625 1179 . 75 産 業 界 一般課題 課題数 1 1 1 12 15 シフト数 3 11 . 875 6 110 . 875 131 . 75 成果専有課題 課題数 10 1 8 1 70 90 シフト数 24 1 21 . 875 3 294 . 875 344 . 75 時期指定課題 課題数 3 4 1 18 26 シフト数 1 . 25 3 . 75 0 . 25 30 . 375 35 . 625 測定代行課題 課題数 1 59 60 シフト数 0 . 125 25 . 625 25 . 750 成果公開優先利用課題 課題数 1 2 9 1 13 シフト数 2 18 50 20 . 75 90 . 75 成果公開優先利用課題 (一年利用) 課題数 4 4 シフト数 23 23 計 課題数 14 1 14 6 172 1 208 シフト数 28 . 25 1 39 . 5 27 . 375 534 . 75 20 . 75 651 . 625 海 外 機 関 一般課題 課題数 3 2 46 17 6 74 シフト数 34 . 625 27 326 . 25 121 . 75 46 . 75 556 . 375 成果専有課題 課題数 2 1 3 シフト数 33 25 58 大学院生提案型課題 課題数 6 6 シフト数 53 . 375 53 . 375 時期指定課題 課題数 1 1 シフト数 0 . 5 0 . 5 測定代行課題 課題数 4 4 シフト数 1 . 5 1 . 5 計 課題数 6 2 52 17 6 5 88 シフト数 68 . 125 27 379 . 625 121 . 75 46 . 75 26 . 5 669 . 75 課題数合計 103 18 401 177 57 6 221 20 1003 シフト数合計 949 . 25 142 . 375 2842 . 25 1212 . 75 467 . 25 54 791 . 25 188 . 875 6648 (注 1 )理研ビームラインからの一部共用供出ビームタイムの利用を含む。 (注 2 )素粒子・原子核科学、考古学、ビームライン技術他。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 61 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 表 5 SPring-8 1997B − 2024B 課題種別実施課題数の推移 課題種 1997 B ~ 2015 B 2016 A 2016 B 2017 A 2017 B 2018 A 2018 B 2019 A 2019 B 2020 A 2021 A 2021 B 2022 A 2022 B 2023 A 2023 B 2024 A 2024 B 合計 一般課題 14394 489 459 502 570 524 537 507 563 661 470 536 515 564 543 615 537 629 23615 緊急・特別課題 35 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 1 0 0 0 0 0 0 40 成果専有課題 918 42 47 35 48 41 46 38 52 88 36 67 54 99 71 107 81 98 1968 時期指定課題 (除く測定代行) 232 6 10 7 16 6 16 8 20 17 14 25 14 35 13 36 23 39 537 測定代行 (時期指定課題の一環) 561 32 48 29 46 37 60 29 40 65 42 43 41 61 46 79 63 81 1403 産業利用準備課題 3 10 5 6 3 27 長期利用課題 345 28 25 28 25 13 14 15 14 11 10 9 10 3 3 553 被災量子ビーム施設 ユーザー支援課題 94 94 大学院生提案型課題 (旧名称:萌芽的研究 支援課題[~ 2015 B ] ) 591 65 52 29 53 53 58 41 52 53 43 52 46 54 52 56 48 59 1457 大学院生提案型課題 (長期型) 3 6 2 10 8 11 40 成果公開優先利用課題 510 35 37 39 52 34 43 33 33 53 52 71 58 87 64 84 58 71 1414 成果公開優先利用課題 (一年利用) 7 6 14 15 42 重点タンパク 500 課題 (タンパク 3000 ) 489 489 重点ナノテクノロジー 支援課題 928 928 重点産業トライアル ユース課題 112 112 SPring- 8 戦略活用 プログラム課題 332 332 重点産業利用課題 1000 1000 重点産業化促進課題 58 58 産業新分野支援課題 50 11 4 6 4 75 放射光施設横断産業 利用課題 5 3 6 4 18 先進技術活用による 産業応用課題 5 4 8 17 重点メディカルバイオ・ トライアルユース課題 57 57 重点拡張メディカル バイオ課題 51 51 重点グリーン/ライフ・ イノベーション推進課題 125 125 スマート放射光活用イノ ベーション戦略推進課題 61 61 社会・文化利用課題 27 17 19 19 14 14 13 123 重点戦略課題 ( 12 条戦略課題) 65 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 65 重点パワーユーザー課題 127 127 重点パートナーユーザー 課題 18 7 7 8 8 7 7 8 8 11 5 0 0 94 新分野創成利用課題 4 6 11 16 21 21 25 24 9 8 0 0 0 145 合 計 20458 738 719 718 857 755 822 717 809 984 678 807 741 909 801 993 832 1003 35067 備考 長期利用課題、重点パートナーユーザー課題、新分野創成利用課題、大学院生提案型課題(長期型)は BL ごとに 1 課題としてカウント。 空白は制度なし。 2024B の延べ利用者数は、共用施設 5,952 人、専 用施設 1,766 人でした。 表 6 に、 SPring-8 共用施設 および専用施設利用実績の推移を示します。 表 6 の 値を利用シフト数合計と共に示したものが 図 1 です。 利用シフト数合計は、 表 6 の「利用時間」に利用し た共用・専用ビームラインの数(理研ビームライン の一部共用への供出分を含む。但し、理研ビームラ インは共用供出割合で換算)を掛けた数値となって います。 図 2 には、 SPring-8 共用施設の利用研究課 題の応募・採択数の推移実績を採択率と共に示しま す。応募・採択課題数は、 2006B 以前は一般課題締 め切り時、 2007A 以降は期の途中で申請・採択され る成果専有時期指定課題、測定代行課題および年 6 回募集対象ビームラインの第 II 期および第 III 期申 請分を含めた、期の終わりの値を示します。利用シ フト数合計は、上記と同様に 表 6 の「利用時間」に 利用した共用ビームラインの数を掛けた数値となっ ています。 実施課題の課題名をホームページの以下の URL で公開しています。成果専有課題は「公表用課題名」 が表示されています。 https://user.spring 8 .or.jp/?p= 37038 62 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 成果非専有課題の利用課題実験報告書( SPring-8 Experiment Summary Report )は以下の URL で閲覧 できます。 https://user.spring 8 .or.jp/uisearch/expreport/ja 成果は、 3 年以内に、論文または SPring-8/SACLA 利用研究成果集等で公開されます。 表 6 SPring-8 共用施設および専用施設利用実績の推移 利 用 期 間 利用時間 共用施設 専用施設 実施課題数 延べ利用者数 実施課題数 延べ利用者数 第 1 回 1997 B 1997 年 10 月- 1998 年 03 月 1 , 286 94 681 - - 第 2 回 1998 A 1998 年 04 月- 1998 年 10 月 1 , 702 234 1 , 252 7 - 第 3 回 1999 A 1998 年 11 月- 1999 年 06 月 2 , 585 274 1 , 542 33 467 第 4 回 1999 B 1999 年 09 月- 1999 年 12 月 1 , 371 242 1 , 631 65 427 第 5 回 2000 A 2000 年 02 月- 2000 年 06 月 2 , 051 365 2 , 486 100 794 第 6 回 2000 B 2000 年 10 月- 2001 年 01 月 1 , 522 383 2 , 370 88 620 第 7 回 2001 A 2001 年 02 月- 2001 年 06 月 2 , 313 474 2 , 915 102 766 第 8 回 2001 B 2001 年 09 月- 2002 年 02 月 1 , 867 488 3 , 277 114 977 第 9 回 2002 A 2002 年 02 月- 2002 年 07 月 2 , 093 545 3 , 246 110 1 , 043 第 10 回 2002 B 2002 年 09 月- 2003 年 02 月 1 , 867 540 3 , 508 142 1 , 046 第 11 回 2003 A 2003 年 02 月- 2003 年 07 月 2 , 246 634 3 , 777 164 1 , 347 第 12 回 2003 B 2003 年 09 月- 2004 年 02 月 1 , 844 549 3 , 428 154 1 , 264 第 13 回 2004 A 2004 年 02 月- 2004 年 07 月 2 , 095 569 3 , 756 161 1 , 269 第 14 回 2004 B 2004 年 09 月- 2004 年 12 月 1 , 971 555 3 , 546 146 1 , 154 第 15 回 2005 A 2005 年 04 月- 2005 年 08 月 1 , 880 560 3 , 741 146 1 , 185 第 16 回 2005 B 2005 年 09 月- 2005 年 12 月 1 , 818 620 4 , 032 187 1 , 379 第 17 回 2006 A 2006 年 03 月- 2006 年 07 月 2 , 202 724 4 , 809 226 1 , 831 第 18 回 2006 B 2006 年 09 月- 2006 年 12 月 1 , 587 550 3 , 513 199 1 , 487 第 19 回 2007 A 2007 年 03 月- 2007 年 07 月 2 , 448 781 4 , 999 260 2 , 282 第 20 回 2007 B 2007 年 09 月- 2008 年 02 月 2 , 140 739 4 , 814 225 1 , 938 第 21 回 2008 A 2008 年 04 月- 2008 年 07 月 2 , 231 769 4 , 840 232 1 , 891 第 22 回 2008 B 2008 年 10 月- 2009 年 03 月 1 , 879 672 4 , 325 217 1 , 630 第 23 回 2009 A 2009 年 04 月- 2009 年 07 月 1 , 927 669 4 , 240 238 1 , 761 第 24 回 2009 B 2009 年 10 月- 2010 年 02 月 2 , 087 722 4 , 793 275 2 , 144 第 25 回 2010 A 2010 年 04 月- 2010 年 07 月 1 , 977 685 4 , 329 293 2 , 483 第 26 回 2010 B 2010 年 10 月- 2011 年 02 月 2 , 094 744 4 , 872 325 2 , 812 第 27 回 2011 A 2011 年 04 月- 2011 年 07 月 2 , 131 740 4 , 640 309 2 , 773 第 28 回 2011 B 2011 年 10 月- 2012 年 02 月 1 , 927 730 4 , 576 319 2 , 769 第 29 回 2012 A 2012 年 04 月- 2012 年 07 月 1 , 972 637 4 , 304 285 2 , 692 第 30 回 2012 B 2012 年 10 月- 2013 年 02 月 2 , 184 771 5 , 072 314 3 , 181 第 31 回 2013 A 2013 年 04 月- 2013 年 07 月 1 , 837 633 4 , 053 275 2 , 835 第 32 回 2013 B 2013 年 10 月- 2013 年 12 月 1 , 571 610 3 , 770 286 2 , 723 第 33 回 2014 A 2014 年 04 月- 2014 年 07 月 1 , 768 624 4 , 129 292 2 , 710 第 34 回 2014 B 2014 年 10 月- 2015 年 02 月 2 , 290 858 5 , 766 331 3 , 573 第 35 回 2015 A 2015 年 04 月- 2015 年 07 月 2 , 053 674 4 , 560 271 2 , 960 第 36 回 2015 B 2015 年 09 月- 2015 年 12 月 1 , 981 726 4 , 863 281 2 , 898 第 37 回 2016 A 2016 年 04 月- 2016 年 07 月 2 , 150 738 5 , 174 301 3 , 130 第 38 回 2016 B 2016 年 09 月- 2016 年 12 月 1 , 976 719 4 , 824 298 2 , 985 第 39 回 2017 A 2017 年 04 月- 2017 年 07 月 2 , 101 718 4 , 835 326 3 , 228 第 40 回 2017 B 2017 年 10 月- 2018 年 02 月 2 , 377 857 5 , 885 355 3 , 659 第 41 回 2018 A 2018 年 04 月- 2018 年 08 月 2 , 254 755 5 , 009 323 3 , 231 第 42 回 2018 B 2018 年 10 月- 2019 年 02 月 2 , 306 822 5 , 468 361 3 , 303 第 43 回 2019 A 2019 年 04 月- 2019 年 07 月 2 , 205 717 4 , 579 331 2 , 911 第 44 回 2019 B 2019 年 09 月- 2020 年 02 月 2 , 333 809 5 , 378 344 3 , 102 第 45 回 2020 A 2020 年 04 月- 2021 年 02 月 4 , 309 984 5 , 906 337 3 , 265 第 46 回 2021 A 2021 年 04 月- 2021 年 07 月 2 , 155 678 4 , 156 241 1 , 877 第 47 回 2021 B 2021 年 09 月- 2022 年 02 月 2 , 272 807 5 , 134 270 2 , 313 第 48 回 2022 A 2022 年 04 月- 2022 年 08 月 2 , 147 741 4 , 609 241 2 , 231 第 49 回 2022 B 2022 年 10 月- 2023 年 02 月 2 , 269 909 5 , 398 252 2 , 556 第 50 回 2023 A 2023 年 04 月- 2023 年 08 月 2 , 133 801 4 , 731 250 2 , 218 第 51 回 2023 B 2023 年 10 月― 2024 年 02 月 2 , 303 993 5 , 712 279 2 , 447 第 52 回 2024 A 2024 年 04 月― 2024 年 07 月 2 , 098 832 4 , 865 207 1 , 847 第 53 回 2024 B 2024 年 09 月― 2025 年 02 月 2 , 318 1003 5 , 952 203 1 , 766 合 計 110 , 503 35 , 067 224 , 070 12 , 091 109 , 180 注:長期利用課題、重点パートナーユーザー課題、新分野創成利用課題、大学院生提案型課題(長期型)をビームラインごとに 1 課題とカウント。 共用施設には理研ビームライン等からの供出ビームタイムの利用者を含む。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 63 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 図 1 SPring-8 共用施設および専用施設の利用実績推移 図 2 SPring-8 共用施設の応募・採択課題数の推移実績 64 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 第 25 回目の利用期である 2024B 期の利用研究課 題(共用課題)が、 2024 年 9 月 24 日から 2025 年 2 月 27 日にかけて実施されました。 この期間において、ビームライン BL1 、 BL2 また は BL3 にて計 46 の利用研究課題が実施され、ビー ムタイムは計 265.8 シフト( 1 シフト= 12 時間)が 利用されました。 実施課題は、それぞれ表 1 のとおり国内外機関所 属の実験責任者により実施されました。うち、一般 課題(成果非専有利用)は 45 件、一般課題(成果 専有利用)は 1 件でした。時期指定課題(成果専有 利用のみ)および緊急課題の利用はありませんでし た。 なお、これらのほか、同ビームラインにおいて JASRI スタッフによるインハウス課題が計 3 課題実 施され、ビームタイムは計 24 シフトが利用されま した。 実施課題の課題名は、以下の Web サイトに掲載 しています。 ◆ SACLA User Information https://sacla.xfel.jp/?p=4175 また、利用課題実験報告書( Experiment Summary Report :成果非専有利用のみ)は、以下の Web サイト に掲載しています。 ◆ SACLA User Information > 成果等検索 > 利用課題実験報告書検索 https://user.spring8.or.jp/uisearch/expreport/ja 成果は、課題実施期終了後 3 年以内に、査読付き 原著論文等で公開されます。 公益財団法人 高輝度光科学研究センター 利用推進部 〒 679 - 5198 兵庫県佐用郡佐用町光都 1 - 1 - 1 TEL : 0791 - 58 - 0961 e-mail : sacla.jasri@spring 8 .or.jp 登録施設利用促進機関 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 2024B 期において実施された SACLA 利用研究課題(共用課題)について 表 1 2024B 期 SACLA 利用研究実施課題 課 題 種 産業界 大学等教育機関 国公立試験 研究機関等 海外機関 合 計 実 施 課題数 実 施 シフト数 実 施 課題数 実 施 シフト数 実 施 課題数 実 施 シフト数 実 施 課題数 実 施 シフト数 実 施 課題数 実 施 シフト数 一般課題 (成果非専有利用) 1 5 19 109 . 5 5 28 . 5 20 122 . 5 45 265 . 5 (成果専有利用) 1 0 . 3 1 0 . 3 時期指定課題(成果専有利用) 緊急課題 合 計 1 5 20 109 . 8 5 28 . 5 20 122 . 5 46 265 . 8 〇実施課題を実験責任者の所属(産 / 学 / 官 / 海外)で区分。 〇延べ利用者数は計 498 人。 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 65 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 2023-2024 年度の SPring-8/SACLA 利用者選定のために設置した委員会委員名を公表します。一部の委員会 は審査の公正性を保つため任務中は非公開としており、審査の透明性の確保の観点から任務終了後に公表する こととしています。 登録施設利用促進機関 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 SPring-8/SACLA 利用者選定に係る 2023-2024 年度委員会の委員名簿の公表 〇 2023-2024 年度 SPring-8 選定委員会 (委員長) 野村 昌治 高エネルギー加速器研究機構 名誉教授 (委員長代理) 有馬 孝尚 東京大学 教授 理化学研究所 創発物性科学研究センター センター長 (委 員) 足立 伸一 高エネルギー加速器研究機構 理事 内海 渉 量子科学技術研究開発機構 量子技術基盤研 究部門 次世代放射光施設整備開発センター センター長( 2024 年 3 月まで) 岡島 敏浩 科学技術交流財団 あいちシンクロトロン光 センター 副所長(技術 ・ 研究開発) 金谷 利治 京都大学 名誉教授 上村みどり CBI 研究機構 量子構造生命科学研究所 所長 岸本 浩通 住友ゴム工業株式会社 研究開発本部 先進 技術 ・ イノベーション研究センター フェロー 兼センター長 木村 昭夫 広島大学 教授 柴山 充弘 総合科学研究機構 中性子科学センター セ ンター長 島川 祐一 京都大学 化学研究所 教授 妹尾与志木 佐賀県産業振興機構 九州シンクロトロン光 研究センター 所長 高橋 正光 量子科学技術研究開発機構 NanoTerasu セ ンター センター長( 2024 年 4 月から) 高原 淳 九州大学 ネガティブエミッションテクノロ ジー研究センター 名誉教授・特任教授 森吉千佳子 広島大学 教授 〇 2023-2024 年度 SACLA 選定委員会 (委員長) 中川 敦史 大阪大学 蛋白質研究所 教授 (委員長代理) 米田 仁紀 電気通信大学 レーザー新世代研究センター 教授 (委 員) 足立 伸一 高エネルギー加速器研究機構 理事 河内 哲哉 量子科学技術研究開発機構 副理事 木村 剛 東京大学 教授 栗栖 源嗣 大阪大学 蛋白質研究所 所長/教授 佐野 雄二 自然科学研究機構 分子科学研究所 プログ ラム・マネージャー 高橋 瑞稀 第一三共株式会社 グループ長 山重 寿夫 トヨタ自動車株式会社 主幹 〇 2023-2024 年度 専用施設審査委員会 (委員長) 金谷 利治 京都大学 名誉教授 (委員長代理) 妹尾与志木 佐賀県産業振興機構 九州シンクロトロン光 研究センター 所長 (委 員) 石川 哲也 理化学研究所 放射光科学研究センター セ ンター長 大石 泰生 高輝度光科学研究センター 安全管理室長 大橋 治彦 高輝度光科学研究センター ビームライン光 学技術推進室長( 2023 年 10 月から) 66 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 木村 正雄 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学 研究所 教授 熊坂 崇 高輝度光科学研究センター 放射光利用研究 基盤センター 副センター長/回折・散乱推 進室長/構造生物学推進室長 坂田 修身 高輝度光科学研究センター 常務理事/放射 光利用研究基盤センター長 佐治 超爾 高輝度光科学研究センター 基幹システム DX 推進室長 佐藤 眞直 高輝度光科学研究センター 産業利用 ・ 産学連 携推進室長( 2024 年 4 月から) 島田 賢也 広島大学 放射光科学研究所 所長/教授 田中 均 理化学研究所 放射光科学研究センター 副 センター長 田中良太郎 高輝度光科学研究センター 常務理事/放射 光利用研究基盤センター長 ( 2023 年 6 月まで) 玉作 賢治 高輝度光科学研究センター 回折・散乱推進 室長( 2024 年 12 月まで) 登野 健介 高輝度光科学研究センター 散乱・イメージ ング推進室長/分光推進室長 西堀 英治 筑波大学 教授 藤田 全基 東北大学 教授 矢橋 牧名 理化学研究所 放射光科学研究センター グ ループディレクター 山口 章 高輝度光科学研究センター 常務理事/産業 利用・産学連携推進室長( 2024 年 3 月まで) 〇 2023-2024年度 SPring-8利用研究課題審査委員会 (委員長) 有馬 孝尚 東京大学 教授 理化学研究所 創発物性科学研究センター センター長 (委 員) 青栁 忍 名古屋市立大学 教授 雨澤 浩史 東北大学 多元物質科学研究所 教授 今田 勝巳 大阪大学 教授 大石 泰生 高輝度光科学研究センター 安全管理室長 奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所 総括研究員 熊坂 崇 高輝度光科学研究センター 放射光利用研究 基盤センター 副センター長/回折・散乱推 進室長/構造生物学推進室長 組頭 広志 東北大学 多元物質科学研究所 教授 坂田 修身 高輝度光科学研究センター 常務理事/放射 光利用研究基盤センター長 佐々木孝彦 東北大学 金属材料研究所 教授 佐治 超爾 高輝度光科学研究センター 基幹システム DX 推進室長 佐藤 眞直 高輝度光科学研究センター 産業利用・産学 連携推進室長 清水 克哉 大阪大学 教授 下村 晋 京都産業大学 教授 鈴木 基寛 関西学院大学 教授 妹尾与志木 佐賀県産業振興機構 九州シンクロトロン光 研究センター 所長 世良 俊博 東京理科大学 教授 田代 孝二 科学技術交流財団 あいちシンクロトロン光 センター 上席研究員 玉作 賢治 高輝度光科学研究センター 回折・散乱推進 室長( 2024 年 12 月まで) 登野 健介 高輝度光科学研究センター 散乱・イメージ ング推進室長/分光推進室長 Baron Alfred 高輝度光科学研究センター 精密分光推進室 長 細川 伸也 島根大学 研究員 矢野 陽子 近畿大学 教授 脇原 徹 東京大学 教授 〇 2023-2024 年度 SACLA 利用研究課題審査委員会 (委員長) 米田 仁紀 電気通信大学 レーザー新世代研究センター 教授 (委員長代理) 西野 吉則 北海道大学 電子科学研究所 教授 (委 員) 有馬 孝尚 東京大学 教授 理化学研究所 創発物性科学研究センター センター長 井上 豪 大阪大学 教授 大石 泰生 高輝度光科学研究センター 安全管理室長 神門 正城 量子科学技術研究開発機構 量子技術基盤研 究部門 関西光量子科学研究所 副所長 佐藤 尭洋 Linac Coherent Light Source, SLAC National Accelerator Laboratory Staff Scientist 佐藤 衛 総合科学研究機構 中性子産業利用推進セン ター サイエンスコーディネーター 澤田 寛 University of Nevada Reno Associate Professor 篠原 佑也 Oak Ridge National Laboratory R&D Associate 清水 敏之 東京大学 教授 千田 俊哉 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学 研究所 教授 高橋 幸生 東北大学 国際放射光イノベーション ・ スマー ト研究センター 教授 津本 浩平 東京大学 教授 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 67 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 登野 健介 高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究 推進室 チームリーダー 中堤 基彰 European XFEL, GmbH Scientist 西堀 英治 筑波大学 教授 野澤 俊介 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学 研究所 准教授 野尻 浩之 東北大学 金属材料研究所 教授 初井 宇記 高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究 推進室 グループリーダー 彦坂 泰正 富山大学 教授 藤岡 慎介 大阪大学 レーザー科学研究所 教授 松田 巌 東京大学 物性研究所 教授 本山 央人 東京大学 先端科学技術研究センター 特任 講師 矢橋 牧名 高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究 推進室長 籔内 俊毅 高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究 推進室 グループリーダー 山崎 裕一 物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究セ ンター チームリーダー 〇 2023-2024 年度 SPring-8 課題審査委員会 分科 会委員 ◎分科会主査 [小角・広角散乱分科会〈 DS 1 〉 ] ◎田代 孝二 科学技術交流財団 あいちシンクロト ロン光センター 上席研究員 関口 博史 高輝度光科学研究センター 散乱・イ メージング推進室 チームリーダー 寺尾 憲 大阪大学 教授 [ X 線回折(単結晶)分科会〈 DS 2 〉 ] ◎下村 晋 京都産業大学 教授 一栁 光平 高輝度光科学研究センター 回折 ・ 散 乱推進室 研究員 守友 浩 筑波大学 教授 [ X 線回折(粉末)分科会〈 DS 3 〉 ] ◎青栁 忍 名古屋市立大学 教授 河口 彰吾 高輝度光科学研究センター 回折・散 乱推進室 主幹研究員 藤原明比古 関西学院大学 教授 [ X 線回折(汎用・構造評価)分科会〈 DS 4 〉 ] ◎脇原 徹 東京大学 教授 久保田佳基 大阪公立大学 教授 小金澤智之 高輝度光科学研究センター 産業利 用・産学連携推進室 チームリーダー [ X 線回折(高圧)分科会〈 DS 5 〉 ] ◎清水 克哉 大阪大学 教授 西原 遊 愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究 センター 教授 肥後 祐司 高輝度光科学研究センター 回折・散 乱推進室 チームリーダー [汎用 XAFS 、汎用 MCD 分科会〈 SP 1 〉 ] ◎鈴木 基寛 関西学院大学 教授 奥村 和 工学院大学 教授 片山 真祥 高輝度光科学研究センター 分光推進 室 主幹研究員 [先端 X 線分光分科会〈 SP 2 〉 ] ◎雨澤 浩史 東北大学 多元物質科学研究所 教授 河村 直己 高輝度光科学研究センター 分光推進 室 チームリーダー 三村功次郎 大阪公立大学 教授 [光電子分光分科会〈 SP 3 〉 ] ◎組頭 広志 東北大学 多元物質科学研究所 教授 今田 真 立命館大学 教授 髙木 康多 高輝度光科学研究センター 分光推進 室 主幹研究員 [赤外分光分科会〈 SP 4 〉 ] ◎佐々木孝彦 東北大学 金属材料研究所 教授 池本 夕佳 高輝度光科学研究センター 分光推進 室 主幹研究員( 2024 年 3 月まで) 岡村 英一 徳島大学 教授 片山 真祥 高輝度光科学研究センター 分光推進 室 主幹研究員( 2024 年 4 月から) [イメージング分科会〈 IMG 〉 ] ◎世良 俊博 東京理科大学 教授 上杉健太朗 高輝度光科学研究センター 散乱・イ メージング推進室 主席研究員 68 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 柳樂 知也 物質・材料研究機構 構造材料研究セ ンター グループリーダー [非弾性散乱分科会〈 IXS 〉 ] ◎細川 伸也 島根大学 研究員 北尾 真司 京都大学 複合原子力科学研究所 准 教授 鈴木 宏輔 群馬大学 准教授 Baron Alfred 高輝度光科学研究センター 精密分光 推進室長 [構造生物学分科会〈 SB 〉 ] ◎今田 勝巳 大阪大学 教授 熊坂 崇 高輝度光科学研究センター 放射光利 用研究基盤センター 副センター長/ 回折・散乱推進室長/構造生物学推進 室長 山下 敦子 大阪大学 蛋白質研究所 教授 [産業利用分科会〈 IND 〉 ] ◎妹尾与志木 佐賀県産業振興機構 九州シンクロト ロン光研究センター 所長 岡島 敏浩 科学技術交流財団 あいちシンクロト ロン光センター 副所長(技術 ・ 研究 開発) 木村 正雄 高エネルギー加速器研究機構 物質構 造科学研究所 教授 堂前 和彦 高輝度光科学研究センター 産業利用 基盤開発携推進室 コーディネーター 宮﨑 司 京都大学 成長戦略本部 特定教授 [人文・社会科学分科会〈 HSS 〉 ] ◎奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所 総括研究 員 上杉健太朗 高輝度光科学研究センター 散乱・イ メージング推進室 主席研究員 高谷 光 帝京科学大学 教授 [その他(持込装置利用) 〈 OTH 〉 ] ◎矢野 陽子 近畿大学 教授 河野 義生 関西学院大学 教授 田尻 寛男 高輝度光科学研究センター 散乱 ・ イ メージング推進室 主幹研究員 [長期利用分科会] ( 2023 年度で終了) * ◎有馬 孝尚 東京大学 教授 理化学研究所 創発物性科学研究セン ター グループディレクター 秋山 修志 自然科学研究機構 分子科学研究所 教授 岩田 忠久 東京大学 教授 熊坂 崇 高輝度光科学研究センター 構造生物 学推進室長 坂田 修身 高輝度光科学研究センター 常務理事 /放射光利用研究基盤センター長 佐藤 眞直 高輝度光科学研究センター 産業利 用・産学連携推進室 室長代理 高橋 正光 量子科学技術研究開発機構 量子基盤 技術研究部門 次長 玉作 賢治 高輝度光科学研究センター 回折・散 乱推進室長 登野 健介 高輝度光科学研究センター 散乱・イ メージング推進室長/分光推進室長 中島 健次 日本原子力研究開発機構 原子力科学 研究部門 副センター長 横谷 尚睦 岡山大学 教授 〇 2023-2024 年度 大学院生利用審査委員会 (委員長) 朝倉 清髙 立命館大学 総合科学技術研究機構 SR セ ンター長/教授 (委 員) 今田 勝巳 大阪大学 教授 熊坂 崇 高輝度光科学研究センター 放射光利用研究 基盤センター 副センター長/回折・散乱推 進室長/構造生物学推進室長 坂田 修身 高輝度光科学研究センター 常務理事/放射 光利用研究基盤センター長 ( 2023 年 9 月まで) 佐藤 眞直 高輝度光科学研究センター 産業利用・産学 連携推進室長 瀬戸 誠 京都大学 複合原子力科学研究所 教授 竹中 幹人 京都大学 化学研究所 教授 玉作 賢治 高輝度光科学研究センター 回折・散乱推進 室長( 2024 年 12 月まで) 登野 健介 高輝度光科学研究センター 散乱・イメージ ング推進室長/分光推進室長 松本 健志 徳島大学 教授 若林 裕助 東北大学 教授 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 69 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 〇 2023-2024年度 SPring-8/SACLA成果審査委員会 (委員長) 佐々木 聡 東京科学大学 名誉教授 (委 員) 木下 豊彦 高輝度光科学研究センター コーディネー ター 熊坂 崇 高輝度光科学研究センター 放射光利用研究 基盤センター 副センター長/回折・散乱推 進室長/構造生物学推進室長 坂田 修身 高輝度光科学研究センター 常務理事/放射 光利用研究基盤センター長 佐藤 眞直 高輝度光科学研究センター 産業利用・産学 連携推進室長 田中良太郎 高輝度光科学研究センター 常務理事/放射 光利用研究基盤センター長 ( 2023 年 6 月まで) 玉作 賢治 高輝度光科学研究センター 回折・散乱推進 室長( 2024 年 12 月まで) 登野 健介 高輝度光科学研究センター 散乱・イメージ ング推進室長/分光推進室長 舟越 賢一 総合科学研究機構 中性子科学センター 利 用推進部長 本間 穂高 日本製鉄株式会社 技術開発本部 部長代理 森吉千佳子 広島大学 教授 矢橋 牧名 高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究 推進室長 山口 浩司 住友電気工業株式会社 解析技術研究セン ター 主幹 山下 敦子 大阪大学 蛋白質研究所 教授 綿貫 徹 量子科学技術研究開発機構 関西光科学研究 所 副所長/センター長 (所属・役職は 2025 年 3 月時点又は退任時のもの * 所属・役職は 2024 年 3 月時点又は退任時のもの) 70 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 公益財団法人高輝度光科学研究センター( JASRI )では、 NanoTerasu 利用研究課題審査委員会( PRC )にお いて NanoTerasu の資料研究課題を審査した結果を受け、 NanoTerasu 選定委員会の意見を聴き、以下のように 第 1 回共同利用期間( 2025 年 3 月~ 2025 年 8 月(放射光利用 232 シフト、 1 シフト= 8 時間)における利用研究 課題を採択しました。 1.募集、審査および採択の日程 [募集案内公開と応募締切] 2024 年 9 月 26 日 NanoTerasu ホームページで募集 案内公開 11 月 6 日 応募締切 [課題審査、選定、採択および通知] 2024 年 12 月 19 日 NanoTerasu 利 用 研 究 課 題 審 査 委員会( PRC )による課題審査 2025 年 1 月 15 日 NanoTerasu 選 定 委 員 会 の 意 見 を聴取 1 月 20 日 JASRI として採択課題を決定し、 応募者に審査結果を通知 登録施設利用促進機関 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 第 1 回 (2025A) NanoTerasu 利用研究課題の採択について 2.応募および採択状況 2025A 期の新規応募課題数は 75 、採択課題数は 38 でした。 表 1 に利用研究課題の応募課題数および 採択課題数と採択率(%)を示します。また、 表 2 に応募 75 課題について、ビームラインごとの応募 課題数、採択率および配分シフト数、並びに採択さ れた課題の 1 課題あたりの平均配分シフト数を示し ます。 表 3 には応募 75 課題について、申請者の所 属機関分類と課題の研究分野分類の統計を示します。 3.採択課題 2025A 期 の 採 択 課 題 一 覧 は NanoTerasu User Information に掲載しています。以下をご覧ください。 ホーム > 課題申請について > 採択・実施課題 一覧 https://user.nanoterasu.jp/project-apply/ 52 /#i- 9 表 1 2025A NanoTerasu 利用研究課題の課題種別応募および採択課題数と採択率 決定課題種 応募課題数 採択課題数 採択率 (%) 採択課題のシフト 充足率 (%) 一般課題 75 38 50 . 7 98 . 7 表 2 2025A ビームラインごとの採択状況 ビームライン 応募課題数計 採択課題数計 採択率 (%) 配分シフト数計 1 課題あたり 平均配分シフト BL 02 U :軟 X 線超高分解能共鳴非弾性散乱 25 10 40 . 0 189 18 . 9 BL 06 U :軟 X 線ナノ光電子分光 26 12 46 . 2 176 14 . 7 BL 13 U :軟 X 線ナノ吸収分光 24 16 66 . 7 168 10 . 5 総 計 75 38 50 . 7 533 14 . 0 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 71 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 表 3 2025A 応募・採択結果の機関および研究分野分類 課題分類 生命科学 医学応用 物質科学・ 材料科学 化学 地球・ 惑星科学 環境科学 その他 * 総 計 採択率 (%) 機関分類 課題数/ シフト数 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 応募 採択 大学等教育機関 課題数 1 2 2 31 15 3 2 3 2 1 1 41 22 53 . 7 シフト数 12 21 21 357 212 27 24 36 27 6 6 459 290 63 . 2 国公立研究機関等 課題数 3 1 14 9 1 1 1 1 1 20 12 60 . 0 シフト数 57 15 201 126 6 6 15 18 18 297 165 55 . 6 産業界 課題数 シフト数 海外機関 課題数 13 3 1 1 14 4 28 . 6 シフト数 259 69 9 9 268 78 29 . 1 合 計 課題数 4 1 2 2 58 27 5 4 4 2 1 1 1 1 75 38 50 . 7 シフト数 69 15 21 21 817 407 42 39 51 27 6 6 18 18 1024 533 52 . 1 採択率 課題数 25 . 0 100 . 0 46 . 6 80 . 0 50 . 0 100 . 0 100 . 0 50 . 7 シフト数 21 . 7 100 . 0 49 . 8 92 . 9 52 . 9 100 . 0 100 . 0 52 . 1 *ビームライン技術、素粒子・原子核科学、考古学、鑑識科学、安全管理 等 図 1 2025A 所属機関別 応募/採択課題数割合 図 2 2025A 研究分野別 応募/採択課題数割合 72 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 論文発表の現状 年別査読有り論文発表等登録数(2025 年 3 月 31 日現在) SPring-8 Beamline Name Public Use Since ~ 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 Total Public Beamlines BL 01 B 1 XAFS I 1997 . 10 797 87 94 82 86 104 94 87 67 64 11 1573 Technical Journal 1 1 BL 02 B 1 Single Crystal Structure Analysis 1997 . 10 284 44 40 30 48 55 60 42 46 46 7 702 BL 02 B 2 Powder Diffraction 1999 . 9 895 95 80 75 80 114 77 98 79 81 12 1686 BL 04 B 1 High Temperature and High Pressure Research 1997 . 10 268 16 15 17 17 13 12 15 9 19 1 402 BL 04 B 2 High Energy X-ray Diffraction 1999 . 9 345 43 30 42 41 64 34 57 30 38 14 738 Technical Journal 1 1 2 BL 08 W High Energy Inelastic Scattering 1997 . 10 214 16 16 14 11 18 25 17 5 12 4 352 BL 09 XU HAXPES I 1997 . 10 184 16 19 28 14 11 14 14 17 25 8 350 BL 10 XU High Pressure Research 1997 . 10 434 30 28 26 34 33 23 28 19 29 6 690 BL 13 XU X-ray Diffraction and Scattering I 2001 . 9 233 35 28 32 34 33 24 26 30 40 5 520 BL 14 B 2 XAFS II 2007 . 9 278 53 58 67 81 87 76 72 70 71 11 924 Technical Journal 3 1 3 7 BL 19 B 2 X-ray Diffraction and Scattering II 2001 . 11 419 63 70 60 58 62 59 37 45 45 10 928 Technical Journal 5 2 1 1 9 BL 20 B 2 Medical and Imaging I 1999 . 9 329 26 28 32 29 40 28 34 22 25 4 597 BL 20 XU Medical and Imaging II 2001 . 9 315 37 34 31 44 35 44 34 40 33 7 654 BL 25 SU Soft X-ray Spectroscopy of Solid 1998 . 4 405 19 25 20 24 30 23 22 23 20 2 613 Technical Journal 2 2 BL 27 SU Soft X-ray Photochemistry 1998 . 5 432 36 27 26 16 42 19 20 21 18 8 665 BL 28 B 2 White Beam X-ray Diffraction 1999 . 9 181 19 25 20 17 27 15 17 18 17 2 358 BL 35 XU Inelastic and Nuclear Resonant Scattering 2001 . 9 138 15 15 14 8 21 17 14 15 10 4 271 BL 37 XU Trace Element Analysis 2002 . 11 229 30 29 29 26 33 22 21 24 24 5 472 Technical Journal 1 1 BL 38 B 1 Structural Biology III 2000 . 10 668 66 48 38 41 35 30 15 11 15 1 968 BL 39 XU X-ray Absorption and Emission Spectroscopy 1997 . 10 278 24 30 20 19 30 22 18 16 24 4 485 BL 40 B 2 SAXS BM 1999 . 9 604 60 54 56 64 54 69 58 59 54 11 1143 Technical Journal 2 1 3 BL 40 XU High Flux 2000 . 4 210 42 30 35 52 30 41 31 28 30 7 536 Technical Journal 1 1 BL 41 XU Macromolecular Crystallography I 1997 . 10 1035 80 72 70 57 66 42 22 15 11 3 1473 BL 43 IR Infrared Materials Science 2000 . 4 126 14 23 10 21 29 21 24 19 22 4 313 BL 46 XU HAXPES II 2000 . 11 259 50 52 44 55 45 66 47 47 30 4 699 Technical Journal 1 1 1 3 BL 47 XU Micro-CT 1997 . 10 378 30 37 29 33 34 22 31 26 21 2 643 Technical Journal 1 1 Public Use at Other Beamlines BL 05 XU R&D-ID I 2017 . 4 3 7 9 9 2 5 5 1 41 BL 11 XU QST Quantum Dynamics I ( 1999 . 3 - 2012 . 2 ) 13 13 BL 14 B 1 QST Quantum Dynamics II ( 1998 . 4 - 2012 . 2 ) 48 48 BL 15 XU WEBRAM ( 2002 . 9 - 2012 . 2 ) 35 35 BL 17 SU RIKEN Coherent Soft X-ray Spectroscopy 2005 . 9 49 2 3 5 8 6 4 4 5 4 1 91 BL 19 LXU RIKEN SR Physics 2002 . 9 7 2 5 7 2 3 8 1 5 2 42 BL 22 XU JAEA Actinide Science I ( 2004 . 9 - 2012 . 2 ) 6 6 BL 23 SU JAEA Actinide Science II ( 1998 . 6 - 2012 . 2 ) 53 1 1 55 BL 26 B 1 RIKEN Structural Genomics I 2009 . 4 30 19 19 29 30 37 26 25 13 13 1 242 BL 26 B 2 RIKEN Structural Genomics II 2009 . 4 22 11 9 7 9 7 1 3 4 4 1 78 Technical Journal 1 1 BL 29 XU RIKEN Coherent X-ray Optics 2002 . 9 15 2 2 3 1 1 2 26 BL 32 XU RIKEN Targeted Proteins 2010 . 10 46 8 17 18 18 14 8 6 6 3 2 146 BL 43 LXU Quantum NanoDynamics 2020 . 8 2 2 BL 44 B 2 RIKEN Materials Science I 1998 . 5 14 6 5 2 6 7 4 6 5 9 1 65 BL 45 XU RIKEN Structural Biology I 1997 . 10 128 20 11 7 16 24 26 20 25 16 6 299 Subtotal 10404 1116 1078 1028 1106 1254 1066 970 870 882 170 19944 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 73 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Beamline Name Public Use Since ~ 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 Total Contract Beamlines BL 03 XU Advanced Softmaterial 2009 . 11 73 17 23 9 19 21 14 12 21 17 1 227 Technical Journal 152 33 31 28 28 34 24 27 19 2 378 BL 07 LSU The University-of-Tokyo Outstation Beamline for Materials Science ( 2009 . 11 - 2022 . 8 ) 47 19 19 16 21 13 15 18 8 12 6 194 Technical Journal 1 2 1 4 BL 08 B 2 Hyogo BM 2005 . 9 26 6 11 5 7 13 10 10 7 1 96 Technical Journal 33 4 4 1 3 1 1 2 49 BL 11 XU QST Quantum Dynamics I 133 20 20 16 20 14 20 10 11 23 3 290 BL 12 B 2 NSRRC BM 2001 . 9 240 38 34 37 48 33 27 14 6 9 486 BL 12 XU NSRRC ID 2003 . 2 118 18 25 19 28 30 15 16 12 18 2 301 BL 14 B 1 QST Quantum Dynamics II 182 17 23 22 21 26 27 26 22 22 2 390 BL 15 XU WEBRAM ( 2001 . 4 - 2021 . 9 ) 406 62 58 54 49 55 40 33 17 10 5 789 BL 16 B 2 SUNBEAM BM ( 1999 . 9 - 2024 . 3 ) 68 10 9 6 10 12 21 19 11 6 1 173 Technical Journal 57 15 21 15 11 8 7 5 11 5 155 BL 16 XU SUNBEAM ID ( 1999 . 9 - 2024 . 3 ) 51 11 9 9 17 20 23 20 17 11 1 189 Technical Journal 67 21 18 12 8 10 6 4 7 4 157 BL 22 XU JAEA Actinide Science I 129 14 15 26 25 18 27 27 21 27 2 331 Technical Journal 1 1 BL 23 SU JAEA Actinide Science II 260 26 16 24 23 28 19 21 12 5 2 436 BL 24 XU Hyogo ID 1998 . 10 162 5 6 8 2 13 12 12 15 9 244 Technical Journal 27 1 4 1 1 1 1 1 37 BL 28 XU Advanced Batteries 2012 . 4 17 5 6 4 8 11 7 5 1 9 2 75 Technical Journal 1 1 BL 31 LEP Laser-Electron Photon II 2013 . 10 1 3 2 1 3 2 1 1 14 BL 32 B 2 Pharmaceutical Industry ( 2002 . 9 - 2012 . 3 ) 28 1 1 1 31 BL 33 LEP Laser-Electron Photon ( 2000 . 10 - 2023 . 3 ) 61 2 3 5 2 1 1 75 BL 33 XU TOYOTA 2009 . 5 22 10 16 6 9 19 17 12 19 13 1 144 Technical Journal 19 4 1 24 BL 36 XU Catalytic Reaction Dynamics for Fuel Cell ( 2013 . 1 - 2020 . 3 ) 14 7 12 15 8 11 4 7 9 6 93 BL 44 XU Macromolecular Assemblies 2000 . 2 535 61 67 61 67 71 62 46 39 25 4 1038 Subtotal 2573 351 374 343 387 412 361 310 249 224 32 5616 Beamline Name Public Use Since ~ 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 Total RIKEN Beamlines BL 05 XU R&D-ID I 5 1 2 2 10 BL 17 SU Coherent Soft X-ray Spectroscopy 103 8 5 1 8 4 1 5 2 137 BL 19 LXU SR Physics 131 5 6 1 4 1 2 2 1 153 BL 26 B 1 Structural Genomics I 208 8 7 6 5 1 1 2 2 1 241 BL 26 B 2 Structural Genomics II 147 9 25 9 5 5 2 2 204 BL 29 XU Coherent X-ray Optics 214 15 9 8 4 7 4 3 4 1 269 BL 32 XU Targeted Proteins 45 19 9 11 6 6 6 4 1 1 108 BL 38 B 2 Diagnosis Beamline I 2 2 BL 43 LXU Quantum NanoDynamics 2 1 2 5 BL 44 B 2 Materials Science I 291 17 18 14 10 3 2 2 3 6 1 367 BL 45 XU Structural Biology I 233 13 8 7 2 11 4 278 Subtotal 1381 95 87 56 37 44 24 13 16 18 3 1774 Public Beamlines Beamline Name Public Use Since ~ 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 Total BL 1 SXFEL 2016 . 3 7 6 9 10 5 9 11 57 BL 2 /BL 3 XFEL 2 /XFEL 1 2012 . 3 79 48 43 34 51 62 57 57 47 42 12 532 ~ 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 Total Hardware / Software R & D 659 46 53 49 35 26 15 20 12 17 3 935 CryoTEM 2 4 6 12 ~ 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 Total NET Sum Total 12699 1324 1318 1197 1288 1412 1213 1092 934 899 166 23542 Technical Journal 337 74 71 54 49 53 34 39 35 9 1 756 SACLA OTHERS NanoTerasu 2025 年 3 月 31 日現在、論文発表等登録データベースに登録されたデータはありません。 査読有り論文発表等:査読有りの原著論文、査読有りのプロシーディングと博士論文、 SPring- 8 /SACLA 利用研究成果集 Technical Journal : JASRI が認定した企業等の公開技術報告書 NET Sum Total :実際に登録されている件数(本表に表示していない実験以外に関する文献を含む) 複数ビームライン( BL )からの成果からなる論文はそれぞれの BL でカウントし、共用・専用・理研の変更があった次の BL については、変更前のカテゴリに含めた。 BL 07 LSU 、 BL 15 XU 、 BL 16 XU 、 BL 16 B 2 、 BL 32 B 2 、 BL 33 LEP 、 BL 36 XU 、 BL 38 B 1 (以上、現 理研 BL ) 、 BL 45 XU (現 共用 BL ) このデータは論文発表等登録データベース( https://user.spring 8 .or.jp/uisearch/publication 2 / )に 2025 年 3 月 31 日までに登録されたデータに基づいており、今後変更され る可能性があります。 ・ SPring- 8 、 SACLA または NanoTerasu での成果を論文等にする場合は必ず BL 名および課題番号の記述を入れて下さい。 74 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu C0..UNICATI0NS 成果発表出版形式別登録数(2025 年 3 月 31 日現在) SPring-8 Beamline Name Public Use Since Refereed Papers Proceedings Other Publications Total Public Beamlines BL 01 B 1 XAFS I 1997 . 10 1574 66 91 1731 BL 02 B 1 Single Crystal Structure Analysis 1997 . 10 702 14 32 748 BL 02 B 2 Powder Diffraction 1999 . 9 1686 42 86 1814 BL 04 B 1 High Temperature and High Pressure Research 1997 . 10 402 7 51 460 BL 04 B 2 High Energy X-ray Diffraction 1999 . 9 740 13 62 815 BL 08 W High Energy Inelastic Scattering 1997 . 10 352 10 49 411 BL 09 XU HAXPES I 1997 . 10 350 15 38 403 BL 10 XU High Pressure Research 1997 . 10 690 22 61 773 BL 13 XU X-ray Diffraction and Scattering I 2001 . 9 520 19 41 580 BL 14 B 2 XAFS II 2007 . 9 931 11 40 982 BL 19 B 2 X-ray Diffraction and Scattering II 2001 . 11 937 49 95 1081 BL 20 B 2 Medical and Imaging I 1999 . 9 597 93 94 784 BL 20 XU Medical and Imaging II 2001 . 9 654 106 166 926 BL 25 SU Soft X-ray Spectroscopy of Solid 1998 . 4 615 15 61 691 BL 27 SU Soft X-ray Photochemistry 1998 . 5 665 21 39 725 BL 28 B 2 White Beam X-ray Diffraction 1999 . 9 358 17 26 401 BL 35 XU Inelastic and Nuclear Resonant Scattering 2001 . 9 271 5 14 290 BL 37 XU Trace Element Analysis 2002 . 11 473 24 52 549 BL 38 B 1 Structural Biology III 2000 . 10 968 11 66 1045 BL 39 XU X-ray Absorption and Emission Spectroscopy 1997 . 10 485 17 80 582 BL 40 B 2 SAXS BM 1999 . 9 1146 15 122 1283 BL 40 XU High Flux 2000 . 4 537 26 73 636 BL 41 XU Macromolecular Crystallography I 1997 . 10 1473 4 103 1580 BL 43 IR Infrared Materials Science 2000 . 4 314 15 64 393 BL 46 XU HAXPES II 2000 . 11 702 21 47 770 BL 47 XU Micro-CT 1997 . 10 644 93 139 876 Public Use at Other Beamlines BL 05 XU R&D-ID I 2017 . 4 41 41 BL 11 XU QST Quantum Dynamics I ( 1999 . 3 - 2012 . 2 ) 13 2 2 17 BL 14 B 1 QST Quantum Dynamics II ( 1998 . 4 - 2012 . 2 ) 48 1 11 60 BL 15 XU WEBRAM ( 2002 . 9 - 2012 . 2 ) 35 19 7 61 BL 17 SU RIKEN Coherent Soft X-ray Spectroscopy 2005 . 9 91 1 29 121 BL 19 LXU RIKEN SR Physics 2002 . 9 42 5 47 BL 22 XU JAEA Actinide Science I ( 2004 . 9 - 2012 . 2 ) 6 6 BL 23 SU JAEA Actinide Science II ( 1998 . 6 - 2012 . 2 ) 55 4 15 74 BL 26 B 1 RIKEN Structural Genomics I 2009 . 4 242 9 251 BL 26 B 2 RIKEN Structural Genomics II 2009 . 4 79 11 90 BL 29 XU RIKEN Coherent X-ray Optics 2002 . 9 26 1 27 BL 32 XU RIKEN Targeted Proteins 2010 . 10 146 5 151 BL 43 LXU Quantum NanoDynamics 2020 . 8 2 2 BL 44 B 2 RIKEN Materials Science I 1998 . 5 65 4 69 BL 45 XU RIKEN Structural Biology I 1997 . 10 299 5 20 324 Subtotal 19976 783 1911 22670 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 75 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Beamline Name Public Use Since Refereed Papers Proceedings Other Publications Total Contract Beamlines BL 03 XU Advanced Softmaterial 2009 . 11 605 19 624 BL 07 LSU The University-of-Tokyo Outstation Beamline for Materials Science ( 2009 . 11 - 2022 . 8 ) 198 1 12 211 BL 08 B 2 Hyogo BM 2005 . 9 145 145 BL 11 XU QST Quantum Dynamics I 290 8 45 343 BL 12 B 2 NSRRC BM 2001 . 9 486 1 2 489 BL 12 XU NSRRC ID 2003 . 2 301 7 6 314 BL 14 B 1 QST Quantum Dynamics II 390 21 89 500 BL 15 XU WEBRAM ( 2001 . 4 - 2021 . 9 ) 789 14 60 863 BL 16 B 2 SUNBEAM BM ( 1999 . 9 - 2024 . 3 ) 328 12 79 419 BL 16 XU SUNBEAM ID ( 1999 . 9 - 2024 . 3 ) 346 8 64 418 BL 22 XU JAEA Actinide Science I 332 4 49 385 BL 23 SU JAEA Actinide Science II 436 45 110 591 BL 24 XU Hyogo ID 1998 . 10 281 19 64 364 BL 28 XU Advanced Batteries 2012 . 4 76 2 78 BL 31 LEP Laser-Electron Photon II 2013 . 10 14 14 BL 32 B 2 Pharmaceutical Industry ( 2002 . 9 - 2012 . 3 ) 31 3 34 BL 33 LEP Laser-Electron Photon ( 2000 . 10 - 2023 . 3 ) 75 23 3 101 BL 33 XU TOYOTA 2009 . 5 168 5 51 224 BL 36 XU Catalytic Reaction Dynamics for Fuel Cell ( 2013 . 1 - 2020 . 3 ) 93 6 99 BL 44 XU Macromolecular Assemblies 2000 . 2 1038 49 1087 Subtotal 6422 168 713 7303 Beamline Name Public Use Since Refereed Papers Proceedings Other Publications Total RIKEN Beamlines BL 05 XU R&D-ID I 10 6 16 BL 17 SU Coherent Soft X-ray Spectroscopy 137 4 13 154 BL 19 LXU SR Physics 153 8 27 188 BL 26 B 1 Structural Genomics I 241 2 19 262 BL 26 B 2 Structural Genomics II 204 1 13 218 BL 29 XU Coherent X-ray Optics 269 14 38 321 BL 32 XU Targeted Proteins 108 4 112 BL 38 B 2 Diagnosis Beamline I 2 6 8 BL 43 LXU Quantum NanoDynamics 5 5 BL 44 B 2 Materials Science I 367 2 16 385 BL 45 XU Structural Biology I 278 5 45 328 Subtotal 1774 48 175 1997 Public Beamlines Beamline Name Public Use Since Refereed Papers Proceedings Other Publications Total BL 1 SXFEL 2016 . 3 57 57 BL 2 /BL 3 XFEL 2 /XFEL 1 2012 . 3 532 4 18 554 Refereed Papers Proceedings Other Publications Total Hardware / Software R & D 935 554 475 1964 CryoTEM 12 12 Refereed Papers Proceedings Other Publications Total NET Sum Total 24298 1382 2539 28219 SACLA OTHERS NanoTerasu 2025 年 3 月 31 日現在、論文発表等登録データベースに登録されたデータはありません。 Refereed Papers :査読有りの原著論文、査読有りのプロシーディングと博士論文、 SPring- 8 /SACLA 利用研究成果集、公開技術報告書 Proceedings :査読なしのプロシーディング Other Publications :発表形式が出版で、上記の 2 つに当てはまらないもの(総説、単行本、賞、その他として登録されたもの) NET Sum Total :実際に登録されている件数(本表に表示していない実験以外に関する文献を含む) 複数ビームライン( BL )からの成果からなる論文等はそれぞれの BL でカウントし、共用・専用・理研の変更があった次の BL については、変更前のカテゴリに含めた。 BL 07 LSU 、 BL 15 XU 、 BL 16 XU 、 BL 16 B 2 、 BL 32 B 2 、 BL 33 LEP 、 BL 36 XU 、 BL 38 B 1 (以上、現 理研 BL ) 、 BL 45 XU (現 共用 BL ) ・ SPring- 8 、 SACLA または NanoTerasu での成果を論文等にする場合は必ず BL 名および課題番号の記述を入れて下さい。 76 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu C0..UNICATI0NS SPring-8 、 SACLA もしくは NanoTerasu において実施された研究課題等の成果が公表された場合は JASRI の 成果登録データベースに登録していただくことになっており、その内容は以下の URL ( SPring-8 論文データ ベース検索ページ)で検索できます。 http://www.spring8.or.jp/ja/science/publication_database/ このデータベースに登録された原著論文の内、 2025 年 1 月~ 2025 年 3 月に登録されたものを以下に紹介します。 論文の情報(主著者、巻、発行年、ページ、タイトル)に加え、データベースの登録番号(研究成果番号)を 掲載していますので、詳細は上記検索ページの検索結果画面でご覧いただくことができます。また実施された 課題の情報(課題番号、ビームライン、実験責任者名)も掲載しています。課題番号は最初の 4 文字が「 year 」 、 次の 1 文字が「 term 」 、後ろの 4 文字が「 proposal no. 」となっていますので、この情報から以下の URL で公表 している、各課題の英文利用報告書( SPring-8 User Experiment Report )を探してご覧いただくことができます。 http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/publications/user_exp_report/ 今後も利用者情報には発行月の 2 ヶ月前の月末締めで、前号掲載分以降に登録された論文情報を掲載してい く予定です。なお、データベースは毎日更新されていますので、最新情報は SPring-8 論文データベース検索 ページでご確認ください。なお、実験責任者のかたには、成果が公表されましたら速やかに登録いただきます ようお願いいたします。 SPring-8 研究成果登録データベースに 2025 年 1 月〜3 月に登録された論文が掲載された主な雑誌と掲載論文数 掲載雑誌 登録 論文数 掲載雑誌 登録 論文数 Journal of the American Chemical Society 10 Journal of Applied Physics 4 Physical Review B 7 Journal of the Physical Society of Japan 4 Nature Communications 6 Lamgmuir 4 Inorganic Chemistry 5 Applied Physics Letters 3 Chemistry of Materials 4 Journal of Synchrotron Radiation 3 Japanese Journal of Applied Physics 4 RSC Advances 3 他全 123 誌、計 188 報 (注意)グループ課題として設定されている課題群については、その論文がグループ課題の中の複数の課題の成果である場合でも、代表課題となっ ている課題番号のみ表示しています。グループ課題に複数のビームラインの課題が含まれる場合、代表課題が複数のビームラインで実施 されたように表示されています。 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 最近 SPring-8、 SACLA、 NanoTerasu から発表された成果リスト SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 77 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 課題の成果として登録された論文 Journal of the American Chemical Society 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 47987 Pengfei Shan 147 ( 2025 ) 4375 - 4381 2024 B 1282 BL 10 XU Ma Liang Molecular Hydride Superconductor BiH 4 with T c up to 91 K at 170 GPa 2024 B 1304 BL 10 XU Cheng Jinguang 48006 Takumi Moriyama 147 ( 2025 ) 1262 - 1270 2023 B 1867 BL 09 XU 邨次 智 Pt 2 Gd Alloy Nanoparticles from Organometallic Pt and Gd Complexes and Hollow Mesoporous Carbon Spheres: Enhanced Oxygen Reduction Reaction Activity and Durability 48009 Qing-Jun Shui 145 ( 2023 ) 27307 - 27315 2022 B 1428 BL 41 XU 青柳 忍 Evaporable Fullerene Indanones with Controlled Amorphous Morphology as Electron Transport Layers for Inverted Perovskite Solar Cells 48025 Datong Zhang 147 ( 2025 ) 5649 - 5657 2022 A 1821 BL 19 B 2 山本 健太郎 Cathode Design Based on Nitrogen Redox and Linear Coordination of Cu Center for All-Solid-State Fluoride- Ion Batteries 2023 A 1889 BL 14 B 2 山本 健太郎 2023 B 1847 BL 14 B 2 山本 健太郎 2023 B 2052 BL 14 B 2 山本 健太郎 2021 A 1022 BL 14 B 2 内本 喜晴 2022 A 7442 BL 07 LSU 山本 健太郎 2022 B 1035 BL 27 SU 内本 喜晴 2023 B 1034 BL 27 SU 内本 喜晴 48059 MaoCai Pi 147 ( 2025 ) 4403 - 4410 2024 A 1506 BL 02 B 2 Pan Zhao Observation of Robust Compressed CuO 6 Octahedra and Exotic Spin Structure in CaCuFe 2 O 5 2024 A 1695 BL 02 B 2 Pan Zhao 48107 Daisuke Hirayama 146 ( 2024 ) 26808 - 26818 2023 B 1825 BL 01 B 1 川脇 徳久 Ultrafine Rhodium–Chromium Mixed-Oxide Cocatalyst with Facet-Selective Loading for Excellent Photocatalytic Water Splitting 2023 A 1675 BL 01 B 1 川脇 徳久 2022 A 1075 BL 01 B 1 川脇 徳久 2022 B 1823 BL 01 B 1 川脇 徳久 48108 Miyu Sera 146 ( 2024 ) 29684 - 29693 2023 B 1825 BL 01 B 1 川脇 徳久 Atomically Precise Au 24 Pt(thiolate) 12 (dithiolate) 3 Nanoclusters with Excellent Electrocatalytic Hydrogen Evolution Reactivity 2023 A 1675 BL 01 B 1 川脇 徳久 2022 B 1823 BL 01 B 1 川脇 徳久 48142 Yutaka Mondori 147 ( 2025 ) 8326 - 8335 2020 A 1871 BL 14 B 2 植竹 裕太 Monodentate σ -Accepting Boron-Based Ligands Bearing Square-Planar Ni ( 0 ) Centers 2021 A 1630 BL 14 B 2 植竹 裕太 2022 A 1767 BL 14 B 2 植竹 裕太 2022 A 1784 BL 14 B 2 山内 泰宏 48191 Zhong Yin 147 ( 2025 ) 9190 - 9197 2017 B 7551 BL 07 LSU Yin Zhong Observation of an Associative State in Aqueous Hydroxide 2018 A 7566 BL 07 LSU Yin Zhong Nature Communications 47956 Lu Chen 16 ( 2025 ) 26 2022 B 1758 BL 14 B 2 Guan Xuze Tuning the Selectivity of NH 3 Oxidation via Cooperative Electronic Interactions between Platinum and Copper Sites 47996 Yosuke Isoda 16 ( 2025 ) 56 2024 A 1962 BL 27 SU 菅 大介 Stabilization of Oxygen Vacancy Ordering and Electrochemical-proton-insertion-and-extraction- induced Large Resistance Modulation in Strontium Iron Cobalt Oxides Sr(Fe,Co) O y 2023 A 1631 BL 01 B 1 磯田 洋介 48159 Takashi Kurumaji 16 ( 2025 ) 2176 2021 B 1261 BL 02 B 1 鬼頭 俊介 Canted Antiferromagnetism in a Spin-orbit Coupled S eff = 3 / 2 Triangular-lattice Magnet DyAuGe 48167 Chenglong Jin 15 ( 2024 ) 10188 2021 B 6672 BL 44 XU Lee Bong Jin Structural Insight into the Distinct Regulatory Mechanism of the HEPN–MNT Toxin-Antitoxin System in Legionella pneumophila 48174 Wei-Tin Chen 16 ( 2025 ) 2128 2008 A 3708 BL 22 XU 東 正樹 Pressure-induced Charge Amorphisation in BiNiO 3 2008 B 3723 BL 22 XU 東 正樹 2019 B 1527 BL 27 SU 東 正樹 2019 B 1641 BL 39 XU 東 正樹 2019 B 3781 BL 22 XU 東 正樹 48220 Shaifaly Parmar 15 ( 2024 ) 8173 2021 A 2715 BL 45 XU 沼田 倫征 Mechanistic Analysis of Riboswitch Ligand Interactions Provides Insights into Pharmacological Control over Gene Expression 78 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS Physical Review B 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48121 Yusei Morita 111 ( 2025 ) L 081116 2022 A 1434 BL 25 SU 黒田 健太 Zone-selection Effect of Photoelectron Intensity Distributions in the Nonsymmorphic System R AlSi ( R =Ce or Nd) 2022 B 1357 BL 25 SU 黒田 健太 2022 A 2060 BL 25 SU 山神 光平 2022 B 2106 BL 25 SU 山神 光平 48153 Céline Crepisson 111 ( 2025 ) 024209 2021 A 8643 BL 3 Fiquet Guillaume Shock-driven Amorphization and Melting in Fe 2 O 3 2023 A 8061 BL 3 Amouretti Alexis 48160 Takashi Kurumaji 110 ( 2024 ) 064409 2024 A 1511 BL 02 B 1 中埜 彰俊 Metamagnetism and Anomalous Magnetotransport Properties in Rare-earth-based Polar Semimetals R AuGe ( R =Dy, Ho, and Gd) 48227 Koto Fujinuma 111 ( 2025 ) 115147 2024 A 4250 BL 12 XU 武上 大介 Effect of S 3 p and Se 4 p Holes on Charge Fluctuations in Pyrite-type CuS 2 and CuSe 2 Revealed by Hard X-ray Photoemission Spectroscopy 48229 Hidekazu Okamura 111 ( 2025 ) 125202 2016 A 0073 BL 43 IR 佐々木 孝彦 Interband Spectroscopy of Landau Levels and Magnetoexcitons in Bulk Black Phosphorus 2017 A 1164 BL 43 IR 岡村 英一 2017 B 1389 BL 43 IR 岡村 英一 2018 A 1130 BL 43 IR 岡村 英一 48261 Wenting Lu 111 ( 2025 ) 024115 2024 A 1096 BL 10 XU Stavrou Elissaios Pressure-induced Crystallization and Metallization in Glassy As 20 Se 80 2024 B 1182 BL 10 XU Stavrou Elissaios Inorganic Chemistry 48060 Jie Zhang 64 ( 2025 ) 472 - 478 2023 B 1575 BL 02 B 2 Pan Zhao Large Manipulation of Ferrimagnetic Curie Temperature by A-Site Chemical Substitution in ACu 3 Fe 2 Re 2 O 12 (A = Na, Ca, and La)Half Metals 48086 Norio Saito 64 ( 2025 ) 1909 - 1918 2017 B 4891 BL 15 XU 大橋 直樹 Unraveling the Origin of Unusual Cs Atom Disorder in Cesium Octahedral Molybdenum Halide Cluster Compounds, Cs 2 [{Mo 6 X i 8 }X a 6 ] (X = Cl and Br) 2018 A 4503 BL 15 XU 大橋 直樹 2019 A 4703 BL 15 XU 大橋 直樹 48192 Zhentao Lu 63 ( 2024 ) 23914 - 23925 2018 A 1152 BL 02 B 2 赤松 寛文 Suppression of Ferroelectric Transitions by Symmetry Trapping in Dion–Jacobson-Layered Perovskites Cs (La,Nd) Nb 2 O 7 2018 B 1227 BL 02 B 2 赤松 寛文 2023 A 1875 BL 02 B 2 赤松 寛文 2024 A 1879 BL 02 B 2 赤松 寛文 48195 Jian Wang 64 ( 2025 ) 1340 - 1351 2021 A 1473 BL 02 B 2 赤松 寛文 Thermally Controlled A -site Cation Ordering and Coupled Polarity in Double Perovskite NaLaZr 2 O 6 2021 B 1609 BL 02 B 2 赤松 寛文 2023 A 1875 BL 02 B 2 赤松 寛文 48211 Zhijun Li 64 ( 2025 ) 5004 - 5013 2022 B 1919 BL 02 B 2 山浦 一成 Crystal Structure and Physical Properties of Au 4 Al- Type Suboxides in the Ti–Rh–Si–O and Ti–Ir–Si–O Systems 2023 A 1496 BL 02 B 2 Belik Alexei 2024 A 2370 BL 02 B 2 山浦 一成 Japanese Journal of Applied Physics 48008 Shinobu Aoyagi 62 ( 2023 ) SM 1028 2022 B 0591 BL 02 B 1 青柳 忍 Scanning Time-resolved Measurement of Transient Lattice Strain on Quartz Oscillators Resonating under Alternating Electric Field 2022 A 1452 BL 02 B 1 青柳 忍 2021 A 1186 BL 02 B 1 青柳 忍 48019 Yoshiharu Kirihara 64 ( 2025 ) 01 SP 29 2024 A 1651 BL 09 XU 桐原 芳治 Evaluation of the Effect of Hydrogen Plasma Treatment on the Chemical Bonding State and Distribution of Hydrogen in Silicon Nitride Films by Angle-resolved Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy 2023 B 1932 BL 09 XU 桐原 芳治 2023 B 1685 BL 09 XU 野平 博司 2023 B 1910 BL 09 XU 野平 博司 48145 Kentaro Toyoki 63 ( 2024 ) 10 SP 03 2018 B 1334 BL 25 SU 豊木 研太郎 Features of Itinerant Magnetism in Fe 0 . 6 Al 0 . 4 Film with B 2 -like Short-range Order 2019 A 1566 BL 25 SU 豊木 研太郎 2019 B 1466 BL 25 SU 豊木 研太郎 2021 B 1206 BL 25 SU 白土 優 48216 Masakazu Kanechika 64 ( 2025 ) 031001 2021 A 5370 BL 16 B 2 山口 聡 A Study on the Classification of Threading Dislocations in GaN Substrate by Spot Size using X-ray Topography High-resolution Image 2021 B 5370 BL 16 B 2 山口 聡 2022 A 5370 BL 16 B 2 山口 聡 2022 B 5370 BL 16 B 2 山口 聡 2023 A 5370 BL 16 B 2 山口 聡 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 79 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Journal of Applied Physics 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 47988 Hitoshi Yusa 137 ( 2025 ) 035902 2023 B 1344 BL 10 XU 遊佐 斉 Temperature and Pressure Dependence of the Fluorescence Spectrum of High-pressure Synthetic Corundum-type Ga 2 O 3 :Cr 3 + , Structural Stability, and Crystal Growth under High Pressure 2024 A 1216 BL 10 XU 遊佐 斉 48162 Toshiya Inami 137 ( 2025 ) 093901 2021 A 3556 BL 11 XU 稲見 俊哉 Depth-resolved Measurements of Magnetic Domains in Grain-oriented Electrical Steel 2022 B 3599 BL 11 XU 中田 崇寛 48218 Naoya Egashira 137 ( 2025 ) 105903 2021 B 8031 BL 3 佐野 智一 Direct Measurement of Lattice Behavior during Femtosecond Laser-driven Shock front Formation in Copper 2022 A 8031 BL 3 佐野 智一 2023 B 8023 BL 3 佐野 智一 48253 Daisuke Tanaka 137 ( 2025 ) 125901 2024 A 8013 BL 2 重森 啓介 Experimental Investigation on Nanowire array Irradiated with Ultrahigh Intensity Laser at X-ray Free Electron Laser Facility SACLA: Fabrication of Nanowire Array Target and its Application to Ultrafast Time-resolved Measurements 2023 A 8015 BL 2 重森 啓介 2023 A 8018 BL 2 澤田 寛 2021 B 8070 BL 2 澤田 寛 Journal of the Physical Society of Japan 47995 Takashi Hara 94 ( 2025 ) 024602 2021 B 1376 BL 02 B 1 澤 博 Diffuse Scattering and Low-Temperature Crystal Structure of τ -Type Molecular Conductor 2019 A 0070 BL 02 B 1 澤 博 2022 A 0304 BL 02 B 1 原 武史 48083 Akihisa Koizumi 94 ( 2025 ) 034704 2018 B 1245 BL 08 W 小泉 昭久 Visual Indication of Electronic Structures in CeIn 3 Depending on Temperature: A Compton Scattering Study 2019 A 1124 BL 08 W 小泉 昭久 48123 Yoshichika Onuki 89 ( 2020 ) 102001 2019 B 1675 BL 39 XU 本多 史憲 Unique Electronic States of Eu-based Compounds 48249 Hidemitsu Takahashi 94 ( 2025 ) 044605 2022 B 1729 BL 10 XU 高橋 秀光 Subtle Structural Anomaly under Compression in Line-Nodal CaSb 2 Langmuir 47961 Tomoki Ando 40 ( 2024 ) 26249 - 26258 2022 A 1193 BL 40 B 2 高橋 倫太郎 Synthesis and Characterization of Polyion Complex Micelles with Glycopolymer Shells for Drug Delivery Carriers 48005 Chie Kojima 41 ( 2025 ) 1411 - 1417 2024 A 1128 BL 43 IR 児島 千恵 Hydration and Biodistribution of Zwitterionic Dendrimers Conjugating a Sulfobetaine Monomer and Polymers 48136 Yohko Yano F. 41 ( 2025 ) 6074 - 6080 2017 B 1137 BL 37 XU 矢野 陽子 Collective Motion Induced by Marangoni Instability in Spontaneous Oscillation of Surface Tension 48143 Kaito Yokota 41 ( 2025 ) 765 - 773 2023 B 1174 BL 40 B 2 高橋 倫太郎 Self-Assembly and Drug Encapsulation Properties of Biocompatible Amphiphilic Diblock Copolymers Applied Physics Letters 48088 Zhao Pan 126 ( 2025 ) 071901 2023 B 1575 BL 02 B 2 Pan Zhao Extend the Scope of Negative Thermal Expansion in PbTiO 3 -based Perovskites 2024 A 1695 BL 02 B 2 Pan Zhao 48152 Yuya Kubota 126 ( 2025 ) 052101 2019 B 8045 BL 3 久保田 雄也 A Simple Method to Find Temporal Overlap between THz and X-ray Pulses using X-ray-induced Carrier Dynamics in Semiconductors 2022 B 8073 BL 3 富樫 格 48198 Yoshiharu Kirihara 126 ( 2025 ) 101601 2023 A 1939 BL 09 XU 桐原 芳治 Observation of Interface Dipole Modulation in an Al 2 O 3 /SnO x /SiO 2 Stack 2023 A 1649 BL 09 XU 桐原 芳治 2023 B 1932 BL 09 XU 桐原 芳治 2023 B 1685 BL 09 XU 野平 博司 2023 B 1910 BL 09 XU 野平 博司 Chemistry of Materials 48122 Masato Goto 37 ( 2025 ) 2008 - 2013 2021 B 1437 BL 02 B 2 後藤 真人 Robust Unusually High Valence Fe 5 + State and Large Magnetic Interaction Change in the Double Perovskites La 2 - x Ca x LiFeO 6 - 0 . 5 x 2022 A 1692 BL 02 B 2 飯星 眞 2022 B 1694 BL 02 B 2 後藤 真人 48129 Takuya Takahashi 37 ( 2025 ) 1111 - 1122 2021 B 1276 BL 01 B 1 青木 芳尚 Topochemical Transformation from Protonic to Hydride-ionic Phase in BaSn 1 – x In x O 3 - 0 . 5 x Perovskites 48260 Rei Watanabe 36 ( 2024 ) 2106 - 2112 2022 A 1692 BL 02 B 2 飯星 眞 Oxygen Release and Incorporation Behaviors in BaFeO 3 Polymorphs with Unusually High-Valence Fe 4 + 2021 B 1437 BL 02 B 2 後藤 真人 2023 A 1792 BL 02 B 2 飯星 眞 80 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS Journal of Synchrotron Radiation 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48054 Tadashi Togashi 32 ( 2025 ) 269 - 274 2021 A 8065 BL 3 富樫 格 Long-term Timing Stabilization for Pump–probe Experiments at SACLA 2021 B 8076 BL 3 富樫 格 2019 B 8083 BL 3 大和田 成起 2019 B 8084 BL 2 富樫 格 2020 A 8070 BL 3 富樫 格 48120 Ralph Ugalino 31 ( 2024 ) 217 - 221 2023 A 1774 BL 13 XU 杉本 邦久 The Role of Carboxylate Ligand Orbitals in the Breathing Dynamics of a Metal-Organic Framework by Resonant X-ray Emission Spectroscopy 2023 A 1566 BL 02 B 2 杉本 邦久 2018 B 7401 BL 07 LSU 原田 慈久 2019 A 7401 BL 07 LSU 宮脇 淳 2019 B 7401 BL 07 LSU 宮脇 淳 48154 Taito Osaka 32 ( 2025 ) 288 - 293 2020 A 8025 BL 3 大坂 泰斗 Resolution Enhancement on Single-shot X-ray Spectrometers using a Detuned Non-dispersive Multi- crystal Analyzer 2021 A 8021 BL 3 大坂 泰斗 RSC Advances 48116 Yuta Kimura 14 ( 2024 ) 18109 - 18116 2021 A 1308 BL 02 B 2 木村 勇太 Modifications of the Charge–discharge Behaviour of Fe 2 (MoO 4 ) 3 in All-solid-state Lithium-ion Batteries 2021 B 1605 BL 02 B 2 木村 勇太 2022 A 1336 BL 02 B 2 木村 勇太 48139 Nobuki Katayama 15 ( 2025 ) 1776 - 1781 2021 A 1615 BL 14 B 2 安村 駿作 Recyclable and Air-stable Colloidal Manganese Nanoparticles Catalyzed Hydrosilylation of Alkenes with Tertiary Silane 2022 B 1952 BL 14 B 2 田原 一輝 48259 Shotaro Shinoda 15 ( 2025 ) 8977 - 8985 2023 A 1225 BL 40 B 2 櫻木 美菜 Permeation Dynamics of Microemulsions According to the Amount of Deep Eutectic Solvent when Applied to the Stratum Corneum 2024 B 1143 BL 40 B 2 櫻木 美菜 Advanced Materials 48148 Tianhao Wu 37 ( 2025 ) 2414576 2024 A 1902 BL 19 B 2 柴山 直之 Lattice Matching Anchoring of Hole-Selective Molecule on Halide Perovskite Surfaces for n-i-p Solar Cells 2024 B 1697 BL 19 B 2 柴山 直之 48149 Lusheng Liang 37 ( 2025 ) 2413841 2023 B 1887 BL 19 B 2 柴山 直之 Formation Dynamics of Thermally Stable 1 D/ 3 D Perovskite Interfaces for High-Performance Photovoltaics Angewandte Chemie International Edition 48080 Hiroki Komiya 64 ( 2025 ) e 202501579 2023 B 1513 BL 37 XU 小畑 圭亮 Mass Activity Elucidation of Cobalt-Based Oxygen Evolution Catalysts Utilizing Depth-Resolved Spectroscopy in the Presence of Various Cations with Chloride 2023 B 1506 BL 37 XU 小畑 圭亮 2023 A 1876 BL 14 B 2 小畑 圭亮 48217 Guanping Li 64 ( 2025 ) e 202423095 2024 B 1596 BL 02 B 1 Stefanczyk Olaf Near-Infrared Light-Induced Spin-State Switching Based on Fe(II) - Hg(II) Spin-Crossover Network Beilstein Journal of Organic Chemistry 48003 Asahi Kanno 21 ( 2025 ) 226 - 233 2023 A 8035 BL 2 佐藤 宗太 Streamlined Modular Synthesis of Saframycin Substructure via Copper-catalyzed Three-component Assembly and Gold-promoted 6 - endo Cyclization 2023 B 8020 BL 2 佐藤 宗太 2021 B 1517 BL 45 XU 佐藤 宗太 2022 A 1572 BL 45 XU 佐藤 宗太 48011 Yong- Chang Zhai 20 ( 2024 ) 1270 - 1277 2023 A 1758 BL 02 B 1 青柳 忍 Synthesis of Indano[ 60 ]fullerene Thioketone and its Application in Organic Solar Cells Chemical Communications 48012 Yong- Chang Zhai 60 ( 2024 ) 9420 - 9423 2024 A 1443 BL 41 XU 青柳 忍 Hydrophobic Evaporable Fullerene Indanone Ketone with Low Sublimation Temperature and Amorphous Morphology for Inverted Perovskite Solar Cells 48163 Satoshi Yamamoto 60 ( 2024 ) 14790 - 14793 2023 B 1922 BL 19 B 2 山本 智士 Electrochemical Lithium-ion Insertion/Extraction Reactions of Multilayered Graphene with Random Twist Angles 2022 B 0611 BL 19 B 2 山本 智士 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 81 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Communications Chemistry 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 47991 Hiroshi Yamaguchi 8 ( 2025 ) 10 2022 B 1021 BL 04 B 2 尾原 幸治 Local Structure of Amorphous Sulfur in Carbon–sulfur Composites for All-solid-state Lithium-sulfur Batteries 2023 A 1001 BL 04 B 2 尾原 幸治 2024 A 1019 BL 04 B 2 尾原 幸治 48196 Satoshi Nagao 8 ( 2025 ) 63 2019 B 8009 BL 2 當舎 武彦 XFEL Crystallography Reveals Catalytic Cycle Dynamics during Non-native Substrate Oxidation by Cytochrome P 450 BM 3 2020 A 8128 BL 2 當舎 武彦 2020 A 8030 BL 2 當舎 武彦 2021 A 8041 BL 2 當舎 武彦 2021 B 8066 BL 2 當舎 武彦 2022 A 8065 BL 2 當舎 武彦 2022 B 8035 BL 2 當舎 武彦 2022 B 2551 BL 32 XU 杉本 宏 International Journal of Hydrogen Energy 47978 Kiyoshi Yamazaki 94 ( 2024 ) 406 - 419 2023 B 7001 BL 33 XU 山本 敏生 Effect of Support Morphology on the Ammonia Synthesis Activity of Ru/CeO 2 -based Catalysts 48185 Kazuyuki Shimizu 109 ( 2025 ) 1421 - 1436 2020 A 1796 BL 20 XU 戸田 裕之 Hydrogen Embrittlement in Al–Zn–Mg Alloys: Semispontaneous Decohesion of Precipitates 2020 A 1084 BL 20 XU 戸田 裕之 2020 A 1531 BL 20 XU 清水 一行 2022 A 1113 BL 20 XU 清水 一行 Journal of Alloys and Compounds 47963 Ran Liu 1010 ( 2025 ) 178060 2019 A 4501 BL 15 XU 辻本 吉廣 Strategies for Obtaining CaMn 3 Ti 4 O 12 -related Materials and Enhancing Intrinsic Dielectric Constant of such A-site-ordered Quadruple Perovskites 48224 Junnosuke Oishi 1022 ( 2025 ) 179780 2023 B 1277 BL 40 B 2 奥田 浩司 Long-period Stacking Ordered Structure in Mg-Y-Co-Ni Alloy 2024 A 1306 BL 40 B 2 奥田 浩司 2024 B 1484 BL 40 B 2 奥田 浩司 Journal of Geophysical Research: Solid Earth 48144 Bin Zhao 129 ( 2024 ) e 2024 JB 029659 2024 A 3584 BL 11 XU 増野 いづみ Aluminum and Iron Effects on the Electrical Conductivity of the Dense Hydrous Magnesium Silicate Phase E 48177 Atsuko Namiki 130 ( 2025 ) e 2024 JB 030483 2023 B 1172 BL 20 B 2 並木 敦子 Crystal-Rich Magma Is Solid-Like and Liquefies When Deformed Journal of Materials Chemistry C 48055 Sean D. Injac 12 ( 2024 ) 3077 - 3089 2019 B 1291 BL 02 B 2 Amano-Patino Midori Characterisation of Pb 2 Rh 2 O 7 and Y 2 Rh 2 O 7 : an Unusual Case of Pyrochlore Stabilisation under High Pressure, High Temperature Synthesis Conditions 48194 Zhen-Tao Lu 13 ( 2025 ) 1812 - 1823 2018 A 1152 BL 02 B 2 赤松 寛文 Structural Frustration Effects by Mixed Alkali Ions in Ferroelectric Dion–Jacobson Layered Perovskites (Cs,Rb)NdNb 2 O 7 2018 B 1227 BL 02 B 2 赤松 寛文 2023 A 1875 BL 02 B 2 赤松 寛文 2023 B 2047 BL 02 B 2 赤松 寛文 Journal of The Electrochemical Society 48029 Xian Shi 171 ( 2024 ) 120504 2020 A 1889 BL 19 B 2 松永 利之 Hierarchical Reactions Involving Dynamic Structural Changes in Lithium-Ion Batteries during Overcharge Using Advanced Analytical Techniques 2021 A 1027 BL 28 B 2 内本 喜晴 2021 A 1245 BL 28 B 2 内本 喜晴 2021 B 1023 BL 28 B 2 内本 喜晴 2021 B 1405 BL 28 B 2 内本 喜晴 2021 B 1748 BL 14 B 2 渡邊 稔樹 2022 A 1035 BL 27 SU 内本 喜晴 2022 A 1036 BL 28 B 2 内本 喜晴 48182 Misaki Katayama 172 ( 2025 ) 030511 2022 B 2108 BL 01 B 1 片山 真祥 Transfer of Inhomogeneous Reaction to Counter Electrode Analyzed by X-ray Absorption Fine Structure Imaging 2023 A 2389 BL 01 B 1 片山 真祥 2023 B 1982 BL 01 B 1 片山 真祥 82 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS Materials Transactions 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 47958 Kazuya Tokuda 66 ( 2025 ) 50 - 55 2021 A 5031 BL 16 XU 徳田 一弥 Visualization of Local Deformation in Metallic Materials through In Situ X-Ray Diffraction Mapping 2021 B 5031 BL 16 XU 徳田 一弥 2023 A 5031 BL 16 XU 徳田 一弥 2023 B 5031 BL 16 XU 徳田 一弥 47979 Toru Kawamata 65 ( 2024 ) 362 - 367 2021 B 1497 BL 02 B 1 川又 透 Short-Range Ordering Structure Found in Pd 82 Ge 18 Amorphous Alloy Determined from Anomalous X-ray Scattering (AXS) Data by Applying Reverse Monte- Carlo (RMC) Simulation Method Nanoscale 48087 Toru Wada 17 ( 2025 ) 6767 - 6779 2020 A 1231 BL 04 B 2 和田 透 Elucidation of the Nano-sized Molecular Structure of Methylaluminoxane using Synchrotron X-ray Total Scattering 2022 A 1329 BL 04 B 2 和田 透 48109 Kana Takemae 17 ( 2025 ) 3721 - 3727 2024 A 1698 BL 01 B 1 川脇 徳久 Inclusion of Gold Ions in Tiara-like Nickel Hexanuclear Nanoclusters 2023 B 1825 BL 01 B 1 川脇 徳久 2023 A 1675 BL 01 B 1 川脇 徳久 2022 B 1823 BL 01 B 1 川脇 徳久 Polymer Journal 48137 Hiromitsu Sogawa 55 ( 2023 ) 1119 - 1128 2022 B 1752 BL 19 B 2 田原 一輝 Polyurethanes Containing Platinum in the Main Chain: Synthesis, Structure and Mechanofluorochromism 48168 Takeshi Kakara 57 ( 2025 ) 377 - 383 2023 A 7209 BL 03 XU 和泉 篤士 Crosslink Inhomogeneity in Epoxy Resins Cured with a Phenolic Hardener under Organophosphine Catalysts Revealed by Small-angle X-ray Scattering 2023 B 7258 BL 03 XU 和泉 篤士 2024 A 7208 BL 03 XU 和泉 篤士 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 48113 Mariko Kojima 121 ( 2024 ) e 2322452121 2021 A 2772 BL 32 XU 小島 摩利子 High-throughput Structure Determination of an Intrinsically Disordered Protein using Cell-free Protein Crystallization 2021 B 2744 BL 32 XU 安部 聡 2022 A 2735 BL 32 XU 安部 聡 2022 A 2771 BL 32 XU 小島 摩利子 48147 Yusuke Kanematsu 119 ( 2022 ) e 2122641119 2021 A 2761 BL 41 XU 武田 修一 Structures and Mechanisms of Actin ATP Hydrolysis Science 48078 Mi Peng 387 ( 2025 ) 769 - 775 2019 B 1237 BL 39 XU Ma Ding Thermal Catalytic Reforming for Hydrogen Production with Zero CO 2 Emission 48184 Jiahao Zhang 387 ( 2025 ) 48 - 55 2022 B 0541 BL 14 B 2 内山 智貴 Tantalum-stabilized Ruthenium Oxide Electrocatalysts for Industrial Water Electrolysis 2022 B 1869 BL 14 B 2 内山 智貴 2022 B 1662 BL 14 B 2 内山 智貴 2022 B 1438 BL 27 SU 内山 智貴 2022 B 1436 BL 27 SU 内山 智貴 2022 B 1433 BL 04 B 2 内山 智貴 2022 B 1058 BL 01 B 1 内山 智貴 Science and Technology of Advanced Materials: Methods 48037 Tarojiro Matsumura 4 ( 2024 ) 2373046 2018 B 7575 BL 07 LSU 赤田 圭史 Maximum a Posteriori Estimation for High-throughput Peak Fitting in X-ray Photoelectron Spectroscopy 2018 B 7580 BL 07 LSU 永村 直佳 2019 A 7451 BL 07 LSU 永村 直佳 2021 A 7422 BL 07 LSU 永村 直佳 2021 B 7435 BL 07 LSU 永村 直佳 48042 Shintaro Kobayashi 5 ( 2025 ) 2442903 2022 B 0581 BL 13 XU 小林 慎太郎 Development of a Compact Near-infrared Lamp Furnace for Synchrotron Powder Diffraction and its Application for in situ High-temperature Observation of Ferrite Magnets 2023 A 1768 BL 13 XU 小林 慎太郎 2023 B 1620 BL 13 XU 小林 慎太郎 2023 B 2025 BL 13 XU 小林 慎太郎 2023 B 2437 BL 02 B 2 小林 慎太郎 2024 A 1899 BL 02 B 2 小林 慎太郎 2024 A 2395 BL 02 B 2 河口 彰吾 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 83 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Small 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 47990 Reona Iimura 21 ( 2025 ) 241193 2023 B 1249 BL 04 B 2 北村 尚斗 Ultrasmall α -MnO 2 with Low Aspect Ratio: Applications to Electrochemical Multivalent-Ion Intercalation Hosts and Aerobic Oxidation Catalysts 48110 Yamato Shingyouchi 21 ( 2025 ) 2409910 2024 B 1592 BL 01 B 1 川脇 徳久 Ligand-Dependent Intracluster Interactions in Electrochemical CO 2 Reduction Using Cu 14 Nanoclusters 2023 B 1825 BL 01 B 1 川脇 徳久 2023 A 1675 BL 01 B 1 川脇 徳久 2022 B 1823 BL 01 B 1 川脇 徳久 軽金属(Journal of Japan Institute of Light Metals) 48226 Tatsuki Okiyama 75 ( 2025 ) 151 - 155 2019 A 1809 BL 46 XU 足立 大樹 Effect of Deformation Temperature on the Change in Dislocation Density during Tensile Deformation in Industrial Pure Aluminum 2019 B 1903 BL 46 XU 足立 大樹 2022 B 1970 BL 13 XU 足立 大樹 48246 Shota Tsuchiya 75 ( 2025 ) 96 - 102 2023 A 1006 BL 20 XU 戸田 裕之 Analysis of Void Formation and Crack Propagation at Grain Boundaries in Al-Zn-Mg-Cu Alloy ACS Applied Energy Materials 48031 Xian Shi 7 ( 2024 ) 11144 - 11153 2020 A 1889 BL 19 B 2 松永 利之 Phase-Transition-Induced Crack Formation in LiNi 0 . 8 Mn 0 . 1 Co 0 . 1 O 2 Cathode Materials: A Comparative Study of Single-Crystalline and Polycrystalline Morphologies Using Operando X-ray CT 2020 A 0664 BL 02 B 2 松永 利之 2021 B 1877 BL 19 B 2 渡邊 稔樹 2023 A 1023 BL 20 XU 内本 喜晴 ACS Applied Materials & Interfaces 48085 Hyunsuk Shin 17 ( 2025 ) 1499 - 1508 2023 A 1892 BL 46 XU Seo Okkyun Investigations on the Origin of Topotactic Phase Transition of LaCoO 3 Thin Films with In Situ XRD and Ambient Pressure Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy 2024 A 1872 BL 46 XU Seo Okkyun 2024 A 1921 BL 09 XU Kang Hyon Chol ACS Nano 47977 Jinseok Koh 18 ( 2024 ) 28986 - 28998 2022 B 3751 BL 22 XU 町田 晃彦 Defect-Driven Evolution of Oxo-Coordinated Cobalt Active Sites with Rapid Structural Transformation for Efficient Water Oxidation 2022 B 3782 BL 22 XU 榊 浩司 Acta Materialia 48135 Makina Saito 284 ( 2025 ) 120536 2016 A 1084 BL 09 XU 瀬戸 誠 Discovery of Collective Nonjumping Motions Leading to Johari–Goldstein Process of Stress Relaxation in Model Ionic Glass 2016 A 1461 BL 04 B 2 小野寺 陽平 2019 B 2100 BL 09 XU 依田 芳卓 2020 A 0694 BL 04 B 2 齋藤 真器名 2020 A 1329 BL 09 XU 瀬戸 誠 Advanced Energy Materials 48193 Bowei Xun 15 ( 2025 ) 2402891 2023 A 1875 BL 02 B 2 赤松 寛文 Bifunctional Al Dopant for Enhancing Bulk and Grain Boundary Conductivities in Sodium Ion Conducting NASICON Ceramics Advanced Functional Materials 48079 Shinsuke Maekawa ( 2025 ) Online published 12 Feb. 2025 2024 A 1166 BL 40 B 2 平井 智康 High-Fidelity Directed Self-Assembly Using Higher- χ Polystyrene- Block - Poly(Methyl Methacrylate) Derivatives for Dislocation-Free Sub- 10 nm Features AIP Advances 48089 Hikaru Nomura 14 ( 2024 ) 095204 2020 A 0624 BL 25 SU 野村 光 OpenLabSPM: Bare Bone Package of LabVIEW- based Scanning Probe Microscope Controller 84 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS Analytical Sciences 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48084 Yuji Shiramata ( 2025 ) Online published 13 Feb. 2025 2023 A 1233 BL 04 B 2 石井 悠衣 Extracting Accurate PDF Data from in situ Environment of Materials using X-ray Diffractometer Applied Surface Science Advances 48081 Jiayi Tang 26 ( 2025 ) 100706 2020 A 4652 BL 15 XU Seo Okkyun Selective Phase Growth of Ultra-smooth Ti 2 O 3 and TiO 2 Thin Films at Low Growth Temperature Controlled by the Oxygen Partial Pressure 2022 A 1780 BL 46 XU Seo Okkyun 2022 B 1601 BL 46 XU Seo Okkyun 2023 A 1892 BL 46 XU Seo Okkyun 2023 B 1840 BL 46 XU Seo Okkyun 2024 A 1872 BL 46 XU Seo Okkyun 2024 B 1829 BL 46 XU Seo Okkyun 2024 A 1719 BL 46 XU Seo Okkyun arXiv 48067 Yuichiro Mori ( 2025 ) 2501 . 08937 2022 A 0314 BL 04 B 1 森 悠一郎 Unusual Thermal Expansion and Curie Temperature Variation in dhcp-iron Hydride under High Pressure 2022 A 1319 BL 04 B 1 柿澤 翔 2022 A 2067 BL 04 B 1 柿澤 翔 2022 B 2118 BL 04 B 1 柿澤 翔 2023 A 1250 BL 04 B 1 柿澤 翔 Biomolecues 48092 Norihiro Takekawa 15 ( 2025 ) 302 2018 A 2569 BL 41 XU 今田 勝巳 Sodium-Dependent Conformational Change in Flagellar Stator Protein MotS from Bacillus subtilis 2019 A 2551 BL 41 XU 今田 勝巳 2019 A 2551 BL 45 XU 今田 勝巳 2020 A 2574 BL 41 XU 今田 勝巳 Biophysics and Physicobiology 48265 Nobutaka Shimizu 22 ( 2025 ) e 220007 2019 B 8043 BL 2 南後 恵理子 Time-resolved Small-angle X-ray Scattering System Development for the Biological Macromolecules at SACLA: A Pilot Study 2020 A 8026 BL 2 南後 恵理子 2021 B 8062 BL 2 南後 恵理子 Bulletin of Japan Society of Coordination Chemistry 48066 Shinnosuke Horiuchi 83 ( 2024 ) 50 - 56 2021 B 1083 BL 43 IR 堀内 新之介 Development of Supramolecular Complexes Based on Coordination Complexes and Organic Hosts 2022 A 1144 BL 43 IR 堀内 新之介 2022 A 7440 BL 07 LSU 堀内 新之介 Bulletin of the Chemical Society of Japan 48021 Motohisa Kubota 98 ( 2025 ) uoae 147 2021 B 1841 BL 46 XU 石田 圭一 Incorporation of Selenophene into Thienoazacoronene-based Nonfullerene Acceptor: Impact on Photophysical and Photovoltaic Properties 2023 B 1808 BL 19 B 2 梅山 有和 Carbohydrate Polymers 48221 Risa Suenaga 358 ( 2025 ) 123504 2022 B 1120 BL 40 B 2 寺尾 憲 Highly Soluble and Well-defined Polysaccharide- based Micelle in Aqueous Media: Decyl Succinic Anhydride-modified Pullulan 2023 A 1111 BL 40 B 2 寺尾 憲 2023 A 1112 BL 40 B 2 寺尾 憲 2023 B 1124 BL 40 B 2 寺尾 憲 2023 B 1125 BL 40 B 2 寺尾 憲 Carbon 48202 Shigeharu Takagi 238 ( 2025 ) 120204 2019 B 7613 BL 28 XU 安部 武志 Phase Transition Analysis of Graphite Electrode during High-rate Discharging by Operando Synchrotron Radiation X-ray Diffraction SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 85 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Catalysis Letters 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48183 Shimpei Norioka 155 ( 2025 ) 87 2022 A 1811 BL 14 B 2 内山 智貴 Reduction of the Hydrogen Content of CO 2 Methanation Product Gas via Catalytic Ethanol Dehydration–Hydrogenation 2022 A 1555 BL 04 B 2 内山 智貴 2022 A 1535 BL 27 SU 内山 智貴 2022 A 1484 BL 27 SU 内山 智貴 2022 A 1475 BL 01 B 1 内山 智貴 2022 A 1038 BL 37 XU 内山 智貴 2022 A 1037 BL 01 B 1 内山 智貴 2021 A 1685 BL 14 B 2 内山 智貴 2021 A 1668 BL 14 B 2 内山 智貴 2021 A 1638 BL 14 B 2 内山 智貴 2022 B 1869 BL 14 B 2 内山 智貴 Cement and Concrete Composites 48039 Gyeongryul Kim 150 ( 2024 ) 105562 2023 A 3783 BL 22 XU 裵 晟哲 Evaluation of the Thermal Stability of Metakaolin- based Geopolymers According to Si/Al Ratio and Sodium Activator ChemCatChem 48020 Min Wang 17 ( 2025 ) e 202401803 2024 A 1643 BL 14 B 2 Wang Min Quadruple N -Methylation of Ethylenediamine with CO 2 and H 2 over Supported Sulfurized Re Catalysts Chemical Geology 47964 Makoto Nagasawa 670 ( 2024 ) 122431 2023 B 1589 BL 39 XU 徳永 紘平 Interpretation of Vertical Migration and Enrichment Processes of Rare Earth Elements (REEs) in Ion- adsorption-type Mineralization in Japan Based on REE Speciation Analyses 2023 B 1896 BL 01 B 1 高橋 嘉夫 2023 B 1530 BL 01 B 1 高橋 嘉夫 2023 B 1486 BL 20 XU 高橋 嘉夫 2023 A 1453 BL 17 SU 高橋 嘉夫 2023 A 1455 BL 39 XU 高橋 嘉夫 2023 A 1456 BL 37 XU 高橋 嘉夫 2022 B 1482 BL 17 SU 高橋 嘉夫 2022 B 1523 BL 37 XU 高橋 嘉夫 Chemistry - A European Journal 48000 Diptajyoti Gogoi 31 ( 2025 ) e 202403427 2023 A 2385 BL 02 B 1 佐々木 俊之 Tuning of a Hydrogen-Bonded Organic Framework by Liquid-Assisted Mechanosynthesis between Trans- Aconitic Acid and Isonicotinamide 2023 B 2432 BL 02 B 1 佐々木 俊之 2023 B 2429 BL 40 XU 佐々木 俊之 Chemistry - An Asian Journal 48035 Yu-Shan Lin 20 ( 2025 ) e 202401456 2023 B 1307 BL 40 XU 古川 修平 Frameworks Construction with Rhodium-Organic Cuboctahedravia Rigid Linker Incorporation 2023 B 2085 BL 02 B 2 Lopez Javier Chemistry Letters 48141 Hinari Sakai 54 ( 2025 ) upaf 026 2021 B 2091 BL 40 B 2 太田 昇 Evaluation of Nafion Degradation Process using Clusteroluminescence 2021 A 2074 BL 40 B 2 太田 昇 2021 B 1013 BL 40 XU 今井 英人 2022 A 1021 BL 40 XU 今井 英人 2022 B 1013 BL 40 XU 今井 英人 2023 A 1017 BL 40 XU 今井 英人 2023 B 1017 BL 40 XU 今井 英人 2024 A 1009 BL 40 XU 今井 英人 2024 B 1021 BL 40 XU 今井 英人 Chemosphere 48201 Daisuke Kawamoto 376 ( 2025 ) 144294 2021 B 1897 BL 14 B 2 川本 大祐 Mechanism of the Solid-liquid Interfacial Reaction between Dissolved Cd Species and the CaCO 3 Surface 2023 B 1907 BL 14 B 2 川本 大祐 86 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS ChemRxiv 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48061 Shinnosuke Horiuchi ( 2025 ) Online published 4 Feb. 2025 2021 B 1083 BL 43 IR 堀内 新之介 Low-entropy Supramolecular Crystals: Elucidating the Inhomogeneity of Interfacial Water Molecules at Atomic Resolution 2022 A 1144 BL 43 IR 堀内 新之介 2022 A 7440 BL 07 LSU 堀内 新之介 Chirality 48263 Shiori Kuramoto 36 ( 2024 ) e 23700 2021 B 6634 BL 44 XU 平 大輔 Structural Investigations of Cargo Molecules Inside Icosahedrally Symmetric Encapsulin by VUVCD Spectroscopic Measurements Communications Earth & Environment 48164 Yoshio Kono 6 ( 2025 ) 148 2023 B 1139 BL 27 SU 河野 義生 Gravitational Stability of Iron-rich Peridotite Melt at Mars ʼ Core-mantle Boundary 2022 A 2068 BL 27 SU 新田 清文 2022 B 2114 BL 27 SU 新田 清文 2023 A 1168 BL 27 SU 桑原 秀治 2023 A 2375 BL 27 SU 新田 清文 Communications Materials 48057 Midori Amano- Patino 3 ( 2022 ) 51 2021 B 1456 BL 04 B 1 Amano-Patino Midori Orthogonal Antiferromagnetism to Canted Ferromagnetism in CaCo 3 Ti 4 O 12 Quadruple Perovskite Driven by Underlying Kagome Lattices 2020 A 1137 BL 02 B 2 後藤 真人 2020 A 1671 BL 02 B 2 Koedtruad Anucha Construction and Buildling Materials 48038 Sumin Im 459 ( 2025 ) 139742 2019 A 3784 BL 22 XU 裵 晟哲 Multi-scale Synchrotron X-ray Scattering Studies on Thermo-induced Changes in Structural and Mechanical Properties of CSH/PCE Composites 2020 A 3782 BL 22 XU 裵 晟哲 Crystals 47989 M. D. P. A. Shakya 15 ( 2025 ) 28 2023 A 1541 BL 19 B 2 Kumara L. S. A Study on Cu Thin-Film Electroplated TiO 2 Photoanodes for Applications in Natural Dye- Sensitized Solar Cells 2023 A 2388 BL 09 XU 唐 佳藝 2023 B 2033 BL 19 B 2 Kumara L. S. 2024 A 1761 BL 19 B 2 Kumara L. S. 2024 A 2403 BL 09 XU 唐 佳藝 Dalton Transactions 48007 Yudai Izumi 54 ( 2025 ) 1980 - 1985 2021 B 7438 BL 07 LSU 藤井 健太郎 Electronic Structures of Blue Copper Centers of Amicyanin and Azurin in the Solution State 2018 B 3852 BL 23 SU 藤井 健太郎 2019 A 3852 BL 23 SU 藤井 健太郎 Drug Resistance Updates 48165 Hyun- Jong Eun 79 ( 2025 ) 101210 2021 B 6672 BL 44 XU Lee Bong Jin Structural and Functional Analyses of STM 14 _ 5441 - STM 14 _ 5442 : A Potential Mechanism for Persister Formation against Aminoglycosides e-Journal of Surface Science and Nanotechnology 48228 Shinya Hosokawa 23 ( 2025 ) 77 - 82 2021 A 1177 BL 39 XU 細川 伸也 Three-dimensional Atomic Configurations in a ZnFe 2 O 4 Single Crystal by X-ray Fluorescence Holography 2022 A 1278 BL 39 XU 細川 伸也 Earth and Planetary Science Letters 48244 Iori Kajitani 620 ( 2023 ) 118345 2021 B 1621 BL 27 SU 臼井 寛裕 Identification of Carbonate-associated Sulfate (CAS) in a Noachian Martian Meteorite Allan Hills 84001 2019 A 1583 BL 27 SU 臼井 寛裕 2018 B 1559 BL 27 SU 臼井 寛裕 2018 A 1348 BL 27 SU 臼井 寛裕 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 87 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Electrochemistry 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48010 Yasushi Idemoto 92 ( 2024 ) 107003 2022 A 1770 BL 19 B 2 井手本 康 Operating-temperature Dependence of the Average and Electronic Structures of 0 . 4 Li 2 MnO 3 – 0 . 6 Li(Mn 1 / 3 Ni 1 / 3 Co 1 / 3 )O 2 2022 B 1837 BL 14 B 2 井手本 康 2023 A 1702 BL 14 B 2 井手本 康 2023 B 1832 BL 14 B 2 井手本 康 2022 A 1771 BL 14 B 2 井手本 康 2023 A 1699 BL 19 B 2 井手本 康 eLife 48245 Kei Wada ( 2024 ) Online published Dec. 9 , 2024 2022 A 2724 BL 41 XU 和田 啓 Protonation/deprotonation-driven Switch for the Redox Stability of Low-potential [ 4 Fe- 4 S] Ferredoxin European Journal of Inorganic Chemistry 48150 Yuiga Nakamura 28 ( 2025 ) e 202400682 2020 A 2133 BL 02 B 1 中村 唯我 Thermal Expansion Behavior of Halide Perovskite Single Crystals Across a Broad Temperature Range 2021 A 2085 BL 02 B 1 中村 唯我 2022 A 2078 BL 02 B 1 中村 唯我 2022 B 2110 BL 02 B 1 中村 唯我 2023 A 2358 BL 02 B 1 中村 唯我 2024 A 2375 BL 02 B 1 中村 唯我 2024 B 2337 BL 02 B 1 中村 唯我 2023 B 2318 BL 02 B 1 中村 唯我 High Pressure Research 48091 Osamu Ikeda ( 2025 ) Online published 18 Feb. 2025 2019 A 1116 BL 35 XU 坂巻 竜也 The Magnetism and Elasticity of ∊ -FeOOH across the Pressure-induced Electronic Spin Transition 2020 A 1087 BL 35 XU 坂巻 竜也 2020 A 3584 BL 11 XU 坂巻 竜也 2021 A 3584 BL 11 XU 坂巻 竜也 Icarus 47976 Akira Tsuchiyama 429 ( 2025 ) 116432 2016 B 1491 BL 20 B 2 土山 明 Abrasion Experiments of Mineral, Rock, and Meteorite Particles: Simulating Regolith Particles Abrasion on Airless Bodies 2017 A 1507 BL 20 B 2 土山 明 2017 B 1342 BL 20 B 2 土山 明 International Journal of Cosmetic Science 48181 Sotaro Sato ( 2025 ) Online published 18 Feb. 2025 2022 A 1378 BL 40 XU 堀田 弘樹 Synthesis of a New Amino Acid Derivative with Long- lasting Hair Shape Control Effects and Elucidation of its Mechanisms 2023 A 2334 BL 40 XU 堀田 弘樹 2023 A 2335 BL 40 XU 堀田 弘樹 Isotope News 48068 Shuichi Ogawa 791 ( 2024 ) 6 - 9 2023 B 3836 BL 23 SU 小川 修一 二次元原子層物質コーティングによる電子放出源の耐久 性/性能向上の両立 2023 A 3831 BL 23 SU 山口 尚登 Journal of Magnesium and Alloys 47974 Yutaka Yoshida 12 ( 2024 ) 3173 - 3179 2017 A 1376 BL 28 B 2 吉田 裕 Characterization of Deformation Transition in the Rolled LZ 91 Magnesium Alloy under Tensile Loading Journal of Materials Chemistry B 48032 Xuehui Rui 12 ( 2024 ) 8702 - 8715 2023 B 1739 BL 19 B 2 Rui Xuehui Preparation and Characterization of Macrophage Membrane Camouflaged Cubosomes as a Stabilized and Immune Evasive Biomimetic Nano-DDS 88 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS Journal of Materials Science 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48075 Shozo Hiramoto 60 ( 2025 ) 3988 - 3998 2022 A 1737 BL 02 B 2 平本 尚三 Multiprobe Analyses on Nucleation and Evolution of Nanocrystallization Process in a High Saturation Magnetization Soft Magnetic Fe–Si–B–P–Cu–C Alloy 2023 A 1793 BL 02 B 2 平本 尚三 2023 B 1747 BL 02 B 2 平本 尚三 Journal of Medicinal Chemistry 48133 Aoi Takahara 68 ( 2025 ) 3123 - 3133 2019 A 2718 BL 45 XU 中津 亨 Elucidation of Postfusion Structures of the Measles Virus F Protein for the Structure-Based Design of Fusion Inhibitors 2019 B 2565 BL 45 XU 中津 亨 Journal of Photopolymer Science and Technology 48022 Tomokazu Umeyama 37 ( 2024 ) 197 - 204 2021 B 1841 BL 46 XU 石田 圭一 Development of Non-Fullerene Acceptors with π -Extended Central Unit for Organic Photovoltaic Devices 2023 B 1808 BL 19 B 2 梅山 有和 Journal of Power Sources 48030 Xian Shi 631 ( 2025 ) 236191 2020 A 0664 BL 02 B 2 松永 利之 Hierarchical Reaction Analysis of the Effect of High- temperature Storage on the Electrode Characteristics and Safety of High-nickel Cathodes 2020 A 1889 BL 19 B 2 松永 利之 2022 A 1035 BL 27 SU 内本 喜晴 2022 B 1324 BL 28 B 2 内本 喜晴 2023 A 1024 BL 28 B 2 内本 喜晴 2023 B 1366 BL 28 B 2 内本 喜晴 The Journal of Physical Chemistry B 48036 Xuehui Rui 38 ( 2024 ) 9151 - 9162 2023 B 1739 BL 19 B 2 Rui Xuehui Exploring pH-Triggered Lamellar to Cubic Phase Transition in 2 -Hydroxyoleic Acid/Monoolein Nanodispersions: Insights into Membrane Physicochemical Properties The Journal of Physical Chemistry C 48140 Jonghyun Han 126 ( 2022 ) 19074 - 19083 2021 B 1960 BL 19 B 2 韓 鍾賢 Control of Electrolyte Decomposition by Mixing Transition Metal Ions in Spinel Oxides as Positive Electrode Active Materials for Mg Rechargeable Batteries 2021 B 1902 BL 14 B 2 岡崎 湧一 Journal of the Ceramic Society of Japan 48151 Hirokazu Masai 133 ( 2025 ) 1 - 8 2021 A 1221 BL 01 B 1 正井 博和 Effect of Borate Substitution on Zinc Phosphate Glasses 2016 A 0130 BL 04 B 2 小原 真司 2024 A 1023 BL 04 B 2 小原 真司 Lithos 48225 Yusuke Sawaki 504 - 505 ( 2025 ) 108059 2019 B 1367 BL 27 SU 小池 みずほ Trace Elements in Igneous Apatite: A Case Study of Redox Tracers in Felsic Plutons 2022 A 2068 BL 27 SU 新田 清文 2023 A 1159 BL 27 SU 中田 亮一 2023 A 2375 BL 27 SU 新田 清文 Macromolecular Materials and Engineering 48232 Preeyanuch Junkong ( 2025 ) 2400439 2017 A 1681 BL 40 XU Junkong Preeyanuch Two-Cycle Strain-Induced Crystallization Behavior of Peroxide Cross-Linked Solid Guayule Natural Rubber 2015 B 1814 BL 40 XU 池田 裕子 2015 A 1872 BL 40 XU 池田 裕子 Materials & Design 48161 E-Wen Huang 251 ( 2025 ) 113623 2024 B 1150 BL 08 W Huang E-Wen Mixing-enthalpy Modulation on Phase Transformation in the Gradient Chemical Core/Shell High-entropy Shape-memory Alloys SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 89 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Materials Advances 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48138 Kazuki Tabaru 5 ( 2024 ) 8439 - 8443 2022 B 1952 BL 14 B 2 田原 一輝 Synthesis of Colloidal Pd Nanoparticles Immobilised on Poly( N -vinylacetamide): Characterisation and Application in Catalysis Materials Research Bulletin 48157 Bogdan I. Lazoryak 186 ( 2025 ) 113349 2018 A 4501 BL 15 XU 山浦 一成 Structure-properties Correlations in Whitlockite-type Ultra-narrow Red Phosphors Ca 9 - x Sr x In(VO 4 ) 7 Materials Research Letters 48251 Jianwei Tang 13 ( 2025 ) 567 - 576 2022 B 1024 BL 20 XU 戸田 裕之 Exceptional Stress Corrosion Cracking Resistance- strength Synergy of Al-Zn-Mg-Cu Alloys via Tailored Nano-sized Particles 2023 A 1006 BL 20 XU 戸田 裕之 2023 B 1012 BL 20 XU 戸田 裕之 Metallurgical and Materials Transactions A 48197 Mitsuharu Yonemura 56 ( 2025 ) 1193 - 1204 2020 A 3687 BL 14 B 1 米村 光治 High-Energy X-ray Dynamics of the Recovery and Recrystallization Behaviors of Steels Subjected to Uniaxial Hot Compression and Isothermal Annealing 2021 B 3687 BL 14 B 1 米村 光治 2022 B 3687 BL 14 B 1 米村 光治 Molecules 47994 Sana Takada 30 ( 2025 ) 72 2020 A 6517 BL 44 XU 阪本 泰光 The Diverse Binding Modes Explain the Nanomolar Levels of Inhibitory Activities Against 1 -Deoxy- D - Xylulose 5 -Phosphate Reductoisomerase from Plasmodium falciparum Exhibited by Reverse Hydroxamate Analogs of Fosmidomycin with Varying N -Substituents 2021 A 6615 BL 44 XU 阪本 泰光 2021 B 6615 BL 44 XU 阪本 泰光 2022 A 6713 BL 44 XU 阪本 泰光 2022 B 6713 BL 44 XU 阪本 泰光 2023 A 6812 BL 44 XU 阪本 泰光 2023 B 6812 BL 44 XU 阪本 泰光 2023 A 6813 BL 44 XU 阪本 泰光 2023 B 6813 BL 44 XU 阪本 泰光 2024 A 6911 BL 44 XU 阪本 泰光 Microchemical Journal 48002 Yugo Kato 207 ( 2024 ) 112278 2021 B 1024 BL 37 XU 武田 志乃 Uranium Micro Localization in the Femur of Rats Exposed to Uranium Acetate 2022 A 1012 BL 37 XU 武田 志乃 2022 B 1040 BL 37 XU 武田 志乃 2023 A 1015 BL 37 XU 武田 志乃 Microporous and Mesoporous Materials 48082 Yuki Sada 387 ( 2025 ) 113529 2024 A 1500 BL 04 B 2 佐田 侑樹 Novel Preparation of Amorphous Aluminosilicates via Amorphous Borosilicates by B-to-Al Exchange 2024 B 1473 BL 04 B 2 佐田 侑樹 2023 A 2383 BL 04 B 2 山田 大貴 2023 B 1199 BL 04 B 2 脇原 徹 2023 B 2431 BL 04 B 2 山田 大貴 2024 A 1149 BL 04 B 2 脇原 徹 2024 B 1215 BL 04 B 2 脇原 徹 npj Quantum Materials 47992 Tomohiro Takayama 10 ( 2025 ) 7 2016 B 3552 BL 11 XU 石井 賢司 Robust Quantum Spin Liquid State in the Presence of Giant Magnetic Isotope Effect in D 3 LiIr 2 O 6 Nucleic Acids Research 48262 Keisuke Fukunaga 53 ( 2025 ) gkaf 212 2022 B 2549 BL 45 XU 寺本 岳大 Structural Insights into Lab-coevolved RNA-RBP Pairs and Applications of Synthetic Riboswitches in Cell-free System 90 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS Physical Chemistry Chemical Physics 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48090 Daisuke Asakura 27 ( 2025 ) 4092 - 4098 2017 A 7531 BL 07 LSU 朝倉 大輔 Elucidation of the Co 4 + State with Strong Charge- transfer Effects in Charged LiCoO 2 by Resonant Soft X-ray Emission Spectroscopy at the Co L 3 Edge 2018 B 7588 BL 07 LSU 細野 英司 2019 B 7457 BL 07 LSU 大平 昭博 2020 A 7477 BL 07 LSU 朝倉 大輔 2021 A 7494 BL 07 LSU 細野 英司 2021 A 7495 BL 07 LSU 朝倉 大輔 2021 B 7429 BL 07 LSU 朝倉 大輔 2022 A 7447 BL 07 LSU 朝倉 大輔 Physical Review E 48175 Ryu Meguya 111 ( 2025 ) 015432 2019 A 1596 BL 35 XU 森川 淳子 Investigation of Anisotropy in the Collective Dynamics and Thermal Diffusivity in the Phenyl Pyrimidine Liquid Crystal 2019 B 1531 BL 35 XU 森川 淳子 2022 B 1105 BL 35 XU 森川 淳子 2022 B 1553 BL 35 XU 森川 淳子 Physical Review Letters 48134 Haruki Takezawa 134 ( 2025 ) 084101 2023 B 0306 BL 10 XU 坂井 郁哉 Formation of Iron-Helium Compounds under High Pressure 2021 B 0181 BL 10 XU 廣瀬 敬 Physical Review Materials 48074 Takahito Takeda 8 ( 2024 ) 054415 2023 B 1357 BL 25 SU 小林 正起 Mechanism of Ferromagnetism Enhancement in a La 2 / 3 Sr1 / 3 MnO 3 Membrane Released from Epitaxial Strain 2023 B 1441 BL 25 SU 小林 正起 Polymers 47955 Shunsuke Murayama 17 ( 2025 ) 37 2023 B 1007 BL 40 B 2 松葉 豪 Structural Changes in Semi-Crystalline Ethylene- Based Ionomers During the Heating Process 2023 B 1023 BL 05 XU 松葉 豪 2024 B 1003 BL 40 XU 松葉 豪 2023 A 1815 BL 19 B 2 松葉 豪 2023 B 1141 BL 43 IR 松葉 豪 2023 B 1162 BL 43 IR 松葉 豪 2024 A 1109 BL 43 IR 松葉 豪 2024 A 1279 BL 43 IR 松葉 豪 Proceedings of International Symposia on Steel Science 48001 Mitsuharu Yonemura ( 2024 ) 145 - 154 2016 B 8004 BL 3 米村 光治 Microstructure Characterization in Steel under Ultrafast Heating and Cooling using Femtosecond X-ray Diffraction Techniques 2017 A 8024 BL 3 米村 光治 2017 B 8013 BL 3 米村 光治 2018 A 8003 BL 3 米村 光治 2018 B 8013 BL 3 米村 光治 2019 A 8005 BL 3 米村 光治 2019 B 8004 BL 3 米村 光治 2020 A 8001 BL 3 米村 光治 Protein Science 47962 Hiroshi Amesaka 34 ( 2025 ) e 70018 2020 A 2536 BL 26 B 2 田中 俊一 Heat-sterilizable Antibody Mimics Designed on the Cold Shock Protein Scaffold from Hyperthermophile Thermotoga maritima 2021 A 6623 BL 44 XU 田中 俊一 PLoS One 48166 Syou Maki 20 ( 2025 ) e 0315335 2021 B 2537 BL 45 XU 中林 誠 Magnetic Effects of Thaumatin Crystals; Observation of Crystal Growth by Magneto-Archimedes Levitation and Magnetic Orientation 2022 B 2544 BL 41 XU 中林 誠 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 91 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 Review of Scientific Instruments 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48248 Hidenori Terasaki 96 ( 2025 ) 033907 2019 B 1587 BL 10 XU 寺崎 英紀 Development of Density Measurement at High Pressure and High Temperature using the X-ray Absorption Method Combined with Laser-heated Diamond Anvil Cell 2020 A 1325 BL 10 XU 鎌田 誠司 2020 A 1340 BL 10 XU 寺崎 英紀 2021 A 1517 BL 10 XU 寺崎 英紀 2021 B 1658 BL 10 XU 寺崎 英紀 2022 A 1450 BL 10 XU 寺崎 英紀 2022 B 1510 BL 10 XU 寺崎 英紀 2023 A 1440 BL 10 XU 寺崎 英紀 2023 B 1495 BL 10 XU 寺崎 英紀 2024 A 1470 BL 10 XU 寺崎 英紀 RSC Applied Polymers 48018 Naoya Nozaki 3 ( 2025 ) 257 - 267 2023 B 1123 BL 40 B 2 松本 英俊 Impact of Aromatic to Quinoidal Transformation on the Degradation Kinetics of Imine-based Semiconducting Polymers Science Advances 48158 Jingyi Wang 11 ( 2025 ) eadt 6298 2023 B 1295 BL 44 B 2 Zhang Jiawei Atomic to Nanoscale Chemical Fluctuations: The Catalyst for Enhanced Thermoelectric Performance in High-entropy Materials 2023 B 1376 BL 44 B 2 Zhang Jiawei 2024 A 1235 BL 44 B 2 Zhang Jiawei Small Science 48111 Sourav Biswas 5 ( 2025 ) 2400465 2024 B 1592 BL 01 B 1 川脇 徳久 Highly Selective Methanol Synthesis Using Electrochemical CO 2 Reduction with Defect- Engineered Cu 58 Nanoclusters 2023 B 1825 BL 01 B 1 川脇 徳久 2023 A 1675 BL 01 B 1 川脇 徳久 2022 B 1823 BL 01 B 1 川脇 徳久 Solid State Ionics 48077 Chiaki Ishibashi 421 ( 2025 ) 116793 2021 A 1224 BL 04 B 2 井手本 康 Stable Structure and Pair Distribution Function Analysis of 0 . 4 Li 2 MnO 3 – 0 . 6 Li(Mn 1 / 3 Ni 1 / 3 Co 1 / 3 )O 2 as Cathode Materials Lithium Ion Secondary Batteries during Charge-Discharge Process using First- Principle Calculation and Quantum Beam 2021 B 1323 BL 04 B 2 井手本 康 Virology 48076 Akima Yamamoto 604 ( 2025 ) 110411 2021 A 6651 BL 44 XU 東浦 彰史 Structural Insights into Nucleocapsid Protein Variability: Implications for PJ 34 Efficacy against SARS-CoV- 2 2021 B 6651 BL 44 XU 東浦 彰史 2022 A 6728 BL 44 XU 東浦 彰史 2022 B 6728 BL 44 XU 東浦 彰史 2023 A 6827 BL 44 XU 東浦 彰史 2023 B 6827 BL 44 XU 東浦 彰史 World PM 2024 Proceedings 47999 Erika Matsumoto ( 2024 ) 1543 - 1545 2023 A 1128 BL 20 B 2 鈴木 飛鳥 In-situ Synchrotron X-ray CT observations for the Liquid Phase Sintering of Aluminum Powder Using Al- Cu Eutectic Alloy Agent X-ray Spectroscopy 48146 Zhiying Guo 54 ( 2024 ) 247 - 253 2019 B 3555 BL 11 XU 石井 賢司 Development of High Energy Resolution Crystal Analyzers Based on Microporous Ceramics for Resonant Inelastic X-ray Scattering Program at High Energy Photon Source 2023 A 3597 BL 11 XU Xu Wei 2023 B 3591 BL 11 XU Jia Xun 92 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 化学工学(Chemical Engineering) 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48132 Katsuhiro Nishihara 86 ( 2022 ) 391 - 394 2021 B 1737 BL 09 XU 西原 克浩 Application of Hard X-Ray Photoemission Spectroscopy to Characterize the Chemical Bond State of Cr 2 O 3 Film on Iron 2022 A 1655 BL 09 XU 西原 克浩 2022 B 1908 BL 09 XU 西原 克浩 2023 B 1626 BL 09 XU 西原 克浩 土木学会論文集(Japanese Journal of JSCE) 48212 Akira Seo 80 ( 2024 ) 24 - 21002 2024 B 2345 BL 28 B 2 瀬尾 彰 Elucidation of Degradation Mechanisms of Asphalt Mixtures through Physical Property Measurements by Using SPring- 8 X-ray CT 日本結晶成長学会誌 (Journal of the Japanese Association for Crystal Growth) 48210 Tomohiro Yamaguchi 51 ( 2024 ) 51 - 2 - 06 2015 A 3512 BL 11 XU 山口 智広 RF-MBE Growth of GaInN and Application to Red LED 2016 A 3562 BL 11 XU 山口 智広 2017 A 3587 BL 11 XU 山口 智広 2017 B 3583 BL 11 XU 山口 智広 2018 A 3590 BL 11 XU 山口 智広 2018 B 3590 BL 11 XU 山口 智広 2019 B 3589 BL 11 XU 山口 智広 2020 A 3589 BL 11 XU 山口 智広 2021 A 3589 BL 11 XU 山口 智広 2021 B 3589 BL 11 XU 山口 智広 2022 B 3589 BL 11 XU 山口 智広 2023 A 3589 BL 11 XU 山口 智広 表面技術(Journal of the Surface Finishing Society of Japan) 48131 Katsuhiro Nishihara 75 ( 2024 ) 435 - 439 2021 B 1737 BL 09 XU 西原 克浩 Characterization of Oxide film on Steel using Angle- Resolved Hard X-ray Photoemission Spectroscopy 2022 A 1655 BL 09 XU 西原 克浩 2022 B 1908 BL 09 XU 西原 克浩 2023 B 1626 BL 09 XU 西原 克浩 まてりあ(Materia Japan) 48033 Satoshi Tsutsui 64 ( 2025 ) 18 - 22 2016 A 1496 BL 35 XU 小瀬村 大亮 Application of Inelastic X-ray Scattering to Thermoelectric Materials 2017 B 1630 BL 35 XU 臼田 宏治 2017 B 1531 BL 35 XU 木村 耕治 2018 A 1400 BL 35 XU 木村 耕治 2018 A 1763 BL 35 XU 木村 耕治 2019 A 1458 BL 35 XU 木村 耕治 博士論文(東北大学) 47957 Masaki Fujita ( 2024 ) 2021 A 1368 BL 47 XU 藤田 全基 Research on the Electronic States of 214 -type T* Phase Cuprates using Quantum Beam Spectroscopy 48117 Masahide Kaneko ( 2024 ) 2021 B 1731 BL 27 SU 金子 雅英 Research on the Ionic Conduction Mechanism in Garnet-type Solid Electrolytes using Quantum Beam Measurement and Computational Science 2021 A 1642 BL 14 B 2 金子 雅英 2020 A 1885 BL 14 B 2 金子 雅英 48178 Osamu Ikeda ( 2024 ) 2020 A 3584 BL 11 XU 坂巻 竜也 Study of Compression Behavior of an Iron Oxyhydroxide by Diffraction and Spectroscopy 2021 A 3584 BL 11 XU 坂巻 竜也 2019 A 1116 BL 35 XU 坂巻 竜也 2020 A 1087 BL 35 XU 坂巻 竜也 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 93 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 博士論文(東京大学) 研究成果番号 主著者 雑誌情報 課題番号 ビームライン 実験責任者 タイトル 48267 Xuejun Wu ( 2025 ) 2017 B 1511 BL 08 W 山室 修 Low-energy Excitations of Simple Molecular Glasses 48268 Yuansheng Zhao ( 2023 ) 2019 B 1484 BL 04 B 2 山室 修 X-Ray and Neutron Diffraction Study on Local Structures of Molecular Liquids and Glasses 2017 A 1506 BL 04 B 2 山室 修 2018 B 1489 BL 04 B 2 山室 修 2021 A 1374 BL 37 XU 山室 修 2021 B 1509 BL 37 XU 山室 修 2022 A 1405 BL 37 XU 山室 修 2022 B 1406 BL 04 B 2 山室 修 2023 A 1363 BL 37 XU 山室 修 2023 A 1366 BL 04 B 2 山室 修 博士論文(慶應義塾大学) 48230 Ikumi Kamikawa ( 2025 ) 2024 B 1567 BL 19 B 2 丸山 伸伍 Crystal Orientation Control of Lead Halide Perovskite Solar Cell 博士論文(高知工科大学) 48223 Mamoru Furuta ( 2025 ) 2022 A 1301 BL 09 XU 古田 守 Study on Solid-Phase Crystallization Mechanism of Hydrogen-Doped Indium Oxide for Thin-Film Transistor Application 2023 A 1711 BL 09 XU 古田 守 2024 B 1577 BL 09 XU 古田 守 博士論文(東京都立大学) 48250 Tomoki Matsuyama ( 2024 ) 2022 A 4255 BL 12 XU 山添 誠司 Study on Electronic and Geometric Structures of Cluster Materials by X-ray Absorption Spectroscopy 2022 B 4255 BL 12 XU 山添 誠司 2023 A 4256 BL 12 XU 山添 誠司 2023 A 1326 BL 36 XU 山添 誠司 2023 A 1628 BL 39 XU 松山 知樹 2022 B 1743 BL 39 XU 松山 知樹 2022 B 0618 BL 14 B 2 松山 知樹 2021 B 1818 BL 39 XU 松山 知樹 2021 A 1603 BL 39 XU 松山 知樹 博士論文(兵庫県立大学) 48231 Reina Utsumi ( 2025 ) 2021 B 3651 BL 14 B 1 齋藤 寛之 Synthesis Study of Alloy Hydrides Consisting of Metals with Low-hydrogen Affinities only with the Aid of Synchrotron Radiation X-rays 2022 A 3651 BL 14 B 1 齋藤 寛之 2022 B 3651 BL 14 B 1 齋藤 寛之 2023 A 3651 BL 14 B 1 齋藤 寛之 2023 A 3652 BL 14 B 1 中平 夕貴 2023 B 3651 BL 14 B 1 齋藤 寛之 2023 B 3652 BL 14 B 1 中平 夕貴 2024 A 3651 BL 14 B 1 齋藤 寛之 2024 A 3652 BL 14 B 1 中平 夕貴 2024 B 3651 BL 14 B 1 齋藤 寛之 2024 B 3652 BL 14 B 1 中平 夕貴 博士論文(広島大学) 48115 Satoshi Ishizaka ( 2022 ) 2021 B 1616 BL 25 SU 木村 昭夫 Experimental Determination of Electronic Structures of Superconductors ZrP 2 -x Se x and Nb 3 Y ( Y = Al, Sn) 博士論文(北海道大学) 48112 Shin Ikegami ( 2024 ) 2018 A 1703 BL 20 B 2 竹田 裕介 Early Evolutionary History of Soft-bodied Cephalopods 2021 B 1810 BL 20 B 2 池上 森 94 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 課題以外の成果として登録された論文 Chemistry of Materials 研究成果番号 主著者 雑誌情報 ビームライン タイトル 47986 Wang Zhang 37 ( 2025 ) 415 - 428 理研 BL 44 B 2 Synthesis and Characterization of Ruthenium and Osmium Metal– Organic Frameworks with a Pyrazine Ligand: Two-Dimensional Analogues of the Creutz–Taube Ion Journal of the American Chemical Society 48034 Hubiao Huang 147 ( 2025 ) 3206 - 3214 理研 BL 26 B 1 Emergence of Chirality in an Optically Active Two-Dimensional Crystal with a Spiral Surface Pattern Optica 48156 Ichiro Inoue 12 ( 2025 ) 309 - 310 装置&技術 SACLA Nanofocused Attosecond Hard X-ray Free-Electron Laser with Intensity Exceeding 10 19 W/cm 2 Physical Review B 48155 Vladimir Lipp 111 ( 2025 ) 024103 装置&技術 SACLA Exploring X-ray Irradiation Conditions for Triggering Ultrafast Diamond Graphitization SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 95 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 SPring-8 および SACLA では、各ビームタイム終 了後に実験グループごとに「ビームタイム終了届」 を提出いただいております。ビームタイム終了届に は、次回の利用者へのアドバイスや施設に対する要 望、提案等を記入いただいております。 2024B 期における要望等の状況は下記のとおりで す。これら要望等と、それに対する施設側の回答 (内容により、必ずしも全てではありません)につ きましては、 User Information で公開されています。 1.2024B 期 要望等全体概要 2024 B 期 実施 課題数 利用実験数 (報告書数) うち、要望等コメントがある * 1 報告書数 技術的 要望等 施設他 要望等 その他 (お礼) SPring- 8 共用 BL 1 , 003 1 , 489 27 33 136 SACLA 共用 BL 46 51 10 * 1 「なし」 「 None 」等のコメントを除く。 〈 SPring- 8 共用 BL 技術的要望等 (計 27 件 ) の研究分野/ 手法 * 2 別内訳〉 分野 手法 生命科学 医学応用 物質科学 材料科学 化学 地球・ 惑星科学 環境科学 産業利用 その他 小角 ・ 広角散乱 3 1 X 線回折 (単結晶) 1 X 線回折 (汎用 ・ 構造評価) 1 1 X 線回折 (高圧) 2 汎用 XAFS ・ 汎用 MCD 3 光電子分光 2 2 赤外分光 1 イメージング 1 非弾性散乱 1 構造生物学 2 その他 (持込装置利用) 成果専有等 4 1 1 * 2 課題申請時の利用者申告ベース。 2.2024B 期 要望等の内容(一部抜粋) ( 1 )技術的要望等 ○ソフトについて:便利になっていてよかった。 いくつか機能上と操作上で気になった点を以下 に列挙します。 ①各 scan ごとのスペクトルを保存できるよう にしてほしい。 ②測定中に scan 数を変更できるようにしてほ しい。 ③ screen や MCP の電圧は、 「通常の測定モード」 では、変更できないようにした方が事故が減 ると思います。 ④ポジションセット(測定位置)もシーケンス と同じように編集できるようになると、操作 しやすいと思います。 ⑤シーケンスは、現在 1 行ごとのコピーしかで きません。数行をまとめてコピーできると便 利になると思います。 【物質科学・材料科学/光電子分光】 ○ Gd K 端 XAFS 測 定 に お い て、 EXAFS 領 域 の SN 比が十分でなかったのは残念でした。試料 の素性の問題もあると思いますが、光学系につ いても、なるべく早く本来の状態に戻ることを 期待しております。 【物質科学・材料科学/有償利用】 ○試料を表示している画面において、スケール線 (たとえば、 1mm がどのくらいか)が表示され ていると、試料位置合わせ時の移動量が見積れ て便利になると思います。 HAXPES 測定制御 ソフトウエアが改良(測定中に積算 scan 数が 変更可能になっていた)されていてよかった。 【物質科学・材料科学/光電子分光】 ( 2 )施設その他要望等 ○ BL20XU ハッチ周辺の Wi-Fi (guest) と docomo 、 au のネットワークのつながりが非常に悪いです。 Wi-Fi もすぐに切れるため、仕事に支障がでて います。改善を希望します。 登録施設利用促進機関 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 2024B 期における SPring-8/SACLA ユーザー要望等について 96 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS ○自転車の数を増やして頂けると有難いです。大 人数のグループ全員で自転車を使用されると他 の者が使用できなくなってしまう。よって、大 人数の場合は、人数制限をし、そのグループの 中でシェアをしながら自転車を使用するような システムを構築して頂きたい。 ○ベジタリアンの外国人が実験に参加しましたが、 食堂で食べるものがご飯とサラダに限られます。 例えばベジタリアンカレーなどをメニューとし て導入していただくことができればありがたく 思います。 3.要望等および施設側回答の公開場所 SPring-8/SACLA User Information のいずれからも検索・閲覧ができます。 [検索・閲覧手順] ① 「ビームタイム終了届(ビームタイム利用報告書) (要望・回答)検索」 ② 利用期、ビームライン番号等を入力 ③ 「検索」 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 97 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 公益財団法人高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 室長 大 石 泰 生 ナノテラス事業推進室、共用開始にあたって 1.はじめに 第 4 世代放射光源である 3 GeV 高輝度放射光施設 NanoTerasu [1] は、国側の主体者である量子科学技術 研究開発機構( QST )が、光科学イノベーションセ ンター( PhoSIC )を代表とする地域パートナーと 共に、官民地域パートナーシップに基づき、東北大 学青葉山新キャンパスに建設した放射光施設 ( Fig.1 ) である。 NanoTerasu は SPring-8 や SACLA と同じく 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律 (以下「共用促進法」という)によって、 「特定先端 大型研究施設」と位置付けられている。 NanoTerasu は、日本国内で培われた高度な加速 器技術を継承し、特に蓄積リングにはマルチベンド アクロマットラティス技術を採用することで、世界 トップクラスの低エミッタンスと高コヒーレンス 特性を実現した高輝度放射光施設である [2] 。光源と してはアンジュレータとマルチポールウィグラー ( MPW )の挿入光源のみを備え、軟 X 線からテン ダー X 線領域での高度利用が期待され、特に軟 X 線 を用いた物質の機能発現に関わる電子状態の可視化 能力に期待が寄せられている。また、 MPW を用い ることで硬 X 線も発生可能であり、 20 keV 程度の領 域では SPring-8 の偏向電磁石光源より高い輝度が獲 得できる。これらの卓越した性能は、物質の構造や 機能を原子・分子レベルで詳細に解析することを可 能にする。これら光源特性によって、材料科学、エ ネルギー科学、環境科学、生命科学など、幅広い分 野における研究開発を飛躍的に加速させることが期 待されている。 NanoTerasu は、コロナ禍の影響を若干受けたも のの、 2023 年 3 月に基本建屋が竣工され、それを取 り戻す早さで加速器調整が進捗し、同年 12 月 7 日に はファーストビームの取り出しに成功した。 2024 年の 4 月 9 日からはコアリション利用が、同年度の 2025 年 3 月 3 日からは共用利用(後述)が開始され、 いよいよ本格的な定常運営に至った。これらの経緯 について予定通りの運転開始に向けて取り組まれた 関係者の方々とその尽力に対して、敬意と感謝の意 が表されるべきである。 2.NanoTerasu の利用・体制 NanoTerasu には共用利用とコアリション利用と いう 2 つの利用制度がある。コアリション利用 [3] は、 担当機関である PhoSIC と放射光施設の利用を希望 する企業・学術機関が有志連合(コアリションメン バー)を組み、加入金を拠出することで PhoSIC が 整備したコアリションビームラインを利用できる仕 組みである。コアリションメンバーは課題審査を経 ず利用予約が可能で、成果を専有することができる。 放射光に関する専門知識がなくとも高度な研究開発 が可能となり、産業界のニーズに基づく利用と学術 界との連携促進が実現すると考えられている。 一方、共用利用は、国内外の産官学研究組織に 属する全ての研究者による研究課題の申請が可能 で、審査を経た課題の成果については全て公開義務 がある。共用利用の対象となる共用ビームラインに ついては QST が建設とそれらの運転を行う。高輝 度光科学研究センター( JASRI )は、 2024 年 3 月 27 日に公布された改正共用促進法に基づき、同年 4 月 1 日から NanoTerasu の登録機関に認定され、共用に 関わる公平で公正な利用課題選定と、共用ビームラ インでの利用者支援に責任を持つこととなった。 NanoTerasu はその用地が東北大学から提供され、 地域パートナーによるサポートの下、基本建屋と加 速器がそれぞれ PhoSIC と QST によって建設、設置 された施設である。運営についてもこの関係に従っ ているが、各機関を束ねて円滑に管理・運営を行う ために QST 組織の中に総括事務局が設置されている。 JASRI はこれら組織と連携して、共用ビームライン の課題選定と利用者支援を行う役目を担っている。 98 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 3.ナノテラス事業推進室 JASRI においては上記の登録機関認定に先立ち、 タスクフォースとして共用制度や利用者支援体制、 管理体制等の準備のため JASRI 企画室(当時)が中 心となって、研究支援部、利用推進部、及び安全管 理室が共同して議論が重ねられた。そして認定後の 2024 年 4 月 1 日より、利用課題選定と利用者支援を 主業務とする「ナノテラス事業推進室」が立ち上が り、室員は兵庫県播磨地域を離れ、当地の宮城県仙 台市での業務活動が開始された。 (以降、本稿では JASRI である勤務地の「仙台」 、 「播磨」といった記 述での表現、主に施設自体或いはこれに関わる記述 については「 NanoTerasu 」 、 JASRI ナノテラス事業 推進室に関しては「ナノテラス」表記とする。 ) ナノテラス事業推進室の室長には筆者が、研究業 務課の課長には坂本つぐみが、そして利用研究推進 グループのグループリーダーには本間徹生が就任し、 同グループには保井晃と菅大暉が参加して、たった 5 名からの第一陣出発となった。 2024 年度後半から は順次、事務系職員、研究員、技術員人事の採用と 着任があり、 QST と PhoSIC とのクロスアポイント 制度も取り入れながら室員人数の増強が着々と進め られてきた。 ナノテラス事業推進室の利用研究推進グループか らは各共用ビームラインに 2 名以上のビームライン 担当者が配置され、それぞれに技術員が確保されて いる。また、データ解析と理論計算や機器制御ソフ トウェア開発を主務とする研究員を確保しており、 測定試料等の化学物質管理や試料環境制御システム 開発を行う研究員も着任する予定となっており、従 来の放射光施設では実現できていなかった体制にて、 共用利用の包括的サポートの実現を目指したい。 4.共用ビームライン 今回の共用開始時において、 NanoTerasu の共用 ビームラインとして、軟 X 線領域での世界最高のエ ネルギー分解能を有する BL02U :軟 X 線超高分解 能共鳴非弾性散乱( Fig.2 ) [4] 、 10 μ m 以下の空間分 解能を実現する BL06U :軟 X 線ナノ光電子分光 [5] 、 偏光特性の高速切替え可能なアンジュレーターを世 界初導入した BL13U :軟 X 線ナノ吸収分光 [6] の 3 本 が稼働しており、それぞれが世界最高性能で最先端 の研究推進を担うことを目標としている。同ビーム ラインの性能や研究成果の詳細については、本情報 誌の記事として順次紹介が予定されているのでその 際はご一読いただきたい。 QST と JASRI では、そ れぞれビームラインの建設と運転に責任を持つビー ムライン責任者と利用者支援を担当するビームライ ン担当者を選任して、共用ビームラインの運営のた め協働している。 2025 年 3 月の共用開始直前まで、 QST が実施す る試験的共用の合間を縫って、ビームライン担当者 は標準試料に対するデータ取得を行いながら測定器 使用に対する習熟やビームラインの性能確認を進め、 共用利用開始に向けて必要な機器・実験環境の整備 を行なってきた。利用研究推進グループは、これら ビームライン担当者を中心とした現場での利用者支 援・管理を行うとともに、利用研究の多様化や高度 Fig. 1 NanoTerasu 全景写真( 2024 年 8 月) Fig. 2 NanoTerasu BL 02 U ( 2025 年 1 月) SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 99 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 化を目的とした調査研究および手法開発として試料 環境整備や解析・制御ソフトウェアを含むシステム の開発・導入に挑戦している。 2024 年 9 月の研究課題申請の開始に先立って、共 用利用への関心と理解を深めるための説明を目的 として、計 4 回の利用説明会が、地域性を考慮した 各地域(東京、京都、福岡、仙台)で実施された。 NanoTerasu の全般的説明の他、 JASRI 利用推進部 から共用利用制度が説明された他、 PhoSIC からは コアリション利用研究成果が、 QST のビームライ ン責任者からは共用ビームライン整備・進捗状況の 報告が、 JASRI のビームライン担当者からは標準試 料測定を通じて得られた測定器評価等の報告が行わ れた。 5.いよいよ共用利用の開始 JASRI 播磨の利用推進部が主体となり基幹システ ム DX 推進室(当時)のサポートを受け、ナノテラ ス事業推進室と QST 総括事務局が連携・協力して、 共用利用制度に関わる利用選定手続きと支援・管理 体制の構築が進められた。利用及び管理制度につい ては「ユーザーガイド」に集約され、ユーザーズオ フィスの立上げに多くの時間を充当した。また、研 究課題申請に関わるホームページが整備され、従 来の SPring-8/SACLA と同じ WEB ページ画面から ○ NanoTerasu を選択することで、 SPring-8/SACLA と共通のユーザー番号から研究課題申請を行うこと が出来るようになった。実際には施設の安全管理区 分等の背景から、安全審査や技術審査方法、利用前 の来所手続き等の差異が発生する。例えば入館手続 きについては NanoTerasu 独自のルールが設定され ており、実験ホール自体が非放射線管理区域化され ているため、現在の軟 X 線共用ビームラインではメ インビームシャッター( MBS )の開閉を行わない 実験者については、放射線業務従事者として登録・ 管理される必要がなくなっており、利用者にとって 大幅な負担低減が実現されている。 SPring-8/SACLA に対して独立した NanoTerasu 選 定委員会と利用研究課題審査委員会( PRC )の体制 整備と編成が進められ、 2 回の選定委員会を経て同 年 9 月 26 日から 2025A 期に対する利用研究課題募 集が開始された。同年 11 月 6 日の応募締切り後、レ フェリーによる科学的妥当性評価と同時に安全審査 と技術審査が行われ、 PRC での審査を経て選定委員 会の場で各課題の採否が決定された。 2025A 期につ いては最初の課題募集にも関わらず総ビームタイム 時間を超えた研究課題申請があり、採択されたのは 3 本の共用ビームラインに対して計 38 課題となった。 2025A 期の共用開始すなわち NanoTerasu の共用 利用開始は 2025 年 3 月 3 日であった。当日はプレス 発表の場で JASRI 雨宮慶幸理事長からの挨拶と共 用制度の説明、 QST 高橋正光 NanoTerasu センター 長、川上伸昭総括事務局長による質疑応答が行わ れた。共用ビームラインに関する取材においては、 BL02U のファーストユーザーである東北大鈴木博 人助教、 BL06U の同じく東北大湯川龍准教授に囲 み取材等にご対応いただいた( Fig.3 ) 。 現在、共用利用の形態は一般課題のみに限定され ている。 SPring-8 で行われているような成果専有課 題(時期指定課題、測定代行)や大学院生提案型課 題等の特色ある利用制度については、今後検討が重 ねられ適宜整備されていく予定である。 6.今後について NanoTerasu は総計 28 本のビームラインが設置可 能であるが、現在共用利用の 3 本とコアリション利 用の 7 本を加えて 10 本しか整備されていない状況 にある。今後、共用ビームラインはいくつかの段階 を経て充足されて行くことが計画されている。次の 段階として 2027 年度までの共用開始を目指してさ らに 1 本の共用ビームラインの増設が承認され、現 Fig. 3 共用利用開始記者発表( 2025 年 3 月 3 日) 100 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS 在その建設準備作業が進行している。新ビームライ ンではマルチポールウィグラー光源が採用され、テ ンダー X 線領域での共鳴 X 線回折をメインとする ビームラインが検討されており、高エネルギー側の 到達範囲を 20 keV 程度まで拡張したタンデム利用 による汎用的な X 線回折・ X 線小角散乱ステーショ ンとの併用が計画されている。 また 2026 年度からは、コアリションビームライ ンの一部共用供出が計画されている。ナノテラス事 業推進室はこれにも関与する予定であるが、コアリ ション利用と共用利用では運営システム・理念が異 なるため、その共用制度確立に新たな工夫が求めら れている。また、コアリションビームラインは本数 や種類も多く、運営や利用者支援に関してこれま で以上に PhoSIC 、総括事務局、及び JASRI 内での 部・室間の機構・組織を跨いだ連携がなお一層求め られている。一方、ビームラインの装置・検出器・ 試料環境制御系やそれらを利用する分野については、 SPring-8 との共通性が高いと考えられ、 JASRI 内で の播磨と仙台にまたがる研究資源(研究員、測定・ 制御装置、その他)の相互活用が期待されている。 2025 年 3 月 1 日より NanoTerasu と SPring-8/SACLA それぞれのユーザー団体が統合し、新しく特定放 射 光 施 設 ユ ー ザ ー 協 同 体( SpRUC ) が 発 足 し た。 NanoTerasu の 本 格 運 用 が 開 始 さ れ た こ と を 受 け、 2025 年度は特定放射光施設シンポジウムの開催が 予定されている。また、 2026 年放射光学会年会は、 東北大や東大物性研も参加して仙台で開催される 予定である。 NanoTerasu の運用開始をきっかけに、 その他多くの学会等も仙台での開催が計画されてい ると聞く。これらについても、利用者拡大と成果最 大化に向けてナノテラス事業推進室が積極的に関 与・貢献していく予定である。 7.おわりに ナノテラス事業推進室は、東北大学青葉地区に置 かれた NanoTerasu 基本建屋に近接する国際放射光 イノベーション・スマート研究センター棟(通称 SRIS 棟)の 208 室と 209 室に居室を構える。室員人 数は着々と増加し、設置 2 年目を迎えた 2025 年 4 月 現在では総勢 16 名(室長+研究業務課 3 名+研究 グループ 12 名)を数える推進室となった( Fig.4 ) 。 今後の共用利用拡大に対応するため、人員補強を含 めた業務機能の増強が求められており、関係各機関 との連携・協力をいただきながら今後とも発展して 行きたい。 JASRI はこれまで SPring-8 、 SACLA の共用利用 について豊富な実績と専門性を有しており、本格的 な運用が始まった NanoTerasu が世界最先端の放射 光施設として、日本だけではなく、世界の放射光コ ミュニティーの中でインパクトのある研究成果を創 出できるよう、組織的に一体となり全力で取り組み たいと考えている。 参考文献 [ 1 ] https://nanoterasu.jp [ 2 ] N. Nishimori: Proc. IPAC ʼ 22, Bangkok, Thailand , Jun. (2022) 2402-2406. doi:10.18429/JACoW- IPAC2022-THIXSP1 [ 3 ] https://www.phosic.or.jp [ 4 ] J. Miyawaki et al .: Journal of Physics: Conference Series. 2380 (2022) 012030. doi:10.1088/1742- 6596/2380/1/012030 、 現状を記す情報については、 https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1742- 6596/2380/1/012030 [ 5 ] K. Horiba, et al .: Journal of Physics: Conference Series . 2380 (2022) 012034 ~、 https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1742- 6596/2380/1/012034 Fig. 4 ナノテラス事業推進室職員( 2025 年 4 月 3 日) SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 101 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 通信 [ 6 ] Yoshiyuki Ohtsubo, et al .: Journal of Physics: Conference Series. 2380 (2022) 1. 012037-012037 、 https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1742- 6596/2380/1/012037 大石 泰生 OHISHI Yasuo (公財)高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 〒 980 - 8572 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 468 - 1 - 208 TEL : 050 - 3502 - 5840 e-mail : ohishi@jasri.jp 102 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 SPring-8/SACLA/NanoTerasu COMMUNICATIONS SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 103 談話室・ユーザー便り 特定放射光施設ユーザー協同体 ( SpRUC ) 会長 藤 原 明 比 古 特定放射光施設ユーザー協同体 (SpRUC) 四季報 1.はじめに(前号以降の動向) SPring-8/SACLA 利用者情報 3 月号(前号)の SPring-8 ユ ー ザ ー 協 同 体( SPRUC ) 四 季 報 [1] は、 主に、 SPRUC と NanoTerasu ユーザー共同体 ( NTUC ) との融合に向けた取り組みについて報告をしました。 2025 年 3 月 1 日に、予定通り、 「特定放射光施設ユー ザー協同体」として新たな組織として出発すること ができました。本号では、最初の特定放射光施設 ユーザー協同体( SpRUC )四季報をお届けしたい と思います。 2.NanoTerasu のユーザー共同体との融合 2024 年 6 月中旬に SPRUC と NTUC の連携の在り 方について懇談を開始してから、わずか 9 か月の準 備期間で、両 UC が融合して、新しく生まれ変わっ た SpRUC が 誕 生 し ま し た。 SPRUC と NTUC の 会 員の皆様はもちろん、両 UC の事務局、特定放射光 施設の施設者、登録施設利用促進機関など、関係す る皆様の深いご理解と心強いご協力によって新 UC 誕生に至ることができました。特に、両 UC の事務 局には、通常業務に加え、組織間の調整から規定等 の文書管理まで、膨大な作業をスケジュールに合わ せて整えていただきました。関係者の皆様のお力添 えに心よりお礼申し上げます。 この融合の強みは、利用者の視点で特定放射光施 設の利用研究全体を俯瞰し、敷居なく議論できるこ とです。多施設にまたがるオープンな議論の定着に は、会員の皆様の積極的な関与が必要不可欠です。 これまで同様に、 SpRUC の取り組みへの参画をお 願いいたします。 3.SpRUC の取り組み 〜 これまでとこれから 〜 SpRUC 設 置 日 で あ る 3 月 1 日 か ら 2 日 間、 恒 例 の BLs ア ッ プ グ レ ー ド 検 討 ワ ー ク シ ョ ッ プ ( BLsUGWS ) が 開 催 さ れ ま し た。 議 論 の 内 容 は、 開催報告記事 [2] をご参照ください。ここでは、編成 について触れます。今回の BLsUGWS では、初日 に播磨地区の SPring-8 と SACLA 、 2 日目に仙台地 区の NanoTerasu を中心に議論をしました。今後は より横断的な議論が可能となるような編成を検討し ていきたいと考えております。より充実した議論の ための仕組みづくりのご提案を歓迎します。 SpRUC では、これまでの UC の取り組みを継続 して、春に BLsUGWS 、秋にシンポジウムを開催す る予定です。 BLsUGWS は装置機器や利用システム など主にハード / ソフト両面での技術的なテーマに ついて議論する場、シンポジウムは主に放射光利用 研究に関わる科学技術的なテーマについて議論す る場として、ある程度の役割分担があると思いま す。その役割分担を尊重しつつ、半年に一度、施設 者、登録施設利用促進機関、利用者が一堂に会して、 放射光利用研究の在り方について喫緊の課題や最新 の話題を包括的に議論する場を持つことで、 VUCA 時代における機動的な取り組みが前進して行きます。 SpRUC は新しい組織です。これまでの 2 つの UC の良い取り組みは継続し、融合によって生まれる新 しい取り組みは積極的に取り入れ、なお一層の発展 を目指していきたいと思います。繰り返しになりま すが、会員の皆様の積極的な参画をどうぞよろしく お願いいたします。 参考文献 [ 1 ] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=43907 [ 2 ] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=44168 藤原 明比古 FUJIWARA Akihiko 関西学院大学 工学部 〒 669 - 1330 兵庫県三田市学園上ケ原 1 番 TEL : 079 - 565 - 9752 e-mail : akihiko.fujiwara@kwansei.ac.jp 104 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 ANN0UNCE.ENTS SPring-8 秋の学校 趣意: SPring-8 秋の学校は、これからの放射光科学に貢献する人材の発掘と育成を目的として、特定放射光施設 ユーザー協同体( SpRUC )と高輝度光科学研究センター( JASRI )が中心となり、大学や関係諸機関と協力 して開催するものです。夏の学校とは異なり、放射線業務従事者登録を必要としないこと、大学院生のみなら ず企業研究者の方々にもご参加いただけるのが大きな特徴です。 SPring-8 で活躍する最前線の研究者による基 礎講義、個別テーマごとのグループ講習、さらにビームラインをはじめとする施設見学を通じて、放射光の原 理と利用研究の基礎を学ぶと共に、実験手法やデータ解析を体験できるようにカリキュラムが準備されていま す。また、 SPring-8 のキャンパス内に設置されている X 線自由電子レーザー施設 SACLA についても学ぶこと ができます。基礎講義とグループ講習は、大学 3 年生が充分に理解できる水準に設定されており、専門分野が 異なる方でも安心してご参加いただけます。秋の学校は SPring-8 を用いた研究に興味を持つ全ての方を対象と しており、これから放射光利用を考えている大学院生や企業研究者の方々にとっては入門の機会、卒業研究や 大学進学を控えた方々にとっては進路を考える最適な機会になります。もちろん、すでに SPring-8 や放射光施 設の利用経験があり、一層の理解を望まれる方の参加も大いに歓迎します。 開 催 日: 2025 年 9 月 7 日(日)~ 10 日(水) 場 所: 大型放射光施設 SPring-8 (兵庫県佐用郡佐用町光都 1-1-1 ) カリキュラム概要: 基礎講義/グループ講習 募集定員: 80 名程度(受入れ予定人数を超える応募があった場合は参加登録の内容をもとに選考を行う) 参 加 費: 20,000 円(予定:但し学生は免除、宿泊費・交通費等は自己負担) 対 象: SPring-8 を用いた研究に関心を持つ者 (但し理系大学 3 年生レベルの講義内容を理解できること) ※ 放射線業務従事者登録は必要なし 主 催: 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) (公財)高輝度光科学研究センター( JASRI ) ※ 後援等につきましては関係諸機関への依頼を準備中 以 上 第 9 回 SPring-8 秋の学校 開催のご案内 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報/Vol.1 No.1 (2025 年 6月号) 105 ࠂ ൘ 2025 年度より SPring-8 ユーザー協同体( SPRUC )と NanoTerasu ユーザー共同体( NTUC )が統合し、特定 放射光施設( SPring-8/SACLA/NanoTerasu )ユーザー協同体( SpRUC )という新体制になりました。 2024 年 度まで SPRUC の中心的な活動の一つとして実施してきた SPring-8 シンポジウムの後継として、今年度は特定 放射光施設シンポジウム 2025 を開催します。当シンポジウムは、様々な分野にわたるユーザーの科学技術的 交流の場として、学協会、 SpRUC を構成する代表機関、理化学研究所、量子科学技術研究開発機構、高輝度 光科学研究センターと共に開催します。 【主 催】 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) 国立研究開発法人理化学研究所 放射光科学研究センター( RSC ) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 NanoTerasuセンター 公益財団法人高輝度光科学研究センター( JASRI ) 国立大学法人東北大学 【開催期間】 2025 年 9 月 4 日(木)~ 9 月 5 日(金) 【会 場】 東北大学 青葉山コモンズ(対面開催を基本(+オンライン配信) ) 【問い合わせ先】 特定放射光施設シンポジウム 2025 事務局 公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 TEL : 0791-58-2785 FAX : 0791-58-2786 e-mail : sprucsympo2025@spring8.or.jp 特定放射光施設シンポジウム 2025 106 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information /Vol.1 No.1 JUNE 2025 ANN0UNCE.ENTS 【趣 旨】 SPring-8 では、最先端の学術研究と産業利用の推進による産業振興への貢献が重要な使命であり、広い範囲 における産業利用が行われています。 今年も、本報告会を通じ、産業界における放射光の成果・有効性を多くの方に知っていただくと共に、 SPring-8 利用者の相互交流を目的とする産業利用報告会を開催します。 開催は、 SPring-8 の産業利用推進を目的とした活動を行っている、サンビーム共同体・兵庫県・豊田中央研 究所の 3 団体、および高輝度光科学研究センター ( JASRI ) の年次報告会をジョイントして構成したものであり、 口頭発表およびポスター発表形式にて実施します。 また今年度は、従来の口頭発表形式およびポスターセッションの成果報告に加え、 SPring-8-II を産業利用に 最大限に活用するための提案に関する企画講演を行う予定です。 SPring-8 における最新の産業利用の状況、研究成果を知る絶好の機会ですので、奮ってご参加ください。 【主 催】 サンビーム共同体 兵庫県 (株)豊田中央研究所 (公財)高輝度光科学研究センター( JASRI ) SPring-8 利用推進協議会 【後 援】 (国研)理化学研究所 (一財)総合科学研究機構( CROSS ) (一財)高度情報科学技術研究機構( RIST ) 中性子産業利用推進協議会 あいちシンクロトロン光センター 佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター フロンティアソフトマター開発ビームライン産学連合体( FSBL ) 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) 【開催期間】 2025 年 9 月 2 日(火) 13:00 開始 ~ 9 月 3 日(水) 17:00 終了(予定) 【会 場】 大阪科学技術センター 8F 大ホール、中小ホール(現地開催のみ) *技術交流会:開催予定 【参 加 費】 無料 (技術交流会は会費制) 【参加申込およびプログラム等詳細】 参加申込: 2025 年 7 月 1 日(火) ~ 8 月 26 日(火) 17:00 締切(予定) プログラム:調整中 【問合せ先】 SPring-8 産業利用報告会事務局 (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課 TEL : 0791-58-2785 FAX : 0791-58-2786 e-mail : industry@spring8.or.jp 第 22 回 SPring-8 産業利用報告会 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information Vol.1 No.1 JUNE 2025 発行日 2025 年 6 月 20 日 編 集 SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報編集委員会 発行所 公益財団法人高輝度光科学研究センター TEL 0791-58-0961 (禁無断転載) SPring-8/SACLA/NanoTerasu 利用者情報 編集委員会 委員長 池本 夕佳 利用推進部 委 員 朝倉 博行 特定放射光施設ユーザー協同体( SpRUC ) 編集幹事(近畿大学) 伊藤 華苗 産学総合支援室 大野 花菜 利用推進部 大和田成起 XFEL 利用研究推進室 河村 高志 回折・散乱推進室 桑田 金佳 研究 DX 推進室 坂尻佐和子 企画人 財 部 下野 聖矢 回折・散乱推進室 竹内 晃久 分光 ・イメージング推進室 成山 展照 ビームライン光学技術推進室 平山 明香 利用推進部 深見 健司 加速器部門 福井 宏之 精密分光推進室 本間 徹生 ナノテラス事業推進室 増永 啓康 回折・散乱推進室 (以上、敬称略五十音順) 事務局 岡澤 貴裕 利用推進部 松末恵理子 利用推進部 SPring-8/SACLA/NanoTerasu Information SPring-8 SACLA NanoTerasu JASRI 公益財団法人 高輝度光科学研究センター Japan Synchrotron Radiation Research Institute 〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1 【研究支援部】TEL 0791-58-0950 【利用推進部】TEL 0791-58-0961 e-mail : sp8info@spring8.or.jp website : https://user.spring8.or.jp/sp8info/ 発行元