SPring-8 / SACLA / NanoTerasu利用者情報 Online ISSN 2760-3245
©riken

索引/Index
1. 最近の研究から/From Latest Research
[1]東北大学 理学研究科 物理学専攻 Department of Physics, Graduate School of Science and Faculty of Science, Tohoku University 、[2](公財)名古屋産業科学研究所 Nagoya Industrial Science Research Institute
抄録をみる/Abstract
本研究では放射光X線回折による価電子密度解析を分子性結晶に適応し、精密な価電子密度分布の観測に挑戦した。高空間分解能及び高精度で観測された価電子密度分布は波動関数に由来した微細な構造を示し、長距離電子相関まで考慮した理論計算の結果とも高い精度で一致した。この結果から、実験価電子密度分布は量子化学計算と直接比較可能であることがわかった。さらには実験価電子密度分布と量子化学計算を組み合わせることで、π軌道のような価電子の各軌道成分の実空間分布を分離・抽出することにも成功した。
東京大学 大学院理学系研究科 地殻化学実験施設
Geochemical Recerach Center (GcRC), Graduate School of Science, The University of Tokyo
抄録をみる/Abstract
水素は地球核の軽元素候補として重要な元素である。地球核の主要成分は鉄であるが、高圧条件下において水素は金属鉄に固溶し、鉄水素化物を生成する。このとき、水素は鉄の格子間に侵入固溶することで著しい体積膨張を引き起こし、密度や物性を変化させる。特に、水素化による密度変化は、地球核の密度欠損問題を考察する上で重要であるにも拘わらず、これまで十分に研究されてこなかった。本研究では、高温高圧環境でX線回折をおこなうことで、鉄水素化物の水素誘起体積膨張について詳細に調べた。
東京科学大学 理学院 地球惑星科学系
School of Science, Department of Earth and Planetary Sciences, Institute of Science Tokyo
抄録をみる/Abstract
地震波観測より、地球の下部マントルに広がる大規模S波低速度領域の縁部分では、地震波異方性が存在することが報告されている。この地震波異方性は、鉱物の結晶方位選択配向の発達によって生じている可能性がある。本研究では、回転式ダイヤモンドアンビルセルを用いて、下部マントル圧力条件下で高圧大歪変形実験を行い、変形に伴うフェロペリクレースの結晶方位選択配向の発達を調査し、大規模S波低速度領域における地震波異方性との関係を明らかにすることを目的とした。実験の結果、フェロペリクレースにおいては、Fe の含有量の違いやスピン転移の有無に関わらず、ペリクレースと同様に高圧力下でせん断方向と平行に{100}面が配向することが明らかになった。 ただし、ペリクレースと比較すると、より低い温度圧力条件で{100}面の配向が生じることが確認された。このフェロペリクレースの結果を、最下部マントルに横たわるスラブの状況に当てはめて考えた際には、S波速度が鉛直方向よりも水平方向で大きいという地震波異方性の観測結果と整合的であることが示された。
2. ビームライン・加速器/Beamlines / Accelerators
公益財団法人高輝度光科学研究センター 精密分光推進室
Precision Spectroscopy Division, Japan Synchrotron Radiation Research Institute
抄録をみる/Abstract
SPring-8 共用ビームラインBL09XUで実験されていた核共鳴散乱アクティビティは、2021 年にビームライン再編によってBL35XUへ移動した。高フラックス化をはじめとした移設による様々な利点を活かして、移設後も活発なユーザー利用が行われている。本稿ではビームライン再編後の核共鳴散乱アクティビティの成果について紹介する。
(公財)高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 利用研究推進グループ
NanoTerasu Promotion Division, Japan Synchrotron Radiation Research Institute
抄録をみる/Abstract
NanoTerasu の共用ビームラインBL06Uは50~1000 eVの真空紫外から軟Ⅹ線領域の幅広いエネルギー領域で高フラックス、高エネルギー分解能、高空間分解能を有するビームを利用した角度分解光電子分光(ARPES)計測が利用可能なビームラインである。Bブランチの最下流にはマイクロ集光ビームが利用でき、かつ、四端子電圧印加機構によるオペランド計測が可能なARPES装置が配置されており、共用に供されている。本稿では、BL06Uの概要や整備状況のほか、我々JASRIが進めている、ユーザー実験の利便性向上や測定可能試料の広範化を目的とした高性能化研究について紹介する。
(公財)高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室 利用研究推進グループ
NanoTerasu Promotion Division, Japan Synchrotron Radiation Research Institute
抄録をみる/Abstract
NanoTerasu では、3 本の軟X線ビームライン(BL02U、BL06U、BL13U)が共用ビームラインとして建設され、 本年3月から共用利用が開始された。軟X線吸収分光のビームラインであるBL13Uは、世界的にみても屈指の特色を有する。本稿では、利用者がそのようなビームラインの特色を十分に活かして、共用課題申請や共同課題実験を実施していただけるよう、BL13Uが持っているその特筆すべき特徴と、現状および将来計画について紹介させていただく。
(公財)高輝度光科学研究センター 回折・散乱推進室 回折構造生物チーム
Diffraction and Scattering Division, Japan Synchrotron Radiation Research Institute
抄録をみる/Abstract
回折・散乱推進室 回折構造生物チームは、共用の生体高分子結晶解析ビームラインBL41XUの高性能化・利用支援と、理研ビームラインBL26B1の共用枠の利用支援を行っている。同じく生体高分子結晶解析ビームラインであるBL45XUが自動測定に特化しているのに対し、BL41XUでは、自動測定を含む通常のデータ測定に加え、遠隔実験、室温での測定や顕微分光と組み合わせた回折実験など、自動では難しい実験を行うことができる。ビームラインの高性能化として、室温構造解析と時分割構造解析を中心に、タンパク質の構造ダイナミクスに関わる回折データ測定のための技術開発を進めている。時分割構造解析では、SACLAと相補的に利用できる環境の構築が重要であり、SACLAと連携して整備を進めている。
3. 研究会等報告/Workshop and Committee Report
(公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 先端光源利用研究グループ
XFEL Utilization Division, JASRI
SPring-8 夏の学校実行委員会 委員長(JASRI)
Chair of SPring-8 Summer School Executive Committee (JASRI)
4. SPring-8/SACLA/NanoTerasu通信/SPring-8/SACLA/NanoTerasu Communications